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成年後見制度(せいねんこうけんせいど)がひどいって本当?制度の成り立ちや費用、利用しない方法までわかりやすく解説

この記事を書いた人
臼井 貴紀 Usui Kiki

Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んだり、1日訪問看護ステーションに密着するなど、徹底的な現場主義タイプ。日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。 ▼保有資格 終活カウンセラー FP エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座修了

この記事のサマリ
  • 成年後見制度は、判断能力が衰えた人を守る制度
  • 後見制度には「法定後見」と「任意後見」がある
  • 「法定後見」は家庭裁判所での手続きが必要
  • 誰を後見人にするかでトラブルになることも…
  • 後見制度にはメリットとデメリットがあるので注意しましょう

成年後見制度」って、時々聞く言葉だけど、正直誰のために何をする制度なのか分かっていない…。

そんな方も多いでしょう。

また、成年後見制度はひどい制度といわれることもありますが、本当にそうなのでしょうか?

しかし、身近にご高齢の方がいる場合、その仕組みを理解しておいて決して損はありません。そこで、今回は成年後見制度について、詳しく説明していきます。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは?

介護される高齢者

なぜ、成年後見制度ができたの?

成年後見制度は、従来「禁治産」とされていた制度を、高齢化社会へ対応するため、また、知的及び精神障害者の福祉を図るために、本人の利益の保護を目的とした内容に改めたものです。

誰のための制度なの?

認知症や精神障害などが原因で判断能力が不十分となり、自分での意思決定が困難な人(被後見人)のための制度です。

本人の代わりに選ばれた後見人が財産管理や法律行為を行い、被後見人の財産や生活を守ります。

しかし、判断能力があれば自分で法律行為が行えるという理由から、身体障害者には後見制度の適用はありません。

どんな時に成年後見制度が役立つの?

例えば、親が認知症になったからと、子供が代わりに口座を解約しようと銀行に行っても、「子」という身分だけでは銀行は代理行為を認めてくれません。

同じように親が施設に入り、その費用を賄うため空き家となった家を売却することも、子が勝手にはできません。さらに判断能力の衰えをよいことに、半ば詐欺のような手段で高価な物を売りつける人間が出てくることもあるでしょう。

これらは形態こそ違え、どれも契約という法律行為です。

後見人は本人に代わって、口座の解約、不動産の売買契約、契約解除して返金してもらうことなどの法律行為を、本人の利益を守るために行うことができるのです。

また、後見人が財産を管理することで、親族の一人が勝手に本人の財産を使い込んでしまう、というようなことを防ぐことができます。

成年後見制度がひどいといわれる理由

成年後見制度は認知機能が衰え、判断能力が不十分な方には必要な制度ですが、一方でひどいと言われることもあります。

その理由としては以下の8つが挙げられます。

  • 利用者数が少なく、高齢者の需要を満たせていない
  • 本人の親族が後見人に選任されないことが多い
  • 任意後見制度の利用率が低く、本人の意思が尊重されない
  • 後見人による不祥事が絶えず、被害額が大きい
  • 成年後見人に対して報酬が発生する
  • 手続きに手間と費用が掛かる
  • 親族間のトラブルになる可能性がある
  • 相続税対策ができない

成年後見制度の種類

成年後見制度には2つの種類があります。法定後見制度任意後見制度です。
それぞれの制度の違いを説明します。

法定後見制度とは?

一言でいうと、「既に判断能力が衰えている方のための制度」です。

本人の配偶者や近い親族(四親等内)などが家庭裁判所の後見係に申立てをし、審判を経て後見の開始と後見人を誰にするかが決定されます。

任意後見制度とは?

こちらは、「現在判断能力のある方が、将来に備えるための制度」です。

本人が自分の後見人となってくれる人を選び、当事者同士で契約を結びます。任意後見契約は大切な契約であり、当事者の意思確認が必要なことなどから、公正証書で作成しなければなりません。

成年後見人・保佐人・補助人とは?

