- 海外へ連れていける動物種と連れていけない動物種がある。
- 海外にペットを連れて行くときは前々から手続きが必要。
- 海外にペットを連れていくには条件をクリアし、検疫を受けなくてはいけない。
ペットはいまや、愛する家族の一員です。
海外移住が決まったら、「一緒に連れていきたい!」と思うのは自然なこと。
海外旅行であっても、何日もペットホテルに預けるよりは、
「いっそのこと連れて行ってあげたい」
「一緒に思い出を作りたい」
と考える方も多いのではないでしょうか?
でも、ペットの海外移住・海外旅行は、思った以上に複雑な手続きが多いんです。
それに、出入国の条件も細かく決められています。
知らずに出発の日を迎えると、大変なことになってしまいますよ。
今回は、海外へペットを連れていく方法・手続きの注意点をご紹介します。
海外にペットを連れていくときの基礎知識
どんなペットを連れていける?
ペットや動物の出入国に関しては、農林水産省が細かく規定を設けています。
ただし、生後90日以下の犬猫は出国できません。
また、短頭種の犬、老齢、妊娠中、療養中などの場合は、体調を崩すリスクが高いため、航空会社に移送を断られることもあります。
注意が必要なのは、出国は認められているのに入国は認められていない動物。帰ってきたら入国できない、という事態も起こりうるのです。
ペットを連れていける国に制限はある?
相手国の受け入れ状況は、国によって異なります。また、疫病の流行・収束などにより、随時状況は変わります。
各国の在日大使館に問い合わせてみましょう。
ペットと海外へ…費用相場は?
ペットが飛行機に乗る場合、手荷物扱いになり、貨物室に預けます。預かり料金は、ANA・JALなら同じ価格設定です。相場の目安にしましょう。
ANA・JALのペット移送預かり料金
海外にペットを連れて行くときの流れ
必要な書類や予防接種・検査などは、ペットの種類によって違います。
今回は、日本でメジャーなペット、犬・猫の場合をご説明しましょう。
1. 日本出国前の準備
やることリスト
- 相手国の入国条件・出国条件を確認。
- マイクロチップを装着(ISO規格11784・11785)。これは日本へ帰国する際の入国条件です。狂犬病予防注射・狂犬病抗体価検査の際に、マイクロチップでの識別番号確認が必要になるので、それより先に行います。
- 狂犬病不活化ワクチンの予防注射2回以上受ける(2回目は初回後30日以上1年以内)。こちらも日本への入国条件です。
- 狂犬病の抗体価検査。詳しくは、検査施設「一般財団法人生物科学安全研究所」のホームページをご覧ください。検体を送ってから検査結果が出るまでには2週間ほどかかってしまうので、早めに実施しましょう。
- その他、①の相手国条件に応じて、「手続き・書類手配」「検査・予防接種・投薬」など。
- 日本に帰国する際は、40日前までに到着予定空港の動物検疫所へ届出が必要です。短期旅行の場合は、旅行前に届出受理書を取得しましょう。
- 動物検疫所に連絡し、海外へペットを連れていく旨を伝えます。出国7日前までに輸出検査申請書を提出しましょう。インターネット上で申請できるサービス「NACCS」を利用してもOKです。
→動物検疫所一覧 - 飛行機の手配。ペットを連れていく旨を伝え、事前予約をします。基本的には手荷物として貨物室に預けますが、会社によっては機内持ち込みができる場合があります。その他、ケージなど移送条件も確認しておきましょう。
出国時の必要書類リスト
- 輸出検査申請書(NACCSで申請した場合は申請番号のみ必要)
- 狂犬病抗体価検査の結果通知書
- 獣医師による健康診断書(獣医師家畜防疫官の検査受付時間外に検疫を受ける場合のみ)
- 動物の輸入に関する届出受理書(短期旅行の場合)
- その他、旅行先相手国の入国条件で必要となる書類
- マイクロチップ装着証明書(帰国時必要)
- 2回分の狂犬病予防接種証明書(帰国時必要)
- 輸出検査時に書類に不備があると、海外へ出国できません。そのため、出発空港の動物検疫所に事前の書類内容を送付し、確認を依頼することが奨励されています。
- 動物検疫所がある空港は限られています。搭乗する便と照らし合わせて確認しましょう。→ 動物検閲所一覧
- 短期旅行の場合、帰国までに予防接種の有効免疫期間が切れないように注意しましょう。
2. 日本出国当日の流れ
出発空港で
①動物検疫所で輸出検疫を受け、輸出検疫証明書を取得します。コピーも一緒に発行されますので、失くさないようにしましょう。輸出検疫証明書は帰国時に必要になります。
②出国先によっては、輸出検疫証明書に獣医師の署名が必要な場合があります。その場合は、獣医師家畜防疫官の検査受付時間に検査を受けてください。
③長時間のフライトに備え、ペットにフードや水を与えておきましょう。ただし、満腹だと乗り物酔いをしてしまうので、適量を心がけてくださいね。
④搭乗手続きの際に、手荷物としてペットを預けます。その際、同意書に署名し、預かり料金を支払います。
→ いざ海外へ!
