【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

高齢者も民間医療保険を検討するべき?公的保険の自己負担と1割の年収金額はどれくらい?

生命保険

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ

  • 65歳以上になると入院・通院する可能性がどんどん高くなる
  • 公的な健康保険だけで、自己負担は3割以下になる
  • ただし、差額ベッド代や先進医療は公的保険の対象外

日本は公的な健康保険制度が充実しており、病気やケガで入院した際の自己負担額は基本的に3割以下に抑えられます。現役並み所得者といった例外を除き、70歳以上なら2割、75歳以上なら1~2割までと、年齢を重ねると自己負担はさらに安くなります。

ただし、公的健康保険の制度は少しずつ自己負担が増加する傾向にあり、「公的保険があるから絶対に民間保険は不要」と断言するのではなく、民間医療保険の必要性を検討することが大切です。

本記事では高齢者の入院・通院件数の現状や、公的医療保険の自己負担などから、民間医療保険の必要性について解説します。

高齢者が入院する確率は年齢が上がるごとに高くなる

生命保険 リスク

65歳以上になると、それまでよりも入院・通院の件数が多くなることは容易に想像できるでしょう。

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によれば、患者数は以下のように上昇していきます。

(単位:千人)

入院 外来
45~49歳 34.0 369.5
50~54歳 41.8 374.5
55~59歳 52.7 406.0
60~64歳 66.6 454.9
65~69歳 99.4 654.9
70~74歳 141.9 886.6
75~79歳 155.7 814.3
80~84歳 174.7 640.2
85~89歳 173.4 401.5
90歳以上 159.8 221.2

60~64歳までと比べて、65~69歳の入院数は約1.5倍になっており、その後も入院人数は85~89歳のところまで右肩上がりで増加していることが分かります。

参考 令和2年(2020)患者調査厚生労働省

患者調査の数値結果を見る限り、若いときは丈夫で医者いらず人であっても、高齢者になるころには公的な健康保険だけで入院費用をカバーできるかは、しっかり検討しておく必要があります。

高齢者向けの医療制度で自己負担はどれくらい減る?

自己負担

一般的には「高齢者に民間の医療保険は不要」といわれることもありますが、その理由は、高齢者の医療費の自己負担額が現役世代の若い人に比べれば少なく抑えられていることです。

具体的に、高齢者が入院した場合はどのくらいの自己負担割合になるのでしょうか。

65歳~74歳の前期高齢者と、75歳以上の後期高齢者それぞれの自己負担割合をまとめました。

前期高齢者は原則2~3割

WHOによれば前期高齢者は「65~74歳」の年齢の方を指します。一方、日本の公的医療保険制度は70歳が1つの区切りになっている点に注意が必要です。

  • 70歳未満:3割
  • 70~74歳(現役並み所得者):3割
  • 70~74歳(一定以上所得者・一般所得者等):2割

70~74歳の前期高齢者の場合、現役並みの所得でない限り自己負担額は2割に軽減されます。

一般所得者は元々1割負担でしたが、2014(平成26)年4月1日以降、70歳になる人から自己負担割合が2割負担になった経緯があります。

後期高齢者は原則1割だが年収次第では2割以上の自己負担率になる

75歳以上の後期高齢者は原則1割負担です。

ただし、「一定以上の所得者」「現役並み所得者」のいずれかに該当すると2~3割負担になります。

  • 75歳以上(現役並み所得者):3割
  • 75歳以上(一定以上所得者):2割
  • 75歳以上(一般所得者等):1割

令和4年の改正以降、課税所得が28万円以上に加えて「年金収入+その他の合計所得金額」について、単身世帯の場合で200万円以上、複数世帯の場合は合計320万円以上の場合は2割負担になります。

高額療養費制度の利用で自己負担は更に少なくなる

高額療養費制度とは、毎月の医療費が一定額を超えた場合に、超えた分を払い戻してくれる制度です。

たとえば低所得者でも現役並み所得者でもない「一般」に区分される方の自己負担限度額は、外来では18,000円、外来+入院では57,600円です(過去12ヶ月に4回以上にわたって限度額を越えた分の支給があるケースでは、4回目以降は44,400円)。