地域包括支援センターの運営体制

後見の種類は3つ

ここまで後見人と言ってきましたが、正式には後見人「等」と言い、被後見人の判断能力の程度によって後見・保佐・補助の3つに分かれます。

  1. 後見は、判断能力が「ない」とされる方を対象とする
  2. 保佐は、判断能力が「著しく不十分」な方を対象とする
  3. 補助は、判断能力が「不十分」な方を対象とする

各対象者を保護する者は、それぞれ成年後見人・保佐人・補助人と呼ばれますが、今回はこれらをまとめて「後見人」と表することにします。

どんな役割なの?

いずれの後見人も、被後見人である本人の心身状態及び生活の状況に配慮する「身上配慮義務と、後見人が客観的に要求される程度の「善管注意義務が課されます。

客観的にというのは、後見人が弁護士などの法律の専門家であれば、親族が後見人の場合と比べて求められる注意義務のレベルが上がるだろうということです。

与えられる法的権限は?

後見人の場合、被後見人に判断能力はないので、後見人が単独で本人の財産に関するすべての法律行為や財産上の行為を行えます。不動産売買などの契約行為や契約の取消、また本人に代わって遺産分割協議書へ署名捺印することなどもできます。

保佐人も被後見人の代理として法律行為を行えますが、その内容は家庭裁判所の審判で与えられたものに限定されます。また、重要な財産上の行為を被後見人が行う時には保佐人の同意が必要で、同意なしにされた行為は保佐人が取り消すことができます。

補助人は、財産上、法律上の行為につき、保佐人よりもさらに限定的な範囲で行います。

誰が後見人になるの?

誰が後見人となるかについて、申告者は候補人をあげることができます

しかし裁判所の調査で候補人が後見人としてふさわしくないとされた場合、弁護士などの専門職後見人などが選任されることになります。

後見人となった者は後見事務の計画書や財産目録などを家庭裁判所に提出し、それらの資料に基づいた報告書も年に数度提出します。きちんと後見事務を行っているかどうかを家庭裁判所が監督していくのです。

なお、家庭裁判所と後見人の間に立って後見人の事務を監督する「後見監督人」が別途選任される場合が多いです。

成年後見制度利用までの流れ

法定後見の契約手続きとその後

法定後見は本人の判断能力に既に衰えがある場合に開始するため、個人間の契約によることができず、必ず家庭裁判所に後見開始の申立てをしなければなりません。

後見が開始されるまでの流れは以下のようになります。

STEP.1
手続きの相談
本人が住む地域を管轄している家庭裁判所の後見係に行き、まずは手続きの相談をします。

裁判所では申立ての手引書や、必要書類一式などをもらえます。
これらの書類はホームページなどでダウンロードできる場合もありますが、記載の仕方や今後の流れの説明など分かりづらいことが多いので、なるべく直接裁判所へ相談に行くことをお勧めします。

STEP.2
申立て
手続書類一式を揃え、家庭裁判所後見係に提出します。

裁判所によっては提出に対して予約が必要なところもあるので、事前に確認しておきましょう。

STEP.3
調査や鑑定
家庭裁判所が審理に入るためには、申立て書類以外にも必要な情報がいくつかあるので、そのための調査が行われます。

例えば本人の判断能力がどの程度かについての精神鑑定が必要ですし、可能であれば家庭裁判所調査官が本人と面会して聞き取り調査を行うこともします。
また、申立者以外の本人の親族に対して申立ての内容や後見人候補者等を伝え、意向を確認します。

STEP.4
審理
STEP.2とSTEP.3で得られた内容や調査結果を裁判所が総合的に検討していきます。
STEP.5
審判決定・後見開始
後見等が開始されるか、またどのような内容か、そして開始される場合誰が後見人となるかが決定され、その後2週間を経て抗告などがなければ審判が確定します。

審判決定によりようやく後見が開始されますが、STEP.2からSTEP.5までにかかる期間は、少なくとも2~3か月みておいた方がよいでしょう。

また、被後見人である本人が死亡すると後見は終了します。精神障害の場合、症状が良くなり、本人の判断能力が回復して後見が終了することもあります。

後見人が自分の事情で途中辞任することはできません
どうしても続けられない事情がある時は、家庭裁判所に辞任許可の申立てをすることになります。

任意後見の契約手続きとその後

一方、任意後見契約については、委任する本人と、受任する後見人予定者で話がまとまればあとは公正証書を作成すれば取り敢えず終了です。

ただし以下の点については必ず定め、契約書に明記しておかなければなりません。

  • 誰が任意後見受任者となるか
  • 報酬額(月額が一般的)
  • どんな行為に関して代理権を与えるのか

公証人は契約調印当日に当事者の意思を確認し、内容を読み聞かせて問題がなければ公正証書を完成させます。

契約締結後、本人の判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に「任意後見監督人の申立て」をします。本人や親族以外に、後見受任者も申立てができます。

