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老後資金がない場合の対処法|生活できなくなる前に知っておくべき解決策

お金がない

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 受給できる年金額によっては老後資金が赤字になる可能性がある
  • 老後資金がない場合、支出見直しなどの対策が必要
  • どうしても生活に困窮する場合は公的支援に頼ることも検討する

「人生100年時代」と呼ばれるようになって久しい昨今、毎年のように平均寿命は伸び続けています。長く生きられるようになることは大変喜ばしいことですが、一方で長生きするほどお金がかかるのも事実です。

毎月の生活費が赤字では貯蓄が徐々になくなっていき、最後は「老後資金がない……!」という状態に陥ってしまうかもしれません。

そこで今回は、老後資金が不足する可能性と、もし本当に不足した場合の対処方法を解説します。

若いころから貯金していないと老後資金が不足する可能性がある

悩む女性

2019年には「老後2,000万円問題」があったように、老後の生活費不足は現役世代にとっても老後を迎えた方にとっても大きな関心事でしょう。

実際に、老後の生活費は不足するものでしょうか?

老後収入と支出、両面から比較してみましょう。

老齢基礎・厚生年金の受給額

定年退職したあとは「年金」が収入の柱になりますが、必ずしも生活費の全てをカバーできるわけではありません。

厚生労働省年金局「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、年金受給額の平均以下のとおりです。

  • 老齢厚生年金の受給額:月14万6,145円(老齢基礎年金を含む)
  • 老齢基礎年金の受給額:月5万6,358円
参考 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況厚生労働省

夫が会社員、妻が専業主婦の家庭の場合、平均通りであれば受け取れる年金額は約20万円です。

一方で2人とも自営業の家庭では約11万円しか受け取れず、年金だけで生活費を賄うことは大変難しいといえます。

老後に必要になる生活資金はいくら?

一方、老後の支出はどれだけになるでしょうか?

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」によると、高齢夫婦2人の平均的な支出は約25万円です。一概にはいえませんが、年金収入だけでは毎月5万円程度の赤字が発生する可能性があります。

また生命保険文化センターによると、「ゆとりある生活」のために必要な生活費の平均は36.1万円です。

参考 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?生命保険文化センター

こちらを年金収入と比較した場合、約16万円の赤字になってしまう計算です。

若いうちに老後資金として貯めていれば問題ありませんが。そうでない場合は通常の生活でも5万円、現役生活と同様のゆとりある生活を求めると約16万円を別で用意する必要があります。

老後資金がない場合の対処法

電卓 財布

年金のみを頼りにしてしまうと、老後資金が不足してしまう可能性があることが分かりました。いわゆる「老後破産」をしないためには、できるだけ早い段階から対策を講じることが必要です。

ここでは老後資金不足が心配される場合の対処法を紹介します。

支出を根本から見直す(節約する)

老後にお金がない場合の対処法の基本は、「余分な支出を抑えること」です。

現役時代にゆとりある生活を送っていると、定年退職したとしても生活レベルを落とすことは難しいです。ただ、毎月の収入が赤字だと、あっという間に年金収入が底を突き、貯金はなくなるでしょう。

「インターネット回線を見直す」「電気・ガス・水道代を契約する会社やプランを見直す」など、固定費の見直しが必要です。

ゆとりある生活を送っていた方は交際費や食事代、レジャー費用といった変動費も抑えていくほうが良いでしょう。

また、生命保険の見直しも節約に有効です。子供が独立したあとは高額な死亡保障が必要なく、保険金額を安く見直せば保険料が安くなる可能性があります。

医療保険についても高額療養費を使えるうえ、75歳からは後期高齢者医療制度に移行することで自己負担が1割~3割に抑えられます。そこも加味して、医療保険・がん保険の内容を見直すことも検討しましょう。

資産運用で効率的に増やす

資産運用で資産を増やすことも老後資金対策として重要ですが、退職してからいきなり資産を増やすことは難しいでしょう。

資産運用では「リスク分散・長期投資」の考え方に沿って長期で増やすことが基本です。

投資で利用する金融商品は元本割れのリスクがある商品であり、老後資金を投入した後に大きく値を下げるとかえって生活に困ってしまいます。

他方、15年以上の運用期間があれば、収益がプラスに転じる可能性が高いことも分かっています。

参考 積立投資は「賢い投資方法」!~3つの効果をこっそりお教えします~東海東京証券

効率よく資産を増やすなら40代、遅くても50代の前半には投資を開始することが望ましいといえそうです。

投資で資産形成を始める場合は何となく始めることはせず、老後に必要な資金を逆算して老後資金の準備を始めましょう。

生活費が毎月5万円の赤字になると仮定した場合、65歳から90歳の25年間で約1,500万円が不足します。これを資産運用でまかなおうとすると、どのような計算ができるでしょうか。

一般的に投資リターンは年5~7%とされていますが、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)の長期リターンを参考に3.5%で計算してみます。

