【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

高齢者にとって理想的な食事とは|食べやすさ・栄養素・調理方法・姿勢など

母の日のテーブルセッティング

この記事を書いた人
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級

この記事のサマリ
  • 食事は高齢者の生きがいのひとつ
  • 高齢者の咀嚼・嚥下レベルにあわせて食べやすい食品・食べにくい食品がある
  • 安全と健康に配慮した楽しい食事が理想的

高齢になると身体の機能が衰えてくるため、日々の食事にも気をつかう必要が生じてきます。

楽しいはずの食事が苦痛なものとなったり、生命をおびやかす危険な存在になってしまってはいけません。

今回は高齢者の食事について、高齢者にはどのような食事が理想的なのか、高齢者が安全に楽しく食事をするためにはどうしたら良いかを解説します。

口から食べる食事は高齢者の楽しみのひとつ

真っ赤なリンゴを食べようとする女性

多くの高齢者にとって、食事は楽しみのひとつです。

内閣府が高齢者に対して行った意識調査のアンケート結果でも、食事は老後の生きがいランキングの10位以内にランクインしています。

単に栄養補給をするだけであれば点滴でも必要な栄養素はとれますが、それでは高齢者が生きる喜びを失い、QOL(Quality of life/生活の質)の低下を招いてしまいます。

身体機能が低下した高齢者であっても食べやすい食事を工夫するなどして、できる限り口から食べる喜びを続けさせてあげなくてはいけません。

内閣府の意識調査については以下の記事で詳しくまとめています。

食欲不振に陥りやすい高齢者の食事

リンゴを手に物思いにふける高齢者

食事は高齢者にとって楽しみのひとつではありますが、反面、一定の高齢者にとっては苦痛となる場合もあります。

高齢者はさまざまな理由により食欲不振に陥りやすくなります。内臓機能の低下や口腔状態の悪化により食事がしづらくなり、本来楽しいはずの食事がユウウツな習慣になってしまうこともあるのです。

高齢者の日々の食事を用意する人は、できるだけ高齢者が美味しく食べられる食事を提供して、食欲が減退しがちな高齢者の食欲を少しでも増進させる必要があります。

高齢者にとって理想的な食事とは

空の鍋とリボンを巻いたシャモジ

若い人に「理想的な食事とは?」と聞くと、高級な食材をふんだんに使った、豪華でボリュームがあり、お腹いっぱい食べられる食事だと答えるかもしれません。

しかし、高齢者にとって理想的な食事は若い方とは異なります。

高齢者にとって理想的な食事とはどのようなものかを確認しましょう。

噛みやすく飲み込みやすい食事

高齢者は咀嚼能力(噛む力)と嚥下能力(飲み込む力)が衰えるため、普通の食事よりも噛みやすく、飲みこみやすい食事にする必要があります。

また、酢や柑橘などのむせやすい食材も、誤嚥性肺炎を誘発しやすくなるので注意してください。

咀嚼能力や嚥下能力のレベルにあわせた食事の作り方は、以下の記事を参考にしてください。

必要なカロリーがおぎなえる食事

人間の身体は何も運動しなくても、カロリーを消費しています。

必要かつ十分なカロリーを毎日摂取しなければ、身体がやせ細りフレイル(虚弱)を招く原因になります。量が少なくても必要なカロリーがとれるメニューを心がけてください。

日本医師会では、65歳以上で主に静的な生活をしている高齢者に必要なカロリーは、男性2,030 kcal/日、女性では1,566 kcal/日としています。75歳以上の場合は男性1,792 kcal/日、女性では1,414kcal/日としています。

外出や運動をよくしている高齢者は、さらに多くのカロリーが必要となります。以下のWebサイトで年齢と活動レベルにあわせた必要カロリーを調べてみてください。


参考
一日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量日本医師会

必要な栄養素がおぎなえる食事

必要なカロリーはおぎなえても、栄養バランスを考えないハイカロリーな食事では、やはり健康的な身体は維持できません。

以下に挙げる栄養素は、特に高齢者に不足しがちな栄養素です。食事メニューを考える際には意識して取りいれるように心がけましょう。

タンパク質 筋肉や皮膚を作る
カルシウム 骨を作る
ビタミン 免疫力を上げる
食物繊維 お腹の調子を整える

楽しい食事

いくら栄養バランスにすぐれた食事でも、楽しく食べられなければ美味しさは半減します。

神戸大学の研究で行った調査では、単身世帯高齢者の93%,家族同居の高齢者の20%が1人きりで食事をとる、いわゆる「孤食」をしていることがわかりました。


参考
高齢者の孤食状況とその要因J-STAGE

孤食は食欲を減退させ、食事量が低下しやすくなります。単身世帯の高齢者では誰かと一緒の食事はなかなか難しいですが、家族と同居している高齢者の場合には、できるだけ食事の時間をあわせて一緒に食事する「共食」の機会を増やした方が良いでしょう。

