- 運転免許の返納には運転免許証と印鑑が必要
- 警察署または運転免許センターで返納する
- 運転経歴証明書を発行すれば身分証明書になる
高齢ドライバーによる事故が多発したことをきっかけに、注目を集めているのが「運転免許証の自主返納」です。
運転免許証の自主返納とは、「免許が不要になった方」や「高齢になって身体機能に不安を感じた方」などが自主的に免許を返納することを指します。
制度があること自体は知っていても、手続き内容については知らないという方も多いのはないでしょうか。
そこで今回は、運転免許返納の流れについて解説します。
目次
免許返納率は年々高まっている
返納理由の1位は「家族からの説得」
画像引用:運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果|警察庁
警察庁のデータ(出典:警察庁|運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果)によれば、自主返納をした方が「自主返納をしようと思ったとき」として、もっとも多かったのが「家族等に説得されたとき」で、全体の33.0%を占めます。
「運転に自信がなくなったと感じたとき」の19.2%を大幅に上回っているのが特徴です。
自分では運転能力が衰えていないと思っていても、周囲の方から見ればヒヤリとしてしまうことがあるということでしょう。
2位は「運転する必要がなくなったと感じたとき」で29.4%でした。子供が独立して夫婦2人での生活になれば行動範囲が狭くなるため、免許を必要ないと感じる方が増えてくるのでしょう。
免許を返納した人数
また、同じく警察庁が発表した「運転免許統計(令和元年版)」によれば、運転免許を返納して運転経歴証明書の交付を受けた人が全体で519,188人でした。
年代でもっとも多かったのが70~74歳で148,013人と、全体の28.5%を占めています。80~84歳は116,116人で全体の約22%を占めています。次いで75~79歳の107,525人で19%と続きます。
一方でもっとも少ない割合になったのは65~69歳の53,903人で、全体の約10%でした。70代以降と比べると少ない割合ですが、平成30年度の調査では27,115人でしたから、数は1年で2倍に増えていることになります。
とはいえ、まだまだ「70歳」が運転免許の返納を考えるターニングポイントと考えることができそうです。またこの統計では、6割以上の人が80歳になるまでに免許の返納をしていることも示されています。
近年では70歳以上の免許更新に認知症の検査も導入されていることから、更新の難易度が上がります。70歳を超えて運転が危ないと感じる場面があれば、積極的に返納を検討する方がいいかも知れません。
返納には「全部の返納」「一部返納」がある
免許の返納には取得した全部の免許証を返納するパターンの他に、上位免許を返納して下位免許を残す、あるいは下位免許を取得する「一部返納」があります。
例えば上位免許である「大型自動車免許」を返納して中型免許、普通自動車免許を取得する、といった具合です。
一部返納に関しては代理人による申請ができず、運転経歴証明書の発行ができません。
行政が提供する割引サービスを受けることができない点に注意してください。
運転免許の自主返納のメリット
さまざまな割引特典がある
運転免許の返納のメリットは、自動車事故を起こす可能性がなくなるだけではありません。
都道府県が実施している「運転免許証を返納した人が受けられる割引サービス」を受けることも可能です。
東京都で受けられる特典の一例
具体的にどのような特典が受けられるかは、お住まいの都道府県によって大きく異なります。東京都を例に、どのような特典が受けられるか一例を紹介します。
企業名・店名 | シニア割引の内容 |
---|---|
帝国ホテル東京 | 直営レストラン・バーラウンジが10%割引 |
浅草ビューホテル | ホテル館内直営レストランバーにて料理・飲みものが10%割引 |
イオン(都内16店舗イオン直営売り場) | 1個当たり100~300円の配達料金で、購入した商品を自宅まで配達 |
三越伊勢丹 | 有料催事(文化展・美術展など)無料 |
はとバス | 定時観光の料金を5%割引 |
サンシャイン水族館 | 一般入場料約2割引き |
上記の特典は東京都内の割引サービスのほんの一部です。
詳細な内容や、そのほかのサービスについてはこちらから確認できます。
割引特典は全国に広まっている
