・海外移住者約50万人(2017年時点)、増加傾向にあり
・海外移住すれば、費用を抑えてセレブ生活を味わうことができるから
・一方で、日本と比較すると治安や医療など不安はあるので事前調査必須!
外務省が公開している海外在留邦人数調査統計によると、2017年10月時点で海外に永住している日本人は50万人。
永住者は前年よりも約3.4%増加しており、身近なものになりつつある海外移住。このページでは老後に海外移住するデメリットとメリットを紹介していきます。
老後に海外移住するデメリット
老後に海外移住するメリットは大きいですが、デメリットもあります。主に医療・言語・生活全般・人間関係のデメリットです。
医療の問題
ロイター通信が報じた「医療制度に対する満足度調査」によると、日本の医療満足度は15%と先進・新興国22カ国の中で最も低い数値です。
しかし日本のがんの5年生存率は先進国トップクラスとなっており、医療レベルは高いといえます。また日本の看護師のように、入院患者のベッドメイキング、食事の配膳、風呂上がりの患者の体を拭くことは欧米やアジアの国でもほとんど見られません。さらにOECDの統計によると国民一人あたりの医師にかかる回数の平均は、加盟国平均が6.6回程度なのに対して、日本では12.9回と約2倍となっています。
国際的に権威のある専門誌Lancet(ランセット)が発表した世界各国の医療レベルをランキング化した調査によると、日本は11位となっています。
若いうちは医者のお世話になる機会が少ないため、海外移住先の国で十分な医療を受けられず、苦労することは少ないかもしれません。しかし老後海外移住した場合、日本と同じ水準の医療サービスを受けるのは困難です。
また医療費用の負担も大きくなる可能性があります。日本人の平均寿命は男性は約80歳、女性は約85歳ですが、健康寿命はそれぞれ70歳と75歳だといわれています。現在は健康でも老後は医療を受ける機会が受ける可能性があるため、海外移住先の国を選ぶ際には、その国に医療制度も入念に調査しましょう。
ただ近年アジアのメディカルツーリズムが成長を遂げています。米国や欧州、中近東などの医療費の高い国の利用者をメインターゲットとし、政府主導のもと、外国人や富裕者向けの医療機関の建設を後押ししている状況です。1000を超える審査項目をクリアしなければならないJCI認証を取得し、ホテル並みの設備を備え多言語に対応する病院もあります。資金的な余裕があれば、海外移住先でも老後十分な医療を受けることができるはずです。
言語面でのストレス
海外生活ではストレスがかかる場面が多くあります。まず言葉の壁によるストレスです。例えば東南アジアを海外移住先として選んだ場合、フィリピンなど英語が通じる国もありますが、母国語が英語でない国に移住すれば、英語を話せたとしても現地人とのコミュニケーションには苦労します。また外国語を話すことができる場合でも、言葉の壁によるストレスを感じるはずです。
言語によるコンテクストの違いを表している次の画像をみてください。
日本語はハイコンテクストな言語です。民族的には単一民族で、地理的にも島国で他の国と隔離された日本では会話の前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態となっています。
そのため日本語の会話では1を聞いて10を知ることが可能で、言葉を尽くして説明することはありません。しかし英語やその他のローコンテクストな言語では、10を伝えるのに、10や時には50の説明が必要になります。そのため日本語を話す感覚でコミュニケーションをとると「自分の言っていることを理解してもらえない」という印象を抱くことになることが多いです。
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生活の利便性の低下
日本には物が溢れており、欲しいものがあればお金さえあればいつでも手に入ります。例えば日本のコンビニは品揃えがよく、食料品だけでなく、一通りの必要なものはコンビニに行けば24時間いつでも手に入ります。またお腹が減れば、安くて美味しいご飯をどこでも食べることが可能です。
しかし海外では必ずしもそうはいきません。近くに美味しいと感じる飲食店が一つもなく、コンビニにある食料品の質が低く、さらに夜になってしまえばコンビニが閉まってしまうということもあります。またスーパーで買い物をするにも、1つのお店では商品が揃わず、何軒ものスーパーをはしごすることも多いです。そのうえ行く日によっては生鮮食品の質にばらつきがあり、先週は美味しく食べられた野菜が今週は萎れているということもあります。
日本にいる間は、日本の生活が非常に便利なものだと気が付きにくいかもしれません。しかし認識している以上に日本の生活は便利です。海外移住の目的が何であれ、その目的のためには多少の利便性の低下には目を瞑るしかないでしょう。(なお後述するように、資金の余裕があれば、徒歩数分で大きいショッピングセンターがある場所に住むことも可能なため、利便性の低下は心配する必要はありません)
人間関係の難しさ
老後に海外移住する場合でも、現地で人間関係を築く必要があります。しかし多くの場合、日本人にとって海外で人間関係を築くのは難しいようです。1億人以上が利用している無料性格診断テストサービスを提供している「16personalities」の調査によると、日本人は世界で内向的な人が最も多い国だといわれています。典型的な日本人は社交的な場が苦手で、苦痛に感じることが多いです。日本では内向的な人がほとんどのため、自分が内向的な人間であると認識することは多くないかもしれません。しかし海外で現地人と交流すると、外国人の外向性に圧倒され、付き合いづらいと感じることがあるでしょう。
