- 老人ホーム選びは最初にざっくりと種類分けして、自分の状況に合う施設を把握するところから
- 厚生労働省が認可した老人ホーム・認可していない老人ホームがある
- 適切な相談場所を見つけることが、適切な老人ホームを見つける最短ルート
お年を召してくると、だんだん一人暮らしやシニア世帯での生活が難しくなってきます。
バリアフリー化していない家では転倒が心配ですし、もし認知症になったりしたら…と不安が募りますね。老人ホームは高齢者が安心して暮らせるように、さまざまな支援や介護を行っています。
でも老人ホームの種類は沢山ありすぎて、すべての種類を把握するのは大変です。
そこで今回は、日本の老人ホーム9種類をざっくりとご紹介し、全体像を確認することにしましょう。
老人ホーム入居の目的はなに?状況にあわせたホーム選びを
老人ホームを見ていく前に、まずはご自身の老人ホーム探しの目的を確認しましょう。
老人ホームに入りたいのが自分なのか親なのか。入居予定者は自立しているのか要介護状態なのか。
認知症にかかっているかどうかも、重要な選択ポイントです。
もちろん費用面についても確認する必要がありますね。予算がどの程度あるのかによって、入居できる老人ホームの種類は変わってきます。老人ホームに何を期待するか、何が妥協できて何が妥協できないかをしっかり見定めてから、状況に合わせた老人ホーム選びをしましょう。
まだまだ現役!でも将来的な安心を得たいアクティブシニア向けの老人ホーム
最近のシニア世代は若々しくお元気な方も多いですから、要介護者向けの老人ホームでは息がつまってしまうかもしれませんね。
「今は存分に生活を楽しみたい、でも将来的な安心感も欲しい」
と考えているアクティブシニアには、サービス付高齢者向け住宅(サ高住)とシニア向け分譲マンションがおすすめできます。
サービス付高齢者向け住宅
サ高住は、必要に応じて介護サービスを受けながら、これまでと同様の生活が送れる老人ホームです。
管理人が日常的な安否確認を行いますが、基本的には介護スタッフは常駐していません。多くは外部の委託業者と連携を行っています。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、建物設備がバリアフリー化されたマンションです。
建物がシニア仕様というだけで、一般的な分譲マンションとほとんど違いはありません。サ高住と同じように、介護サービスを外部業者に委託しているケースが多いです。
自立した生活ができる間は思うように過ごせるため、自由と安心の両方を手に入れられるでしょう。
ただし、この二種類はどちらも費用がかなり高額になるのがデメリットです。また、要介護度が上がるにつれ、退去を求められる可能性もあります。
高齢の親世帯だけの暮らしには不安が…介護サービス付の老人ホーム
上の二種類よりも介護サービスの提供を重要視したい人におすすめなのは、介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホームです。
介護付有料老人ホーム
介護スタッフが24時間常駐している有料老人ホームです。
住宅型有料老人ホーム
介護スタッフは常駐せず、主に日中帯の生活支援を行う有料老人ホームです。
この2つを比較した違いは、介護スタッフが常駐しているかいないかです。
要介護度が低い場合は住宅型有料老人ホーム、要介護度が高い場合は介護付有料老人ホームの方が、より入居者のニーズに合うと言えるでしょう。とはいえ、どちらも介護サービスについては上記の2つよりも充実しているため、介護度が上がってきた親を安心してまかせられます。
また、日本国内の老人ホーム施設数を比較すると、一番多いのが住宅型有料老人ホーム、二番目が介護付有料老人ホームだと言われています。
民間企業の新規参入がしやすい形態の老人ホームなので、今後もこの2種類の老人ホームが増えていくことが予想されます。
入りやすさで言ったら、この2種類がダントツですね。
認知症や持病がある人はどうする?医療や介護を必要とする親にも安心の老人ホーム
認知症にかかっている人の場合、自立した生活を基本とするサ高住や住宅型老人ホームでの暮らしは無理があります。老人ホームによっては認知症患者を受け入れていないところもありますし、それは認知症以外の病気にかかっている場合も同じです。
認知症や持病がある人でも入居できて、医療や介護などのしっかりした対応を行ってくれる老人ホームは、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(介護療養病床)、グループホームです。
この3種類は、比較的入居費用が安いという特徴もあわせ持っています。
介護老人保健施設(老健)
老健は介護保険制度により設立された公営施設で、医療や介護を受けながら身体機能の回復を目指すためにリハビリができる施設です。
ただし、老健では長期間の入居ができません。老健に入れるのは最長3ヶ月なので、終の住処としての老人ホームを探している場合は不適切です。
介護療養型医療施設(介護療養病床)
介護療養病床は主に医療法人が運営しており、長期的な療養と介護を入院しながら受けられます。
介護療養病床は2023年に廃止されることが決まっていて、現在は施設数も縮小傾向にあります。
グループホーム
グループホームは認知症患者が介護者の手助けを受けながら、少人数での共同生活を送る施設です。
老人ホームはコストが心配…比較的費用の安い老人ホーム
在宅介護と比べて、どうしても老人ホームはコストがかかります。
できるだけ入居費用を押さえたい人には、特別養護老人ホーム(特養)やケアハウス(軽費老人ホーム)という選択肢もあります。
特別養護老人ホーム(特養)
特養は社会福祉法人や自治体が、介護保険制度の下で運営する公営介護施設です。
原則的に要介護3以上の人が入居対象です。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウスは地方自治体や社会福祉法人が運営しています。
一般型と介護型の2種類があり、一般型と介護型を併設したケアハウスもあります。ケアハウスは一般型・介護型ともに、自立~要介護2までを対象としています。
国や自治体の支援を受けているために費用が安いというメリットがありますが、それだけに人気も高く、待機人数も非常に多いです。
入居までには高いハードルがあることを覚悟しましょう。
厚生労働省が認めた有料老人ホームとは?