任意後見監督人が選任されれば契約通りの代理行為を後見受任者が行えるようになります。監督人は後見人の事務を監督するため面談や報告書を求めたり、家庭裁判所に定期的な報告をするなどの職務を行います。

任意後見契約の類型

任意後見契約はその内容により主に3つの類型があります。

No. タイプ 概要
1 本来型 本人の判断能力がやや低下しているが、意思能力がある時点で契約し、直ちに監督人選任の申立てをして後見事務を始めるタイプです。
2 即効型 契約時点では判断能力十分だった本人が、その後判断能力不十分となった時点で監督人選任を申立て、後見事務を始めるタイプです。
3 移行型 契約後、本人の判断能力が低下するまでの期間も、本人の財産管理などを受任者が行います。本人が独居者などの場合、受任者が本人の判断能力定期的にチェックできるのでいざという時にスムーズに後見に移行できます。後見までの行為は事務委任契約となります。見守り契約とも呼ばれます。

以上の類型のうち本来型は、契約時の本人の判断能力が申立て時に問題になって、手続がスムーズにいかない恐れがあるので注意が必要です。即効型移行型のどちらにするかは、本人の環境などに応じて話し合って決めればよいでしょう。

成年後見制度利用にかかる費用

お金イメージ

法定後見開始までにかかる費用

法定後見制度の申立てには書類取得費用と申立て費用がかかります。

書類は市区町村役場で取得する本人や申立人、後見人候補者の戸籍謄本や住民票、法務局で出してもらう本人などの「登記されていないことの証明書」などがあり、書類取得費用はそれぞれ数百円程度かかります。

申立て費用は審判や登記の手数料、郵送費の予納などです。家庭裁判所によって異なる場合がありますが、合せて1件につき1万円前後です。

もう一つ、申立てにかかる重要な費用が鑑定費用です。
本人の判断能力がどの程度衰えてきているのかを医師が判断しなければなりません。
金額は鑑定する医師が指定しますが、5万円~10万円くらいが相場のようです。ただし、本人が植物状態で鑑定不能な場合や、補助の申立ての場合は鑑定を行いません。

さらにこれらの手続きの代行を弁護士などの専門家に依頼した場合、報酬が別途かかります。

任意後見開始までにかかる費用

予め後見受任者と契約をしておくため、まず必要なのが公正証書作成費用です。

作成する内容によって公証役場の手数料は変わってきますが、先ほど説明した「移行型」の場合だと4万円~7万円ほどになります。この場合も専門家に頼むと別途報酬が必要です。

その後、実際に後見を開始する際に、書類取得や申立てに費用がかかるのは法定後見の場合と同じです。
ただし、任意後見監督人選任の場合、鑑定は不要で、医師の診断書があれば足ります。

成年後見人の報酬

①法定後見の場合

月額 2万円が目安とされています。

ただし、管理する財産の額が多いとそれだけ業務が大変になるので、その分報酬額も増加します。後見監督人への報酬も払わなくてはなりません。後見人よりやや安めの月額1~2万円が目安となります。

②任意後見の場合

後見人への報酬額は契約で自由に決められます

極端な話、無償でも成立します。一方、後見監督人は家庭裁判所が決定するので、報酬額は法定後見の場合と同じです。

成年後見制度に関する問題点

専門職後見人や成年後見監督人をめぐる問題

後見事務は財産管理や法律行為の代理など、専門知識が必要とされることや、親族が後見人となった場合の不正を防ぐ観点から、親族よりも法律の専門家が後見人となる、いわゆる専門職後見人が望ましいというのがこれまでの傾向でした。

しかし、専門家であっても管理財産を横領する事件が起きることや、そもそも後見制度の利用自体が低迷していることなどから、最高裁判所は2019年3月に、「身近に後見人としてふさわしい親族がいれば、その者が後見人となることが望ましい」との考え方を表明したのです。

この方針転換が今後後見制度の利用にどう影響を与えるかはまだ分かりませんが、制度利用が低迷している一因には後見監督人をめぐる問題もあります。

確かに後見事務の監督は必要な行為なのですが、親族が後見人の場合、自分は公正に業務をしているのに疑われているようで不快だったり、ただ業務報告を受けるだけなのに報酬が高すぎる、との不満が出たりすることもあるようです。

柔軟な財産の運用ができなくなる?

