- 遺言書にかかる費用は作成方法により異なる
- 年単位で保管が必要な遺言書は保管費用についても検討が必要
- 遺言書に大切なのはコストだけでなく確実性と安全性
2020年の相続税法改正をきっかけにして、上手に節税しながらトラブルのない相続をするために遺言書を書いておこうと考え始める人が増えています。
しかし気になるのがお金の問題です。遺言書を作成するには費用がどのくらいかかるのでしょうか。
今回は遺言書に関する、なかなか人には聞きづらいお金の話を解説します。
遺言書にかかる費用は作成・保管の両方を考える
費用を考える前に、まず遺言書は「書けば終わり」ではないことを知っておきましょう。
遺言書を書いてから亡くなるまで、どのくらいの月日がかかるか誰にもわかりません。遺言書を書いてすぐのケースもあれば、何年後・何十年後になるケースもあり得ます。
どの時点で亡くなったにしても遺言書が家族や親族の手に確実に届くようにするためには、遺言書を適切に保管しなければいけません。
そのため遺言書にかかる費用も「作成」と「保管」の両方を考えておく必要があります。
遺言書作成費用はいくらかかる?相場を確認
遺言書を作成するにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
自分1人で作成した場合と、公証役場に行って作成した場合、弁護士や司法書士などの士業の専門家にサポートを依頼した場合と、それぞれの相場を確認しましょう。
自分で作成した場合
遺言書を自分1人で作成する場合は、紙とペン以外の費用はかかりません。
以下にご紹介する作成方法に比べ、もっともお金をかけずに作成できる方法です。
ただし遺言書の作成には細かい法律上の決まりがあるため、間違いない遺言書が作れているかどうかは十分に確認する必要があります。
当社では500円で自筆証書遺言のチェックができるサービスを提供しています。できるだけ費用をかけずに遺言書を自分で作成したい人はご検討ください。
公正証書遺言にした場合
公正証書遺言を公証役場で作る際の手数料は財産の額によって異なります。
参考
Q. 公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらいかかるのですか?日本公証人連合会
例えば預貯金1,000万円、自宅不動産の評価額3,000万円、合計4,000万円分の相続指示を公正証書遺言に記した際の手数料は29,000円です。
また証人2名を公証役場に頼むときには証人1名につき10,000円かかります。
弁護士に依頼した場合
遺言書作成サポートを弁護士に依頼する際の費用は20~30万円が相場となります。
ただし、この金額はあくまでも遺言書を作成するときにかかる費用であり、遺言の実行に際して発生したトラブル等の解決については別料金が必要です。
また、遺言書を公正証書遺言にする場合には公証役場への支払いが、不動産登記を司法書士に依頼した場合には司法書士への支払いが別途発生など、弁護士への支払い以外にも費用がかかるケースがあります。
司法書士に依頼した場合
遺言書作成サポートを司法書士に依頼した際の費用は7~15万円程度で、弁護士よりも比較的相場が安めです。
遺言書を公正証書遺言にする際、別途公証役場へ支払いが発生する点については弁護士と同様です。
行政書士に依頼した場合
遺言書作成サポートを行政書士に依頼した際には一般的に5~7万円の費用が発生します。
いわゆる士業の専門家の中では、この行政書士が一番安価となります。
公正証書遺言にする際の別途費用に関しては弁護士・司法書士と同様です。
遺言書作成費用の比較表
上記それぞれの費用をわかりやすく一覧表にまとめました。
以下の金額は一例ですので、実際の費用はご自身の状況や各相談先に確認してください。
自分で作成 | 0円 ※ワンコインチェックすると確実 |
公証役場で作成 | 29,000円 ※財産額4000万円の例 |
弁護士に依頼 | 20~30万円 ※公正証書遺言は別途費用発生 ※不動産登記は別途費用発生 |
