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組合健保とは?協会けんぽとの違いとメリット、保険料の計算例まで解説

健康保険証

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

 

この記事のサマリ
  • 組合健保は被保険者700名以上の大企業の健康保険組合
  • 協会けんぽよりも保険料率平均が低いことが一般的
  • 「付加給付」など協会けんぽにない独自制度もある

組合健保は会社員・公務員としてお勤めの方が加入することになる健康保険制度のうちの1つです。ひとくちに健康保険といってもさまざまな種類があるため、ご自身が何に加入しているか分からなくなってしまうこともあるでしょう。

そこで今回は、数ある健康保険のうち「組合健保」について解説します。キーワードは「保険料率」と「独自制度」です。

組合健保とは

青い健康保険証

会社員は公的な医療保険の保険証を所有しています。

しかし、全ての会社員保険者が同じではありません。会社員向けの健康保険は「協会けんぽ」「組合健保」の2種類に分かれています。

このうち組合健保は一定の条件を満たした企業が国の認可を得て自社で設立した健康保険組合です。加入・脱退などの各種届出は社会保険事務所に対してではなく、健康保険組合に対して行います。

組合健保の主な業務は2つ

組合健保の保険業務は、主に「保険給付」と「保険事業」の2つに分かれます。

保険給付

保険給付業務は被保険者(従業員)やその家族のケガ・病気・出産・死亡などが発生した場合、医療費を負担したり給付金を支給したりするために行われます。

保険給付のなかでも、医療費の7割を健康保険組合が負担する「法定給付」、保険組合が独自に給付を行う「付加給付」に分かれています。

保険事業

保険事業は被保険者(従業員)とその家族の健康維持・増進に係る業務のことで、健康診査、健康相談、レクリエーション活動など、組合健保ごとに活動は多岐に渡ります。

組合健保と協会けんぽの違い

「組合健保」と「協会けんぽ」の違いは運営している団体(保険者)がどこかという点です。

協会けんぽの保険者は「全国健康保険協会」で、いわゆる中小企業といわれる一般企業が加入しており、一方の組合健保は企業が自前で健康保険を設立した団体です。

組合健保設立には被保険者が700名以上であることが必要で、複数の会社が共同で設立する場合は合計で常時3,000人以上の被保険者が求められます。

つまり、組合健保は大企業とその子会社・グループ企業、協会けんぽはそれ以外の中小企業で構成されている、という点も異なります。

組合健保に加入するメリット

指さすサラリーマン

組合健保は700名以上の大企業による組合であり、協会けんぽと比較していくつかのメリットがあります。

保険料率が低い傾向にある

組合健保と同じ「健康保険法」に基づいて運営される組織である「組合健保」と「協会けんぽ」ですが、組合健保は協会けんぽに比べて保険料率が低い傾向にあります。

協会けんぽでは都道府県ごとに保険料率が決められており、令和2年の東京の保険料率は9.87%です。保険料は企業と従業員で折半のため、自己負担は4.935%になります。

標準報酬額に応じて1~50段階に分かれており、標準報酬のうち4.935%が自己負担です。例えば1等級なら標準報酬月額は58,000円であり、保険料の全額は5,724.6円、折半した自己負担は2862.3円になります。

出典:全国健康保険協会|令和2年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

対する健康保険組合では、組合単位で保険料が決まります。

例えば「味の素健康保険組合」では被保険者の負担割合は3.97%、J.フロント健康保険組合では3.55%です。(出典:味の素健康保険組合J.フロント健康保険組合

1%程度の違いですが、毎月支払うものである以上は長い目で見ると保険料に大きな違いがあらわれます。

「付加給付」を利用可能

組合健保では、規約で定められていれば通常の法定給付に加えて「付加給付」が利用可能です。付加給付は協会けんぽにはない組合独自の上乗せ給付です。

健康保険に加入している被保険者が病気になって医療機関を受診した場合、かかった医療費のうち7割が「法定給付」として健康保険が負担します。

仮に医療費が100万円であった場合、被保険者の自己負担は30万円です。さらに高額療養費の仕組みによって、1ヶ月の自己負担は8万円~9万円程度になり、残りは後日還付されます。

医療費が高額になった場合に還付が受け取れる高額療養費に加えて、組合健保では高額療養費付加金として、さらに自己負担が減額されるしくみです。

ただし、健保組合によって採用されるか、また給付の金額がいくらになるかは変わります。

付加給付の例

例えば「ホンダ健保」では、自己負担限度額から下記の基準額を差し引いた金額が、後日ホンダ健保から支給されます。

強制・任意継続
被保険者【本人】
強制・任意継続
被扶養者【家族】
特例退職
被保険者【本人】
特例退職
被扶養者【家族】
20,000円 22,000円 22,000円 24,000円