後見人は被後見人の不利益とならないように財産を管理しなければなりません。

そのため、相続税対策のための財産運用行為などができなくなる場合があります

たとえば、年間110万円の基礎控除枠内での親族への贈与は、被後見人の財産を「減らす」行為なのでできません。いずれ相続する者ではなく、本人の現実の財産を守らなければならないのです。ことに親族が後見人の場合はジレンマに陥るかもしれません。

成年後見制度における相続放棄で気をつけること

成年後見人制度を利用した相続放棄の注意点について説明します。

成年後見人が選択されている場合

成年後見人は、原則として、家庭裁判所の許可を得ることなく、相続放棄の手続きを後見人(本人)のために申し立てることができます。

ですが、被相続人に多くの遺産があるにもかかわらず、相続放棄をしてしまった場合は、年に1回の成年後見人の家庭裁判所への定期報告の際、その旨を報告する必要があります。また、被相続人の遺産の概要についても報告を求められる可能性があります。

遺産が十分あるのに相続放棄をすると、成年後見人として不適格とみなされ、解任されるかもしれません。

新しい成年後見人が就任したときに、解任された成年後見人に対して、本来得られた遺産を損害賠償として請求してくる可能性も考えられます。

また、被後見人と成年後見人の利害が対立している場合(例:被後見人の配偶者がなくなったときに、その子供が成年後見人になっている等)は相続放棄ができません。

被相続人の遺産がないことが明らかな場合も、成年後見人が被後見人に代わって相続放棄をすることはできません。

成年後見人が選択されていない場合

相続放棄は判断能力がない人が自ら行うことが出来ない法手続きであるため、成年後見人を選任した方が問題は少ないでしょう。

しかし、成年後見人が相続の当事者になる場合は特別代理人の選任も必要となるのでご注意ください。

成年後見人は、被後見人(本人)の生涯、財産を管理するので、成年後見人を誰にすべきかは慎重に考える必要があります。

成年後見制度を利用しない方法

被相続人が既に認知症になっている場合は難しいですが、事前に準備しておけば、将来的に成年後見制度を利用せずに相続に関する問題を回避する方法はあります。

家族信託を活用する

家族信託とは、財産を保有する人がその財産の管理を家族間で信託契約を結び、託すことです。

主に親が保有する財産の管理を子供に任せることが多いです。

判断能力が低下する前に親子間で、家族信託契約を締結することで、子供が親の財産の管理ができます。

また、家族信託は、財産管理の自由度が高いため、財産を守るだけではなく不動産を購入したりと財産を自由に運用することができます。

生前贈与を活用する

生前贈与とは、財産を持っている人が生きているうちに財産を継続させる手続きです。

生前贈与は財産の所有権自体が親から子供に移せるので、親が判断能力が低下してしまったとしても、子供が自分の意思で自由に財産の運用、処分をすることができます。

しかし、年間110万円を超える贈与を行った場合には、原則贈与を受けた側に贈与税がかかるので、控除制度について調べておく必要があります。

贈与税について以下の記事でより詳しく説明しています。合わせて参考にしてください。

まとめ

現在の成年後見制度は開始が2000年と比較的新しく、まだ一般社会に浸透しているとはいえません。

今後の課題が多いことも確かです。しかし、高齢化社会が進む中、認知症の方がトラブルや詐欺被害に巻き込まれないよう、また万一の場合適切な処理が可能となる制度でもあります。

成年後見制度は判断能力が不十分な人の財産と権利を守る制度 です。

そのメリット・デメリットを踏まえ、いざという時のためにしっかり知識を得ておきましょう。