【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

限度額適用認定証(限度額認定証)とは|利用するメリットと入手方法・デメリットまで解説

この記事を書いた人
数田 陽子 Kazuta Yoko

医療衛生用品メーカーでMDと営業、その後、ECサイト運営企業でヘルス&ビューティケアカテゴリを統括。自らが団塊ジュニア世代であることから終活に関する知識を深め、終活講師としてセミナーを主催。超高齢化に危機感を持ち、自らの生活を含めた親世代を支えるために、終活に関する知識を研鑽。おひとりさま、おふたりさまの終活分野に強く、化粧品や健康食品の開発経験から、健康面も重視し、トータルに考えたアドバイスが得意。 ▼保有資格 終活カウンセラー Happy Ending Planner 認知症サポーター 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

この記事のサマリ
  • 高額療養費制度は払い戻しまでタイムロスがある
  • 限度額適用認定証を提示すれば自己負担限度額までの支払いに抑えられる
  • 過去12ヶ月で4回目以降は「多数該当」に該当して医療費が更に安くなる

医療機関に支払った金額が高額になった場合、「高額療養費制度」によって限度額を超えた分は払い戻しが受けられます。ただし、一時的に持ち出しが多額になるという問題点もあります。

限度額適用認定証(限度額認定証)があれば、初めから支払う金額を自己負担分までに抑えることが可能です。

今回は「限度額適用認定証(限度額認定証)」について解説します。

高額療養費制度には弱点がある

弱点

怪我や病気などで大きな手術をした場合や入院が長期化した場合、3割負担と言えども支払いが高額になってしまいます。

そんな時に、定められた自己負担限度額を超えた分の金額が払い戻される仕組みが「高額療養費制度」です。

大きな病気をした人への味方になる制度ですが、2つの弱点が存在します。

1.申請を忘れると払い戻しができない

まず、高額療養費制度を利用するためには、利用者の方からの申請が必要です。申請自体を忘れてしまった場合は、払い戻しを受けることができません。

2.払い戻しまでタイムラグがある

一般に、高額療養費制度で払い戻しを受けるためには、申請から「約3ヶ月」かかると言われています。

一時的とはいえ、多額の医療費を自分でカバーしなくてはいけません。また、金額が大きい場合は日常生活に影響が出る可能性があります。

もし、医療費の支払いが難しい場合は「高額医療費貸付制度」を利用することも検討しましょう。これは、「高額医療費支給見込み額」の8割に相当する額を無利子で貸し付けする制度です。各健康保険協会・組合に電話で問い合わせ・申請ができます。

限度額適用認定証(限度額認定証)とは

限度額認定証

高額療養費制度のみを利用する場合、「一時的な医療費の支払い」と「払い戻しまでのタイムラグ」という2つのデメリットが発生します。

それをカバーできる制度が「限度額適用認定証(限度額認定証)」です。

医療費の支払いが自己負担限度額までになる

「限度額適用認定証(限度額認定証)」長期の入院や手術など、高額な医療費がかかることが分かっている場合に有効です。

窓口で提出すれば、支払う金額が「自己負担限度額」までになります。払い戻しなどのタイムラグもなく、入院するたびに申請書類を作る手間もありません。

自己負担限度額の計算例

計算例

自己負担限度額は、「年齢」と「年収」によって異なります。厚生労働省では、医療費の自己負担限度額について以下のように紹介しています。

自己負担限度額

引用先:厚生労働省|医療費の自己負担

例えば、「70歳未満」で「年収500万円」の人の場合、「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」が自己負担限度額の計算式です。

医療費が100万円だった場合、「80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%」で87,430円が自己負担限度額になります。

高額療養費制度を利用する場合、一旦は300,000円(1,000,000円の3割)の支払いが必要です。「限度額適用認定証(限度額認定証)」であれば、窓口で請求される金額が87,430円で済みます。

一定期間以上の連続利用で更に安くなる

受診した月以前の1年間(直近の1か月間)で3回以上、高額療養費の支給を受けた場合は表の中の多数該当に当たり、4ヶ月目からの医療費が更に安くなります。

先ほどの例では自己負担限度額は「87,430円」でしたが、1年の内に3か月以上の高額療養費が発生した場合は、4ヶ月目までから自己負担限度額が44,400円に減額されます。

限度額適用認定証(限度額認定証)の入手方法

入手方法

入院前に「手術費用が高額になる」「入院が長期化しそう」など、費用がかさむことが分かっている場合には、忘れずに「限度額適用認定証(限度額認定証)」を入手してください。

自身が加入している健康保険の窓口に申請することで、発行してもらえます。

自営業者・フリーランス等の場合

居住している自治体の市役所・区役所等の「国民健康保険」の窓口で申請します。

会社員の場合

会社員が加入する健康保険には、「協会けんぽ」と「組合けんぽ」の2種類があります。まずは、自身が「どの健康保険に加入しているか」を保険証で確認してください。

協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合の申請先は、各都道府県の支部です。申請書類は協会の公式ホームページからダウンロードが可能です。

組合健保(〇〇健康保険組合)の場合は、加入している組合の窓口に申請します。協会けんぽのように統一された書式ではないため、各組合のホームページにアクセスして申請書類をダウンロードしてください。

紛失した場合は再発行手続きを行う

有効期間内の「限度額適用認定証(限度額認定証)」を紛失した場合は、「再交付申請書」を提出することで再交付を受けることができます。

各健康保険協会・組合のホームページから電話をかけて再交付の依頼をすれば手続き可能です。手元に健康保険証を用意しておくと、電話でのやりとりがスムーズになります。

限度額適用認定証(限度額認定証)の制限

制限

限度額認定証を利用したとしても、自己負担限度額までの支払いで済まない場合もあります。具体的には、以下のような場合が該当します。

  • 2つ以上の病院で同時に受診している場合
  • 同じ病院で歯科と他の科にまたがって受診している場合
  • 通院と入院で支払いが発生している場合
  • 健康保険適用外の支払いがある場合
    • 個室に切り替えたことで発生した差額
    • 入院中の食事代
    • 審美歯科等の自由診療

まず、別々の病院で「同時」に受診している時は、それぞれの支払いは別々になります。また、同じ病院であっても「歯科」と「内科等」を同時に受診している場合、歯科の支払いは別に扱わなければいけません。

その他、「入院」と「通院」は計算を分ける必要があります。

限度額適用認定証(限度額認定証)の返却方法

返却方法

「限度額適用認定証(限度額認定証)」は、常に携帯できる性質のものではありません。一定の状態に至った場合は、支給を受けた窓口に返却しなければいけません。

返却するケースは、以下の通りです。

・有効期限に達したとき
・被保険者の資格が無くなったとき(健康保険証の記号・番号が変わった時も含みます)
・被扶養者から外れたとき
・標準報酬月額が変更になり、適用区分(ア~オ)が変わったとき
・70歳に達する月の翌月に至ったとき
。後期高齢者医療制度の被保険者になったとき
(引用元:日本アイ・ビー・エム健康保険組合

返却にあたって最も関係してくるのは有効期限に達した時でしょう。「限度額適用認定証(限度額認定証)」の有効期間は申請月の初月から、申請書に記入した交付必要期間(最長1年間)です。

なお、返却をしたすぐ後に必要になった場合、再度の新規申請が必要になります。

まとめ

今回は、「限度額適用認定証(限度額認定証)」の概要とメリット・自己負担限度額の計算方法まで紹介しました。

すでに入院が決まっている人が取得すれば、一時的な出費を大きく減らすことが可能です。

入院前は準備で忙しくなりますが、忘れずに取得するようにしてください。