- デイサービス・デイケアどちらも介護保険「通所サービス」のひとつ
- デイサービス・デイケアは目的とスタッフが異なる
- デイサービスは通所介護、デイケアは通所リハビリ
- 2つのサービスをあわせ持つ施設も存在する
- 違いを把握して自分に合った介護サービス選びを
デイケアとデイサービスは、どちらも介護サービスの中では「通所サービス」に分類されます。
両方とも高齢者が日常生活を送る上で不便になりがちな点を支援してくれる、在宅介護の頼れる存在です。
しかしデイケアとデイサービスは、どうして名前が違うのでしょうか。
違いがあるのでしょうか。違いがあるとしたら、その違いはいったい何なのでしょうか。
今回は、混同しがちな2つの通所サービス「デイケア」と「デイサービス」について、その違いをまとめました。
デイサービスとデイケアでは利用する目的に違いがある
デイケアとデイサービスは、名称は似ていますが違う内容の介護サービスです。
何が違うのかと言えば、目的の違いです。
デイサービスは別名「通所介護」とも呼ばれています。
いつもは自宅で生活している高齢者が、昼間の時間にひとところに集まり、食事やお風呂などの生活支援を受けます。
レクリエーションも積極的に行い、介護スタッフや利用者同士の交流により、自宅に閉じこもりがちな高齢者に楽しみの時間を提供しています。
対してデイケアは別名「通所リハビリテーション」です。
文字どおり、そこで中心となるのはリハビリテーションです。
加齢や病気によって衰えてしまった身体の機能を回復する為に、作業療法士や理学療法士などが訓練を行います。
日中帯に移動して受ける介護サービスには変わりませんが、その場所でやっていることが違うんですね。
具体的なデイサービスとデイケアの違い
おおまかな違いはわかりましたが、今度はもっと細かく、具体的な違いについても確認しましょう。
施設による違い
まずは通う施設による違いです。
ざっくり説明すると、デイサービスは介護系施設、デイケアは病院系施設となります。
厚生労働省が定める介護施設の設備基準では、
デイサービスでは食堂および機能訓練室、相談室(相談内容が漏えいしないよう配慮されたもの)を必ず設置しなければならないとしています。
デイケアの場合は、利用人数に応じた広さのリハビリ専用室と、リハビリテーションの実施に必要な専門の器械・器具の設置が義務付けられています。
人員による違い
また、施設の人員に対しても基準が設けられています。
デイサービスとデイケアの大きな違いは「医師を常駐させる義務があるか」です。
デイケアでは医師の常駐が義務になっています。
上記のデイケア人員の内、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)に関しては、所要時間1~2時間以内の短時間デイケアでは不要な場合もあります。
デイケアを利用するためには「医師の指示書」が必要になります。
要介護度による違い
デイサービスやデイケアを利用できる人についても違いがあります。
デイサービス(通所介護)を利用できるのは、介護保険で要介護1~5と認定されている人だけです。
自立(非該当)もしくは要支援1~2の人は利用不可となります。
デイケア(通所リハビリ)は要支援1~2の人も、要介護1~5の人も利用できます。自立(非該当)の人が利用できないのはデイサービスと同様です。
デイサービスが“介護サービス”であるのに対し、デイケアは“介護サービス”と“介護予防サービス”を含んでいるため、上記のような要介護度による違いがあるのですね。
一日の過ごし方の違い
デイサービスは、自宅にこもりがちな高齢者の孤独を解消したり、身体的な機能の維持向上、介護を行う家族の負担軽減などを目的として設立されています。
ですから、一日の過ごし方も基本的には「自宅にいるのと同じ」です。
食事や入浴をする以外には、レクリエーションをしたりお話をしたりと、利用者の楽しみを第一に考えたスケジュールをとっています。
機能訓練についてもレク活動の一部として、ゲームやラジオ体操・ダンス体操を使って楽しみながら心身の機能向上を図ります。
デイケアは施設によって一日の過ごし方が変わります。
1~2時間程度の短時間デイケアの場合、機能回復のリハビリだけを受けてすぐに帰宅します。
6~8時間程度滞在するデイケアでは、デイサービスと同様に食事や入浴といった生活支援も行い、各種レクリエーションも楽しみます。
厚生労働省が定めるデイケアの規定では、生活機能の向上を目的とした「共通的サービス」に加え、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」のサービスを組み合わせて利用するとされています。
そのため、施設や利用者自身の希望に応じてデイケアの過ごし方が変わってくるのです。
料金の違いをチェック|要介護度ごとの利用者負担額一覧
デイサービスやデイケアに通うと、いったいいくらかかるのでしょうか。
上記でご説明した日常生活費を除く、介護保険の自己負担分の料金を確認しましょう。
デイサービスの費用も、デイケアの費用も、利用者の要介護度に応じて自己負担金額が違います。
利用1回につきかかる利用者負担の料金を一覧表にまとめました。
要介護度 | デイサービス | デイケア |
要支援1 | 利用不可 | 1,712円 |
