- 年齢が40歳になると介護保険料の納付がはじまる
- 介護保険料の納付方法は社会保険加入状況により異なる
- 年齢・地域・収入によって納付額が変わる
- 介護保険料を滞納すると延滞金やサービス利用制限などペナルティが発生
要支援や要介護の認定を受けた高齢者等の生活を支援する介護保険サービスは、国と自治体が負担するだけでなく、国民が支払う介護保険料によっても支えられています。
介護保険料は誰が支払うのでしょうか。加入者の年齢や収入などにより、支払うべき介護保険料は変わるのでしょうか。
今回は介護保険料の納付について解説します。
40歳以上の人は介護保険料の納付が始まる
日本に暮らしている一定年齢以上の人は、介護保険に加入して介護保険料を納付する義務があります。
納付義務が発生する年齢は40歳です。具体的には40歳になる誕生日の前日が「満40歳に達した日」となり、その日が属する月をもって介護保険の加入者となります。
《5月1日が誕生日の人》
満40歳に達した日・・・4月30日
介護保険に加入する月・・・4月
《5月2日が誕生日の人》
満40歳に達した日・・・5月1日
介護保険に加入する月・・・5月
介護保険は社会保険の一種
そもそも介護保険とは、日本の社会保険制度の一種です。
日本に暮らすすべての人は、何らかの社会保険に加入してお互いを支え合っています。これを一般に「皆保険制度」と呼びます。
介護保険以外の社会保険は、健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険です。社会保険制度については以下の記事で詳しく解説しています。
介護保険料の納付方法
健康保険の納付方法は、年齢およびその人がどのような形で社会保険に加入しているかにより変わります。
立場ごとに異なる介護保険料の納付方法を見ていきましょう。
会社員の人
会社勤めをしていて、会社の健康保険組合や協会けんぽなどに加入している人は、給料から健康保険料とともに介護保険料が控除されます。
会社勤めの人が自分で介護保険料の納付を行うことはありません。
自営業の人
自営業の人、あるいは会社の社会保険に加入せずにパート・アルバイトで働いている人は、自分で介護保険料を納付します。
納付方法は銀行窓口・郵便局・コンビニでの納付書による現金払いです。あらかじめ銀行口座を登録しておくと口座引き落としによる納付も行えます。
専業主婦(夫)の人
配偶者に扶養されている専業主婦(夫)は、配偶者が加入している社会保険の種類により自分で払うか払わないかが変わります。
配偶者が会社勤めの場合、被扶養者(扶養されている人)の介護保険料は配偶者が加入している健康保険組合等が負担します。加入者および専業主婦(夫)の納付は不要です。
配偶者が自営業またはパート・アルバイト、または年金だけで生活している場合は、健康保険料とともに介護保険料も自分で納付します。国民健康保険には「扶養」の概念がないため、世帯全員が個々に社会保険料を支払わなければいけないからです。
このときの納付方法は自営業の人と同じく、納付書による現金払いか口座引き落としです。
年齢が65歳以上の人
年齢が65歳に到達すると、これまで一緒に納付していた健康保険料と介護保険料が別々に扱われるようになります。
会社勤めを続ける人は、健康保険料は引き続き給料から控除されますが、介護保険料は別途自分で納付することになります。納付方法は自営業等の納付方法と同じです。
65歳から年金受給者となって年金で生活する人の納付方法は、年金額によって以下の2つに分かれます。
年金額が年間18万円以上 | 特別徴収(年金から差し引かれる) |
年金額が年間18万円以下 | 普通徴収(納付書もしくは口座引き落とし) |
なお65歳になった人は、介護保険料の納付義務は継続しながら、状況により自ら介護保険サービスを利用する権利が生まれます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
介護保険料はいくらかかるか
では実際に、介護保険はいくら支払う必要があるのでしょうか。
納付方法がそれぞれ違うように、納付額もその人ごとに違います。今度はどのように介護保険料の納付額が変わってくるかを見ていきましょう。
年齢による違い
介護保険の加入者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者とにわかれています。介護保険料の計算についても第1号被保険者と第2号被保険者では違います。
65歳以上の人・・・・・・・第1号被保険者
40歳から64歳までの人・・・第2号被保険者
第1号被保険者の介護保険料は、自治体が3年ごとに策定する「介護保険事業計画」の予算と被保険者の収入によって決定されます。
第2号被保険者の介護保険料は以下の項目で説明します。
加入保険による違い
第2号被保険者の介護保険料は、被保険者が加入している社会保険の種類により変わります。
会社勤めをしている人の介護保険料は、加入している健康保険組合等が決定します。
東京都の協会けんぽ加入者の介護保険料率は、2023年4月時点で1.82%です。都道府県ごとの介護保険料率は以下リンクよりご確認ください。
参考
令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)全国健康保険協会(協会けんぽ)
自営業等の人の介護保険料は、第1号被保険者と同様に自治体が決定します。
収入による違い
被保険者の種類が第1号であっても第2号であっても、介護保険料は被保険者の収入に応じて変動します。
自治体が決定する介護保険料は、前年の収入および住民税課税状況を元に11段階にわかれて計算されます。
健康保険組合等が決定する介護保険料は、支払給与額を元にそれぞれの健康保険組合等が設定した等級で計算します。協会けんぽの場合には1~50等級にわかれます。
全国の介護保険料平均納付額(2023年最新)
2023年時点での第1号被保険者の介護保険料の平均納付額は6,014円です。
第2号被保険者は確定データが2019年までしかありませんが、自営業等で国民健康保険に加入している人の平均納付額は5,532円、健康保険組合等の加入者の平均納付額は5,591円(本人負担額2,795円)です。
画像引用:厚生労働省|介護保険制度をめぐる最近の動向について
上の表を見ると、2000年に介護保険料の徴収が始まって以降、納付額がおよそ3倍にまで上昇していることがわかります。
最新の介護保険料については以下の記事もあわせて参考にしてください。
介護保険料を納付しないとペナルティがある
上記で介護保険料の具体的な納付額を知った人の中には、介護保険料が高すぎて支払いたくないと感じた人もいるでしょう。
しかし介護保険料の納付は年齢が40歳以上の人すべてに課せられている義務なため、滞納した人にはペナルティがあります。
介護保険料を20日間滞納すると、自治体より督促状が郵送されます。督促期限までに納付すればペナルティは発生しませんが、期限を超えたときにはペナルティとして督促手数料と延滞金が発生します。
さらに滞納を続けると、介護が必要になったときに介護保険サービスの利用に制限が生じます。江東区の制限内容は以下のとおりです。
画像引用:江東区|介護保険料を滞納すると
意図的な滞納だけでなく「うっかり納付忘れ」にも注意が必要です。
なお、経済的な理由で介護保険料が納付できない人には減免措置もあります。払えないからといって放置せず、早めの自治体への相談をおすすめします。
介護保険料の納付が免除されるケース
介護保険第2号被保険者のうち、以下に該当する人は介護保険の納付が必要ありません。
- 海外在住の人
- 適用除外施設(身体障害者療養施設など)に入所している人
- 在留資格が3か月未満の外国人
海外移住している人の社会保険については以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
今回は介護保険料の納付について解説しました。
介護保険はいまの要支援者や要介護者を守るための制度ですが、また同時に、将来の自分の介護生活を支えるための制度でもあります。
自分や家族が安心して介護を受けられる未来のために、いまの私たちがきちんと介護保険料を支払い、お互いを支え合っていきましょう。