- 退職金額が少なくなる一方で平均寿命は毎年のようにのびている
- 老後の1人暮らしは月約24,000円が不足する可能性がある
- 老後の夫婦暮らしは月約30,000円が不足する可能性がある
- 若いときから資産形成などの手段で不足額を埋める対策が必要
人生100年時代と呼ばれ、平均寿命がどんどん長くなっていく昨今。老後生活に関心を持っている方は多いのではないでしょうか。
人生では結婚・出産、マイホーム購入など、まとまったお金が必要なタイミングがいくつもあります。その中でも老後は大きな金額が必要になる時期です。
では、実際にどのくらいの老後資金が必要なのでしょうか。今回は単身世帯と夫婦2人の世帯に分けて、老後に必要な生活費と準備のための方法を解説します。
目次
老後資金が不足するとされる背景
老後の生活資金としては長年働いた会社から支払われる退職金と年金が考えられますが、それだけでは老後資金が不足する可能性があります。
なぜ退職金が不足する可能性があるのか、根拠になる2つのことを紹介します。
退職金の額が徐々に安くなっている
老後収入の大きな柱になる退職金ですが、退職給付額が徐々に減少傾向になっていることをご存知でしょうか?
厚生労働省「就労条件総合調査」によると、2017年の大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の1人平均退職給付額は1,983万円でした。
1997年平成9年の退職金給付額は2,868万円が平均であったことを考えると、20年で約1,000万円も少なくなっています。
参考 就労条件総合調査:結果の概要厚生労働省今の現役世代が定年退職する頃は、更に退職給付額が少なくなっていることも考えられるでしょう。
そもそも退職金が受け取れない自営業者はもちろんのこと、会社員も退職金の想定を相当に厳しくする、または全く受け取れない前提で老後資金を準備する必要があります。
平均寿命がどんどん長くなっている
人生100年時代とも言われる現在、平均寿命はどんどん長くなっています。厚生労働省「令和2年簡易生命表の概要」によると男性の平均寿命は81.64歳、女性の平均寿命は87.74歳です。
平成2年(1990年)の平均寿命は男性で75.92歳、女性は81.90歳だったので、約30年で男性は5年弱、女性は6年近く平均寿命がのびた計算です。
参考 令和2年簡易生命表の概況厚生労働省今後も医療の発達によって、日本人の平均寿命はどんどん長くなっていくことが見込まれます。長生きするのは喜ばしいことではあるのですが、長生きする分だけ生活費の対策も必要です。
1人暮らしの方に必要な老後の生活資金
老後に受け取れる年金収入や毎日の生活費などは、家族構成によっても変わります。ここでは「1人暮らし」の毎月の収入と支出のデータから、不足する可能性のある金額について解説します。
1人暮らしの老後に必要な生活費
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると、老後の1人暮らしで必要な消費支出と非消費支出の合計(月平均額)は144,687円です。
食料 | 36,581円 |
住居 | 12,392円 |
光熱・水道 | 12,957円 |
家具・家事用品 | 5,328円 |
被服及び履物 | 3,181円 |
保険医療 | 8,246円 |
交通・通信 | 12,002円 |
教養娯楽 | 12,910円 |
その他の消費支出(雑費・交際費など) | 29,549円 |
非消費支出(直接税・社会保険料) | 11,541円 |
支出合計 | 144,687円 |
1人くらしの老後収入
同資料によると、高齢無職の1人暮らしの実収入は136,964円でした。年金収入のほか、一部は仕送り金や事業収入を含みます。
社会保障給付 | 121,942円 |
その他(仕送り金、事業・内職など) | 15,022円 |
実収入合計 | 136,964円 |
1人暮らしの老後資金として用意しておきたい金額の目安
あくまでも平均的なデータですが、支出が144,687円に対して収入が136,964円ということが分かりました。
1ヶ月当たり7,723円不足する計算です。ただ、収入のうち約15,000円は仕送りや事業収入などによる収入ですから、年金に絞れば121,942円しかありません。
仮に支出が145,000円で収入が121,000円とすると、不足額は24,000円です。
65歳で定年を迎えて日本人男性の平均寿命である81歳まで生きると仮定した場合、16年で24,000円×12ヶ月×16年=460万8,000円が不足する可能性があります。
夫婦に必要な老後の生活資金
ここでは「夫婦暮らし」の毎月の収入と支出のデータから、不足する可能性のある金額について解説します。
夫婦の老後に必要な生活費の内訳
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によれば、老後の夫婦生活に必要な消費支出と非消費支出の合計(月平均額)は255,550円です。
食料 | 65,804円 |
住居 | 14,518円 |
光熱・水道 | 19,845円 |
家具・家事用品 | 10,258円 |
被服及び履物 | 4,699円 |
保険医療 | 16,057円 |
交通・通信 | 26,795円 |
教養娯楽 | 19,658円 |
その他の消費支出(雑費・交際費など) | 46,753円 |
非消費支出(直接税・社会保険料) | 31,160円 |
支出合計 | 255,550円 |
夫婦の老後収入
同資料によると、高齢無職の夫婦暮らしの実収入は256,660円でした。
社会保障給付 | 219,976円 |
