- 高額医療費制度は医療費が高額になった場合に負担金が戻ってくる制度
- 自己負担の上限額は、年齢や所得・家族構成などで決まる
- 事前申請していなくても、2年以内に申請すれば払い戻してもらえる
年齢を重ねるにつれて、医療機関を利用する機会は多くなりますよね? 医療保険を使えるとはいえ、自己負担額はバカになりません。
特に、大きな病気やケガをしたときには、負担額が大幅に増えてしまいます。「うちの家計で高い医療費を払えるかしら…」と心配になる人も多いのではないでしょうか? いざと言うときに、「こんな高額とても払えない!」という事態になったら困りますよね?
そんなとき使える心強いサポートが、高額療養費制度(高額医療費制度)なのです。ただし、支給を受けるにはいくつか条件があり、給付額も条件によって変動します。
制度のしくみを正しく理解すれば、これからの生活に「安心」が1つ増えますよ。ぜひこの機会に知っておいてくださいね。
目次
高額療養費制度(高額医療費支給制度)とは
厚生労働省のホームページによると、高額療養費制度とは以下のように定められています。
医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」(こうがくりょうようひせいど)があります。
私たちの支払う医療費の自己負担には上限があり、それを超えた場合には、医療保険が面倒を見てくれるのです。
また、限度額は年齢や所得に応じて決められるので、家計に合ったサポートが受けられるのもうれしいですね。
高額療養費制度(高額医療費制度)支給の条件
高額療養費制度(高額医療費制度)を利用するには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
- 同じ月(1日から月末まで)にかかった医療費自己負担額の合計が上限額を超えていること。
- 各医療機関や薬局で支払った自己負担額が、それぞれ2万1千円以上であること。(69歳以下の場合)
つまり、1.の通り、自己負担額はひと月分を合算することになっており、月をまたいで合算することはできないのですね。
また69歳以下なら、1人の患者さんが1つの医療機関で支払った1ヶ月分の自己負担額が2万1千円以上である場合にだけ、合算が可能となります。
自己負担額の上限は人それぞれ
高額療養費の支給額を決める「自己負担限度額」は、年齢や所得に応じて決められます。
いくつかの条件を満たせば、さらに負担額を軽減できる場合があるので、チェックしてみましょう。
69歳以下の方の区分
69歳以下の方の自己負担限度額は、所得によって5区分に分かれます。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
---|---|---|
ア | 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:年間所得※901万円超 |
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:年間所得600万~901万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
ウ | 年収約370~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:年間所得210万~600万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
エ | ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:年間所得210万円以下 |
57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
厚生労働省公式サイトより
※年間所得とは、前年の総所得から住民税の基礎控除額33万円を引いた額です。
70歳以上の区分
70歳以上の方の区分には、外来だけの限度額(個人ごと)も定められています。69歳以下の区分より、さらに給付が受けやすくなっているのですね。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | 外来(個人ごと) | |
---|---|---|---|
現 役 並 み |
年収約1,160万円~ 標報83万円以上/課税所得690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000)×1% | 外来の限度額なし |
年収約770万円~約1,160万円 標報53万円以上/課税所得380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約370万円~約770万円 標報28万円以上/課税所得145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% | ||
一 般 |
年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満等 |
57,600円 | 18,000円 (年14万4千円) |
住民税 非課税等 |
Ⅱ 住民税非課税世帯 | 24,600円 | 8,000円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) |
15,000円 |
自己負担がさらに軽減される場合
年齢と所得による自己負担額の他に、一定の条件がそろえば、さらに負担額が軽減される場合があります。
①「世帯合算」ができる場合
同じ医療保険に加入する同一世帯家族であれば、1ヶ月の自己負担額を合算できます。自己負担の上限に達しやすくなるため、給付が受けやすくなりますよ。
さらに、健康保険に加入している会社員とその扶養家族であれば、お互いの住所が違っても合算可能です。
別の区分の方(69歳以下と70歳以上)が混ざっている家族の場合でも、条件を満たせば世帯合算することができます。支給額の計算は少しややこしくなりますが、以下の通りです。
- 70歳以上の方について、個人ごとに外来の医療費自己負担額と限度額の差額を支給。
- 70歳以上の方の入院分の医療費自己負担額と、1.でもまだ残った自己負担額との合計額を出し、その額と70歳以上の方の世帯における自己負担限度額との差額を支給。
- 69歳以下の方の医療費自己負担額と、2.でもまだ残った自己負担額を合計した、世帯全体の自己負担額に、世帯全体における負担の上限額を当てはめ、差額を支給。
ただし、同じ世帯の家族でも、別の医療保険の加入者では世帯合算ができません。例えば、①「働く家族同士が別の健康保険に加入している」場合や、②「健康保険の被保険者と後期高齢者医療制度の被保険者の世帯」の場合などは世帯合算の対象外ですので、注意しましょう。
