厚生労働省が発表した「令和2年度 厚生年金・国民年金事業の概況」によれば老齢厚生年金と老齢基礎年金を合わせた平均受給額は月約15万円という結果でした。
参考 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況厚生労働省会社勤めをした多くの方が月15万円程度の年金を得られるわけですが、これだけで生活していくことか可能なのでしょうか?
本記事では月15万円の年金を得るために必要な年収と、月15万円で老後を過ごすことができるのかを解説します。生活費が不足する際の対策についても紹介するので、年金暮らしに不安のある方はぜひ読み進めてみて下さい。
目次
厚生年金を月15万円得るのに必要な現役時代の収入
多くの人は会社員や公務員として約40年間働くことになりますが、受け取れる老齢厚生年金・老齢基礎年金の合計は約15万円程度といわれています。
約15万円の年金を得るためには、いくらの年収が必要なのでしょうか?
年収の目安は約442万円
結論から言って、月約15万円の年金を得るために必要な年収は約442万円です。月額に直すと約36万8,000円を得ていれば年金受給額が15万円に達する可能性があります。
まず、40年間未納や免除期間がない前提であれば、月額約6万5,000円を老齢基礎年金として受け取れます。老齢基礎年金の受給額に年収は関係なく、納付した月数で受給金額が変わります。
一方の老齢厚生年金は現役世代の給与や勤続年数によって、以下の計算式で算出できます。
- 平成15年3月まで:平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの加入期間
- 平成15年4月以降:平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入期間
平成15年4月以後に40年間厚生年金に加入、ボーナス込み、40年間の年収の変更はなしと仮定して計算してみましょう。
平均標準報酬額×5.769/1000×480カ月(加入期間)=102万円(年間の厚生年金受給額)
平均標準報酬額=102万円/(5.769/1000×480)≒36万8348円
以上の式で計算できた「平均標準報酬月額」を年収に換算すると、36万8348円×12カ月≒442万円(年収)になります。
参考 年金の支給要件と年金額 厚生労働省年金15万円を手取りにするといくらになるか
年金が15万円受け取れるとはいっても、全額を受け取れるわけではありません。見落としがちですが、年金収入からは「社会保険料」と「税金」が引かれます。
税金は60歳以上の場合は108万円、65歳以上だと158万円以上の場合に課税される点に注意が必要です。
月15万円の年金収入しか得ていない場合の年収は180万円ですが、手取り率は90.6%が目安とされています。単純に当てはめると手取り年収は163万円になり、月13万5,800円になる計算です。
また、手取り率は収入が大きくなるほど下がります。月15万円では約90%の手取りですが、20万円近くなると84%程度まで手取り額が低下する場合もあります。
厚生年金が月15万円で生活は成り立つか
年収442万円を得ていれば、年金額は15万円に達する一方、税金や社会保険料を加味すると手取り約13万5,800円という結果になりました。
14万円弱の手取りで老後生活を送ることは可能なのでしょうか?
総務省家計調査2021年の結果を参考に、65歳の単身世帯の家計支出からマイホームと賃貸で必要な生活費を試算してみました。
1人暮らしで賃貸居住の場合
1人暮らしの賃貸暮らしでかかる費用に関しては以下の結果になりました。
生活費 | 金額 |
住居費(家賃) | 55,695円 |
食費 | 36,322円 |
水道・光熱費 | 12,610円 |
家具・家事用品費 | 5,077円 |
被服・履物費 | 2,940円 |
交通・通信費 | 12,213円 |
教養娯楽費 | 12,609円 |
保険医療 | 8,429円 |
その他の消費支出(交際費・小遣いなど) | 29,185円 |
合計 | 175,710円 |
※住居費は平成 30 年住宅・土地統計調査から引用
参考 平成 30 年住宅・土地統計調査総務省土地統計調査(平成30年)によると、一般的な賃貸物件の1ヶ月あたりの家賃は55,695円でした。生活費の合計は175,710円で、年金が月15万円では不足する結果になりました。
賃貸の場合は住宅ローンを組んでマイホームを購入するのと違い、完済して負担が減ることはありません。
一定以上の家賃が生涯かかることを念頭に、準備を進める必要があります。
1人暮らしでマイホームの場合
老後の1人暮らしでマイホームに住む場合の結果は以下の通りです。
生活費 | 金額 |
住居費(一戸建て) | 30,000円 |
食費 | 36,322円 |
水道・光熱費 | 12,610円 |
家具・家事用品費 | 5,077円 |
被服・履物費 | 2,940円 |
交通・通信費 | 12,213円 |
教養娯楽費 | 12,609円 |
保険医療 | 8,429円 |
その他の消費支出(交際費・小遣いなど) | 29,185円 |
合計 | 149,385円 |
※住居費は住宅ローン完済後の維持費が一般的に年30~40万円程度かかることから、月3万円と仮定
住居費に関しては、住宅ローンを完済すれば必要なくなります。ただし、固定資産税は毎年支払いが必要ですし、マンションであれば修繕積立費や駐車場代が固定費として残り続けます。
月15万円の手取り13万5,800円と比較すると、こちらも不足が発生する見込みです。
今から年金額を月15万円から増やす方法
あくまでも試算上の話ではあるものの、老後に1人で暮らす場合はマイホームでも賃貸でも年金収入だけでは賄えない可能性があることが分かりました。
毎月の赤字を阻止するためには若いときから対策を行い、15万円を超える収入を得たり支出を絞ったりして、自由に使えるお金を増やすことが必要です。
ここからは、「収入を増やす」「支出を減らす」に分けて、老後を乗り切る対策のヒントを紹介します。
定年以降も働く
定年後に働かずにいると現役世代で貯めた貯蓄は減っていくばかりです。
健康に問題がないなら、定年後も働くことを検討しましょう。
現在は定年を70歳まで引き上げる動きもあり、60歳・65歳以降も働き続ける環境が整備されつつあります。
たとえば継続雇用(再雇用)制度を利用し、今の職場でそのまま働き続けることも可能です。
今まで慣れ親しんだ職場で働き続けられるので人間関係に悩むこともないでしょう。
ただし、現役時代よりも賃金が下がったり職務内容も変わったりすることはあります。事前に待遇・業務内容を相談しましょう。
年金の受取り時期を先延ばしする
老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳から受け取ることができますが、66歳以降に先延ばしにすることも可能です。
繰り下げた期間に応じて年金額が増額します。昭和27年4月1日以降生まれの方なら75歳まで繰り下げできるようになり、選択肢が大幅に広がりました。
1ヶ月につき0.7%増額されるため、上限である75歳まで先延ばしにすれば84.0%の増額になる計算です。増額した金額は生涯にわたって受け取ることができます。
年金に関する全体像に関しては以下の記事でも詳細に記載しているので、気になる方はこちらも合わせて読み進めてみて下さい。

