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相続放棄の手続きを徹底解説|放棄を決める前に注意すべきポイントとは

この記事を書いた人
杉田 Sugita
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級

この記事のサマリ
  • 相続するしないは自分で決められる(遺贈も含む)
  • 相続放棄するときには家庭裁判所への申述が必要
  • 相続放棄できる期間は3ヶ月間(生前に相続放棄はできない)
  • 相続放棄の手続き完了後は撤回できないので注意

不幸は、ある日突然飛び込んでくることがあります。

日ごろは疎遠な親族の場合、久しぶりに来た連絡が訃報だったという話も珍しくありません。

さらに、その亡くなった方に配偶者や子供がいなければ、いきなり相続人に指定される可能性もあります。

しかし、遺産はもらって嬉しいものばかりではありません。もらうと困る「負の遺産」もあるため、気楽に考えてばかりはいられないのです。

今回は相続放棄の手続きについて解説します。

相続放棄とは

拒否

相続放棄とは、読んで字のごとく「相続の権利を放棄する」ことです。

遺産は特に遺言書で指定されない限り法定相続人に相続されます。法定相続人は配偶者ともう1名、法律で定められた順位の親族です。

そして遺産をもらうかもらわないかは、相続人が自分自身で決められます。

「○○の遺産はいらない!」と法定相続人に指定された方が思えば、遺産を引き継がなくてすむのです。

ただしその際には、正式に相続放棄したことが認められるように所定の手続きが必要となります。

遺贈のときでも相続放棄はできる

遺産を譲る相手が法定相続人でなく、第三者への遺贈であっても放棄はできます。この場合は相続放棄ではなく遺贈放棄と呼びます。

手続き方法は法定相続人の相続放棄の手続きと同じです。

遺贈のときに遺贈放棄が考慮対象になるのは遺贈の種類が包括遺贈であるときです。財産の一部を指定して送る特定遺贈では基本的に放棄する必要はありません。

遺贈を放棄するかは、以下の記事も参考にしながら検討してください。

recipient-designation もしも遺贈の受取人に指定されたら? 遺贈を受け取る前に知っておきたい注意点

相続放棄を検討するケース

負の遺産

では、実際に相続放棄したくなるのはどんなときでしょうか。

一番よくあるのは借金などの「負の遺産」の相続放棄です。

亡くなった方の遺産はプラスもマイナスもまとめて相続されます。プラスの遺産に対してマイナスの遺産の方が大きければ、相続放棄を選択した方がベターです。

ただしマイナスの遺産は欲しくないがプラスだけ欲しいなど、財産の一部だけの相続放棄はできません。

相続した後のメリットとデメリットを比較して慎重に考えましょう。

相続放棄の手続き

スーツ姿の男性

ここからは具体的な相続放棄の手続き方法について説明します。

相続放棄は「いらないから放っておいて」とはいきません。口頭で相続放棄の旨を伝えるだけでなく、法的に有効な手続きをきちんととる必要があります。

もし相続人に指定された方が放棄の意思を明確にしないと、他の人が相続手続きできなくなり、いつまでも相続が未解決のままになってしまいます。

後ほど説明しますが、相続放棄ができる期間は決まっています。法定相続人に指定されたら時間をおかず、迅速に相続放棄するかどうか検討を開始しましょう。

相続放棄の手続きを行う場所

相続放棄は家庭裁判所へ申術し手続きを行います。場所は被相続人が最期に住んでいた地域を管轄する裁判所です。

参考 相続の放棄の申述裁判所

遠方に住んでいる相続人や、多忙・健康上の理由などで家庭裁判所に行けない相続人は、郵送で相続放棄の手続きを行うこともできます。

相続放棄の手続きに必要な書類

相続放棄の手続きに必ず必要な書類は以下3点です。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄する方の戸籍謄本

それ以外に必要な書類は、相続放棄する方が被相続人とどのような関係にあったかにより異なります。

申述人が配偶者または子 ・被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
申述人が孫 ・被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
・本来の相続人(親)の死亡が記載された戸籍謄本
申述人が親 ・被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人に死亡した子や直系尊属がいる場合には対象者の死亡が記載された戸籍謄本
申述人が兄弟姉妹 ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人に死亡した子がいる場合には対象者の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人に既に死亡した直系尊属がいる場合には対象者の死亡が記載された戸籍謄本