②高額療養費の適応が「多数回」になる場合
医療費が自己負担上限額を超える月が、直近の1年以内に3回以上(多数回)になる場合は、4回目からさらに限度額が下がります。
高額の医療費を頻繁に支払う負担が軽減され、給付を受けるハードルも下がるのですね。
ただし、条件を満たさないと「多数回該当」にカウントされないので、以下を確認しましょう。
- 同一人の支給回数だけカウントできる制度なので、世帯内で複数人の支給回数を合わせることはできません。
- 国保から健康保険組合・けんぽなど医療保険を変更した場合、別の保険による高額療養費支給回数を合わせることはできません。
- 他の都道府県に引っ越した場合、引っ越しする前と後の該当回数を合わせることはできません。
- 70歳以上に適用される、外来の高額療養費を支給した回数もカウントされません。
③特定疾病の特例措置
血友病・人工透析・HIVといった特に高額な治療を長期的に継続している場合に、この特例措置が適用されます。原則として、医療費の自己負担限度額は月額1万円です。
高額療養費制度の申請方法
70歳以上で年収156万~約370万円の方は、「高齢受給者証」か「後期高齢者医療被保険者証」を提示すれば、高額療養費制度(高額医療費制度)を受けられます。
それ以外の方は、高額療養費支給資格を証明する「限度額適用認定証」の発行を申請することで、支給が受けられますよ。
申請方法や必要書類は、加入している公的医療保険によって違います。自治体や組合によっては、医療機関の領収書の添付が必要な場合もありますので、確認しましょう。
また、加入している健康保険によっては、支給資格が発生したら知らせてくれるところ、自動的に高額療養費を振り込んでくれるところもあるそうです。
申請する際は、ご自身の市区町村や健康保険組合の担当窓口に問い合わせてみましょう。
事前に申請する場合
医療費が高額になることが事前にわかっている場合は、前もって申請し、「限度額適用認定証」を手に入れておくのがおすすめです。医療機関等の窓口で支払う際に、はじめから高額療養費を差し引いた金額で請求してもらえるので、とても便利ですよ。
- 加入している医療保険の窓口に、「限度額適用認定証」発行の申請書類を提出する。
- 申請が認められると、「限度額適用認定証」が交付される。
- 医療機関等で医療費を支払う際に、保険証とともに「限度額適用認定証」を提示し、区分に応じた支払いをする。
医療費を支払った後で申請する場合
- 医療機関等で医療費を支払う際、通常の自己負担分を支払う。
- 加入している医療保険に、高額療養費制度の申請をする。
- 申請が認められれば、3ヶ月前後で限度額を超えた分が払い戻される。
通常の自己負担を支払った後でも、さかのぼって申請することができますよ。「あの月、上限額を超えていたかも…」と思い当たる場合は、過去の医療費を計算してみましょう。
ただし、高額療養費の申請には時効があります。「診療を受けた月の翌月1日から2年」と定められているんですよ。それを過ぎると支給を受ける権利がなくなるので、充分気をつけましょう。
高額療養費のその他の制度
高額療養費貸付制度
先に医療費を支払い、後で高額療養費制度(高額医療費制度)の申請をした場合、審査のため払い戻しに約3ヶ月以上かかります。そのあいだ、高額な医療費を支払うのが難しい場合もありますよね?
そんなときには、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できる場合があるんですよ。
例えば、協会けんぽの場合、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で借りられるとのことです。
制度の利用条件は、各医療保険によって違います。利用したい方は、各窓口に相談してみましょう。
高額療養費受領委任払制度
高額療養費は、申請してから後日払い戻されるのが基本です。でも、この「高額療養費受領委任払制度」を利用すれば、公的医療保険から医療機関に直接、自己負担超過額を支払ってもらえます。
そのため、窓口で支払うのは自己負担限度額までとなるのです。
ただこの制度は、自治体や保険組合により実施しているかどうかが異なります。各窓口で確認してみましょう。
高額療養費制度を利用するときの注意点
公的医療保険の効かないものは対象外
「自由診療」や「先進医療にかかる費用」などは、通常の医療保険適用外なので、高額療養費制度(高額医療費制度)は利用できません。
また、診療・入院をしなくても日常生活で当たり前に発生する「食費」や「居住費」とみなされる費用も、高額療養費の対象外です。そのため、入院中に出される「食事」や、4名以下の病棟を自分から希望した際の「差額ベッド代」などは除外されます。
医療費控除・ふるさと納税と併用する場合
高額療養費制度(高額医療費制度)と医療費控除・ふるさと納税は、併用が可能です。高額療養費制度を利用した際に医療費控除の対象となる額は、以下のように計算します。
医療費控除の対象 = 〔医療費自己負担分の総額〕ー〔保険金などで補てんされる金額(高額療養費の支給額はここに含まれる)〕ー〔10万円または年間総所得金額5%の金額〕
※国税庁公式サイトより
確定申告をするときには、高額療養費を「保険金などで補填された金額」に忘れず記入しましょう。
注意したいのが、高額療養費を確定申告するタイミングです。高額療養費は医療費を支払った年の確定申告で申請する必要があります。高額療養費の払い戻しが翌年になった場合には、気をつけましょう。
また、ふるさと納税は「ワンストップ特例制度」を利用しない場合、確定申告の必要があります。その際は、医療費控除の申告と一度にまとめて行うようにしましょう。
きちんと理解してしっかり支給を受け取ろう
今回は、高額療養費制度(高額医療費制度)のしくみをご説明しました。
「これ以上は払わなくていい」という医療費の“天井”がわかれば、家計のプランも立てやすいですよね?
それに、今まで自己負担が心配で受診を尻込みしていた方も、この高額療養費制度を知っていれば、もっと安心して医療を受けられるはずです。
ただし、うれしい制度である一方、支給条件が細かくてややこしい側面もあります。本当に支給してもらえるのか、どのくらい支給してもらえるのかなど、不安や疑問を感じる人もいるのではないでしょうか?
さらに、「先進医療もカバーしてくれる保険に入りたい」「もっと手厚く将来に備えたい」と、保険に対する悩みを抱えている人は多いはずです。
そんなときには、ファイナンシャルプランナーに相談するのも有効な選択肢ですよ。お金に関する悩みに、一緒に向き合ってくれるでしょう。

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