要支援2 | 利用不可 | 3,615円 |
要介護1 | 645円 | 667円 |
要介護2 | 761円 | 797円 |
要介護3 | 883円 | 924円 |
要介護4 | 50円 | 1,003円 |
要介護5 | 50円 | 1,124円 |
なお、上記は介護保険の利用者負担率を1割として計算しています。
負担率が2割~3割の人は料金が変わりますのでご注意ください。
似ているところもある?デイサービスとデイケアの共通点
ここまではデイサービスとデイケアの違いについて見ていきましたが、実は同じところも結構あるのです。
特に最近では、デイケアの要素をプラスしたデイサービス、逆にデイサービスの要素をプラスしたデイケアなど、2つの通所サービスを組み合わせた介護施設も登場してきています。
今度は、デイサービスとデイケアの共通点をチェックしてみましょう。
デイサービスでも機能訓練が可能
先ほどもご説明したように、デイサービスで過ごす一日の間には、いろいろなレクリエーションが行われています。
体操やゲーム、歌、ダンスなど、それらは全て機能訓練の一環です。
楽しみながら身体を動かし、頭を使って脳を活性化させるなど、デイサービスの介護スタッフが工夫して機能訓練を行っているのです。
また、平成30年の介護報酬改定による「生活機能向上連携加算」の実施により、この先は機能訓練が強化される可能性もあります。
生活機能向上連携加算とは、もともと機能訓練員のいない介護施設等が外部の訪問リハビリ事業所や通所リハビリ事業所、医療機関と連携することにより、リハビリを提供した際に加算される介護報酬加算です。
理学療法士などによる機能訓練が実施できるデイサービスが、今後さらに増えていくかもしれませんね。
デイケアでも生活支援が可能
日中をほぼ一日過ごすデイケアの場合には、入浴や食事などの生活支援も受けられると先ほどご説明しました。
そして、リハビリ自体も高齢者が楽しめるように、さまざまな工夫がされています。
リハビリと言っても、若い人が足の骨折をした後にやるようなリハビリと、高齢者のリハビリとは違います。
もちろん高齢者リハビリも本人の努力が必要ですが、苦しい・痛いをガマンするリハビリでは続きません。
生活支援とあわせてゆるやかな機能訓練を行うことが、デイケアには求められています。
車での送迎あり
デイサービス・デイケアとも、介護保険の通所介護サービスの一環です。
自宅から施設への送迎および帰宅時の送迎にかかる費用は、介護保険に含まれています。
高齢者を安全に移動させることも介護サービスの提供においては重要なので、専用車での送迎はサービスの範囲内なのです。
日常生活費は別途負担
介護保険に含まれている料金もあれば、含まれていない料金もあります。
上記の送迎や、入浴代は介護保険に含まれている費用です。
逆に、介護保険に含まれていない費用は、食費やオムツ代などの日常生活費です。
デイサービス・デイケアともに、日常生活費については利用者自身の負担となります。
オムツやリハビリパンツは実費が請求されるか、利用者持ち込みをお願いされる施設もあります。
デイサービスとデイケアではどっちがおすすめ?
ここまでこの記事を読んだ人は、デイサービスとデイケアの違いはしっかりとわかりましたね。
自分にとって適切な通所サービスは、デイサービスとデイケアのどちらなのかもわかったでしょう。
まだ今ひとつピンと来ていない人のために、ここであらためて2つの違いを明確にしておきましょう。
デイサービスがおすすめの人
- 家に閉じこもって孤立しがちな人
- 介護する家族の疲労を軽減したい人
- 安心してお風呂に入りたい人
デイケアがおすすめの人
- 衰えた機能を回復させたい人
- 医師からリハビリ指示を受けている人
もちろんデイケアの方も、デイサービスと同じように介護者の負担軽減も期待できます。
介護する家族にとっては、デイサービスもデイケアも同じようにおすすめですね。
デイサービスとデイケアそれぞれの探し方
デイサービスを受けられる人は要介護度1以上の人なので、それぞれ担当のケアマネージャーが付いています。
デイサービスに入りたいときにも、担当のケアマネさんに相談しましょう。
ケアマネさんが懇意にしているデイサービスセンターを紹介してくれるケースもありますし、Webから探して「ここに入りたい」と相談もできます。
デイケアの場合には要支援1~2の人も利用できるため、担当のケアマネさんがいらっしゃらないこともあるでしょう。
その場合には、地域包括支援センターの窓口に相談してください。
地域包括支援センターでは、要支援1~2と判定された人の「介護予防ケアプラン」作成支援をしています。
デイケアに関する情報も豊富に持っているので、良いデイケアに出会える可能性が高まります。
まとめ
今回は、名前が似ているために混同しがちなデイサービスとデイケアについて、それぞれの違いを解説しました。
名前は似ているけれど内容が違う、だけど、実はかなり似ているところもあるデイサービスとデイケア。
2つの違いが薄れた、新しい形のデイサービス・デイケアも増えてきていますから、通所サービス探しには最新情報をよくチェックしておく必要がありますね。
介護サービスの動向に詳しい専門家の力を借りて、適切なデイサービス・デイケアを見つけましょう。