- むくみとは皮下組織に水分が溜まった状態のこと
- 高齢者のむくみの原因は筋力・心肺機能の低下など
- 継続的なむくみは放置すると危険
- むくみの予防方法を7つ紹介
高齢者によく起こり得る身体の不調のひとつとして「足がむくんでつらい」との声がよく聞かれます。
足のむくみは高齢者のQOL(生活の質)を下げる一因になりますが、単につらいだけではなく、放置すると危険な病気がひそんでいる可能性があるため要注意です。
いったいなぜ高齢者は足がむくみやすくなるのでしょうか。そして、足のむくみを予防もしくは解消する方法はあるのでしょうか。
今回は高齢者の足のむくみについて解説します。
足のむくみ(浮腫)とは
そもそも「むくみ」とは何でしょうか。
むくみとは、皮膚の下(皮下組織)の細胞の間に過剰に水分が溜まった状態のことです。医学用語では「浮腫(ふしゅ/ edema)」と呼ばれます。
浮腫は足だけではなく顔や手など全身に起こり得ますが、水分は重力の影響で下に引っ張られるため、心臓より下にある足は他の部位よりもむくみが出やすくなります。
画像引用:日本呼吸器学会|下肢のむくみ
なお寝たきり状態の方は、足ではなく背中がむくみやすくなります。
むくみのセルフチェック
自分の足がむくんでいるかどうかは簡単なセルフチェックで確認できます。
自分の足のすねを指でギュッと押さえ、数秒後に離してください。指を離してもくぼみがしばらく残っているようであれば、むくんでいる状態と判断できます。
高齢者の足がむくみやすくなる原因
高齢者は若い人よりも足がむくみやすいと言われています。
高齢者の足がむくみやすい原因には、以下のようなものが考えられます。
筋肉量の低下
加齢により筋肉はだんだんと衰えてきます。筋肉は収縮するときに血液を押し上げる働きがあるため、身体の筋肉量が減ると血液の循環がそこなわれて水分が皮下組織に残ってしまい、むくみの原因になります。
心肺機能の低下
心臓の働きが弱まると、血液を全身に送り出すポンプの機能も低下します。
すると血管内に余分な水分が残り、残った水分が血管の外に染み出して皮下組織の細胞内に溜まりむくみを起こさせます。
運動不足
外出の機会が減る高齢者は、どうしても運動不足になりがちです。
一日中テレビの前で座ったままの生活をしている高齢者の場合、長時間座り続けて足を動かさないことによりエコノミークラス症候群となりむくみが発生する可能性があります。
また運動不足による筋力低下も、上記で説明したとおりむくみの原因です。
塩分・水分の過剰摂取
塩分の多い食事を摂取すると、身体は体内の塩分濃度を薄めようとして体内に水分を溜めこもうとします。そのため塩分の過剰摂取はむくみの原因になります。
また、高齢になると1日の尿量が低下する傾向にあります。一般的に健康な成人の1日あたりの尿量は1,500ml程度と言われていますが、高齢者の平均的な尿量は1,200ml程度です。
塩気の強い食事をとると水を飲む量も増えるため、水分も過剰摂取しやすくなる点もむくみにつながります。
ストレス
ストレスによって自律神経が乱れると、血管の収縮や拡張がうまくコントロールできなくなり、血行が悪くなってむくみの原因になります。
病気の影響
足のむくみの原因が、心臓や肝臓などの臓器の病気が影響して発生している可能性もあります。
むくみの症状が出る病気として、主に以下のような病気が挙げられます。
- 心筋症
- 心筋炎
- 肺血栓塞栓症
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 腎不全
- 肝硬変
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症・低下症
服薬の影響
薬の中には稀に副作用としてむくみが起きる薬もあります。
薬によるむくみ(薬剤性浮腫)が副作用として出やすい薬は、非ステロイド性抗炎症薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、抗生剤、抗癌剤などです。
