- 男性にも更年期がある
- 男性更年期障害(LOH症候群)の原因はテストステロンの減少
- 男性更年期かどうかはセルフチェックできる(AMSスコア)
- 男性更年期障害は治療できる(セルフケアによる対策も可能)
若いときには活動的で明るい性格だった男性も、ミドル世代やシニア世代になると無気力になったりイライラして怒りっぽい性格に変貌してしまったりすることがあります。
加齢やストレスのせいだとあきらめている方も多いようですが、もしかしたらそのイライラや無気力の原因は、男性更年期のせいかもしれません。
今回は男性更年期について解説します。かつての充実した毎日や明るい性格を取り戻すべく、男性更年期の症状や治療方法を理解しましょう。
男性にも更年期がある
「更年期」というと女性特有のものだと思われがちですが、実は男性にも更年期は存在します。
男性は睾丸からテストステロンという男性ホルモンが分泌されています。テストステロンは男性的な肉体を作り出し、男性の性機能をうながすための性ホルモンです。
また テストステロンにはやる気を高めたり、ものごとの判断力や理解力を促進する働きもありますので、別名「社会性ホルモン」とも呼ばれています。
テストステロンの分泌量は20代の男性が一番多く、その後年々分泌量は低下します。
男性が40代になったあたりからテストステロンの減少は心身に影響を与え始め、その時期を男性更年期と呼びます。
男性更年期障害(LOH症候群)とは
女性に更年期障害が存在するように、 男性にも更年期障害が存在します。
男性の更年期障害は、医学上はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びます。
日本ではこれまでLOH症候群の臨床が進んでおらず、2007年に日本泌尿器科学会が診療の手引きをまとめてからようやっと最近になって世の中に認知されだしたところです。
参考
加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き日本泌尿器科学会
そのため、いま自分の心身の変化に悩んでいる中高年男性でも原因がLOH症候群のせいだとわからず、適切な対処ができずに悩んでいる方が多くいます。
男性更年期の症状
テストステロンが減少すると、男性の身体にも心にもいろいろな影響が生じます。
男性更年期の主な症状は以下のとおりです。
《身体の症状》
- 勃起不全(ED)
- 筋力低下
- 頻尿
- 肥満(メタボリックシンドローム)
- 異常発汗・ほてり
《心の症状》
- 性欲の減退
- 気力の低下
- 不眠
- イライラ
女性更年期との違い
男性特有の更年期症状もありますが、多くの更年期症状は男性と女性で共通しています。
だるい・疲れやすい・頭痛・めまい・イライラなどは男性の更年期でも女性の更年期でもよく起こる症状です。
男性も女性も更年期のストレスは同じですから、お互いの身体的事情を理解し、更年期障害に苦しむ方に対して優しく接しましょう。
男性と女性の更年期の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
男性更年期障害はうつ病と間違えやすい
日本における男性更年期の臨床研究はまだ歴史が浅いため、男性更年期障害のさまざまな症状は他の病気と誤診されてきました。
テストステロンの減少による抑うつ状態をうつ病だと誤診され、効果のない抗うつ剤を処方されてきた男性も多数いらっしゃいます。
いま精神科でうつ病と診断されて治療している男性の中にも、もしかしたら原因が男性更年期の人がいるかもしれません。治療に効果がないと感じている男性はあらためて医師に相談するか、セカンドオピニオンを検討しましょう。
一般的には、男性更年期の抑うつ状態とうつ病とを見分けるポイントは、希死念慮(死にたくなる気持ち)の有無だと言われています。テストステロンの減少による抑うつ状態では、ほとんどの場合には希死念慮までは発生しません。
ただし希死念慮の有無だけで素人判断する考えは危険ですので、男性更年期とうつ病の両方の症例に詳しい医師への相談を強くおすすめします。
男性更年期は生活習慣病などのリスクが高まる
男性更年期障害は、生活習慣病などの病気のリスクを高める危険性があることもわかってきています。
テストステロンには男性を男性らしくする作用がありますが、それと同時に内臓を健康に保ち、血管の流れを良くする働きがあります。
そのためテストステロンが減少すると糖尿病化などの生活習慣病になりやすく、糖尿病や脳卒中・心筋梗塞・狭心症など生命に関わる病気のリスクが高まります。
