- 死期が近い人には10の身体的な特徴が現れる(全員ではない)
- 死期が近い人に対して家族ができることがある
- 「死」を知り今を精いっぱい生きよう
人間、誰しもいつかは「死」を迎えるときがやってきます。
今回は、死期が近い人には医学的にどのような特徴が現れるかを解説します。
自分自身や身近な家族が将来どのような経過をたどって死を迎えるか、いまから理解しておきましょう。
死期が近い人の身体的な10の特徴
医療分野では一般的に、死期が近い人には以下のような身体的な特徴が生じるとされています。
ただし、以下の特徴は死期が近いすべての人に当てはまるとは限りません。
およそ3割程度は、死期が近い特徴が発現する前に急激に死を迎えるとも言われています。また事故や事件で突然に亡くなる人の場合は、もちろん当てはまりません。
以下は病死や老衰などにより、経過に従ってゆっくりと亡くなる場合の典型的な例として参考にしてください。
1.眠っているときが増える
死の一週間ほど前から多くの人は眠っている時間が増え、起きている間もウトウトしていて、語りかけへの反応もあまり見せなくなります。
2.せん妄・落ち着きがなくなる
およそ3割程度の人は、一時期興奮状態におちいって奇声やつじつまが合わない発言をしたり、落ち着きなく手足をバタバタと動かしたりします。この状態をせん妄と呼びます。
せん妄が起きる原因は、脳の酸素不足や脳に有害物質が溜まるためと言われています。
3.手や足が冷たくなる
死期が近づくと血行が悪くなるため、末端の手や足に血液が行き渡りにくくなります。そのため手足が徐々に冷たく感じられるようになります。
4.食事・水分が摂取しづらくなる
腎臓の機能がおとろえてくると摂取した水分が体内でうまく処理できなくなり、身体は自然と新たな水分・栄養分を欲しなくなります。
食欲もなくなり、食べようと思ってもうまく飲み込めず、むせてしまうケースがあります。このような場合は無理に食べさせたり飲ませたりしてはいけません。誤嚥性肺炎で死期を早める原因になります。
また食事や水分の摂取量が減った結果、尿量が減って排泄した尿の色も濃くなります。
5.ほうれい線が目立たなくなる
医学専門誌「Cancer」に掲載されたアメリカのがん研究施設University of Texas MD Anderson Cancer Centerの研究によると、がんで亡くなった人の94%は死亡3日以内にほうれい線が目立たなくなったとのことです。
画像引用:鳥取市立病院|終末期の症候
死期が近い人に関する一般的な理論としては確立されてはいませんが、ひとつの指針として考えても良さそうです。
6.意識レベルが低下する
さらに死期が近づき、死の数日前になるとおよそ8割の人は意識レベルが低下し、声をかけても起きずに眠ってばかりになります。
「このまま亡くなってしまうのはないか」と心配で起こしたくなりますが、これは眠っていることによって苦痛を和らげる目的があるとも言われています。
7.チアノーゼが起こる
チアノーゼとは皮膚や粘膜が暗紫色になっている状態のことです。死期が近づき死の数日前~数時間前になると、多くの人にチアノーゼが見られると言われています。
チアノーゼが起きやすい箇所は床と接していて血流が阻害されやすい箇所や、身体の末端組織である手足です。
8.呼吸音が大きくなる
死期がいよいよ近づくと、のどの筋肉が弛緩し気管に分泌物が溜まるため、ゴロゴロという大きな呼吸音がします。この現象を死前喘鳴(しぜんぜんめい)と呼びます。
死前喘鳴を小さくするためには、分泌物を抑える薬を投与したり、唾液を吸引するなどの措置がとられます。しかし死期が近くなった当人にとっては、さほど強い苦しみはないそうです。
死前喘鳴は数時間続き、その後は48時間以内に死を迎えると言われています。
9.胸が大きく上下する
死前喘鳴と同じように、死期が近い人には下顎呼吸(かがくこきゅう)という現象も生じます。
下顎呼吸とは顎を上下に動かしながら、あえぐように呼吸することです。呼吸筋だけでなく腹筋や内肋間筋などの全身の筋肉を動かして呼吸するため、胸や肩が大きく上下します。
あえぎ苦しむような姿に見えますが、上記の死前喘鳴と同じく当人にとっては見た目ほどの苦しみは感じられていないそうです。
下顎呼吸が始まると、多くの場合は1~2時間で亡くなることが多いと言われています。
10.尿や便を漏らす
下顎呼吸の後には血圧が急激に低下し、すべての筋肉が弛緩します。
尿道括約筋や肛門括約筋も弛緩するために尿道口や肛門が開き、体内に溜まっていた尿や便が排出されます。
その後、心停止となり死亡にいたります。なお死亡直前の人が涙を流していたときも、悲しみの涙ではなく眼輪筋の弛緩による生理現象だった可能性があります。
バイタルサインは死期にはほぼ左右されない
ここまで説明してきたように死期が近い人にはさまざまな兆候が現れますが、人間の全身状態を示すバイタルサインの特徴は、死期にはほぼ左右されないと言われています。
《バイタルサインとは》
生命兆候。主に呼吸・体温・血圧・脈拍の4項目を指す。
画像引用:東北大学|臨死期におけるEBM
バイタルサインにあまり変化がなくても突然に亡くなる人がいますし、逆に、バイタルサインが悪化していても長期間生存している人がいます。
もちろん死亡直前にはすべてのバイタルサインに変化が生じますが、バイタルサインによって死期を計る指標にはなりません。
家族の死期が近いと感じたら
親や配偶者などが病気になり、上記のような特徴が現れて死期が近いと感じたら、看取りを行う家族はどうしたら良いのでしょうか。
厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM プロジェクト)では、がん患者と家族のために緩和ケアに関するパンフレット等を配布しています。
今回はその中から、死期が近づいた人の家族向けに配布されている「これからの過ごし方について」を元に、死期が近い人に対して家族ができることを説明します。
参考
看取りのパンフレット「これからの過ごし方についてがん対策のための戦略研究「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」
声をかけてあげる
死期が近い人は段々と全身の機能がおとろえていきますが、聴覚は最期まで残ると言われています。
声かけに対する反応は少なくなっても、当人は最期までかけられた言葉を聞き取ることができます。できるだけ話しかけ、これまでの感謝の気持ちを伝えましょう。
手や足をさすってあげる
血流が悪くなり冷たくなった手足を優しくマッサージすると、手のぬくもりが当人に伝わり快適になると考えられます。
誰かに相談する
死期が近い人が間近にいると、家族が辛い気持ちになるのは当然です。
どうしたら良いかわからない、疲れてクタクタになってしまった、心配や不安に押しつぶされそうになる…そんなときは独りで悩まず、そばにいる誰かに気持ちを打ち明けましょう。
医師や看護師にもいつでも相談できます。
別れを受け入れる
家族に今回ご説明したような特徴が現れた場合には、残念ながらその人とのお別れは避けられません。
難しいかもしれませんが、できればおだやかな気持ちで見送ってあげたいものです。
見送る家族も別れを受け入れ、家族が安らかに旅立てるよう努力しましょう。
家族の旅立ちを見送った後のグリーフケアについては以下で解説しています。参考にしてください。
まとめ
今回は死期が近い人の特徴について解説しました。
どんな人であれ、いつかは訪れる「死」です。そのときに現れる特徴をあらかじめ知っておきながら、いま生きている期間を精いっぱい充実させていきましょう。