- 海洋散骨とは海に故人の遺灰や遺骨を放つ「自然葬」の一種
- チャーター散骨・共同散骨・代行散骨が選べる
- 違法ではないが自治体ごとにルール有、トラブル防止策が必要
- 海洋散骨アドバイザーからは後悔しない海洋散骨の方法が聞ける
母なる海 とも言われるように、海は私たちの生命の源です。
自分の死後は海に散骨して欲しい…と希望している人は、自然の一部に還りたいと願っているのかもしれませんね。
広大な海にロマンを感じている人や、海が大好きで離れたくないと思っている人もいるでしょう。
遺された家族にとってみても、故人が海の一部になって、いつでも海を見れば故人がそこにいると感じされるのは心のなぐさめにもなります。
日本では海洋散骨が認められていますが、具体的にはどのようにして散骨を行うのでしょうか?
費用はいくらか、違法ではないのかなど、疑問点もいろいろあります。
今回は、海に遺骨を流す海洋散骨について学びましょう。
海洋散骨とは?
海洋散骨は、海に故人の遺灰や遺骨を放つ「自然葬」の一種です。
一般社団法人日本海洋散骨協会では、海洋散骨を以下に定義しています。
海洋散骨は、祭祀の目的をもって、故人の火葬したあとの焼骨を海洋上に散布することをいいます。
お墓に納骨しないため、先祖代々のお墓を持たない人でも新たにお墓を購入する必要がありません。
現代の核家族化や少子高齢化に伴い、墓守となる子供がいない家庭を中心に人気が高まっています。
費用が比較的少なくてすむ点も、海洋散骨を選ぶ人が増えている理由です。
海洋散骨のやり方
海洋散骨の基本的なやり方は、船で沖合いまで行ってパウダー状の遺骨を撒くのが一般的です。
自分自身で海に行き散骨することも可能ですし、業者に遺骨をお預けして散骨してもらうこともできます。
多くの業者が用意している海洋散骨プランは、おおむね以下の3種類です。
チャーター散骨(家族海洋葬)
船を一隻チャーターして親族や身近な友人だけで遺骨を撒くのが家族海洋葬です。
他の人に邪魔されずに、落ち着いた気持ちで故人を偲ぶことができます。
また貸し切りの船なので、日時を好きに設定できるのもメリットです。
特定の記念日などにあわせて海洋散骨を行いたい場合には、スケジュールの希望が言えるチャーター散骨がおすすめです。
共同散骨(合同海洋葬)
複数の家族が同じ船に乗り込み、一緒に散骨を行うのが合同海洋葬です。
船をチャーターするよりも費用が安価にすむのがメリットです。
他の家族が一緒とはいえ、遺骨を撒くタイミングは家族ごとにずらして、全員の遺骨がゴチャマゼにはならないように配慮している業者も多いようです。
ですが、業者によっては同時に執り行うケースもあるので、どのような配慮をしているかについては依頼前によく確認した方が良いでしょう。
また、散骨を希望する組数が想定の乗船人員まで達しない場合には、出航しない可能性もあります。
日程については複数希望を伝えておいた方が良いでしょう。
代行散骨(委託海洋葬)
散骨業者に遺骨を預けて、代行で海に散骨してもらうのが委託海洋葬です。
さまざまな事情により、家族が海まで行けない場合に選ばれています。
また、チャーター散骨・共同散骨よりもさらに費用が安いのが魅力的です。
ですが、業者への委託となると、ちゃんと散骨してくれるかどうか不安ですよね。
きちんとした散骨業者であれば、海洋葬の写真を撮影するなどして散骨の証明を行っています。
また、日本海洋散骨協会に加盟している散骨業者の場合、散骨した後で「散骨証明書」を発行する義務があります。
散骨した場所も緯度・経度で示されているので、どこで故人が眠っているのかもわかるようになっています。
海洋散骨までの流れ
上記のやり方によっても違いはありますが、一般的には海洋散骨は以下のような流れで執り行います。
業者は以下Webサイトからも探すことができます。
加盟事業者は地域ごとに支部が分かれていますので、散骨したい地域の支部ページを開いてチェックします。お住まいの地域ではない点に注意してください。
業者より提示される見積金額と出航スケジュール、散骨海域などをよく確認し、家族でじっくり相談しましょう。
多くの場合、費用は前払い制です。業者によっては海洋散骨当日の現金清算も選択できる場合があります。
また、一部の業者では申し込み時に同意書の提出が必要です。
海洋散骨では、家族や親族の意見が一致していないと思わぬトラブルの原因にもなりますので、事故や事件を防止するためにも必要となってきます。
ほとんどの海洋散骨業者では、粉骨も行ってくれます。
自分たちの手で遺骨を加工してあげたいとお考えの場合には、業者にまかせずに自分たちで粉骨することもできます。
その場合、遺骨の引き取りや郵送は不要です。
