- 10年以上日本に年金を納めていた方は海外移住後も年金をもらえます。
- 会社で確定拠出年金に加入していれば60歳以降引き出しが可能です。
- 年金の加入状況と支払い状況を正確に把握することが大切です。
今は仕事や家族の都合で海外移住することは難しいものの、老後は海外移住をしたいと考える方が徐々に増えてきています。
しかし、将来的な海外移住を考えている方の中には、海外移住後の資金について不安に思っている方が多いです。
そこで、今回は海外移住後の年金について解説していきます。
海外移住をしても年金を受け取ることは可能?
公的年金を受け取ることは可能
海外移住した場合でも、日本国内もしくは海外から公的年金を10年以上支払っていれば公的年金を受け取ることは可能です。
公的年金には生活費のために支払われる「老齢年金」のほかに「加入者に万一のことがあった場合に残された家族に支払われる「遺族年金」、病気や怪我をして障害が残った場合の「障害年金」の3つが含まれます。
しかし、一点注意するべきなのが、海外移住した場合には、原則20歳以上60歳未満の全ての国民に加入義務がある国民年金と厚生年金からなる公的年金の加入義務が生じないことです。
海外移住するタイミングが早く、公的年金の加入義務がなくなった後で公的年金に任意加入せず、公的年金を納めていた期間が10年未満となる場合、公的年金は全て掛け捨てになります。年金を受け取ることはできません。
海外移住を考えており、公的年金の支払い期間が10年未満なのであれば、国民年金を受け取るために、加入義務がなくなった後でも任意の国民年金に加入することをおすすめします。
60歳以降であれば確定拠出年金(iDeCo)も受け取ることが可能
確定拠出年金(iDeCo)は確定拠出年金法を根拠とした私的年金で、資金を加入者の指示で運用した結果の総金額が老後の受給額として支払われます。
つまり支払った分だけ年金を受け取れるということです。
任意加入ですが、会社員の場合、企業年金がないかわりに確定拠出年金で代用しているケースもあります。
確定拠出年金を支払っていれば、支払った同額分の確定拠出年金を受け取ることが可能です。(確定拠出年金は60歳以降でなければ引き出しができない点に注意しましょう。)
ただし、海外移住後は掛け金の追加ができなくなるので注意が必要です。
海外移住後に年金を受け取るためにやるべきこと一覧
海外移住後に年金を受け取るために海外移住前にやるべきことを順番に紹介します。
1. 海外移住の報告
海外への移住が決まった場合は、市町村役所に「海外転出届」を提出する必要があります。
その後に年金に関する手続きを行うので、余裕を持って提出しましょう。
2. 年金の加入状況の確認
自分が加入している年金の種類と金額、加入年月を確認しましょう。
3. 必要に応じで任意年金に加入
公的年金の加入期間が10年未満の場合、年金は掛け捨てになります。
そのため加入期間が10年以上になるように出国前に任意加入しましょう。
遡っての任意加入はできないため、出国前に加入しておくのが大切です。
4. 年金の支払い口座を用意する
年金の支払いに必要な銀行口座などを用意します。
なお既にある日本の口座を利用してもかまいません。
日本の銀行口座がない場合には、親族に任せるという手段もあります。(主に若いうちに海外移住する方が利用する方法です)
5. ねんきん定期便の転送届を提出する
年金に関わる個人情報を被保険者に通知する書類がねんきん定期便です。
転送届を提出することで、海外でもねんきん情報を確認できます。
年金の支払い漏れが発生しないように、ねんきん定期便の書類はしっかり確認しましょう。
6. 現況届を年金事務所へ提出する(毎年)
年に1回、「現況届」を提出する必要があります。
「現況届」は、「海外転出届」を提出後に誕生月の前月下旬に日本年金機構から発送されます。
移住先の日本領事館等で発行した在留証明書の取得を行い、「現況届」と一緒に提出を行いましょう。
「現況届」の提出を忘れてしまうと年金が受け取れなくなるので注意が必要です。
年金をあてに海外移住をすると悲惨な末路が待っている?
