【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

要介護5とは|もっとも重度のレベルで利用できる自宅・施設の介護サービス

12345の積み木と「要介護」の吹き出し

この記事を書いた人
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級

この記事のサマリ
  • 要介護5は生活すべてに介護が必要な状態
  • 要介護5の要介護認定基準時間は1日あたり110分以上(上限なし)
  • 要介護5は月額362,170円までの費用が介護保険でまかなえる
  • 要介護5の意思疎通は困難だが人間としての尊厳はそのまま残る

生活する上でどのくらい介護が必要なのかをあらわす要介護度のうち、もっとも重度な介護状態は「要介護5」と呼ばれます。

今回は要介護5について解説します。要介護5に認定された人はどんな状態なのか、他の要介護度との違い、要介護5の人が受けられる介護サービスなどを確認しましょう。

要介護5とはどういう状態か

要介護と書かれたホワイドボードとベッド

「要介護5」とは、一日中ほぼ寝たきりの生活が続き、意思疎通も困難な状態を指します。

人間が生きていく上で必要な食事やトイレなども1人では行えなくなりますので、要介護5の人の生活には常に第三者の手助けが必要となります。

筋力の低下により身体の機能が衰える廃用症候群や、経管栄養などの医療ケアが必要になる要介護5の人も多く、家族だけで介護するには限界がある状態だと言えるでしょう。

なお認知症により要介護状態になった人は徘徊などの心配がつきものですが、要介護5まで重度な状態になると、ベッドから起き上がることも難しいため徘徊の危険性はほとんどないと言われています。ただし例外はあるため、まったく徘徊等の危険性がないとまでは言い切れません。

具体的には、要介護5に認定された人は、日常生活では以下のような介護を必要としています。

食事 介助および介護食が必要
排泄 オムツ・自動排泄処理装置を使用
入浴 リフト・介護用入浴機器を使用
歩行・立ち上がり できない(寝たきり)
身づくろい できない
掃除・洗濯 できない
調理 できない
買い物・金銭管理 できない

要介護5の原因1位は「脳血管疾患(脳卒中)」

厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」によれば、要介護5になった原因の第1位は脳卒中などの脳血管性疾患だとされています。これは要介護4と同じ順位です。

原因の第2位は認知症、第3位は高齢による衰弱となっています。

突然の病気により高齢者でなくても要介護5になる人はいますが、加齢を理由にして要介護5になる人の割合は、超高齢化が進む現代では今後さらに増えることが予想されます。

現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)

画像引用:厚生労働省|2019年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況

同居家族の半数以上が終日介護している

上記の調査では、自宅で生活している要介護5の人の家族が普段どのくらい介護をしているかも調査しています。

要介護5の人を在宅介護している家族は、半数以上が「ほとんど終日」介護をしています。

「2~3時間程度」や「必要なときに手を貸す程度」と答えた回答者も一定数存在しますが、家族が介護にあたっていないときにはホームヘルパーなどの訪問介護サービスが入っていると考えられます。

要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合

画像引用:厚生労働省|2019年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況

要介護5と他との違い

大きな虫眼鏡を抱える人形

介護が必要になった人の状態をあらわす要介護度は、1から5までの5段階があります。

要介護1が一番介護度が低く、今回、解説している要介護5が一番重い介護度です。

要介護4から要介護4までの詳細は、以下それぞれの記事で解説しています。要介護5と他との違いを見比べて、介護度があがるごとにどのような違いがあるのかを確認してください。

要介護5の認定基準時間

要介護5の要介護認定基準時間は1日あたり110分以上です。要介護5がもっとも重い要介護度なため、認定基準時間に上限は定められていません。

要介護認定基準時間は要介護認定の際に、以下5分野の介護の総合計時間がどの程度必要かを過去の要介護者にあてはめて算定しています。

要介護認定等基準時間の分類

画像引用:厚生労働省|介護保険制度における要介護認定の仕組み

要介護認定についてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

→リンク「介護認定」

日本で要介護5に認定されている人の数

大勢のシルエット

2023年1月時点で要介護5に認定され、介護保険サービスを利用している人の数は556.3千人です。


参考
介護給付費等実態統計月報(令和5年1月審査分)厚生労働省

うち自宅で生活をして居宅介護サービスを受けている人の数は279千人、施設に入所している人の数は248.5千人です。

要介護5の在宅介護は大変困難ですが、さまざまな事情により施設に入所できず、在宅介護を続けている家族が非常に多いことが伺い知れます。

要介護5で受けられる介護サービス

supportと書かれたカラフルな積み木

要介護5になると、介護保険による介護サービスがすべて受けられます。

ただし介護保険による介護サービスの中には、介護事業所や介護施設がある市区町村内に住んでいる人だけしか利用できない地域密着型サービスも含まれますので、要介護度以外にも利用基準があることは覚えておきましょう。