またテストステロンは脳の記憶をつかさどる海馬(かいば)を活性化させる働きもあるため、テストステロンの減少により認知機能が低下し、認知症を発症しやすくもなります。
自分の健康寿命を伸ばし将来的な介護の必要性を避けるためにも、今から男性更年期の対策が必要です。
男性更年期セルフチェック
男性が更年期障害になっているか否かはAMS(aging male symptoms)スコアで確認できます。
AMSスコアは男性更年期障害の診断をする際に多くのクリニック等が用いているチェック表ですが、自分で簡単なセルフチェックもできますからやってみましょう。
セルフチェック項目
AMSスコアのセルフチェックは、以下17項目の質問より判定します。
それぞれの質問に対し5段階で回答し、回答に応じた点数をつけてください。
《点数》
なし | 1点 |
軽い | 2点 |
中程度 | 3点 |
重い | 4点 |
非常に重い | 5点 |
《質問》
- 総合的に調子が思わしくない
- 関節や筋肉の痛み
- ひどい発汗(突然汗が出る・緊張や運動とは関係なくほてる)
- 睡眠の悩み(眠れない・寝つきが悪い・睡眠が浅い)
- よく眠くなる、しばし疲れを感じる
- イライラする(すぐ腹を立てる・不機嫌になる)
- 神経質になった(緊張しやすい・落ち着かない・じっとしていられない)
- 不安感(パニックになる)
- 体の疲労や行動力の減退(行動力の低下・活動の減少・達成感がない)
- 筋力の低下
- 憂うつな気分(落ち込む・意欲がわかない・気分にムラがある・涙もろくなる)
- 「絶頂期は過ぎた」と感じる
- 力尽きた、どん底にいると感じる
- ひげの伸びが遅くなった
- 性的能力の衰え
- 早朝勃起(朝立ち)の回数の減少
- 性欲の低下(セックスが楽しくない・性交の欲求がおきない)
結果
回答の点数をすべて合計し、合計点数により男性更年期障害の程度を推定します。
《症状の程度》
17~26点 | なし |
27~36点 | 軽度の男性更年期障害 |
37~49点 | 中程度の男性更年期障害 |
50点以上 | 重度の男性更年期障害 |
男性更年期障害は治療できる
上記のセルフチェックで「自分は男性更年期障害の可能性がある」と思ったは方は、できるだけ早く医師の診察を受けるようおすすめします。
男性更年期障害は我慢しなければいけないものではありません。適切な治療を受ければ症状の改善が期待できます。
診療科
男性更年期について相談したいときには泌尿器科を受診します。また男性特有の症状について総合的な相談ができるメンズヘルス外来の受診もおすすめです。
男性医学の研究団体である日本メンズヘルス医学会では、日本国内のメンズヘルス医療を受けられる病院やクリニックを一覧で紹介しています。以下リンクから近くのメンズヘルス外来を探してみてください。
診断
男性更年期の診断は、先ほどご紹介したAMSスコアの点数と問診、血液検査によって行われます。
すでにAMSスコアのセルフチェックを実施した方でしたら、チェック結果を持参すると診断がスムーズになりやすいでしょう。
血液検査では血液中のフリーテストステロン(RIA)の値を調べます。RIAの値が8.5pg/mL未満で、AMSスコアの点数や問診の結果により男性更年期特有の症状が強いと見なされる合、男性更年期障害だと診断されます。
治療
男性更年期の治療は、症状が軽症であるか重症であるかにより治療方法が異なります。
軽症の場合には生活習慣の改善指導や、サプリメント・漢方薬の処方などが行われます。また勃起不全(ED)治療薬なども希望に応じ処方されます。
重症の場合には男性ホルモン補充療法を行います。テストステロン製剤を注射して体内にテストステロンを補充する他、将来的に子供を持ちたい男性に対してはhCGホルモン製剤を使ってテストステロンの分泌をうながすなど、男性の状況に応じ選択されます。
男性更年期はセルフケアでも対策できる
病院やクリニックを受診するまでもない、もしくは忙しくて病院などにいく暇もないという男性は、セルフケアを心がけて男性更年期の対策をしましょう。
ただしセルフケアでも改善が見られなかったり、症状がひどくなったときにはセルフケアによる対策には限界があると考えられます。更年期症状が辛いときにはためらわず受診を検討しましょう。
まとめ
今回は男性の更年期について解説しました。
中高年男性のイライラや無気力は、原因を知り適切な治療を行えば改善できる可能性が大いにあります。
男性更年期対策を始めて、若い頃の活力的な自分を取り戻しましょう。