たしかに年金をしっかり支払っていれば、年金を受け取ることができます。
しかし、移住先の国の経済発展により移住先の国の通貨で換算した年金が下がる可能性は少なくありません。
その結果、現在は15万円で余裕のある暮らしができる国でも、10年後には25万円ないと余裕のある暮らしが出来なくなる可能性があります。
そのため海外移住先を選ぶ際には、VISAの取りやすさや現在の物価、治安だけでなく、その国の過去の経済状況や大手証券会社などが出している10年や20年後のGDP予想などを確認するのが重要です。
そして10年や20年間の間に大きな経済成長の可能性があり、生活が苦しくなる可能性がある国は避けましょう。
年金でも問題なく暮らせるおすすめの海外移住先
- 物価の安さ(将来的な経済状況を含む)
- 治安
- 言語
- ビザの取りやすさ
上記4点を評価基準にして、年金でも問題なく暮らせるおすすめの海外移住先を紹介します。
タイ:月収15万円でも十分に暮らせる
50歳以上で80万バーツ(240万円)の現金預金維持もしくは、6万5千バーツ(20万円)以上の年金受給などを条件にリタイアメントビザを取得可能です。
タイの現在の一人あたりGDPは約5,900ドルとなっており、首都のバンコクでも約13,000ドル程度です。
日本の一人あたりGDPは39,000ドルのため、単純に計算すれば日本の3分の1の一人当たりGDPとなります。
バンコクで10万円を払うと、日本で30万円分の暮らしをすることが可能です。
また日本人のコミュニティーが発達しており、海外でも日本と同じような暮らしができるというのも人気のポイントです。
ただしPwC、ゴールドマンサックス、21世紀政策研究所などの予測によると、2030年までにタイの一人あたりGDPは2015年と比較して340%伸びるといわれています。
そのため、現在60歳で移住する場合、70歳になる頃には、同じ資金だろ生活水準が大きく下がる可能性が高いです。
今の時点で余裕があるからといって比較的物価の高いバンコクに住むのではなく、バンコク以外の都市に住むことも検討することをおすすめします。
フィリピン:英語さえできれば問題なし
50歳以上の方であれば2万ドルをフィリピン退職庁の指定銀行へ定期預金することで、特別居住退職者ビザを取得することができます。
特別居住退職者ビザを持っていれば、無期限でフィリピンに居住することが可能です。
2万ドルは預金し続ける必要がありますが、万が一キャンセルした際には全額返還を受けることができます。
フィリピンでは英語が通じるため言葉の壁が少なく、人々は明るい人柄だといわれ、食文化も日本に似ている点が多いです。
そのため比較的簡単に馴染むことができます。
日本外務省によると、2016年時点でフィリピンに移住している日本人の数は5,000人以上です。
フィリピンの現在の一人当たりGDPは約2,900ドルと、タイの半分程度。
さらに経済成長が緩やかなため、2030年の時点でも一人当たりのGDPは約7,400ドル程度といわれています。
収入が同じであれば、将来的に生活水準が下がることは避けられませんが、年金が10万円もあれば、生活できるはずです。
ただフィリピンは治安があまり良くありません。
犯罪発生件数が多く、殺人事件は日本の約10倍,強盗事件は日本の約9倍となります。
また外国人は比較的裕福な人が多いため犯罪の標的とされやすいです。
さらに金銭トラブルに巻き込まれる方も多いので、移住の際には注意が必要です。
ウクライナ:最安で移住できるヨーロッパの国の1つ
ウクライナは10万ドル(約1,100万円)以上の不動産投資を行うことで、永住権を獲得することが可能です(個人として不動産を購入するのではなく、ペーパーカンパニーなどを立てて事業投資として行う必要があります)。
上記2カ国に比べると移住のハードルが高いですが、他のヨーロッパの国と比較するとウクライナの海外移住のハードルははるかに低いです(低予算で居住できるといわれているギリシャでさえ25万ユーロ(約3,300万円)の不動産投資が必要になります)。
ウクライナは自然が豊かな国でありながら、中世ヨーロッパの街並みを楽しむことができる国として人気です。
またロシア人はあまり笑わず、冷たいイメージを受けるという方も多いですが、ウクライナ人は親切で暖かい方が多いといわれています。
そしてウクライナの最大の魅力はヨーロッパの国でありながら、物価が非常に安い点です。
2018年時点での一人当たりGDPは3,100ドルとタイよりも小さく、2030年時点の一人当たりGDPは1万ドル程度だといわれています。
そのため収入が変わらずとも生活水準を落とすことなく、生活していくことが可能です。
海外移住後の年金に関して質問がある方
このページでは海外移住後に年金を貰うことができるのかを中心に、海外移住におすすめの国を紹介してきました。
海外移住をしたいと考える方が増えてきていますが、実際に海外移住した方から話を聞く機会はほとんどないため、不安に思っている方も多いはずです。
国内での移住とは異なり、海外移住では環境がすべて変わってしまいます。
十分な情報収集と、漏れのない準備が必要です。
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