- 認知症の有無によって要介護・要支援のどちらになるかが変わることがある
- 調査の時の様子次第で、実態と異なった要介護度になる場合がある
- 認定に納得できない場合は「区分変更」の手続きを行う
介護サービスを受けるためには「要介護1~5」または「要支援1~2」のいずれかの認定を受ける必要があります。
しかし、短い時間で調査を行うため、認知症の実態と合わない要介護度に認定される可能性も否定できません。特に要介護1と要支援2では受けられる介護サービスの内容に違いがあるため、実態に合った認定が必須です。
そこで今回は介護認定と認知症の関係と、実態とは異なる介護認定がされた場合の対処法を紹介します。
目次
介護認定と認知症の関係
要支援2と要介護1の境界線になることがある
要介護と要支援の分類のなかでも分かりにくい部分として、「要支援2」と「要介護1」の境界線があります。
この両者のどちらに認定されるかによって使えるサービスに差が出るため、何が境界線になるのかは知っておいて損はありません。
要介護1と要支援2の違い
要介護1と要支援2の境界については要介護認定の区分のなかでも分かりにくく、あいまいになっています。実のところ、心身の状態では大きな違いは見られません。
分かれ目になるのは、以下の2つのいずれかが認められるかどうか、です。
- 認知症をすでに発症している
- 半年以内に心身状態が悪化していく恐れがあること
認知症をすでに発症しているか
まず要支援とは、部分的な介助が必要な状態であることを指します。要支援2は基本的に1人で生活できる状態ですが、日常の複雑な動作に介助を必要としている状態のことです。
一方の要介護は運動能力以外に「思考力」が低下している状態を指し、要介護に認定される基準の1つが「認知症」です。
要介護1では基本的に1人での生活ができる状態であることは要支援2と同じですが、運動能力がさらに低下した状態かつ、思考能力や理解力の低下がみられる場合に認定される可能性があります。
つまり認知症の疑いが見られる場合、要介護1と判定される場合があるということです。
半年以内に心身状態が悪化していく恐れがあるか
要支援2と要介護1の境界線として、認知症の有無以外にも「状態の安定性」も判断材料になります。
介護料の増加につながる変化が発生する可能性がある、具体的には主治医の意見書で「認定後6ヶ月以内に要介護度の再評価が必要である」とされた場合は、常時介護を要する状態として要介護1に認定される可能性があります。
逆に、要介護の再検討が必要ない場合には要支援2として認定される可能性があります。
要介護認定で利用できるサービスが変わる
認知症などの症状がみられて要介護1に認定されるか、要介護まではいかないと判断されて要支援2に分類されるかでは利用できるサービスの内容に差が出ます。
たとえば、以下の介護施設を利用するためには要介護1以上であることが必要で、要支援に認定されている方では利用できません。
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
さらに「夜間対応型訪問看護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」といった訪問看護サービスも、要介護でしか利用できません。
くわえて訪問介護やデイサービスなどの利用限度額も異なります。介護保険では居宅サービスの自己負担は1割になりますが、限度額を超えた場合は全額が自己負担です。
この限度額は要介護・要支援のレベルによって以下のように異なります。
介護保険の全体像については、こちらの記事も参考にしてください。
実態よりも要介護認定が軽くなることもある
手続きを行った結果、想定よりも要介護度が軽くなってしまうこともあります。理由は、「情報が正確に調査員に伝わらないため」です。
認知症の方は調査員が訪問して調査する際、自分を良く見せようとして普段できない動作でもテキパキと動いてしまうことがあります。調査員の目からみれば、要介護に値しないとうつってしまうかもしれません。
要介護認定の判定方法
要介護度の認定では、全国一律の基準を設けています。具体的には、主に以下の2つから判定が行われます。
- 認定調査員による訪問調査
- 主治医の意見書
認定調査員の訪問調査では、介護が必要になる本人や家族への聞き取り調査が行われるほか、調査員から「足を上げてみて下さい」「歩いてみて下さい」と行動を指示されることもあります。
実際の調査結果に主治医の意見書を加えて、「介護認定委員会」での審査を経て要介護度が決定されます。
介護認定が認知症の実態と異なったときの対処法
