- 要介護4はほとんど自立した生活が営めなくなる状態
- 要介護4の要介護認定基準時間は1日あたり90分以上110分未満
- 要介護4は月額309,380円までの費用が介護保険でまかなえる
- 要介護4の介護は家族だけでは限界があるため、周囲を巻き込んだ介護を
親など自分の家族が「要介護4」だと認定されたら、いったいどうしたらよいでしょうか。
要支援や要介護1などから少しずつ要介護度が上がっていった人であれば、家族もまだ対応に困らずにすむかもしれません。
しかし脳疾患などの理由により、いきなり要介護4の状態になる可能性もあります。突然、要介護4の認定を受けた人の家族はどう対処すべきでしょうか。
今回は要介護4の状態や、要介護4になる主な原因、要介護4と他の要介護度との違いなどについて解説します。
要介護4とはどういう状態か
要介護4の状態とは、日常生活自立度が著しく低下して、ほとんど自立した生活が営めなくなる状態です。
日常生活自立度とは高齢者の動作能力や認知能力を測る尺度です。要介護認定の際には日常生活自立度が大きな判断基準となります。
要介護4の場合、動作能力は「寝たきり」をあらわすBランクもしくはCランクと判定されるケースが多いです。
また認知症にかかっている人の日常生活自立度は、要介護4の場合にはランクⅢ(問題行動や意思疎通の困難さがときどきある)や、ランクⅣ(ランクⅢと同様の症状が頻繁にある)と多く判定されています。
具体的には要介護4に認定されている人は、以下のような行動ができません。
食事 | 介助が必要(支えがないと座れない) |
排泄 | 介助が必要(オムツ・自動排泄処理装置を使用) |
入浴 | 介助が必要 |
歩行・立ち上がり | できない |
身づくろい | できない |
掃除・洗濯 | できない |
調理 | できない |
買い物・金銭管理 | できない |
要介護4の原因1位は「脳血管疾患(脳卒中)」
厚生労働省が行った「2019年国民生活基礎調査」では、要介護1~要介護3になった原因はいずれも認知症でした。
しかし要介護4になった原因の1位は、脳卒中などの脳疾患に変わっています。
ただし、この1位は要介護1~3が進行した人ではなく、それまで健康だった人が脳疾患を発症して、その影響により要介護状態になった人が多いと推測されます。
同調査での2位は認知症、3位は骨折・転倒との結果が出ています。
画像引用:厚生労働省|2019年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況
同居家族のおよそ半数は終日介護している
上記の厚生労働省調査では、介護者家族が1日のうちに介護する割合も調査しています。
要介護4の人を自宅で介護している同居家族は、ほぼ半数の45.8%が「ほとんど終日」介護していると回答しています。
要介護1の介護者家族がほとんど終日介護している割合は11.3%でしたので、要介護4になると同居家族には大きな負担がかかっていることがわかります。
画像引用:厚生労働省|2019年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況
要介護4と他との大きな違い
要介護4に認定された人と他の要介護度との大きな違いは、心身の状態が要介護4程度になると要介護認定だけでなく、市町村長等や福祉事務所長の判断により特別障害者としても認定が受けられる点です。
正確にはこの場合、要介護認定の有無は関係ありません。心身の状態が知的障害者または身体障害者に準ずる65歳以上の人が対象になります。
特別障害者を扶養している配偶者や扶養親族は、年40万円の障害者控除が申告できます。
また、自治体が介護者家族に支給している介護手当も、多くの自治体では要介護4以上を対象にしています。
要介護4以上の家族を介護する生活は大変なため、国や自治体でもいろいろなサポートを行っています。
自治体の介護手当については以下の記事をご覧ください。
要介護4の認定基準時間
要介護4の要介護認定基準時間は、1日あたり90分以上110分未満です。
この時間は過去の統計を元にして、要介護4と心身の状態が同程度の人は90分以上110分未満程度の介護が必要になるだろうと考えた推定時間です。
すべての要介護4の人が90分以上110分未満の範囲におさまるとは限らず、また、介護の手間や肉体的・精神的な負担の程度は考慮されていません。
要介護認定基準時間については以下の記事でも触れています。
日本で要介護4に認定されている人の数
厚生労働省「介護給付費等実態統計」による、2023年1月時点で介護保険による介護サービスを受けている要介護4の人数は851千人です。
同調査による2001年5月の統計では、要支援・要介護を含めた介護サービス受給者の総数は1,971.6千人、うち要介護4の介護サービス受給者は302.8千人でした。
この20年余りで介護サービスを受給する要介護者の人数が大変増えていることが、統計からも理解できます。
参考
介護給付費等実態統計月報(令和5年1月審査分)厚生労働省
参考
介護給付費実態調査月報(平成13年5月審査分)厚生労働省
要介護4で受けられる介護サービス
ここからは、要介護4で受けられる介護サービスをご説明します。
参考
公表されている介護サービスについて厚生労働省 介護サービス情報公表システム
在宅介護で受けられる介護サービス
自宅等で生活する要介護4の人が受けられる介護サービスは、要介護3など他との違いはありません。
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問入浴
- 通所介護(デイサービス)
