- グリーフケアとは遺族等の悲嘆をやわらげるケア
- 喪失感により精神的・肉体的・行動に影響が出てきたらグリーフケアが必要
- グリーフケアは「悲しみを肯定する」ところから始まる
- 専門家などの第三者にグリーフケアを依頼することもできる
家族など身近な方を亡くしたときには、人は深い悲しみに襲われます。
それは当然の話かもしれませんが、悲しみが深すぎるあまりに心身に不調をきたして、元の日常になかなか戻れない方もいます。
誰かを永遠に失った喪失感や悲しみに寄り添い、ケアする手段をグリーフケアと呼びます。
今回はグリーフケアについて、グリーフケアが必要になるのはどんな状況か、グリーフケアの方法、相談先などについて解説します。
グリーフケアとは
グリーフケアとは「悲しみ(Grief)」と「ケア(Care)」を組み合わせた言葉です。日本では
別名「遺族ケア」や「悲嘆ケア」などとも呼ばれています。
グリーフケアの言葉が作られたのは1960年代頃と言われています。アメリカやヨーロッパで少しずつ広まり、日本国内では2005年に発生した福知山線脱線事故や、2011年の東日本大震災を機に注目されるようになりました。
大切な方を亡くした悲しさや寂しさは、突然に事故や災害で家族を亡くした方であっても、病気や老衰で家族を亡くした方であっても変わりません。グリーフケアは故人の死亡理由に関係なく、遺された人の喪失感を和らげるために行われます。
またペットを家族の一員と考えている方も少なくありません。そのような方にとっては、愛愛のペットが死んだペットロスも、人が亡くなったときと同じくグリーフケアの対象になります。
愛するペットとできるだけ長く一緒にいたいと願っている方は、以下の記事なども参考にしてください。
グリーフケアを必要とする状況
大切な方を亡くしたら、悲しい気持ちになるのは誰しも同じです。
そのためすべての遺族に対してグリーフケアは必要になりますが、以下のような精神的・身体的な反応や行動の変化が生じている方には、特にグリーフケアが必要だと考えられます。
精神的な反応
孤独感・絶望感・非現実感・自責の念・憂鬱・不安・怒り・周囲に対する敵意・感情の麻痺
上記のような精神状態にある、周囲から見てそのような感情を抱いていると思われる方にはグリーフケアが必要です。
身体的な反応
睡眠障害・食欲の減退・体力低下・疲労感・めまい・動悸の乱れ・胃腸不調・呼吸障害・頭痛や嘔吐・アルコールや薬への依存
上記の身体的症状には何らかの病気が隠れている可能性もありますが、病院で検査をしても原因が見つからない場合には、深い悲しみが自律神経などに影響を及ぼしているものと考えられます。
日常生活や行動の変化
いつもぼんやりしている・突然涙があふれる・落ち着きがなくなる・うつ状態になり引きこもる・体の限界を超えて動き回ろうとする
上記のように悲しみが日常生活にまで侵食してきたら、直ちにグリーフケアが必要な状態です。
グリーフケアの方法
グリーフケアには特別なスキルや能力は必要ありません。遺族と近しい立場にある方や、また自分自身で行うセルフケアも可能です。
以下からはグリーフケアの方法をいくつかご紹介します。
悲しみを肯定する
グリーフケアの第一歩は「悲しみを肯定する」ところから始まります。
誰かを亡くして悲しいと思う気持ちは自然な感情です。悲しみを押さえ込み、無理に明るくふるまう必要はありません。
まずは遺族自身が「自分は悲しい・寂しいと思って当然なんだ」と、悲しい気持ちにある自分を許してあげる必要があります。
思いを第三者に話す
周囲に心配をかけまいと、自分の気持ちをなかなか打ち明けられない人もいます。
しかし沈黙している分だけ、自分の中にある悲しみは増幅します。故人を亡くした辛さを第三者に話すことは、自分が抱えている心の中の荷物を手放すために有効なグリーフケアです。
故人に手紙を書く
第三者ではなく、故人に対して悲しい気持ちを打ち明けることもグリーフケアの役に立ちます。
東日本大震災の後に岩手県陸前高田市で「漂流ポスト」が設置され、地震や津波で亡くなった方に宛てた手紙が多く投函されました。
参考
岩手・陸前高田「漂流ポスト」、大槌「風の電話」 忘れられない思い受け止めて中日新聞
故人への手紙は必ずしも投函する必要はありません。仏壇などに忍ばせておくのも良いでしょう。
セレモニーを行う
葬儀は故人とのお別れをするセレモニーであり、遺族や身近な方の心に区切りをつけるグリーフケアとしての側面があります。
葬儀のときにはまだ死去から日が浅く、ゆっくりお別れもできなかったと後悔している方は、改めてセレモニーの場を設けるのも良いでしょう。
手元に残しておいた遺骨を海洋散骨し、遺骨とともに自分の悲しみを海に流そうと考える方もいます。
海洋散骨については以下の記事で詳しくご紹介しています。
思い出の品を手元に置く
故人の思い出の品を手元に置き、いつでも故人が身近にいるような安心感を得る手段も、グリーフケアの一環です。
故人が愛用していた品物ではなく、故人の遺骨自体を手元に残しておいてもかまいません。
遺骨の一部、または全部を手元に置いて保管する供養方法を手元供養と言います。
手元供養の方法については以下の記事を参考にしてください。
グリーフケアを受けたい方は
上記でご説明したグリーフケアは誰でも行えます。
ですが自分ではうまくグリーフケアができない方や、身近に頼れる人がいない方は、グリーフケアの知識を持った専門家にアドバイスを受けると解決の糸口が見つけやすくなります。
専門家からグリーフケアを受けたい方は以下の場所などで探してみましょう。
グリーフケア外来
まだ少数ではありますが、精神科や心療内科・メンタルクリニックの中にはグリーフケアに特化した専門外来が存在します。また緩和ケア病棟のある病院では、患者が死去した後の遺族のメンタルケアを目的としてグリーフケア外来を設けている場合もあります。
お住まいの地域でグリーフケア外来・遺族ケア外来を行っている病院やクリニックを検索してみることをおすすめします。
グリーフケアアドバイザー
グリーフケアアドバイザーとは一般社団法人 日本グリーフケア協会が認定している、グリーフケアに精通したアドバイザーです。
ただしグリーフケアを専門業務として行なっているアドバイザーはほとんど存在せず、一般的には看護師や僧侶、カウンセラーなどの仕事をしている人がグリーフケアアドバイザーを兼任しています。
日本グリーフケア協会の研修を受けた認定アドバイザーは、以下のような場所で探せます。
画像引用:日本グリーフケア協会|ケアを生かす現場
遺族の集い
同じ思いを持つ者同士で、素直な気持ちを打ち明け合って互いに寄り添うことも、有効なグリーフケアです。
住民の心身の健康を促進するために、行政と民間とが一体となって遺族支援に取り組んでいる自治体もあります
以下は東京都内で行われている各市区町村の例です。お住まいの地域の自治体で遺族支援の情報を探してみましょう。
まとめ
今回はグリーフケアについて解説しました。
悲しみからは、なかなか立ち直れないかもしれません。しかしその悲しみに心が押しつぶされてしまう状態が続くのは、きっと故人としても本意ではありません。
グリーフケアで悲しみを肯定し、その悲しみを少しずつ軽くしながら、いつかは前を向いて再び歩きはじめましょう。