参考 2021年度の運用状況年金積立管理運用独立行政法人

あくまで単純な試算ですが、年リターン3.5%の投資商品への積立投資を毎月5万円、18年続けると1,497万円になる計算です。老後に必要な最低限の資金を貯めることができます。

参考 積立と複利計算ファンドの海

自宅をお金に換える

既に定年を迎えた方がもう一度社会に出て働くことが難しい場合があります。

かといって子ども世代に負担を強いることは気が引けるでしょう。「老後資金の蓄えが十分でない」方は、不動産の活用で老後資金を確保することも1つの方法です。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、自宅を残しつつ老後資金を用意できる方法です。

自宅を担保に借り入れを行い、毎月の返済では利息だけを返済します。元本は借入人が死亡したときに担保になっていた自宅を売却して清算する仕組みです。

生存中は利息だけを返済することで返済負担を最小限に抑えることができ、年金収入だけでも返済と生活を両立させることができます。

借入人の夫が死亡した場合に配偶者が契約を引き継げる商品もあり、配偶者の住居に関するリスクを回避できることもメリットです。

リースバック

リースバックは自宅を売却して現金化し、売却後も住み続けられるサービスです。

リースバック業者が買い取った自宅を賃貸物件として借りることで、住み慣れた自宅で生活しながら資老後金を調達できます。

所有する不動産を手放すのは勇気がいることですが、自身や火事などの災害によるリスクを回避できるメリットもあります。

働く期間を延長する

できるだけ長く働いて収入を増やすことも、老後資金不足の対策には有効です。

政府も老後の生活資金対策として、60歳以降でも希望すれば働ける環境づくりを推進しています。

令和3年4月1日施行の「改正高年齢者雇用安定法」では、65歳から70歳までの就業機会を確保するように企業に努力義務を課しています。

今後はシニア層を中心に企業の雇用は活発化していくでしょう。

働き方としては今の会社と別会社で働く方法だけでなく、今の会社に再雇用される方法も有力です。再雇用できるかどうかを知りたい場合、以下の記事も併せてご確認ください。

通勤するビジネスマン 再雇用できるかを就業規則で確認|65歳まで働ける継続雇用制度とは

受け取れる年金について詳しい計算方法を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

老後 将来いくらもらえる?年金支給額の計算方法と確認方法を解説

年金を繰り下げ受給する

老齢厚生年金・老齢基礎年金はいずれも65歳から受け取ることが原則です。ただ、希望すれば受給開始年齢を最長70歳まで引き下げる「繰り下げ受給」を選択できます。

1ヶ月繰り下げるごとに0.7%、最長60ヶ月繰り下げると42%が増額されます

65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金を合わせて1年で200万円を受け取れる方の場合、受給開始年齢を70歳まで繰り下げると200万円×1.42=284万円まで増額できる計算です。

働く期間を延ばしながら年金を繰り下げることで、効率的に年金受給額を増やせるでしょう。

どうしても老後資金がない場合は公的機関を頼る方法も

支援

これまで紹介した対策ではどうしても老後資金が足りない場合、公的な支援を頼ることも検討しましょう。今回は「生活困窮者自立支援制度」「生活福祉資金貸付制度」の概要を紹介します。

生活困窮者自立支援制度

官民共同で生活困窮者からの相談に対応する制度です。自立相談支援機関において策定される自立支援計画に基づき、各種支援が無料で受けられます。

  • 家族介護のために収入が低い仕事に移った方
  • 家賃が払えずに賃貸物件に住めなくなった方
  • 借金があって家計のやりくりができない方

など、さまざまな生活困窮者がサポート対象です。

支援内容は都道府県や市区町村でも異なりますが、支援の一例としては以下のようなケースがあります。

  • 就職活動することなどを条件に、一定期間の家賃相当額を支給
  • 不安定な住居形態にある方に、緊急的に一定期間、宿泊場所や衣食を提供
  • 一般就労に向けたサポートや就労機会の提供
  • 相談者が自ら家計を管理できるような支援計画の作成や相談支援

生活福祉資金貸付制度

65歳以上の高齢者を含む低所得者や障害者を対象にした貸付制度です。

「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」の3つに分かれていて、なかでも目的別に資金の種類が分かれています、

たとえば福祉資金の一部である「緊急小口資金」は、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった方が融資を受けられる制度です。

原則として10万円、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて収入の減少や失業・休業などにより生活資金で困っている場合は20万円まで無利子で借入できます(令和4年6月末まで申請延長)。

まとめ

今回は、老後資金が不足する可能性と、もし本当に不足した場合の対処方法を解説しました。

あくまでも一般的な話として、公的データを読み解くと老後資金が不足する可能性があります。そうならないためには、できるだけ早い段階から「収入」「支出」両方を見直すことが重要です。どうしても生活費が足りない場合には公的支援の検討も視野に、長くお金が不足しない環境を作り上げていきましょう。

定年後に理想の生活環境を作る方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

定年後に理想的な生活を送るための5つの視点|家族・健康・趣味・仕事・住居

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