なおマレーシアやタイなど、海外移住している日本人が多い国では、日本人コミュニティーが存在するケースが多いです。留学などの際には「現地にいる日本人同士でつるむな」と言われることがあります。しかし海外移住のように、現地に長く滞在することがわかっている場合は、まずは現地の日本人コミュニケーションのメンバーと親しくなり、情報交換などをして、セーフティーネットをつくってから現地人のコミュニティーに溶け込めば良いでしょう。
老後に海外移住するメリット
ここまで紹介してきたように、老後に海外移住することにはデメリットもあります。それでも海外移住する方が増えているのは、老後に海外移住することには大きなメリットがあるからです。
生活費が安くなる
海外移住先として選ぶ国によっては、老後も日本で暮らし続けるよりも生活費が安く済みます。2019年金融庁は「老後の資金として2000万円必要である」という報告書を提出しました。平均的な高齢者夫婦は年金として月に20万円程度受け取る一方、支出は25万円程度であるため、毎月5万円の赤字が発生し、年金だけで生活すると30年間で2000万円の赤字になるという試算に基づくものです。
自民党政府は後に金融庁に報告書の撤回を求めますが、多くの専門家がこの試算を事実として認めています。そもそも現在の年金制度が作られたのは平均寿命が70歳を割っていた頃です。現在では当時から10歳以上も寿命が延び、少子高齢化が進んでいる状況を考えれば、年金だけで老後の生活が賄えなくなる可能性が高いのは当然です。
しかし日本に住んでいれば月に夫婦で25万円程度かかる生活費も、物価の安い国に海外移住してしまえば、安く済ませることが可能です。ここではフィリピンの物価を例に紹介します
現在マニラでは安い場所では、月に1万円程度の賃料でアパートを借りることができます。また3万円程度で2LDKの家を見つけることも可能です。(夫婦2人で暮らす場合を想定しています)さらに家賃以外の物価も安く済みます。下の表はExpatistanの情報を元にいくつかの東京とマニラのいくつかの項目を抜き出し、価格を比較したものです。
項目 | 東京 | マニラ |
一般的昼食(外食) | 1,200円 | 500円 |
ファーストフードのセット | 900円 | 400円 |
鶏胸肉500g | 600円 | 200円 |
牛乳1L | 200円 | 150円 |
トマト1kg | 700円 | 150円 |
チーズ500g | 900円 | 350円 |
コーラ2L | 300円 | 150円 |
公共料金 | 12,000円 | 5,600円 |
カプチーノ | 500円 | 350円 |
ビール | 600円 | 200円 |
牛乳など大きな価格差がない項目もありますが、多くの項目において、マニラでは東京の半額程度となっています。フィリピンは日本人に人気の海外移住先の中でも、特に物価が安い国だということには注意する必要がありますが、老後に海外移住することで生活費を安くすることが可能です。
プチセレブ生活を満喫できる
日本では月に30万円程度の生活費の予算があったとしても、待っているのはごく普通の生活です。しかし物価の安い国にいけばプチセレブ生活を満喫することが可能です。
例えばマレーシアはプチセレブ生活を満喫するのにピッタリの国だといえます。次の画像をみてください。
寝室3部屋に3つのお風呂、さらに写真のように美しい眺めを楽しみながら泳ぐことができるプールやバルコニー付きのマンションが月に83,000円程度で借りることが可能です。
さらにもう少し予算が出せるのであれば、さらに豪華な生活を満喫できます。次の画像は2019年現在に実際に不動産会社が月額117,000円で出しているマンションの写真です。
最寄駅から歩いて数分、最寄のショッピングセンターから徒歩10分程度の好立地です。
広々とした寝室が3部屋あります。
マンション内で、インクラインベンチプレスもある充実したジムスペースを利用可能です。
そして最後はプールです。このマンションは一例に過ぎず、似たようなマンションがいくつも存在します。10万円程度あれば、プール付きのマンションを探すのに苦労はしないでしょう。(なおマレーシアは2030年までの約10年間ほどで一人あたりの購買力平価ベースのGDPは2倍ほどになるといわれています。GDPの上昇とともに物価や賃料も上がるため注意が必要です)
老後の海外移住で後悔しないために
このページでは老後に海外移住をするメリットとデメリットを紹介してきましたが、実際には海外移住先として選ぶ国や地域によっては、メリットを享受できないことや、デメリットに直面しないことがあります。海外移住する日本人が増えて来ているとはいえ、インターネットなどを通して調べることができることばかりではありません。
そのためまずは海外移住をする前に、可能であれば3か月程度実際に現地で暮らしてみることをおすすめします。そしてその土地が気に入れば移住を決定し、合わないと感じれば他の移住先を探すこともできます。
「百聞は一見にしかず」という言葉の通り、自分自身で移住先を確かめてみてください。