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 通所リハビリ
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護
- 地域密着型通所介護
- 療養通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設で受けられる介護サービス
要介護4の人は、介護老人福祉施設(特養)および地域密着型特養への入所申し込みが可能です。なお特養には要介護3から入所申し込みができます。
特養以外の介護施設に関しては、他の要介護度との違いはありません。
- 介護老人福祉施設(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特養)
福祉用具レンタル
福祉用具をレンタルする際に、自動排泄処理装置が介護保険の適用可能になる点が他の要介護度との違いです。
自動排泄処理装置は特殊尿器とも呼ばれている、寝たきりや自力での排泄が困難な人が利用する福祉用具です。尿だけでなく便の吸引ができるタイプもあります。
《介護保険でレンタルできる福祉用具(要介護4)》
- 特殊寝台(介護ベッド)
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 手すり
- スロープ
- 車椅子
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 移動用リフト
- 徘徊感知機器
- 自動排泄処理装置
画像引用:厚生労働省|どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与
要介護4の費用
介護保険では、要介護度に応じた支給限度基準額が定められています。要介護4の支給限度基準額は309,380円です。
しかし、309,380円の現金がもらえるわけではありません。支給限度基準額とは、介護保険が適用できる介護サービス費用の限度額という意味です。
さらに要介護者自身も、原則1割は介護サービス費用を負担しなければいけません。
309,380円が支給限度基準額である要介護4の人は、限度額いっぱいまで介護サービスを受けたときには30,938円を支払う必要があります。
どの介護サービスを受けたときにどのくらいの費用が発生するかは、以下の表を参考にしてください。
なお以下の表の「単位」とは介護保険の単位です。各サービスの費用は単位×10円で計算できます。
《介護サービスごとの単位の例》
30分以上1時間未満の生活援助(訪問介護・日中帯) | 396単位 |
訪問入浴(看護職員1人及び介護職員2人) | 1,260単位 |
1回あたりの通所介護利用(6時間以上7時間未満・要介護4の場合) | 897単位 |
1日あたりの介護保険施設サービス費(従来型個室・要介護4の場合) | 874単位 |
1日あたりの介護福祉施設サービス費(従来型個室・要介護4の場合) | 780単位 |
家族が要介護4に認定されたら
要介護4になると日常のあらゆる場面で介護が必要になるため、家族の負担は非常に大きくなります。
長丁場もあり得る介護生活を乗り切るために、家族はどんなことをしたら良いのでしょうか。
ここからは家族が要介護4に認定された後に、介護の負担を少しでも軽くする方法について解説します。
自宅に住み続けたい人
要介護4の在宅介護は、正直言ってかなり大変です。
家族だけでは限界があるため、上記で説明した介護サービスをフル活用しましょう。
しかし、介護サービスをフル活用したとしても、どうしても家族には負担が重くのしかかりがちです。働きながら家族の介護をしている人が限界を感じて、会社を退職して介護に専念しようと考える人もいます。
しかし介護を理由にした退職(介護離職)はできる限り避けるべきです。
介護休業の制度を使えば、最長93日まで会社を休んでも給付金が受け取れます。一時的に会社を休んで時間を捻出し、その間に状況を立て直す算段をとりましょう。
介護休業については以下の記事をご覧ください。
要介護3まではなんとか在宅介護ができても、要介護4にまで進行すると在宅介護に限界を感じて施設入所を検討する人が多いです。
これから介護施設への入所を検討するご家族は、以下の記事を参考にして適切な預け入れ先を探してください。介護施設を選ぶポイントや情報収集のやりかたなど、参考になる点が多いと思われます。
要介護4の家族は周囲に助けを求めながら
要介護4の人の介護は、家族だけでは限界があります。
その理由は、介護をする家族の負担が大きいからだけではありません。閉塞的な環境で限られた人だけ介護をしていると、日々のケアが充分にできない可能性があります。
寝たきりの人は定期的な体位変換やスキンケアをしないと、床ずれ(褥瘡)が起きやすくなります。食事や入浴などの介助をするときに事故が起きないとも限りません。
また要介護4になった人でも、適切なリハビリや第三者との交流によって運動機能や認知機能の維持に努められます。生活環境が家庭内だけに限られると生活の刺激も少なくなり、要介護状態がますます進んでしまうかもしれません。
「家族だけでなんとかしよう」と思わず、介護サービスや自治体、地域など周囲の助けを求めていきましょう。
まとめ
今回は「要介護4」について解説しました。
要介護4まで要介護度が進んだときには、ひとり暮らしはほぼ不可能だと考えられます。家族が同居して在宅介護する場合でも、家族だけでは介護はしきれません。
できる限り介護サービスを活用し、それでも限界を感じたときには施設入所も検討しましょう。