年金だけで生活できない場合は家計支出の見直しを検討する
年金の受給額を増加させることは重要ですが、それも限界があります。精いっぱい手取りを増やしても生活できない場合、生活費を圧縮するという方法も検討しましょう。
食事は自炊中心に
単純に外食ばかりの生活では、自炊と比較して職が余計にかかります。現役世代に外食中心だった人は老後も外食の比率が多くなることも考えられるので、自炊中心の生活に切り替えて食費を節約しましょう。
以下の記事では人気ブログや動画から年金生活について学ぶことができます。ぜひ参考にしてみてください。

スマホか格安SIMに
スマートフォンのdocomoやauを利用している方は、格安SIMに切り替えて節約する方法もあります。
たとえば「UQモバイル」の代表的なプランは以下のとおりです。
料金プラン:くりこしプランM(音声通話+データ通信 15GB)月額料金2,728円
参考 くりこしプランS/M/LUQモバイル現在利用のスマートフォンの月額を確認してみてください。上記の「くりこしプランM」と差額が発生するなら節約に繋がります。
大手キャリアでは8,000円以上のコストがかかる場合もあります。格安SIMに乗り換えるだけで、月約5,000円を節約することができるでしょう。
賃貸なら家賃を公営にする方法もある
民間よりも安い公営住宅に引っ越すという方法もあります。公営住宅とは、住宅に困窮する低額所得者に国や自治体が安い家賃で賃貸する住宅のことです。
たとえば京都市では市独自の家賃減免制度があり、公営住宅の場合は61,500円以下の収入の方に20~80%の家賃減額が行われます。
参考 市営住宅家賃減免制度について京都市そのほか老後資金が不足する際の対策は以下の記事でも詳細に解説しているので、この機会に読み進めてみて下さい。

まとめ
今回は月約15万円の年金収入だけで生活できるのかについて解説しました。
月15万円の年金を得るには現役時代に約442万円の年収が必要ですが、かといって15万円だけで老後を過ごすことは大変です。定年後の再雇用で給料を受け取ったり年金を先延ばしにして受給額を増やしたりと、今のうちから手取りを増やす対策を考えましょう。
収入アップだけでなく、家賃・食費・通信費などの支出を絞ることも、老後生活を成り立たせるためには重要です。

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