いろいろな老人ホームの種類がありますが、これらの老人ホームは国からきちんと認可されているのでしょうか?
厚生労働省が老人福祉法で、老人ホームをどのように定義しているかを確認してみましょう。
老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。第十一項を除き、以下この条において同じ。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。
厚生労働省|老人福祉法 第二十九条(届出等)より一部引用
この法律で言われる「サービスの提供」は、運営施設が直接提供しなくても、外部との連携をとって適切に介護サービスが受けられる状態であれば良いとされています。
この定義によれば、今回ご紹介した中で有料老人ホームに当てはまるのは「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」だけです。しかし、あくまでも厚生労働省の定義付けの話ですから、当てはまる・当てはまらないの違いによって優劣はありません。
入居希望者にとってはどの施設も同じように比較検討すべきでしょうから、今回はすべての施設をご紹介させていただきました。
一覧表で確認!自分に合う老人ホームの探し方
ここまで登場した9種類の老人ホームを、簡単な一覧表にまとめました。
種類 | 運営 | 要介護度 | 認知症 | 費用 | 介護保険 | 入りやすさ |
サービス付高齢者向け住宅 | 民間 | 自立 | 受入不可 | 高い | 使える | ○ |
シニア向け分譲マンション | 民間 | 自立 | 受入不可 | 高い | 使えない | △ |
住宅型有料老人ホーム | 民間 | 自立~要支援 | 要相談 | 中間 | 使える | ○ |
介護付有料老人ホーム | 民間 | 自立~要介護 | 要相談 | 中間 | 使える | ○ |
グループホーム | 民間 | 要支援~要介護 | 受入可 | 低い | 使える | △ |
介護老人保健施設 | 公営 | 要介護 | 受入可 | 低い | 使える | × |
介護療養型医療施設 | どちらも | 要支援~要介護 | 受入可 | 低い | 使える | × |
特別養護老人ホーム | 公営 | 要介護 | 受入可 | 低い | 使える | × |
ケアハウス | どちらも | 自立~要介護 | 要相談 | 低い | 使える | △ |
先ほどの説明とこの一覧表から、自分の状況や目的に合う老人ホームをピックアップし、今度はその老人ホームを深堀りしてみましょう。
目的に合った老人ホームに集中して探すのが、寄り道しない上手な探し方ですね。
老人ホーム入居への流れ
目指す老人ホームが決まったら、次にはいよいよ入居に向けた準備です。
種類によって異なりますので一概には言えませんが、多くの老人ホームでは以下の流れをとります。
- 見学申し込み
- 見学
- 入居申し込み
- 面談(家族および本人)
- 審査(介護保険制度による審査含む)
- 契約
- 入居金支払い
- 入居
施設によっては介護保険制度の要介護認定や、入居予定者の収入、健康状態等により対象者が限定されていることがあります。
見学申し込み時や見学時に、必要に応じて相談しましょう。
費用面で不安のある方へ|高額介護サービス費制度の活用
老人ホームへの入居費用が本人や家族の家計を圧迫してしまう場合は、介護保険制度も活用しましょう。
世帯収入に対して介護費用が高額になりすぎた人に対しては、介護保険の高額介護サービス費制度により支払い費用が一部減免されます。
費用の支払い後に減免分のお金が返還される仕組みで、これは申請しないとお金が戻ってきません。役所の高齢者福祉窓口で相談を受け付けていますから、費用負担があまりにも大きいと感じたら相談してみましょう。
なお、ここで減免対象となるのは「介護にかかった費用」だけです。家賃や食事代、医療費などについては対象外となります。
まとめ
今回は、老人ホームの種類をざっくりと比較しながらご紹介しました。
これはと思う老人ホームが見つけられたでしょうか?
それぞれの特徴や違いが確認できたら、ここからが老人ホーム探しのスタートです。ご自身や親御さんに一番ぴったりな老人ホームを探すために、ぜひ老人ホームに詳しい専門家の力を借りてください。