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄手続きを行う際の流れは以下のとおりです。

STEP.1
必要書類を集める
上記で説明した書類を市区町村役場などから取り寄せます。
STEP.2
管轄の家庭裁判所を確認する
被相続人が最期に居住していた地域を管轄する裁判所となります。
STEP.3
家庭裁判所に書類を提出する
管轄の家庭裁判所に直接出向くか、郵送により提出します。
STEP.4
照会書に記入し返送する
家庭裁判所から郵送される「照会書(状況に関する質問状)」に回答し返送します。
STEP.5
審議
照会書の内容に基づき相続放棄の認定可否が審議されます。
STEP.6
相続放棄申述受理
相続放棄が認められると、一週間~10日ほどで家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が郵送されます。
STEP.7
相続放棄完了
すべての手続きが完了します。

相続放棄の手続きにかかる費用

相続放棄の手続きにかかる費用は以下のとおりです。

  • 収入印紙800円分(申述人1人につき)
  • 切手代(照会書等の送付用/家庭裁判所に都度確認)

相続放棄の手続きを委任もできる

弁護士バッジ

相続放棄の手続きを弁護士などの代理人に委任することもできます。

相続放棄の手続き自体はさほど難しいものではありませんが、不安がある方は無理せず代理人に委任することをおすすめします。

なお相続放棄の手続きを代理人に依頼する際には上記の書類に加えて手続代理委任状も必要になり、代理人への支払い費用も発生します。

相続放棄の手続きができる期間

相続放棄の手続きができるのは、相続人が「自分が法律上の相続人になった事実」を知った日から3ヶ月間です。3ヶ月を過ぎると相続放棄は認められません。

ただし被相続人に負の財産がないと信じていたために相続放棄しなかった方が、それを知った時点から3ヶ月以内に申述すれば受理されるケースもあります。

しかし、その際には財産がないと信じた根拠や相当の理由が必要になるため、一般的には3ヶ月過ぎてからの相続放棄はかなり難しいと考えておきましょう。

生前の相続放棄は可能?

病気のお見舞い

遺産がプラスであれマイナスであれ、将来的な遺産は一切もらわないと心に決めている方もいます。

しかし、生前の相続放棄はできません。これは家庭裁判所が生存者の相続について申述を受け付けていないからです。

これは逆に考えると、親の介護を担っていた方が他の兄弟から「代わりに相続放棄する」と言われていても、いざ遺産分割のときに前言をくつがえされる可能性があるということです。

口先だけの相続放棄には注意が必要です。

放棄した相続財産はどうなる?

相続人のひとりが相続放棄の手続きをすると、その遺産は次の相続人にスライドし、新しい相続人もまた相続放棄の手続きを取ると、また次の相続人へと移行します。

全員が相続放棄手続きをして対象者が誰もいなくなると、相続財産管理人が遺産の清算を行います。相続財産管理人は弁護士や司法書士などの専門家の中から家庭裁判所が選任します。

精算後に財産が残った場合には、財産は国庫に帰属します。借金などマイナスの財産しか残らない場合には、その時点で負債が消滅します。

相続放棄で注意するポイント

警告

上の説明のように、相続放棄の手続き自体は決して難しいものではありません。

だからと言って相続放棄が簡単だと思ってしまっては、思わぬ後悔する羽目になるので注意しましょう。

なぜなら相続放棄の手続きの完了後は、取り下げや撤回が一切できないからです。

また相続放棄は申述した本人だけでなく、その子供の代襲相続にも影響します。親が相続放棄して子供が代わりに相続しようとしても法定相続人にはなれません。

本当に相続放棄が最適解なのか、手続きの前には十分な熟考が必要です。

まとめ

ハートを持つ手

今回は相続放棄の手続きについて解説しました。

相続放棄は期間の定めもあり、対応によっては後々の親族間トラブルにもつながる重要な手続きです。

また遺産の内容を詳しく調べないままに相続放棄してしまうと、故人の好意を無にしてしまう可能性もあります。

相続放棄の手続きの際には専門家に相談しながら確実な選択をしましょう。


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