- まずは不動産と相続人を確認
- 相続登記についてはまず法務局で相談を
- 相続登記はできるだけお早めに
- 不動産相続でかかる費用と税金はいくらくらいか
- 土地だけやマンションの相続の時の注意点
親などの近しい親族が亡くなった後、片づけや遺品整理はもちろん大切ですが、できるだけ早く相続手続きを始めなければなりません。
「相続は」被相続人の「死亡によって開始」します。
(民法第882条)相続手続きの中には期限が決められているものがあり、相続放棄のように期限を過ぎるとできなくなる手続きもあります。
では不動産を相続した場合はどうでしょう。
不動産が多くなるとある程度効率よく手続きをこなしていく必要があります。
あらかじめ流れを知っておきましょう。
不動産を相続することになったらまず何をすればいい?
相続開始後すぐやるべきこと
まずは、亡くなった人(被相続人)がどのような財産を持っていたかを調べます。
財産は大きく分けて預貯金や株券などの動産、土地や建物などの不動産の2種類です。
このうち不動産については権利書があるはずですので、それで内容を把握します。
なお、平成18年以前に取得した不動産には「登記済権利証」が発行されていましたが、現在は「登記識別情報」というものに統一されています。
さらに余裕があれば、各不動産について現在どのようになっているかの情報を得るため、法務局で不動産登記簿を取っておきます。
古くから持っていた土地だと、ごくまれに名義書き換えが無断でされていることがあります。そこまでいかなくとも、抵当権が設定されていたりすることはあり得ます。
また、被相続人が遺言を遺していないかも確認しておきましょう。不動産を含め、できる限り被相続人の意思に沿うような相続を行うべきだからです。
不動産相続の流れ -相続発生から相続登記(名義変更)手続きまで-
不動産相続手続きの全体の大まかな流れは以下のようになります。
不動産相続に必要な書類一覧
手続き全般に必要な書類をまとめます。
- 権利証または登記識別情報
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
不動産を誰が相続するかについては法定相続人全員の同意が必要です。
被相続人が過去に結婚していて子供がいた場合、その子も法定相続人となるので、全法定相続人を確定するために被相続人の全ての戸籍を取って確認するのです。 - 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
登記簿に記載されている住所と同じかどうかを確認し、不動産所有者と被相続人が同一人物であることを確認するためのものです。 - 各法定相続人の現在の戸籍謄本
被相続人との関係を確認します。 - 各相続人の印鑑証明書
- 不動産を相続する人の住民票
- 相続する不動産の最新の固定資産税評価証明書
登録免許税(後述)計算のために必要です。 - 遺産分割協議書
誰に不動産を相続させるかについて法定相続人全員で協議し、全員同意の上決定したことを記載した書類です。
同意を証明するため、必ず法定相続人全員が署名し、実印で捺印します。
法定相続人が1人の場合や、法定相続分通りに不動産を分割して相続する場合には5.と8.の書類は不要です。
また、相続関係図を作成し、書類のコピーと一緒に提出すれば、戸籍や住民票などの原本は返還してもらえます。
不動産の相続登記(名義変更)って?
名義変更とはどんな手続き?
名義変更とは、被相続人の名義となっている不動産につき、法務局に申請して新たな名義人(相続人)に所有権を移転してもらうことです。
不動産は所有権者しか自由に処分することができませんから、例えばその不動産の売却を考えている時にはまず名義変更をしておく必要があります。
相続登記は自分でもできる?
もちろん自分でも相続登記をすることはできます。
法務局に予約を取って出向けば、登記の方法について丁寧に教えてもらえますし、ある程度の知識はネットでも収集できます。
手間と時間を惜しまなければ自力で申請をしてみてもよいでしょう。
ただし、戸籍を調べたら会ったこともない法定相続人が出てきて連絡先が分からないとか、父の名義だと思っていた不動産が実は祖父のものだったなどの複雑な事情が出てきた場合には、自力での相続登記手続きは難しくなります。
司法書士などの専門家に任せた方が無難です。
相続登記を行わないとどうなる?
相続登記をいつまでにしなければならないという決まりはありません。
しかし、だからといってあまりに長く放置すると、いざ必要な時に戸籍などの書類が保存期間終了で取れなくなったり、法定相続人が認知症などになって分割協議ができなくなったりなどの不都合が生じる恐れが出てきます。
よほどの事情がない限り登記は早めに行いましょう。
特に相続税が発生しそうな不動産の場合、税金は相続開始10か月以内に納める必要があるので、登記をそれまでに済ませなければなりません。
不動産相続にかかる費用とは?種類と相場
相続税
不動産を含めた財産総額に対して相続税が課せられます。
総額が、3000万円+(600万円×法定相続人)を超えた場合、超えた額に対して税を納めなければなりません。
相続税の遺産に用いる不動産の価格は、計算方法が定められており、時価の8割程度となっています。
相続税以外の費用
相続登記の申請費用が必要です。
戸籍などの取得費用と登録免許税が主なものとなります。登録免許税は登記申請用紙に収入印紙を貼付する方法で支払います。
額は固定資産税評価額の0.4%です。固定資産税評価額が1000万円なら登録免許税は4万円となります。
また、申請を司法書士に頼むとその分の費用もかかります。司法書士費用は事務所によって違うので、サイトを調べるか直接問い合わせて確認しましょう。
土地だけ・一戸建て・マンションの相続で違いはあるの?
土地だけを相続する場合の概要と注意点
土地だけであっても相続手続きにおける違いは特にありません。
ただし、更地となっている宅地を相続すると、その後の固定資産税額が家付きの土地と較べて最高で6倍程度高くなります。
これは更地には「住宅用地の軽減措置特例」による減額がないからです。
また、借地契約をしていて建物が他人名義であったり、賃貸アパートが建っていたりというケースもありますが、この場合、土地と共に借地人、借家人との関係も相続することになります。
更地にして売りたいからと借地人に退去してもらうことはできません。
建物がある状態でも土地の売却はできますが、評価額は下がります。
一戸建てを相続する場合の概要と注意点
土地と建物を
同一人物が相続するのであれば1通の申請書を作成、
別々の人物であれば不動産ごとに申請書を作成します。
相続後に売却する場合、建物が古ければ処理をどうするかという問題がでてきます。
解体費用も馬鹿になりませんので、分割協議時にその点を踏まえて相続割合を決めておくことをお勧めします。
マンションを相続する場合の概要と注意点
マンション1戸の評価額は専有部分の面積と、マンション敷地全体のうち被相続人の権利がどの程度か(「敷地権」といいます)で計算するので少し面倒かもしれません。
マンションの造りは強固ですし、専有部分をリフォームすれば売却は戸建てより簡単でしょう。
また、そのまま使い続ける場合は当然に経費(管理費や修繕積立費)が発生します。
まとめ
不動産の相続は預貯金などの動産と違い、相続後にどうするかまで考えておく必要があるので、相続人が複数いる場合、事前の話し合いを十分にするべきです。
面倒だからと放置していると、下の世代が更に困ることになるのです。
登記手続き自体、そこまで難しすぎることはないので、事前に流れを理解して、いざという時に落ち着いて対応できるようにしましょう。
自分たちだけでの解決が難しいなら、信頼できる専門家に迷わず相談して下さい。市役所などで行われている無料相談会をまず尋ねてみてもよいでしょう。