- 認知症が一気に進む原因は脳の刺激不足・ストレス・環境の変化など
- 進行しやすい認知症の種類やその人の性格がある
- 認知症の進行スピードを遅らせる対策を4つ紹介
- 認知症が一気に進んだら要介護認定の区分変更申請した方が良い
認知症は一般的に、ゆるやかに進行していくと言われています。
ですが稀に、一気に症状が進んでしまう可能性もあります。
今回は認知症が一気に進む原因とその影響を解説し、認知症になった人が進行を少しでも遅らせるためにできる対策をご紹介します。
認知症はいろいろな原因で進行スピードが変わる
認知症の進行スピードには個人差があります。
認知症になった方が置かれている環境や生活スタイルによって進みかたが変わるため、他の人と比べて進行が早い・遅いの比較はできません。
また認知症の種類によって、出現する症状もそれぞれ異なります。認知症に関する基本的な知識を身につけたい方は以下の記事なども参考にしてください。
認知症が一気に進む5つの原因
以下からは、認知症が一気に進む原因を5つ説明します。
認知症になった方が以下のような生活をしていると、症状が一気に進む可能性があるため注意してください。
脳の刺激不足
運動をしないと筋肉が衰えるように、脳の機能も使わないとどんどん衰えます。
たとえ認知症になったからといって、家の中でボンヤリとテレビを観ているだけの生活では脳に対する刺激が不足し、認知症が一気に進む原因になってしまいます、
生活習慣の乱れ
高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかると、脳への血流が悪くなり脳細胞の劣化が進みます。
また睡眠リズムが狂ったり、栄養バランスが悪い食事習慣も認知症が一気に進む原因となります。認知症が進んだ人は動く意欲が低下してしまいますが、積極的に外出して動く機会を作らないと眠気や食欲もなくなり、認知症が一気に進む可能性が高まります。
ストレス
ストレスも認知症が一気に進む原因となります。
持続的にストレスにさらされると、脳内で血管内皮増殖因子(VEGF)というタンパク質が増加して、脳内の炎症を起こす炎症性サイトカインが発現します。また脳細胞のつながりも弱くなり、脳機能の低下が促進されます。
画像引用:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター|持続的なストレスによって血液脳関門の機能が低下する新たなメカニズムを発見 ~うつ病などのストレス性精神疾患の新たな治療法の開発へ~
また過度なストレスによってコルチゾールというホルモンも分泌されます。コルチゾールは別名ストレスホルモンとも呼ばれ、多量に分泌されると記憶力や注意力の低下や感情コントロールができなくなる恐れがありため、認知症にも悪影響を与えます。
急激な環境変化
親の認知症が判明し、介護をするために認知症の親を自分の家に引き取って同居しようかと考えている方がいるかもしれません。
しかし引っ越しなどの急激な環境の変化は、認知症が一気に進む原因にもなりかねないため注意が必要です。
環境の変化は上記でも説明したストレスの原因になるため、認知症にも影響を与えてしまいます。また引っ越しをすると自宅内のモノや近所の様子もこれまでと変わり、認知機能が低下している人にとっては混乱の元となります。
過剰なサポート
認知症になった方はできないことが増えてきますが、だからといって周囲が過剰にサポートしすぎると、それもまた認知症が一気に進む原因になります。
周りがなんでもかんでも先回りして手助けしてしまうと、認知症の人は自分で考える機会が減ってしまいます。そうすると脳への刺激も少なくなり、さらに自分でできることができなくなるという悪循環です。
また周囲はサポートしているつもりでも、認知症の本人にとっては「仕事を奪われた」と感じるかもしれません。自信喪失したストレスが認知症をさらに悪化させます。
認知症以外の病気
認知症の方の生活に気を付けていても、認知症以外の身体の病気など仕方ない原因で認知症が一気に進むこともあり得ます。
認知症の方が脳腫瘍や甲状腺機能低下症などの病気になったために、もともと低下していた認知機能がさらに低下して認知症の症状が進むかもしれません。
また直接的には認知機能を低下させる病気でないとしても、身体の病気やケガで入院や自宅療養を余儀なくされ、上記で説明したようなストレスや環境の変化によって認知症が進むことも考えられます。
一気に進みやすい認知症の種類