市区町村の介護保険課に認定の理由を確認する
正式な調査を経て要介護度が決定した場合でも、決定した要介護度と実際の認知症のレベルが合っていない場合があります。
その場合、市区町村の「介護保険課認定審査係」で認定結果の理由を確認したうえで、実際の認知症のレベルと合っていない旨の相談をしましょう。
要介護の区分変更の申請をする
認定審査係の説明を受けて納得できない場合、要介護度の「区分変更の申請」を行ってみることも検討します。
区分変更の申請は認定調査を再度行うことで、もう一度「介護認定審査会」で判定をしてもらう方法です。文字通り本人の状態が悪化した場合に要介護度の変更を申請するための手続きではありますが、認定結果を不服とする場合の手続きとしても利用できます。
ケアマネージャーに相談することで手続きが可能です。担当のケアマネージャーに区分を変更する旨を伝えて、了承を得ることで初めて手続きが始められます。
再調査が決まったら、今度こそ認知症の実態に合った要介護度に認定されるための準備を進めましょう。
要支援に認定された人が要介護に区分変更したい場合は「新規の取り扱い」になります。そのため、再び要介護認定の申請が必要です。区分変更では認定を受けてから6ヶ月の有効期間に関係なく、更新の時期を待たずに区分変更が可能です。
普段の生活のありのままを伝える
認定調査のなかでは介護を受ける人が頑張ってしまう可能性もあるため、調査では「ありのままの状態」を伝えることが大切です。
短い調査時間のなかで普段の生活の様子を伝えるためには調査される項目について、あらかじめチェックしておくことがポイントになります。
以下のページには認定調査票が公表されていますので、認定調査の前に質疑応答をイメージするための参考にできます。
調査票をみてみると、主に以下の6つの項目について書かれていること分かります。
- 身体機能・起居機能
- 生活機能
- 認知機能
- 精神・行動障害
- 社会性への機能
- 過去14日間で受けた特別な治療
これらの内容について、あらかじめ回答を考えておきましょう。たとえば「歩行器を使わないとトイレまで自力で歩くことはできない」といったように、具体的なエピソードをまとめておくことが大切です。
本人の実情を知る人が必ず同席する
認定調査の際は、家族や普段の本人の様子を知る人が必ず同席するようにしてください。
日常生活のなかで本人が間違えてしまうことについて、実例を挙げて具体的に伝えることが大切です。
主治医の意見書を提出する
主治医の意見書は、調査員の調査結果と照らし合わせるための重要な資料になります、
意見書を書いてもらう際は、普段から本人が利用している「かかりつけ医」に書いてもらうのがもっとも確実です。
いくつもの病院にかかっている場合は、診療の情報をかかりつけ医に伝えておくことで情報をまとめておきましょう。
区分変更でも必ず要介護度が変わるわけではない
区分変更の手続きを行う前に知っておきたいことが、「区分変更手続きで必ず要介護度が上がるわけではない」ということです。
認定調査員が前回と同じ人である保証はなく、認定に際しては調査員個人の主観によるところも大きくなります。
主治医の意見書があれば今よりも軽い要介護度・要支援度になることは考えにくいものの、区分変更前と同じ要介護度に据え置かれる可能性や、区分が変更されたとしても希望通りの要介護度まで上がらないことも考えられます。
審査請求(不服申し立て)という方法もある
区分変更と異なり、そもそも認定結果についてまったく承諾できないという場合は「審査請求(不服申し立て)」という手段もあります。
介護保険法第183条に基づき、市区町村が行った行政処分を取り消すためのもので、介護判定を取り消す際にも利用できます。
ただし、要介護認定の通知が届いてから3ヶ月以内という期間の制限があるほか、審査会が独自に認定をやり直す手続きではないことに注意が必要です。
取り消しされたとしても、改めて要介護の認定手続きを行わなければいけません。さらに不服申し立てしたとしても、絶対に処分が取り消しになるとは限らないことも覚えておきましょう。
まとめ
今回は認知症と要介護度の関係と、実態と異なる要介護度に認定された場合の対処法を紹介しました。
認知症の方は調査の際に元気よく受け答えしてしまうことがあり、実態とは異なる軽めの要介護度に認定されてしまうこともあります。
その際は「区分変更」の申請を行い、正しい要介護度に認定されるように準備を進めましょう。

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