撒き方は、粉状の骨をサラサラと撒くか、水溶性の袋などに入れて海に落下させる方法があり、業者によって異なります。
僧侶による読経などは行いませんが、散骨した箇所で献花や献酒をして、黙祷で故人に祈りをささげるのが一般的です。
業者によっては一周忌や三回忌なののタイミングにあわせて、メモリアルクルーズを企画しているところもあります。
海洋散骨の費用
海洋散骨にかかる費用の相場は、業者によっても違いますし、選択するプランによっても違います。
一例として、以前NHKの「クローズアップ現代」でも採りあげられた東京都港区の海洋散骨業者「ブルーオーシャンセレモニー」の料金設定をご紹介します。
- チャーター散骨プラン
価格(平日):税抜250,000円
価格(土日):税抜270,000円 - 合同乗船散骨プラン(1組2名まで乗船)
価格:税抜120,000円 - 代行委託散骨プラン(遺骨1柱)
価格:税抜50,000円
また、船舶免許があり自分で沖合いまで行けるという人でしたら、レンタルボートを借りる手もあります。
この場合、半日貸切で7,000~20,000円程度ですみます。
ですが、散骨に際しては細かい自治体ルールなどもありますので、この方法はあまりおすすめできません。
海洋散骨に関する法律
海洋散骨は日本の法律上、違法ではありません。
法務省では、海洋散骨について以下のような見解を述べています。
刑法190条の遺骨遺棄罪の規定は、社会的風俗としての宗教的感情を保護するのが目的であり、葬送の目的として、相当の節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない
また、厚生労働省が定める墓地埋葬等に関する法律でも、もともとが火葬や遺体の埋葬(土葬)や遺骨の埋蔵が対象なため、散骨は法規制の対象ではありません。
しかし先ほどもご説明したように、各自治体では散骨をする人に対してルールを定めていることが多いです。
東京都の例を見てみましょう。
海や川での散骨では、水産物などへの風評被害が生じるおそれがあります。また、山での散骨では、土地所有者や近隣の人とのトラブルが生じた例、撒かれた骨を目にした人からの苦情や農産物への風評被害のおそれがあります。
こうしたトラブルが生じないよう、人々の宗教的感情に十分に配慮することが必要です。
具体的には、沿岸ではなく沖合いに散骨する・漁船や海上交通の要所を避ける・遺骨はパウダー状に粉骨して形が残らないようにする、などの配慮が求められます。
トラブルの元にも!海洋散骨ではここに注意
上記でご説明したように、海洋散骨では各所に対してさまざまな配慮をする必要があります。
「全部海に撒いちゃえば楽チン!」とばかりに気軽に海洋散骨をしてしまうと、大きなトラブルを招く恐れがあります。
海洋散骨をしたために起こったトラブル事例も、念のため確認しておきましょう。
親族や菩提寺のトラブル
本人や同居の家族が海洋散骨を希望していても、他の親戚に相談をしていなかったがためにトラブルになるケースがあります。
海洋散骨だとお墓がありませんから、墓参りをしたい親族から不満が出るかもしれません。
海洋散骨を本人が希望している場合は、エンディングノートなどで自身の意向をはっきりとさせておいた方が良いでしょう。
また、先祖代々のお墓がある家庭の場合は、納骨しない事実に菩提寺が腹を立てる可能性もあります。
「海が好きだから」などの理由で海洋散骨を望む人は、遺骨の一部だけを海に撒き、残りの遺骨は従来どおりの方法でお墓に納めるのも一案です。
業者選びのトラブル
海洋散骨を依頼する業者選びを間違えてしまうと、これまたトラブルの元になります。
自治体の許可を得ていない業者や、きちんと粉骨しないままに散骨する業者も中にはいるようです。
果ては、遺骨を預かっただけで散骨せずに捨ててしまうような業者でしたら、故人の供養にもなりませんよね。
価格だけで選ばず、信頼のおけるきちんとした海洋散骨業者を選ぶことが、トラブル防止に役立つでしょう。
そのために、海洋散骨アドバイザーのアドバイスを求めるのも良い案です。
海洋散骨アドバイザーは、海洋散骨についてアドバイスができる認定資格です。
宗教・供養・法律・マナー・環境の観点から、トラブルのない適切な海洋散骨ができるように助言を行ってくれます。
まとめ
今回は、海を愛する人たちの間で人気が高い海洋散骨について解説しました。
ロマンがあり費用も比較的安い海洋散骨ですが、反面トラブルも多発しています。
やりなおすことができない海洋散骨ですから、関係者全員がしっかり事前に話し合い、業者についても慎重に選びましょう。
海洋散骨アドバイザーに話を聞くなどして、後悔のない海洋散骨を行ってください。
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