認知症の種類によっても、一気に症状が進みやすい認知症と、比較的進行がゆるやかな認知症があります。
日本の認知症発症者のほぼ8割を占める三大認知症の一般的な進行スピードは以下表のとおりです。
アルツハイマー型認知症 | 長い時間をかけてゆるやかに進行する |
脳血管性認知症 | 急に発症し一気に進む可能性がある |
レビー小体型認知症 | 進行はゆるやかだが症状の波は大きい |
認知症になりやすい・進みやすい方の口癖
ネガティブな性格の人は認知症になりやすく、認知症になった後でも進行しやすい傾向にあります。
東フィンランド大学の研究によれば、ネガティブで皮肉屋の方は認知症にかかるリスクが皮肉屋でない方よりも3倍も高かったそうです。
参考
皮肉屋は認知症になりやすい―フィンランド研究Medical Tribune
《認知症になりやすい・進みやすい方の口癖》
・自分はもうダメだ
・死にたい
・昔は良かった
・どうせできないんだから
・社会が悪い
・誰も信用できない
認知症が一気に進んだときの顔つき
顔の美醜や造作は認知症の進行度合いを左右しませんが、認知症が一気に進んだ人の顔つきには特徴的な変化が生じます。
認知症が一気に進むと会話をしたり笑ったりする機会が減るため、顔の表情筋が衰えて眼瞼が下がり、口角も下がってきます。
顔全体が垂れ下がり、ドンヨリとして覇気がなくなったきたと感じたら、認知症の進行を疑いましょう。
認知症が一気に進むと起こる問題
診断を受けたときにはまだ軽症だった認知症も、症状が一気に進むといろいろな問題が発生してきます。
まだ軽症だったときにはできていた認知症の方の一人暮らしは症状が一気に進むと難しくなり、家族の同居もしくは施設入所の検討が必要になります。家族が同居していても、認知症が進むと徘徊の危険があり、家族だけの介護では限界があります。
徘徊の危険性については以下の記事をご覧ください。
また認知症の診断がおりた方でも一定の判断能力があれば遺言書が書けますが、重度の認知症になってから書いた遺言書は無効です。認知症が一気に進んだことで、大切な遺産を適切な相手に譲ることができなくなるかもしれません。
認知症を一気に進ませないための対策
それでは、認知症になっても進行スピードをできるだけ遅らせるためにはどうしたら良いのでしょうか。
ここからは認知症を一気に進ませないための対策を4つご紹介します。
生活習慣の改善
生活習慣の乱れが認知症を進行させる原因になるとは、上記で説明したとおりです。
認知症になった後もできるだけ規則正しい生活を送り、睡眠リズムと栄養バランスを整えましょう。
脳トレゲーム
脳トレなどの認知トレーニングをすると、脳に刺激を与えられ脳の働きが活性化します。
ただし、脳トレ自体には認知症を治す効果はありません。それよりも期待したい効果は、脳トレゲームを誰かと行うことによるコミュニケーションの機会作りと「できた」という達成感です。
認知症の人にはゲーム感覚でできるような簡単で楽しい脳トレをさせ、できたことを褒めて自己肯定感を高めましょう、
体操
運動は全身の血流を良くして、脳に新鮮な酸素が送れる効果があります。
ですが認知症の方は健康な高齢者のようにジョギングやウォーキングで気軽に外出することが難しいため、自宅内でできる体操が適切です。
脳トレと同じように体操も楽しくゲーム感覚でできるように工夫をし、転倒しないよう充分に配慮して行いましょう。
高齢者が安全に楽しくできる体操は以下の記事でご紹介しています。
薬物治療
最近では、軽度のアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の進行を抑制する治療薬が保険適用薬として認められています。
認知症の種類によっては、認知症を一気に進ませないための治療薬も有効です。
認知症が一気に進んだかもしれないと思ったら
認知症の方の様子を見ていて、これまでと違う症状が出ている、以前よりも状態が変わったと感じたら、できるだけ早くかかりつけ医を受診してください。
また、認知症の進行によって介護の必要性がより高まったら、介護保険を使ってより適切な介護が受けられるように要介護度の見直しが必要です。
要介護認定の有効期間は原則1年間ですが、認定後に状態が悪化したときには区分変更を申請することができます。以下の記事を参考に自治体窓口へ申請してください。
まとめ
今回は認知症が一気に進む原因と、認知症の進行をできるだけ抑える対策について解説しました。
放っておけば認知症はどんどん進行します。今からできる対策をして少しでも進行をゆるやかにする努力をしましょう。