参考 後期高齢者医療制度の高額療養費(75歳以上もしくは認定を受けた65歳以上の方)立川市

入院回数が多くなれば自己負担額はさらに少なくなるという高額療養費制度を念頭に、民間医療保険の必要性を検討することが大切になります。

高齢者で民間の医療保険を検討したい人の特徴

保険 営業マン

年齢を重ねるほど一般的に自己負担割合が少なくなり、高額療養費制度もあれば、基本的には公的医療保険だけでも大きな医療費がかかりません。

ただ、治療の内容や「どんな入院生活を送りたいか」によっては、民間保険の必要性が高まります。

公的保険ではカバーできない部分を手厚く保障するなら、民間保険への加入も検討しましょう。

公的医療保険は適用される範囲が決まっており、範囲外の部分については全額が自己負担になります。

差額ベッド代・食事代の自己負担を減らしたい方

差額ベッド代は、病院の個室や2人部屋など、大部屋より少ない人数で利用できる部屋を選択した際に請求される料金です。

固執や少人数向けの部屋は大部屋よりも面積が広くて収納や設備が整っていることに特徴があり、治療費とちがって医療保険対象にはなりません。個室などの差額ベッドを利用する場合、当然ながら費用を請求されます。

「快適な個室で治療を受けたい」と感じる方は、公的医療保険の加えて民間の医療保険に加入することで差額ベッド代を給付金でカバーできるでしょう。

なお、入院中の食事代も同様、公的な医療保険の対象外です。

先進医療にかかる費用を賄いたい方

先進医療は厚生労働大臣が認める高度な医療技術や治療法のなかでも、有効性・安全性は基準を満たしてはいるものの、公的医療保険の対象外の治療のことです。

公的医療保険は適用できないため、全額が自己負担になります。

たとえば、がんの治療に使われる「陽子線治療」「重粒子線治療」はそれぞれ約300万円の費用がかかるとされています。

参考 令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用厚生労働省

数百万円の自己負担は、預貯金が多い人でも耐えられないでしょう。そこで検討したいのが、民間の保険です。

たとえば民間の「がん保険」であれば、特約を付加することでがんの先進医療にかかる自己負担額の保障を受けることができます。

高齢者が民間の医療保険に加入する際の注意点

保険料

より手厚い治療や快適な入院生活を望む方にとって、民間の医療保険を検討する価値はあります。

ただ、これから紹介する注意点については事前に把握しておきましょう。

  • 若者よりも保険料は割高
  • 健康状態によっては保険に加入できない
  • 75歳以上の健康保険の負担は増加する予定

若者よりも保険料は割高

医療保険やがん保険を含む民間の生命保険は、大勢の加入者が公平に負担し合った保険料をもとに、「もしも・万が一」が起こったときには給付を受けられるという経済的な助け合いの仕組みです。

保険料の総額と保険金の総額が等しくなる「収支相当の原則」もあり、病気になって入院・通院する可能性が高くなる高齢者ほど保険料は割高になります。

同じ保障内容で保険料も同額では、入院する確率が低い若い人が損をしてしまいます。入院・通院の確率に応じ、年齢が上がるほど高い保険料が設定されることが原則です。

健康状態によっては保険に加入できない

健康状態によっては、民間の医療保険に加入できないこともある点に注意が必要です。

保険会社は加入の希望者に対して、過去の病歴の申告(告知)を求めます。病歴を精査されて保険加入の可否が決定されますが、保険会社の条件を満たさない場合は加入することができません。

病歴がある方でも加入できる「条件緩和型」や、全く条件がない「無選択型」の医療保険もありますが、同じ保障内容であれば保険料が割高になることが原則です。

まとめ

公的な健康保険だけで入院や通院に関する医療費は自己負担が3割以下に抑えられ、高額療養費制度の対象になれば更に自己負担は小さくなります。

ただし、「入院中の食事代」「先進医療」などの費用は公的健康保険の対象外であり、がんなどに罹患して先進的な医療を受けたい場合は数百万円の自己負担がかかることも考えられます。

カバーしたい病気や入院後の生活を想像し、民間医療保険も検討することがおすすめです。年齢が高くなるほど保険料が高くなり、病歴があると加入できなくなる可能性もあるため、加入を決めたらできるだけ若いうちに手続きに進みましょう。


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