- 高齢者の低栄養は身体的フレイル・サルコペニアを招く
- フレイル予防の食事は「さあにぎやか(に)いただく」を合言葉に
- 各自治体が高齢住民のためにフレイル予防レシピ集を提供している
- 美味しく栄養バランスのとれた食事で心身とも健康に
年をとると、毎日の食事で栄養バランスをとることが難しくなりがちです。
食欲が薄れて量が食べられなくなることに加えて、買い物や調理が面倒で毎日同じメニューばかりの単調な食生活になってしまうと、身体の維持に必要な栄養素が足りなくなってしまいます。
栄養不足は、高齢者のフレイルやサルコペニアを引き起こす原因になります。
今回は高齢者にとって毎日の食事がいかに大切かを説明し、食事でフレイルを予防する方法を解説します。
低栄養はフレイル・サルコペニアの危険因子
フレイルとは老化によって心身が虚弱した状態のことです。またサルコペニアとは、身体の筋肉量がおとろえ筋力が低下した状態を指します。
毎日の食事から十分な栄養素が摂取できないと、低栄養になる可能性があります。低栄養は身体的フレイルやサルコペニアを引き起こす要因となり、握力や歩行速度などが低下して要介護状態に近づきやすくなります。
画像引用:東京都介護予防・フレイル予防ポータル|予防のポイントその1「食べる(栄養)」
若い頃に比べて、高齢になると筋肉量が落ちてきます。フレイルやサルコペニアを予防し、要介護状態にならないためには、若い頃より積極的に必須栄養素を摂取していかなければいけません。
低栄養の危険性については以下の記事でも詳しく解説しています。本記事とあわせて参考にしてください。
毎日の食事からフレイルを予防する
サプリや栄養食ゼリーなどを使えば高齢者に必要な栄養素は摂取できるものの、やはり食事は人生の楽しみのひとつです。
できれば食事から栄養素を摂取し、フレイルを予防する策を考えましょう。
ここからは高齢者がフレイルを予防するための献立作りのポイントを解説します。
合言葉は「さあにぎやか(に)いただく」
毎日の食事を作るときに、どんな栄養を摂取すれば良いかをいちいち考えているとなかなか献立が決まりません。
まずは栄養素を気にせず、いろいろな食品を少しずつ食べることから始めてみましょう。
合言葉は「さあにぎやか(に)いただく」です。
「さあにぎやか(に)いただく」とはロコモチャレンジ!推進協議会が考案した、魚の「さ」、油の「あ」など、食品の頭文字を並べた合言葉です。
以下の「さ」「あ」「に」「ぎ」「や」「か」「い」「た」「だ」「く」を頭文字に持つ食品を毎日食べることで、食べる人の栄養状態を良好に保ちフレイル予防につながると提唱しています。
画像引用:東京都介護予防・フレイル予防ポータル|「食べる」フレイル予防
食材あたりの量は少量ずつでも構いません。10の食材のうち最低でも4つ以上、できれば7つ以上を毎日摂取できるようにしましょう。
1回の食事で主食・主菜・副菜の皿を分ける
上記の合言葉「さあにぎやか(に)いただく」を念頭に置いていても、10種類のどれを食べたかわからなくなるときがあります。
そのような方は、朝昼晩の食事をワンプレートですませるのではなく、主食・主菜・副菜と皿を分けて作るように心がけてみましょう。
画像引用:東京都介護予防・フレイル予防ポータル|予防のポイントその1「食べる(栄養)」
主食・主菜・副菜の皿を分けると、自然といろいろな食品が食卓に並ぶようになります。作り置きおかずや惣菜などもうまく活用して、多品目の食材を食卓に並べるようにしましょう。
高齢者はタンパク質をプラスワン
上記2つの説明は高齢者だけでなく若い方や現役世代でも採り入れていきたい食事作りの方法ですが、高齢者の食事ではもう1点だけ押さえておきたいポイントがあります。
それは、通常の食事にもうひとつだけタンパク質を含んだ食品をプラスワンすることです。
高齢になるとタンパク質の吸収率が下がるため、同じ量のタンパク質を摂取しても身体が受け取れる栄養は少なくなります。そのため高齢者は若い方よりもより多くのタンパク質を摂取する必要があるのです。
厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2020年版)では、健康な65歳以上の方は1日あたり最低でも15%エネルギーのタンパク質を摂取すべきだと報告しています。
