- 社会保険制度は日本在住の人全員が相互扶助しあうセーフティネット
- 健康保険・介護保険・年金保険・雇用保険・労災に大別される
- 無申請で受けられる恩恵と要申請の恩恵があるので注意
サラリーマンが毎月もらう給与からは、社会保険の保険料が控除されています。
給与明細を確認すれば「社会健康保険」「厚生年金」などの名目で給与額から差し引かれているのが確認できるでしょう。
お給料が減ってしまうので、腹立たしく思っている人もいるかもしれませんね。
ですが、この社会保険は社会にとって大切な制度であるだけでなく、あなた自身の今と未来を守る大切な制度です。
また、自営業やフリーランス、果ては無職の人であっても、広義の意味では社会保険制度に加入しています。
社会保険とは日本の国民すべてが何らかの形で加入し、お互いに助け合うための制度なのです。
今回は、私たちの基本的な生活を守るセーフティネットの社会保険制度について、わかりやすく解説します。
社会保険制度とは
まず最初に「社会保険とは何か」の概要を改めて確認しましょう。
社会保険制度は、国民が相互に助けあう「相互扶助(そうごふじょ)」の理念により設けられたシステムです。
生まれた瞬間から死に至るまで、生涯にわたって国民の生活を支えています。
対象者は日本に居住している全ての人です。日本人だけでなく日本で働いている外国人も、日本の社会保険制度に加入することができます。
「社会保険」と聞くと企業に勤めているサラリーマンだけの制度のような気もしますが、実は国民年金や国民健康保険も、広い意味では社会保険制度の一種です。
日本にいるすべての人には制度の恩恵を受ける権利があり、その代わりに保険料の支払い義務もあります。
社会保険制度の種類
それでは、社会保険制度には具体的にどんな種類があるかを確認しましょう。
種類によって、会社員だけが加入できる保険と、会社員以外の人も加入する保険があります。
対象者の状況によって保険の名称や支払い方法も変わってきますので、少しわかりづらいですね。
今回は社会保険の種類をひとつずつ、わかりやすく説明していきます。
健康保険
健康保険とは、加入者がケガや病気をしたり、出産、あるいは死亡したときにかかる費用を負担する医療保険です。
会社に勤めている人は社会健康保険、それ以外の人は国民健康保険に加入します。
保険証を持たずに病院に行くと「診療代は全額負担です」と言われますよね。これは、健康保険証を提示することで、診療費をもともと自己負担額のみに差し引いているからです。
健康保険の自己負担割合は、加入者の収入に応じて1割~3割負担となります。
入院や手術などの高額な治療を受ける際には、特に健康保険のありがたさが身に染みますね。
また、出産育児一時金や高額療養費など、医療費が一定金額を超えた場合には返還を受けられる制度もあります。
介護保険
介護保険は、2000年に創設された比較的新しい社会保険制度です。
家族の介護は、かつては各々の家庭内で行われていましたが、日本の少子高齢化が進んだことで家庭の負担が増えてきました。
そこで、社会全体で高齢者の介護を支えることを目的として、介護保険が作られました。
介護保険は加入者の年齢により第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳~65歳未満)に分けられ、主に第1号被保険者が受給対象です。
年金保険
年金保険は、会社勤めの人が加入している厚生年金と、それ以外の人が加入する国民年金保険に分けられます。
どちらも高齢者や障がい者、寡婦などの理由により収入が途絶えてしまった場合の金銭的な保障を行うためのシステムです。
すべての20歳以上の人は年金保険料の支払い義務があり、老齢年金は原則として65歳から給付が受けられます。
厚生年金の支給開始はかつて60歳でしたが、現在では昭和36年4月2日以降に生まれた男性、昭和41年4月2日以降に生まれた女性は、国民年金と同様65歳に引き上げられています。
不幸にして老齢年金を受給する前に加入者が亡くなってしまった場合には、遺族へ死亡一時金が支給されます。なお、配偶者が寡婦年金を受け取る場合、死亡一時金の支給はありません。
雇用保険
雇用保険とは、会社勤めの労働者、あるいは会社に入って仕事をしたい人を支援するためのシステムです。
一番よく知られているのは失業保険でしょう。失業保険とは正確には一般求職者給付と言い、労働者が働けなくなった際の収入を一定期間保障するものです。
仕事をしたい人に求人情報を紹介するハローワークも、雇用保険制度により設けられています。
首尾よく会社に入った後も、申請により教育訓練給付や育児休業給付などの支援が受けられます。
近年注目されているのが、家族を介護する人を支援する介護休業制度と介護休暇制度です。
介護休業制度とは家族の介護を理由として会社を休んだ際、通算93日間まで給与額の4割が雇用保険から支給される制度です。
介護休暇制度は厳密には介護保険の範疇ではありませんが、有給休暇以外でも介護のための休暇を年間5日(要介護者2名の場合は年間10日)取得できる制度です。