割引特典は東京だけでなく、47都道府県の各地で広まりを見せています。返納前に、どのようなサービスを受けられるのかチェックしておくのがいいでしょう。
以下のページでは全国の「運転免許自主返納の特典」の情報が紹介されています。お住まいの地域の特典のチェックに活用してください。
返納手続きを行う場所
運転免許証の返納ができるのは、以下の2つの施設です。
- 警察署
- 運転免許センター
免許の返納後は無免許状態になりますから、クルマで訪れるのはNGです。帰りに運転してくれるパートナーがいない場合には、公共交通機関で施設に向かうようにしてください。
なお、一部の警察署では手続きができない場合があります。返納に出かける前に、返納に対応しているか確認が必要です。
運転免許の自主返納に必要な書類
免許の返納に必要な書類
運転免許の返納にあたって、必要な書類は以下の2つです。
- 運転免許証
- 印鑑
運転経歴証明書の発行申請に必要な書類
運転免許証の返納と同時に、運転経歴証明書を発行することもできます。その場合には運転免許返納に必要な書類に加えて、以下が必要になります。
- 交付手数料1,100円
- 写真(縦3cm×横2.4cm)
写真は警察署の窓口で申請を行う場合に必要です。運転免許センターであればその場で撮影されるため、必要ありません。
運転経歴証明書とは|身分証明書にもなる
本人確認書類として運転免許証を使用していた方は、返納すると身分証明書になるものを失うことになるのがネックです。
そこで、運転免許証の代わりに発行される「運転経歴証明書」を活用しましょう。
画像引用:警察庁|運転経歴証明書について
運転免許証を本人確認書類として求められていた施設で、運転免許証と同様に本人確認書類として使用が可能です。
代理人に委任する場合の必要書類
運転免許証の返納は本人が行うことが原則ですが、やむをえない事情があれば代理人が返納申請を行うことも可能になりました。
「免許の返納に必要な書類」で挙げた書類のほかに、以下の書類が追加で必要になります。
- 代理人本人の確認書類(運転免許証等)
- 誓約書
- 委任状兼確認書
代わりの移動手段はどうする?
運転免許証を返納したは良いですが、そのあとの生活で困るのが「生活の足がない・・・」ということではないでしょうか。
徒歩や自転車では移動できる範囲に限界があるだけでなく、年を重ねることで長時間歩いたり自転車をこいだりすることが難しくなる可能性があります。
そこで、路線バスや地下鉄が一定期間にわたって無料になる「シルバーパス」を積極的に活用しましょう。
また、タクシーでも運転経歴証明書を提示すれば割引を受けることも可能です。
電動車いす「セニアカー」を利用する手もあります。歩行者と同じ程度のスピードしか出ないことから歩行者扱いになり、運転免許がなくても利用ができます。足腰が弱まった高齢の人でも気軽に移動できます。
運転免許返納手続きのポイント
自主返納できない人もいる
運転免許証の停止・取り消しの行政処分を受けた人や、停止・取り消し処分の基準に該当する方などは運転免許証の自主返納をすることができません。
具体的には、以下のようなケースです。
- 認知症検査での運転免許取り消し
- 更新忘れ等による有効期限切れ
これらの条件に該当する人は自主返納をすることができません。つまり、運転経歴証明書を発行してもらうこともできなくなります。
運転経歴証明書の発行期限に注意
運転免許証の代わりとなる身分証明書が欲しい場合は、運転経歴証明書の発行が必要になります。
運転経歴証明書には「運転免許証を自主的に返納した日から起算して5年以内」という発行期限が定められている点に注意が必要です。
この期限を過ぎると発行されなくなります。
運転経歴証明書の発行を検討している方は、期間内にかならず発行するように注意してください。
返納したその日に、同時に発行してしまうのが望ましいでしょう。
まとめ
60代の運転免許返納率は高くないものの、70代から急激に運転免許の返納をする人が増えてきています。70代以上のドライバーに認知症検査が義務付けられたこともあり、この流れは今後も加速するでしょう。
運転免許を手放したとしても、代わりの交通手段を確保することは難しくありません。家族と意見を交わしながら、最適な返納タイミングを探っていきましょう。

GoldenYearsでは、充実したセカンドライフを送るためのサポートを行っております。
終活カウンセラーやエンドオブライフケアなど専門知識を持ったプロフェッショナルチームへの相談が可能です。少しでもわからないことがあれば、ご気軽に以下お問い合わせフォームよりご連絡ください(無料)。
▶︎お問い合わせフォームへ