- 70歳以上の方は免許更新時に高齢者講習の受講が義務
- 75歳以上の方は高齢者講習と認知機能検査が義務
- 高齢者講習は免許更新6ヶ月前から教習所等で受けられる
- 高齢者講習の内容は座学・運転適性検査・実技指導
- 高齢ドライバーに一番大切な義務は「安全運転」
高齢者が運転免許を更新するときには、高齢者講習の受講が義務になっています。
この高齢者講習とはいつから始まり、具体的には何歳以上の方がどのような講習を受けるのでしょうか。
今回は高齢者講習について、2022年に改正された最新の高齢者講習制度をもとに解説します。
高齢者講習とは
高齢者講習とは、運転免許の更新時に年齢が満70歳以上に達している方が必ず受講しなければいけない講習です。
高齢ドライバーが安全に車を運転するためにはどうしたら良いか、座学や実車による指導が受けられます。
もともと高齢者講習は1980年代後半より任意で行われていた講習でしたが、高齢ドライバーの交通事故の増加を背景に1998年から義務化されました。
高齢者講習の目的
高齢者が免許更新時に高齢者講習を受けなければいけない理由は、高齢ドライバーが交通事故を起こしやすいからです。
高齢になればなるだけ痛ましい交通事故の可能性は増します。内閣府の調査によれば、80歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の件数は、75歳未満の高齢ドライバーによる事故件数に対して3倍以上の件数でした。
画像引用:内閣府|高齢運転者の交通事故の状況
近年でも高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違いによって車両が暴走し、歩行者が死亡する事故が何件も起きています。
「運転には慣れているから大丈夫」と過信しがちな高齢ドライバーに、加齢によって集中力や判断力の低下など運転に必要な能力や技術が衰えていることを自覚してもらうことが高齢者講習の主な目的です。
2022年に高齢者講習制度が改正
2022年の道路交通法改正では、高齢者運転対策の制度についても変更がありました。
《2022年道路交通法改正の高齢者講習に関連する変更点》
高齢者講習の時間 | 2時間もしくは3時間→一律2時間 |
認知機能検査の一部項目削除 | 時計描画の出題廃止 |
認知機能検査の判定区分 | 3区分→2区分に変更 |
運転技能検査の新設 | 75歳以上で過去3年間に重大事故を起こす可能性が高い違反がある人は受験が義務 |
本記事では、道路交通法改正後の新しい高齢者講習制度をもとに説明していきます。
高齢者講習の種類
高齢者講習には、以下の3種類があります。
なお以下でご紹介する各高齢者講習の名称は、東京都における名称です。
お住まいの都道府県によっては違う名称の可能性があるため、免許更新時期に郵送される案内ハガキ等でご確認ください。
高齢者講習
居住地の都道府県内で受ける一般的な高齢者講習です。
東京都の場合、都内43箇所の教習所および鮫洲運転免許試験場・府中運転免許試験場で受講できます。
運転免許取得者教育
運転免許取得者教育は高齢者だけでなく全年代のドライバーの運転技術向上を目的とした講習です。
運転免許取得者教育を受けると高齢者講習が免除されるため、高齢者講習同等教育課程とも呼ばれています。
東京都の場合、都内27箇所の教習所で受講できます。
特定任意高齢者講習
居住地以外の都道府県で受講する高齢者講習です。
講習内容は一般的な高齢者講習と同一です。
東京都の場合、都内10箇所の教習所で受講できます。
高齢者講習の受講は何歳から受けるか
高齢者講習の受講が義務となる年齢は70歳です。
正確には、運転免許の更新期間満了日(誕生日の1ヶ月後の日)に70歳を超えていると高齢者講習の受講が必要になります。
75歳以上は認知機能検査と高齢者講習
免許更新時に75歳を超える方に対しては、高齢者講習以外にも認知機能検査がプラスされます。
認知機能検査とは、免許を更新する方に認知症のおそれがないかを確認するための検査です。この検査で認知症と診断された場合には運転免許が取り消されます。