高齢者が食事するときの理想的な姿勢

高齢者が食事をするときの理想的な姿勢も覚えておきましょう。

子供は「背すじを伸ばして食事」と教えられますが、高齢者は誤嚥性肺炎を防止するために、むしろ背中を少し丸めるようにした姿勢が理想です。

誤嚥性肺炎予防のための食事姿勢

画像引用:埼玉県歯科医師会|誤嚥性肺炎予防のための食事姿勢と口腔健康管理

ベッドに寝たまま食事をする高齢者は、ベッドをできるだけ60度以上に上げる(食事に介助が必要な場合は約30度)、背中などにクッションを入れるなどして角度を調整しましょう。

介護ベッドで食事するときの姿勢

画像引用:埼玉県歯科医師会|誤嚥性肺炎予防のための食事姿勢と口腔健康管理

高齢者が食べやすい食品・食べにくい食品

並んだスープやパスタ、目玉焼きなどの皿

食材や調理方法によって、高齢者が食べやすい食品・食べにくい食品が存在します。

高齢者にはどんな食品が食べやすいか、逆にどんな食品が食べづらいのかを見ていきましょう。

高齢者が食べやすい食品一覧

一般的に高齢者が食べやすいと言われている食品は以下のような食品です。

おかゆ状 ・米かゆ
・パンがゆ
ポタージュ状 ・ポタージュスープ
・シチュー
・カレー(辛味の少ないもの)
ゼリー状 ・煮こごり
・果汁ゼリー
・水ようかん
ミンチ状 ・ハンバーグ
・つみれ
・肉団子
その他柔らかい食品 ・バナナ
・アイスクリーム
・ムース
・プリン
・皮むきトマト
・青菜の葉先

高齢者が食べにくい食品一覧

高齢者にとって食べにくい、あるいは食べると誤嚥などの危険性がある食品は主に以下のような食品です。

食品によっては、調理の仕方を工夫することにより食べやすく加工できる食品があります。食べにくい食品の調理の仕方は後ほどご説明します。

生野菜 ・千切りキャベツ
・レタス
・きゅうり
・セロリ
繊維質の多い食品 ・ゴボウ
・パイナップル
噛み切れない食品 ・皮付きトマト
・海苔
・青菜の根元
酸味の強い食品 ・レモン
・酢の物
スポンジ状 ・凍み豆腐
・がんもどき
サラサラ状 ・お茶漬け

食べにくい食品を食べやすくする調理方法

コックさんの人形

上記で挙げたような食べにくい食品は、以下のような調理をほどこすことで食べやすくできます。

高齢者にいろいろな食材を食べてもらえるよう、調理方法を工夫しましょう。

細かく刻む・すりおろす

繊維の多い野菜や果物は、細かく刻んだりすりおろすと食べやすくなります。

また肉や魚はひき肉・すり身を使ったり、薄く切るなどして食べやすくしましょう。

ゆでてから焼く・煮る

固い食材は一度ゆでてから焼く・煮るなどのひと手間をかけると、普通に焼くだけ、煮ただけの食材よりも柔らかくなります。

柔らかく煮込むために圧力鍋などの便利な調理家電の活用も一案です。

トロミを付ける

パサパサした食材や、ボロボロと崩れやすい食材はマヨネーズやヨーグルトなどで和えるとトロミがついて食べやすくなります。

片栗粉を使ってあんかけにしたり、ゼラチンで柔らかくまとめても良いでしょう。

食品の味を変えずにトロミを付けられるトロミ剤の活用もおすすめです。以下の記事ではおすすめのトロミ剤などもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

高齢者の食事作りにおすすめの調理家電

食事は見た目も大切です。

高齢者が食べやすいようにドロドロにした、見た目に美しくない料理では食べる気も失せてしまいます。

料理の見た目はそのままに、高齢者でも食べやすいように柔らかくできるデリソフターなどの便利な調理家電の使用もおすすめです。

当サイトの代表がデリソフターを開発したギフモ株式会社へ取材したレポート記事も、あわせてご覧ください。

まとめ

今回は高齢者の食事について解説しました。

いつまでも食べる喜びが続けられるよう、安全と見た目、美味しさに配慮した食事作りを行い、高齢者に楽しく食事をとって頂きましょう。