- 自社の定年年齢は就業規則で確認できる
- 多くの企業では60歳定年制を採用している
- 企業は65歳まで定年延長か継続雇用をする義務がある
- いつかは70歳定年→定年制廃止の時代が到来する見込み
- 何歳になっても働き続けられるよう気力・体力の充実が必要
自分が定年退職する年齢が何歳なのか、実際にはわかっていない人は案外多いものです。
なぜなら新卒で今の会社に入社した人は、入社後に起こった幾度かの法改正により、自分の会社が定年年齢を変更したことを知らない可能性があるからです。
自分がいつ定年退職する予定なのはどうやって調べれば良いのでしょうか。また他の会社に勤めている人たちは何歳で定年退職するのでしょうか。
今回は自分の定年年齢の調べ方と、日本の各企業が定めている定年年齢の割合について解説します。
自分の会社の定年退職年齢は?簡単な調べ方
自分の会社が定年年齢を何歳に定めているかは、実は簡単に調べられます。
常時10名以上を雇用している会社や事業所などは、必ず就業規則を作成しなければいけない義務があります。
就業規則には定年退職に関する事項も記しておかなければいけないため、就業規則を読めば現在有効な自社の定年年齢が確認できます。
就業規則で定年退職の確認をしたい人は、以下の記事も参考にして調べてください。
具体的な日付は誕生日の前日
会社の就業規則を見て、退職の項に以下の文言が書かれていたとしましょう。
(定年)
第〇〇条 労働者の定年は満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
2021年4月1日に65歳の誕生日を迎える人は、この場合いつが定年退職の日になるのでしょうか。
正解は「2021年3月31日」です。
年齢計算ニ関スル法律および民法第143条の定めにより、人は誕生日の前日が終了する時点で年をとる(満年齢に達する)とされています。
つまり4月1日が誕生日の人は、誕生日の前日3月31日23時59分59秒に満年齢に達するということです。
上記のモデル就業規則に書いてある「定年に達した日の属する月の末日」は誕生日と同日なため、4月1日が誕生日の人は3月31日が定年退職日となります。
他の人は何歳が定年退職?年齢の割合
自分が定年退職する年齢が判明したら、今度は他の人はいつ定年退職するのかが気になるところです。
日本の各企業では何歳を定年年齢に定めているか、厚生労働省が2019年(令和元年)にまとめた「高年齢者の雇用状況」により確認してみましょう。
60歳~64歳
1994年より定年年齢を60歳以上にすることが義務付けられ、それにより社内の定年制度を改正した企業では、2021年現在でも多くが60歳定年制のままになっています。
ただし2013年の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称 高年齢者雇用安定法)の改正にともない、99.8%の定年退職者は継続雇用の機会が与えられています。
継続雇用については後ほど詳しく説明します。
画像引用:厚生労働省|令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果
また同法の改正により、段階的に定年年齢を61歳~64歳に引き上げている企業も存在します。
65歳
上記項目で触れた高年齢者雇用安定法により、2025年4月からはすべての企業で定年年齢を65歳以上にしなければならないと決まっています。
義務化が開始される2025年を目前として、各企業とも定年年齢の引上げを順々に始めており、2019年時点では17%の企業が定年を65歳と定めています。
ただし、その割合は大企業よりも中小企業の方が多く、従業員301名以上の大企業で定年年齢を65歳にしているのは10%程度です。
画像引用:厚生労働省|令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果
66歳以上もしくは定年制廃止
労働者確保の目的などの理由により定年年齢を66歳以上、もしくはいっそ定年制自体を廃止してしまおうと考えた企業も存在します。
しかし定年年齢を66歳以上に引き上げる措置は法律上の義務ではないため、まだ66歳以上の定年制・定年制廃止を行っている企業は少数派です。
2019年の調査時点では、定年年齢を66歳以上に引き上げている企業の割合は4.9%です。
また定年制廃止を決めた企業の割合は2.7%ですが、そのほとんどは従業員300名以下の中小企業で、定年制を廃止した大企業はわずか0.5%しかありません。
画像引用:厚生労働省|令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果
以下は東証1部上場企業としては極めて珍しく、定年年齢を実質的に廃止した三谷産業株式会社のプレスリリースです。
選択定年制
社員が自由に自分の定年年齢を決定できる企業も、少数ながら存在しています。
大手輸送機器メーカーの本田技研工業(HONDA)では、社員が55歳に到達した時点で希望する定年年齢の意向を確認し、その後59歳時点で自らの定年年齢を60歳~65歳の範囲内で決定できます。
参考
H30東京シンポジウム講演資料(本田技研)|人総合力の最大化に向けた総合的労働条件の見直し-定年延長・選択定年制の導入独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)
法律で守られる高年齢者の継続雇用ルール
定年退職の年齢が何歳に定められているかには関係なく、2021年現在ではほとんどの人が最低65歳までは働き続けられることが法律で決まっています。
2013年施行の改正高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの社員を継続雇用する義務があります。
特別な事情を除き、定年退職する年齢が64歳以下でも希望すれば再雇用してもらえるので、すべての日本企業での実質的な定年年齢は65歳以上だとも言えます。
ただし定年退職後の再雇用では雇用形態や賃金額などが変わる可能性が大きいため、得られる収入は下がってしまうケースがほとんどです。
雇用保険では定年退職後に再雇用や再就職をして収入が下がった人のため、高年齢雇用継続給付金の制度を設けています。
高年齢雇用継続給付金については以下で詳しく解説しています。
定年70歳時代はいつ始まる?
2021年4月からは現在の高年齢者雇用安定法がさらに改正されて、いよいよ「定年70歳時代」が始まる見込みです。
第10条の2(高年齢者就業確保措置)
定年の定めをしている事業主又は継続雇用制度を導入している事業主は、その雇用する高年齢者について、次に掲げる措置を講ずることにより、六十五歳から七十歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない。
2021年4月改正の高年齢者雇用安定法は上記の条文により「70歳就業法」とも世の中では呼び交わされています。
ただし今回の法改正では、定年年齢を70歳にするのは企業の努力義務の範疇にとどまっているため、絶対的な効力はありません。
しかし日本の少子高齢化と労働力減少を考えると、いつかは70歳定年が義務化される日が来ることが予想されています。
年齢を問わず働く時代だからこその注意点
国の政策や企業努力により、自分が望む限りはいつまででも働き続けられる時代になりました。
ですが、いくら高齢者雇用の制度が充実しても、当人の気力・体力が充実していなければ元気に働くことはできません。
年齢に関係なく働ける時代だからこそ、自らを働ける状態にキープする自己管理が必要になってくるのです。
定年退職の年代になると気力や体力が急激に下がる可能性があります。日頃から健康に留意し、定年退職まで元気に働ける身体作りに努めましょう。
まとめ
今回は定年退職する年齢について解説しました。
繰り返される高年齢者雇用安定法の改正に伴い、各企業の定年年齢は年々遅くなっています。
いつかは定年制度自体が禁止され、何歳になっても働き続ける時代が来るかもしれません。
いつまでも仕事を続けられるように今から準備しておき、生涯現役選手を目指しましょう。