到着空港で
①空港係員からペットを受け取ります。
②相手国の規定に従って入国検疫を受けます。
→ いよいよ入国!
3. 旅行先・移住先でのペットの生活
海外でのペットの扱い・ペットに関するルールは、各国によって違います。
賃貸でペットを飼えるか、守るべきマナーなど、できるだけ事前に調べておきましょう。
海外の動物病院
海外へペットを連れていく際は、もしものときに備えて、動物病院についても調べておくと安心です。
ただし、途上国などペット文化が発展していない国では、先進国のようなレベルの医療を受けられない可能性もあります。移住先によっては、それなりの心づもりが必要です。
ペットの医療保険
日本でも最近、ペットの医療保険に加入する人が増えました。海外でも先進国では、手厚いペット保険が販売されているところがあります。ペットの脱走・盗難にも保険金が下りる商品もあるのだとか。
長期滞在の際には、検討してみてはいかがでしょう?
4. 海外滞在中の帰国準備
やることリスト
- 帰国40日前に輸入届出申請、受理書の確認。(NACCS利用可)
- 狂犬病予防接種の有効免疫期間が切れた場合は追加接種。
- 抗体価検査の有効期間(採血日から2年)が切れた場合は指定検査施設にて再検査。
→ 世界の指定検査施設一覧 - 相手国政府機関発行の健康証明書を、出発直前(できる限り出発2日以内)に取得。
- その他、出入国に必要な書類を手配。
帰国に必要な書類リスト
- 動物の輸入に関する届出受理書(短期旅行の場合は、旅行前に手配)
- 旅行相手先政府機関発行の健康証明書(滞在中追加処置を受けたらその証明書も必要)
- 狂犬病検査結果証明書
- 日本出国時に取得した輸出検査証明書のコピー
- その他、出入国に必要な書類
- 海外から新しくペットを輸入する際は、マイクロチップ装着・狂犬病予防接種・抗体価検査・180日間の輸出待機が必要になります。追加接種せずに有効免疫期間が切れた場合も同様です。
- 必要書類・処置に不備があると、帰国後180日間の係留期間が必要になります。
5. 帰国当日の流れ
出発空港で
①各国の規定に従い、出国審査を受けます。
②フード・水分の補給。
③搭乗手続きの際に、ペットを手荷物として預けます。同意書に署名し、預かり料の支払います。
到着空港で
①空港係員からペットを受け取ります。
②輸入検査の申請をし(NACCS利用可)、必要書類を提出、輸入検疫を受けます(問題がなければ12時間以内)。
③輸入検疫証明書を取得。
→ 無事帰国!
動物検疫所のホームページを必ずチェックしよう
愛するペットは「家族同然」と思っていても、海外へ連れていくには結構ややこしい手続きが必要なんですね。
ひとつひとつ確実にこなさないと、出国・入国ができず、半年も係留されてしまいます。
最悪の場合、元来た国へ返送されるか処分を迫られることもあるんですよ。
ペットの輸出入に関する制度は、疫病の流行・収束などによっても頻繁に変わります。
動物検疫所ホームページをチェックしたり、動物検疫所に問い合わせたりして、最新の情報を得るようにしましょうね。