ただし、すべての方にむくみの副作用が出るとは限りませんので、むくみを恐れて服薬を停止するようなことは絶対に避けてください。必ず医師・薬剤師に相談しましょう。
主なむくみの症状
身体がむくむと、見た目だけでなく以下のような症状が現れます。
- むくんだ箇所の張り、痛み
- 体重が増える
- 息切がする、呼吸困難になる
- 冷え
足がむくんだ場合には歩きづらさなどの症状も発生します。
高齢者の足のむくみは放置すると危険
足がむくんでも、一晩寝て朝起きたときには症状が改善しているようであれば、大きな心配はいりません。
しかし継続的に足がむくんでいる方は要注意です。特に高齢者は足のむくみが悪化すると以下のような病気に発展しやすいため、何日もむくみが続く場合には放置せず医師にご相談ください。
《むくみが悪化すると起こる病気》
・慢性下肢浮腫
・下肢静脈瘤
・深部静脈血栓症
足のむくみを予防する方法
ここからは、つらい足のむくみを予防する方法を7つ紹介します。
足を心臓より高く上げる
座っているときや眠るときに、クッションや足枕などで足を心臓よりも高くすると、足先まで血液が流れやすくなりむくみが予防できます。
足を動かす
こまめに足を動かすことで筋肉が鍛えられ、血流も良くなるためむくみ予防になります。
ウォーキングや体操は足を鍛えるために有効ですが、足腰が弱った高齢者の場合には座ったまま足を動かせる健康器具の活用などもおすすめです。
足を乗せるだけで振り子運動ができる「あしふみ健幸ライフ」の開発会社に当サイトが取材した記事がございますので、ぜひ参考にしてください。
足のマッサージをする
足のマッサージをしてリンパの流れを良くしてあげることも、むくみ予防に効果的です。
血行が良くなっている入浴後の、5分間のマッサージを習慣にしましょう。
《むくみ予防に効果があるマッサージ》
・両手のひらを太もものつけねに重ねてゆっくりと押す
・ふくらはぎから足のつけねにかけて優しくなで上げる
・膝の裏側にある凹みに指をあて、上に向かってさする
・足首を軽く回し、足の甲と裏の両面をつま先から足首に向けてさする
足を温める
全身の血行を良くするために、室温や服装を調節して手足の冷えを解消することでもむくみが予防できます。
足を効果的に温めるためには足湯をしても良いでしょう。
食生活を見直す
塩分の過剰摂取はむくみの原因になるため、普段から塩分の多い食事をしている人は食生活を見直してむくみを予防しましょう。
自分では調理が難しい高齢者には、塩分濃度に配慮がされている宅食サービスの活用もおすすめです。以下の記事では減塩食の宅配ができる宅食サービスもご紹介していますので、本記事とあわせて参考にしてください。
生活リズムを整える
睡眠はストレスを軽減し、自律神経を整える効果があります。生活リズムを整えて夜にぐっすり眠ることで、むくみの予防や改善が可能となります。
また、横になって眠る姿勢をとるだけでも足が重力から解放されるため、むくみづらさが改善できます。
弾性ストッキングを装着する
圧力のある弾性ストッキングを装着すると、足首やふくらはぎが適度に刺激されて足が引き締まりむくみの予防や改善につながります。
弾性ストッキングは薬局やインターネット通販で購入が可能です。
酷いむくみを解消したい人は医師に相談を
上記の予防策をとっても足がむくみ、治らない方は医師に相談しましょう。
足のむくみは上記でご説明したとおり、病気が原因である可能性があります。病気以外が原因のむくみであっても、酷いむくみはQOLを下げ、その他の病気を誘発する原因にもなるため早めの治療をおすすめします。
むくみが相談できる診療科は内科・循環器科・神経内科などです。かかりつけ医からも適切な医療機関を紹介してくれますので、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
まとめ
今回は高齢者に起きやすい足のむくみについて解説しました。
むくみが辛いと、気持ちが落ち込み元気に出歩くこともできなくなります。予防策や改善策を実践して、むくみに悩まされないアクティブな日々を過ごしましょう。