画像引用:警視庁|認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新)
なお認知機能検査は、認知症に関する医師の診断書提出によって代えることもできます。
高齢者講習の受け方
高齢者講習を受けるためにはどうしたら良いのでしょうか。
ここからは高齢者講習の受け方について説明します。
免許更新の6ヶ月前から受講が可能
高齢者講習が受けられる期間は、免許更新年における誕生日の6ヶ月前から1ヶ月後までです。
画像引用:警視庁|認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新)
実際に運転免許が更新できる期間は誕生日の6ヶ月前から1ヶ月後までなので、更新すべき期間の5ヶ月前から高齢者講習が受けられることになります。
自分が受講対象者か確認する方法
高齢者講習の受講対象に該当する年齢の方には、各都道府県の公安委員会から更新期間の満了日6ヶ月前に「高齢者講習のお知らせ」のハガキが郵送されます。
受講場所を調べる方法
高齢者講習が受けられる場所は「高齢者講習のお知らせ」ハガキに記載されています。
また、各都道府県の県警ホームページでも確認できます。東京都の警視庁ホームページでは、受講場所一覧だけでなく、各教習所等の混雑度合いや予約状況も確認できます。
参考
高齢者講習・運転技能検査・認知機能検査実施場所・予約状況一覧警視庁
高齢者講習の費用は教習所ごとに異なる
高齢者講習の費用は受講場所により異なります。
また2023年4月からは、教習所で行う高齢者講習等の料金が変わります。必ず最新の受講費用を問い合わせしてご確認ください。
高齢者講習の内容
高齢者講習では、座学・運転適性検査・実技指導の3つを学びます。
全体ではおよそ2時間程度の講習となります。
座学(30分)
座学ではDVD視聴により運転の心がまえや道路交通法の最新情報を学ぶ、指導員から交通ルールの基礎知識について話を聞いて質問に答えるなどして知識の再確認をします。
運転適性検査(30分)
運転適性検査で検査する内容は、主に目の働きに関する測定です。ただし高齢者講習における目の検査は免許更新時に必須の一般的な視力ではなく、動体視力・夜間視力・水平視野を測定する点が異なっています。
実技指導(60分)
実車による実技指導では、受講者が実際に車を運転して運転技術の確認を行います。
長年の運転で悪いクセがついてしまい、間違った運転方法がされている場合には指導員から指導・改善のアドバイスが受けられます。
実技指導で試される運転技術は以下のような内容です。
- 方向転換
- 一時停止
- S字カーブ
- クランク
- 信号通過
- 段差乗り上げ
- 速度保持
高齢者講習にはテスト、合格・不合格がない
高齢者講習の座学で指導員の質問に答えられなかったり、実技指導でうまく運転できなかったとしても、運転免許が取り消される心配はありません。
高齢者講習による合格・不合格はないため、悪い結果が出たとしても安心してください。
ただし運転知識の不足や運転技術の低下は、重大な事故を招きかねません。自らの衰えをしっかり自覚し、これまで以上に安全運転を心がけましょう。
受講証明書は免許更新時に必要
高齢者講習が終了すると、受講者には「高齢者講習修了証明書」が交付されます。
高齢者講習修了証明書は免許更新の際に持参する必要があります。交付を受けたら無くさずに、免許更新時まで大切に保管してください。
運転に不安を感じたら免許返納も検討を
高齢者講習にはテストや合不合がないため、受講しさえすれば誰でも免許が更新できます。
しかし、いざ交通事故が起こったときには「高齢者講習は受けていた」は何の言い訳にもなりません。高齢者講習の結果に関わらず、少しでも運転に不安を感じたときには免許の自主返納もどうかご検討ください。
高齢者の免許自主返納については以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回は高齢者講習について解説しました。
高齢ドライバーは免許更新のときに高齢者講習の受講が義務です。しかしもっと大きな義務は、日頃の安全運転です。
高齢者講習を機に安全な運転について改めて学び、痛ましい事故を防ぎましょう。