15%エネルギーとは、人体のエネルギーを構成するタンパク質・脂質・炭水化物の3つの栄養素のうち、15%をタンパク質が占めている状態です。
食卓に並んだメニューのうち、肉や魚、大豆製品などタンパク質を多く含む食品がどのくらいの割合を占めているか、おおまかにチェックしてみましょう。
タンパク質が足りないと思っても、無理に料理をもう1品作る必要はありません。牛乳を1杯プラスワンしてタンパク質とカルシウムを補いましょう。
各自治体のフレイル予防レシピを紹介
以下からは、日本各地の自治体が在住高齢者の健康維持を目的にホームページで公開しているフレイル予防のレシピ集を紹介します。
神戸市「KOBEフレイル予防簡単レシピ」
「KOBEフレイル予防簡単レシピ」は神戸市役所が市内の食品関連企業と協力して考案した、高齢者のフレイル予防におすすめのレシピ集です。
ホームページ上でメニュー名をクリックすると、レシピ文章とともに動画が表示されます。初めて挑戦するメニューでも動画を観ながら簡単に作れるため、料理が苦手な方でも安心です。
岐阜市「おいしく簡単フレイル予防レシピ集」
岐阜市が提供する「おいしく簡単フレイル予防レシピ集」では、簡単なのにおいしい26種類のレシピを集めています。
それぞれのレシピごとに主菜・副菜の別と、そのレシピで「さあにぎやか(に)いただく」の合言葉のうち何の食材を使っているかが記載してあるため、合言葉達成の手助けにもなります。
「おいしく簡単フレイル予防レシピ集」はホームページ上で公開している他、岐阜市内の各保健所および保健センターで配布しています。
柏市「フレイル予防レシピ集」
柏市の「フレイル予防レシピ集」は、団塊の世代が75歳を迎える2025年までにフレイル予防を推進しようとの目的で開設された「柏フレイル予防プロジェクト2025」の一環で作られたフレイル予防レシピ集です。
普通食・やわらかめ・ゼリー・ペースト状のレシピがあり、高齢者の嚥下機能に合わせた食事作りの手助けになっています。
それぞれのレシピにはタンパク質・脂質・食塩相当量の記載もされているため、食事制限を受けている高齢者でも安心です。
兵庫県「からだ思いレシピ」
「からだ思いレシピ」は兵庫県健康増進課が作成したフレイル予防啓発のレシピ集です。
これまで食事作りをしてこなかった男性でも食事作りに挑戦できるよう、おかずやデザートの作り方だけでなく、ごはんの炊き方から説明がされています。
また「からだ思いレシピ」には上記の合言葉「さあにぎやか(に)いただく」の食品を毎日食べたかどうかがチェックできる一覧表や、主食・主菜・副菜の目安量も掲載されているので、せひ活用してください。
大阪府「かんたんお手軽!低栄養予防レシピ集」
大阪府の守口保健所が作成した「かんたんお手軽!低栄養予防レシピ集」は、料理が苦手という方や、調理の工程をできるだけ簡単にしたい方が参考にしたいレシピ集です。
野菜ジュースや焼き鳥の缶詰など市販の材料をうまく活用し、調味料がほぼ不要のレシピが集められています。
新座市「健康長寿レシピ(動画)」
新座市「健康長寿レシピ(動画)」のページには、フレイル予防のレシピ以外にも高血圧予防のレシピや骨粗しょう症予防のレシピなどが掲載されています。
高齢者はフレイルだけでなく、骨粗しょう症なども予防しなければいけません。それぞれのレシピ動画を参考に、トータルな健康作りに役立ててください。
調理が難しい方は宅食サービスの利用がおすすめ
上記で紹介した各自治体のフレイル予防レシピ集に掲載されているレシピは、どれも比較的簡単に作れるレシピばかりです。
ですが、これまでほとんど料理を作ったことがない方にとっては、簡単なレシピといえどもハードルが高いでしょう。
また認知機能に不安感のある高齢者の場合、火を使う調理は避けた方が無難です。
自分で調理ができない高齢者世帯の毎日の食事には、宅食サービスの利用がおすすめです。以下の記事でも高齢者におすすめの宅食サービスを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は高齢者のフレイル予防のために食事が大切な理由と、簡単なフレイル予防食の作り方について解説しました。
食事は健康維持の目的だけでなく、生きる喜びや楽しみのひとつでもあります。
身体に必要な栄養素を意識しながら、いつまでも美味しく食事が食べられるように健康管理に努めましょう。