司法書士に依頼 | 7~15万円 ※公正証書遺言は別途費用発生 |
行政書士に依頼 | 5~7万円 ※公正証書遺言は別途費用発生 |
遺言書保管費用はいくらかかる?相場を確認
次に、作成した遺言書を保管するときの相場を確認しましょう。
自宅や公証役場、士業事務所での保管に加え、貸金庫や信託銀行で保管する場合、また2020年より始まった法務局での遺言書保管に必要な費用についても説明します。
自宅で保管した場合
自宅に遺言書を保管する際には、もちろん費用は一切発生しません。
貸金庫で保管した場合
銀行の貸金庫に遺言書を保管するときの費用は、各銀行の設定費用や貸金庫の種類により異なります。
一番小さなサイズを借りたときの費用の相場は、年間16,000~20,000円です。なお銀行によっては簡易金庫やセーフティボックスなど比較的安価な貸金庫もあります。
画像引用:三菱UFJ銀行|貸金庫
公証役場で保管した場合
公正証書遺言を公証役場で作成した場合、原本は公証役場で保管されるのが前提です。保管のために公証役場に別途保管料を支払う必要はありません。
なお自筆証書遺言を公証役場で保管することはできません。
法務局で保管した場合
自筆証書遺言保管制度を利用して遺言書を法務局に預ける際には申請書に3,900円の収入印紙を貼付します。
この3,900円は申請時のみにかかる費用です。別途保管料を支払う必要はありません。
遺言書の法務局保管については以下の記事なども参考にしてください。
士業事務所で保管した場合
弁護士・司法書士・行政書士などが遺言書を保管するのは、いずれも各士業が作成サポートを行った遺言書に対して提供される付帯サービスです。
自分で、また第三者が作成した遺言書を保管してくれる士業事務所はほとんどありません。また、そもそも保管サービス自体を受け付けていないケースもあります。
保管サービスが提供されている場合の料金は無料~年間10,000円程度です。
遺言信託サービスを利用した場合
遺言信託サービスを利用して信託銀行等で保管してもらう際の費用は年間6,000~10,000円が相場です。
ただし遺言信託サービスは遺言書作成から保管~遺言執行までをトータルで行うサービスであり、一般的には少なく見積もっても130万円以上の費用が発生します。
画像引用:三井住友銀行|遺言信託
遺言書保管費用の比較表
上記で説明した保管料を一覧表にまとめました。
表にあるそれぞれの金額は1年分の保管料です。保管する年数により最終的な金額は異なります。
自宅で保管 | 0円 |
公証役場で保管 | 0円 |
法務局で保管 | 0円 ※申請時のみ3,900円かかる |
士業事務所で保管 | 0円~10,000円/年 |
貸金庫で保管 | 16,000~20,000円/年 |
遺言信託サービスを利用 | 6,000~10,000円/年 |
遺言書は費用に加えて確実性・安全性が重要要素
上記の説明のとおり、遺言書の作成・保管ともに、もっとも費用が安価になるのは「自分で作成して自宅で保管する」方法です。
しかし、遺言書で大切なのは費用だけではありません。法律にのっとった正しい形式で“確実に”作成し、紛失や改ざんの心配なく“安全に”保管する方法をとる必要があります。
確実で安全、かつ低コストな遺言書の作成方法がどれになるかは、遺言書を書く人の状況により異なります。
相続トラブルの心配が比較的少ない人はコストを優先し、逆に相続に関する不安要素が多い人は費用をかけてでも、より安全な方法を取った方がいいでしょう。
自身の状況を冷静に見極め、費用・確実性・安全性のバランスがもっとも良い方法を検討してください。
まとめ
今回は遺言書の作成・保管にかかる費用を比較しました。
大切な家族に資産をできるだけ多く相続するには、生前からコスト意識を持つことが重要です。それは遺言書にかかる費用についても例外ではありません。
ちょっとしたコスト意識が後々の家族の安心につながることを考え、遺言書作成に際してもしっかりしたコスト管理をしましょう。