雇用主が社員の介護を支援するべく、育児・介護休業法により定められています。
労災(労働者災害補償保険)
労災とは、労働者が仕事中や通勤中にケガをした際の治療費負担や社会復帰支援、または業務災害により死亡した際の遺族支援を行う社会保険です。
加入するのは企業などの各事業所です。労働者には労災保険の支払い義務はありません。
労災保険は災害が起こった後でも加入できるので、会社でケガをして「ウチは労災に入っていない」と言われても、臆せずに加入を求めるようにしましょう。
社会保険料の支払い方法
社会保険の支払い方法は、加入者が会社勤めかそうでないかによって異なります。
会社員・会社役員など
会社に勤めているサラリーマンは、毎月の給与額に応じた社会健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の半分が控除されます。
あとの半分は会社が負担して、合算額を会社が納付します。
上記でもご説明したように、労働者災害補償保険(労災)は会社が全額負担しますから、サラリーマンの人の費用負担はありません。
自営業・フリーターなど
自営業やフリーター・無職の人は、国民健康保険料と介護保険料・国民年金保険料を、納付書払いもしくは口座引き落としで支払います。
納付額は収入により異なり、低収入や無収入の人には支払い猶予や免除の相談もできます。
社会保険に加入するメリット
社会保険制度とは日本で暮らしているすべての人が加入すべき制度なので、基本的には加入する・しないを選ぶことはできません。
とはいえ、義務だけあって何のメリットもない制度では、誰も保険料を払わずに制度が破綻してしまいますよね。
社会保険制度に加入していることで受けられるメリットを、社会保険の種類ごとにまとめました。
- 健康保険:病気やケガの際にも安心して治療が受けられる
- 年金保険:老齢等の理由で収入がない人でも生活できる
- 介護保険:介護を必要とする人が適切なサービスを受けられる
- 雇用保険:休業や退職の際でも収入が確保できる
- 労災保険:業務上のケガや病気、死亡時などの補償がある
上記のメリットは、加入者全員が保険料の支払いをしているとともに、国や自治体からの補助があることで受けられているという点も理解しましょう。
社会保険に加入できる人
繰り返し申し上げますが、社会保険制度は日本に居住している人すべてが対象となる制度です。
つまり「社会保険制度に加入できる人はどんな人?」と聞かれたら、その答えは「全員」です。
ですが、狭い意味での社会保険、つまり企業等に属している人が加入する社会保険については、2016年の法改正により若干の変更がありました。
2017年4月以降は、パート・アルバイトの社会保険への加入対象が「週20時間以上」に変更されています。
改正前は「週30時間以上」でしたので、これによりパートタイマーの社会保険加入が大幅に増加したことになります。
参考
パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。政府広報オンライン
フリーターでも将来受け取れる年金額が増える、嬉しい法改正ですね。
加入手続きの方法
企業等の社会保険に加入する際には、手続きは企業側が行ないます。
加入者が手続きを行なう必要はありません。
ただし、会社の社会保険に入って国民健康保険・国民年金を脱退する際の資格喪失手続きは自分で行なう必要がありますのでご注意ください。
社会保険への加入義務がある事業所とは
加入者にとってはさまざまなメリットがある社会保険制度ですが、社会保険料を半額負担する企業側にしてみたらどうでしょうか。
個人としてはともかく、法人としては会社が社会保険に入るメリットは特にありませんから、中には社会保険の加入逃れをしている会社もあります。
会社が社会保険に加入していないと、社員が将来受け取れる年金額が減ってしまい、雇用保険にも加入できません。
そこで厚生労働省では、以下に該当する企業に対して社会保険の強制適用を義務付けています。
- 一定の事業を行い、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所
- 常時従業員を使用する国・地方公共団体又は法人の事業所
- 船員法の船員として、船舶所有者の使用者が乗り組む船舶
上記2.に関しては、社員が社長ひとりだけの、いわゆる一人会社(いちにんかいしゃ)も対象に含まれます。
また、上記の強制適用事業所に該当しない企業であっても、事業主が厚生労働大臣の認可を受ければ適用事業所になれます。
まとめ
今回は、身近で役に立つ制度でありながら、なかなか理解しづらい社会保険制度について解説しました。
社会保険制度の恩恵は、知らないままに受けているものと、自分で申請しないと受けられないものがあります。
制度をよく理解し、社会保険制度によって得られるメリットを確認しておくことが重要です。
必要な場合は専門家のアドバイスを受けて、本来受けられるべき利益を失わないように心がけましょう。
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