引用元:ホンダ健康保険組合|医療費が高額になったとき

他方、ソニー健保では自己負担の上限が2万円に定められており、高額療養費で減額になった自己負担と、2万円の差額が受診の3ヶ月後に払い戻されます。

ソニー健保

画像引用:ソニー健康保険組合|高額療養費とソニー健保の付加給付

組合健保の保険料の決まり方

お札と小銭

健康保険の毎月の健康保険料は3つの要素から決定されます。組合単位で保険料を決められる組合健保ですが、計算方法の原則は変わりません。

標準報酬月額

標準報酬月額は第1等級から第50等級まで50等級に分かれており、賃金や手当など、労働の対価として受け取れるものは全て計算の対象です。

例えば基本給のほか、役付手当、家族手当、通勤手当、残業手当なども計算の対象で、賞与が年4回以上支給される場合についても標準報酬月額の対象に含まれます。

標準報酬月額が決まるのは、以下の5つのタイミングのいずれかです。

  1. 就職時
  2. 年1回の定時決定
  3. 随時改訂
  4. 育児休業終了時
  5. 産前産後終了時

2.の定時決定とは、年1回の毎年決まった時期に標準報酬月額の見直しを行うことです。4月・5月・6月の給料をもとに、同じ年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定されます。

また、随時改訂では、例えば昇進など「標準報酬月額が2等級以上変わる」ような大幅な変動の際に定時決定より早く改訂が行われます。

標準賞与額

その月に支払われた賞与のうち、1,000円未満を切り捨てた金額です。ただし、年度の賞与の累計額が573万円を超える部分には保険料はかかりません。

介護保険料

介護保険の保険者は市町村ですが、直接市町村が徴収することはありません。市町村に代わって健康保険組合が「40歳以上65歳未満」の被保険者から徴収しています。原則として翌月の給与から控除されます。

介護保険料率は協会けんぽと各健康保険組合で設定が異なるため、気になれば確認してみましょう。

たとえば協会けんぽの介護保険料率は1.79%ですが、組合健保の中の「ダイセル健康保険組合」では1.5%です。(出典:ダイセル健康保険組合|みんなが支払う保険料

健康保険制度の全体像をおさらい

チェックする人

1958年に国民健康保険法が制定されてから、日本では全ての人が公的な医療保険に加入することが義務付けられています(国民皆保険制度)。

保険の全体像として国民健康保険・社会保険・後期高齢者医療制度の3つをおさらいしておきましょう。

国民健康保険

自営業や無職、専業主婦学生など、会社員や公務員の健康保険に加入していない人が属するのが国民健康保険です。

後述する会社員・公務員が加入する健康保険と医療機関を受診したときの自己負担限度額は同じですが、連続4日以上休業したときに給付を受けられる「傷病手当金」などが受け取れないなどの差異があります。

このため、自営業者は万が一ケガや病気で働けなくなったときの保障は弱いため、民間保険等に加入する必要性が高いといえます。

会社員・公務員が加入する健康保険

会社員や公務員が加入する健康保険で、運営主体の「保険者」によって3つに分類されます。

  • 組合健保
  • 協会けんぽ
  • 共済組合

どの保険に加入しても自己負担は3割で変わりませんが、例えば組合健保では高額療養費よりも安くなる「付加給付」が実施される、保険料率が異なるといった具合に運営主体によって保障の内容はさまざまです。

後期高齢者医療制度

公的医療保険制度の1つで、高年齢世代の医療費の負担軽減を目的としています。

75歳以上(一定の障害をもつ65歳以上の人も含む)の「後期高齢者」が対象で、保険料は原則として年金から天引きされます。保険料は後期高齢者医療広域連合が決定し、2年毎に改訂されます。

一般世帯の自己負担は1割ですが、現役並みの所得がある人の自己負担は3割です。

ただし2022年の後半以降、自己負担が2割に引き上げられることになっています。

現状では年収383万円未満の後期高齢者の自己負担は原則1割ですが、これが2022年以降、本人の課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上の人の自己負担割合が2割に引き上げられます(参考:ニッセイ基礎研究所)。

今は組合健保に加入している人も、退職後は国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入することになります。制度の内容が変更になった際は、概要を把握しておくと将来の自分の役に立つでしょう。

まとめ

組合健保は中小企業向けの協会けんぽと比較して保険料率が低めであり、加えて「付加給付」などの独自制度が導入されている優れた保険であることがご理解いただけたでしょうか。

保険の内容を知り、万が一のケガや病気の時は制度をフル活用しましょう。


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