その他(仕送り金、事業・内職など) | 31,063円 |
実収入合計 | 256,660円 |
上記の年金収入はあくまでも平均であり、実際の金額は個人ごとに異なります。老後資金を計算する際は、自分の年金額を把握することが大切です。
将来貰える年金額を計算したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

夫婦の老後資金として用意しておきたい金額
総務省の家計調査報告によると支出が255,550円、収入が256,660円で、1,111円の黒字になることが分かりました。ただ、収入のうち31,063円は仕送りや事業などによる収入なので、収入を年金に絞ると3万円が不足する計算です。
65歳で定年を迎えて日本人男性の平均寿命である81歳まで生きると仮定した場合、30,000円×12ヶ月×16年=576万円が不足する可能性があります。
不足する老後資金を貯めるための方法
年金収入だけでは生活費が赤字になる可能性があることが分かりました。退職金収入で穴埋めしたいところですが、徐々に減少傾向にあるのが気になるところです。もし想定していた退職金を受け取れないとしても、そこから老後資金の準備をすることは簡単ではありません。
そこで、現役世代から時間をかけた資産形成で不足分を埋める対策を検討しましょう。今回は老後の資産形成に向いた商品・制度を3つ紹介します。
低解約返戻金型終身保険
貯蓄性の高い生命保険に加入することで、将来の資産形成に利用できることがあります。代表的な例が低解約返戻金型終身保険です。
一生涯の保障が得られる終身保険の一種で、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に受取人に保険金が支払われます。
通常の終身保険と比較して保険料払込期間中の解約返戻金が7割程度に抑えられている代わり、保険料が低く設定されているのが特徴です。
保険料払込期間が終われば通常の終身保険と同じ水準の解約返戻金になるため、通常の終身保険より「返戻率(総支払保険料に対する総受取保険金の割合)」が高くなりやすいメリットがあります。
一生涯の死亡保障に備えながら、保険料払込期間が終わってから解約する前提であれば資産形成の手段としても利用できます。
例えば、フコクしんらいの低解約返戻金型終身保険は保険料払込期間の満了時点の返戻率が100.5%ですが、その後も返戻率は徐々に上がっていき、80歳で解約した場合の返戻率は106.3%まで上昇します。
参考 低解約返戻金型終身保険フコクしんらい普通預金の金利が0.001%程度であることを考えれば、預金よりも効率的な資産形成の手段として選択肢になるでしょう。
つみたてNISA
つみたてNISAは少額投資非課税制度(NISA)の1つで、文字通り積み立てによる資産形成のための制度です。
毎日・毎週・毎月の任意のタイミング(証券会社によって異なる)で、年40万円まで積み立てできます、
通常は投資で得た利益には20.315%が課税されるものですが、つみたてNISA内で得た利益は最長で20年間は非課税です。
投資対象は「投資信託」または「ETF(上場投資信託)」という投資商品で、資金を拠出した後の細かな運用はプロに任せることができます。
元本保証は保証されていない点には注意が必要ですが、つみたてNISAで選べる商品は「購入時に手数料がかからない」「保有時のコスト(信託報酬)が一定以下など、金融庁が定めた条件をクリアした厳選商品です。
コストが高く、複雑な仕組みの投資信託は排除されているので、初心者でも資産形成を始めやすいでしょう。
iDeCo
iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、老後資金の上乗せのために国が用意した私的年金制度です。以下のような様々なメリットがあり、資産形成を後押ししてくれます。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税で再投資できる
- 受け取る際も有利な税制優遇が適用
運用益が非課税なのはつみたてNISAと同じですが、特徴的なのは掛金が全額所得控除になることでしょう。
iDeCoの掛金は全額が所得控除になり、所得税と住民税が軽減されます。
毎月の掛金が3万円で所得税(10%)と住民税(10%)とすると、年間72,000円の税金を軽減できます。
加えて受取時の税制優遇も特徴です。iDeCoの運用期間中は非課税の代わりに受取時に課税されますが、一時金としての受取りなら「退職所得控除」、年金での受取りなら「公的年金等控除」の対象です。
40歳からiDeCoを始めて60歳で受け取る場合、40万円×20年=800万円までの受取額であれば非課税で受け取れます。
iDeCoでは2022年5月から加入年齢が60歳未満から65歳未満に改正されます。60歳定年でも再雇用で働きつつ、iDeCoに加入することもできるでしょう。
再雇用で働きたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ
今回は単身世帯と夫婦2人の世帯に分けて、老後に必要な生活費と準備のための方法を解説しました。
仕送りや事業収入を除くと、1人暮らしでも夫婦でも老後資金が不足する可能性があります。若いころからの資産形成を視野に入れて、老後の収入が生活費を上回るように準備を進めていきましょう。
ただ、今回紹介した年金額はあくまで平均で、基準を満たさないともらえないこともあります。自身が無年金にならないか気になる場合は以下の記事も参考にしてください。


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