参考
公表されている介護サービスについて厚生労働省 介護サービス情報公表システム

以下からは在宅介護・施設介護それぞれの介護サービスについて説明します。

在宅介護で受けられる介護サービス

自宅で生活する要介護5の人が受けている介護サービスは、ホームヘルパーの派遣や訪問入浴、訪問看護などです。

入浴付きデイサービスや、家族のレスパイトケア(介護の小休止)を目的としたショートステイが利用できる点も、他の要介護度との違いはありません。

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問入浴
  • 通所介護(デイサービス)
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリ
  • 通所リハビリ
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
  • 地域密着型通所介護
  • 療養通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 福祉用具貸与(レンタル)
  • 特定福祉用具販売

施設で受けられる介護サービス

要介護5の人が入所できる介護施設は、要介護3および要介護4と同様です。

  • 介護老人福祉施設(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特養)

上記のうち介護老人福祉施設(特養)は待機者が大変多いことで知られていますが、要介護5の人は他の要介護度の人よりも施設に入所させる必要度合いが高いと判断されるため、各特養への入所者を決める判定会議の際に優先順位が高くなります。

ただし判定会議では要介護度以外に、介護者(家族)の状況や居宅介護サービス利用率も判断材料になるため、要介護5だからといって即座に特養へ入所できるとは限りません。

要介護5の費用

豚の貯金箱とお札

要介護5の区分支給限度基準額は362,170円です。介護サービスを利用した時に、362,170円までの費用が原則1割の支払いで済みます。

要介護5の介護では区分支給限度基準額を超えてもさらに介護サービスが必要になる可能性がありますが、限度額を超えた分の費用は全額自己負担になります。

以下は要介護5で想定される介護サービスの、介護保険における単位の例です。介護サービスの費用は各サービスの単位に10円を乗じて求められます。

《介護サービスごとの単位の例》

2時間以上2時間未満の訪問介護(身体介護が中心・日中帯×2名) 1,494単位
30分以上1時間未満の訪問看護(日中帯) 821単位
訪問入浴(看護職員1人及び介護職員2人) 1,260単位
1日あたりの介護福祉施設サービス費(従来型個室・要介護5の場合) 847単位
1日あたりのⅠ型介護医療院サービス費(従来型個室・要介護5の場合) 1,251単位


参考
介護給付費単位数等サービスコード表WAM-NET

家族が要介護5に認定されたら

杖をつく老人とワイシャツ姿のビジネスマンの人形

家族が要介護5になったら、その人が生活する場所が自宅であれ施設であれ、家族には大きな負担がのしかかることが想定されます。

いずれは来る「介護の終わり」の日まで、家族には何ができるでしょうか。

ここからは家族が要介護5と認定された後にどう対処していけば良いかを説明します。

自宅に住み続けたい人

要介護5の人はほぼ寝たきり生活が想定されますので、床ずれ(褥瘡)予防にまず気を付けてください。

また、要介護5まで進行すると食事も普通のメニューは食べられなくなるかもしれません。以下の記事を参考に、ミキサー食や流動食など、介護食の作り方も覚えておきましょう。

歯みがきやうがいなどの口腔ケアも、要介護5の人は自分でできなくなります。口腔ケアのやり方もしっかり理解しておいてください。

しかし上記でも解説したとおり、要介護5の生活すべての面倒を見る在宅介護は大変です。

可能な限り居宅介護サービスをフル活用しつつ、施設への入所もあわせて検討しましょう。

施設に入所したい人

要介護度が要介護5まで進行した人は、多くは肉体的にも衰弱しています。要介護5で受け入れ可能な介護施設を探すときには、介護とあわせて医療ケアが受けられる介護施設がおすすめです。

介護療養型医療施設は介護とあわせて医療ケアが受けられる公的介護施設ですが、介護療養型医療施設は2018年に廃止が決定され、現在では新規入所者は受け付けておりません。

2023年現在で運営されている介護療養型医療施設も2024年3月末に完全廃止になるため、入所者は老健や介護医療院、または介護付老人ホームなどへの転所が求められています。

現時点で介護療養型医療施設に入所している要介護5の人の家族で、転所先をご検討中の人は、以下の記事なども参考に適切な転所先を2024年3月末までにみつけてください。

要介護5は医療的ケア費用も考慮

病室の介護用ベッド

要介護度が要介護5まで進んだ高齢者は、いつなんどき体調不良になるかわかりません。

心身の虚弱により病気にもかかりやすく、医療機関にかかる頻度も多くなるでしょう。

また要介護5の人は胃ろうなどの医療的ケアが必要になる場合もあるため、医療費の負担も大きくなりがちです。

医療費が高額になったとき、あるいは高額な支払が見込まれるときには高額療養費制度が利用できます。以下の記事を参考に経済的な負担を解消してください。

まとめ

ベッドの老人とつなぐ手

今回は「要介護5」について解説しました。

要介護5とは日常生活すべてにおいて介護を必要とし、多くは意思の疎通もままならない状態です。

しかし要介護5の人が、人間の尊厳まで失ってしまっているわけではありません。

要介護5に対する正しい理解を深め、要介護5になった人のために何ができるかを考えてみましょう。