- ホスピスは余命が少なくなった人への緩和ケア
- 入院or在宅どちらでもホスピスを受けることが可能
- 公的医療保険や高額医療費制度の対象になる
人がいつか死ぬのは、残念ながら避けられないものです。
できれば最期は心安らかに、苦しまずに旅立ちたい…そう願っている人は多いでしょう。
人生の終末期を心身ともにサポートして、安らかな最期を迎える手助けになる存在がホスピスです。
今回はホスピスについて、費用面にフォーカスしながら探っていきましょう。
ホスピスとは
ホスピスとは、余命が少なくなった人を支える医療ケアの一種です。
別名ターミナルケア、もしくは終末期医療とも呼ばれます。
通常の治療行為に加え、痛みや苦しみを減らすための措置、メンタル面のサポートもあわせて行われています。
ホスピスと緩和ケアの違い
よく混同されがちですが、ホスピスケアと緩和ケアは厳密には違います
緩和ケアは余命の多少に関わらず、痛みを軽減させることを目的とした医療ケアが行われます。
ホスピスケアでももちろん緩和ケアは行われますが、その対象は、余命が少なくなっている患者に限定されます。
つまり、ホスピスケアは緩和ケアの一種であると考えておきましょう。
ホスピスでの費用
それでは、ホスピスケアを受けるためにはどのくらい費用がかかるのでしょうか。
ホスピスは医療行為なので、かかる費用も一般的な医療行為と基本的に変わりません。
しかし、どこでホスピスケアを受けるかによって、若干の違いが出てきます。
今回は「一般病棟」「緩和ケア病棟」「在宅」の3つに分けて、それぞれの費用を確認してみましょう。
一般病棟の場合の費用
一般病棟に入院している場合でも、病院内で緩和ケアチームが発足していればホスピスケアが受けられます。
通常の診療費に緩和ケア診療費の加算がされ、その費用は医療保険の対象にもなります。
具体的な金額は施設により異なりますので、入院先の病院にお問い合わせください。
また、ホスピスケアの対象となる患者は個室に入るケースが多いため、その場合は保険対象外の差額ベッド代が追加されます。
緩和ケア病棟の場合の費用
緩和ケア病棟に入った際の入院費は、かつては1日49,260円の定額制でした。
しかし平成30年の診療報酬改定により、現在では施設により2段階に分けられています。
緩和ケア病棟入院料1に属する施設は1日あたり50,510円、緩和ケア病棟入院料2にする施設は48,260円です。
この入院費も医療保険の対象となりますので、実際の支払額は自己負担分のみとなります。
自宅で緩和ケアを受ける場合の費用
入院していなくても、ホスピスケアを受けることはできます。
認定緩和ケア医による訪問診療・訪問看護を受けたり、緩和ケア外来に通院してケアを受けます。
費用に関しては、通院なのか訪問なのか、24時間対応体制なのか等の状況によって変わってきますので、一概には言えません。
主治医やソーシャルワーカーに聞くか、院内の医療福祉相談窓口で確認しましょう。
国の制度を活用しよう
ターミナルケア(終末期医療)に対する国の支援体制も確認しましょう。
国や自治体による医療支援は、対象者の世帯収入によって変動します。
住民税非課税世帯などの低収入世帯に対しては、通常の医療保険制度に加えて自己負担分も減額されます。
お住まいの自治体役所窓口に問い合わせてみましょう。
社会保険制度
ホスピスや緩和ケアは医療行為ですので、治療費には社保険や社会健康保険や国民健康保険が適用されます。
ちなみに、ホスピスは介護保険制度の対象サービスではありません。
民間介護施設などでホスピスに類するサービスを受けたとしても、その費用は保険の対象にはならず、全額自己負担となります。
また、緩和ケア病棟への入院で医療保険を適用できるのは、ガン(悪性腫瘍)もしくはAIDS(後天性免疫不全症候群)患者に限定されています。
公的医療保険制度(高額医療費制度)
治療費が世帯収入に対して高額になった場合、高額医療費制度の対象になります。
高額医療費制度とは、一ヶ月でかかった医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超過分の費用を免除してもらえる制度です。
70歳未満の人でしたら事前に「限度額適用認定証」をとっておく必要がありますが、70歳以上であれば全員、上限金額までの請求になります。
なお、差額ベッド代や食事代、オムツ代などは社会保険制度・高額医療費制度ともに対象外です。
ホスピス病棟入院までの手続き
ご自分や家族の余命がわずかとわかって、ホスピスや緩和ケア病棟に入院を希望している場合は、まず主治医に相談しましょう。
通っている病院にホスピス緩和ケア病棟があったり、緩和ケアチームが活動している病院であれば、ホスピス病棟に移動できます。
もし通っている病院が緩和ケア診療加算施設の認定を受けていないとしたら、緩和ケア病棟がある病院への転院が必要です。
主治医や院内のソーシャルワーカーに相談の上、受け入れてくれるホスピスを探しましょう。
ホスピスの候補が見つかったら主治医に紹介状を書いてもらい、ホスピスの担当者と対象者・家族が面談を行います。
面談で対象者の身体状況や今後の希望、延命に関する自分と家族の意向などを充分確認した上で、OKとなったら入院が可能です。
緩和ケアが受けられる病院を探す方法
緩和ケア病棟がある医療施設は、各都道府県の地方厚生局のウェブサイトから確認ができます。
また、日本ホスピス緩和ケア協会に属している施設でしたら、同協会ウェブサイトからも確認が可能です。
日本ホスピス緩和ケア協会|緩和ケア病棟のある施設一覧(協会会員)
とはいえ、ホスピスに入院するには現在のかかりつけ医からの紹介状が必須ですので、まずは現在かかっている病院に相談してみるのが早道です。
近隣のホスピスと連携をとっていたり、詳しい情報を持っていることも多いので、個人的に探すよりもスムーズに見つかる可能性があります。
ホスピスを検討する上での注意点
ホスピスを利用することは、すなわち対象者の余命がわずかだということですね。
ですからホスピスの検討も、非常にデリケートな問題です。ホスピス病棟への打診をすることで本人がショックを受ける可能性もありますので、慎重にことを進めるようにしましょう。
また、家族の意向が完全に一致していないと、思わぬトラブルになってしまう恐れもあります。
せっかくホスピスに入ったのに、家族間のトラブルで安らかな最期が迎えられないのは悲しいですね。
ホスピスを検討する際には、本人と家族が充分に話し合い、全員の意思を一致させましょう。また、近年ではガン治療の進化に伴い、抗がん剤を余命ギリギリまで投与されるケースが増えています。
主治医が「末期がん」との診断を付けるタイミングが遅れ、さらにホスピス施設探しが遅れてしまうと、利用までに患者の生命が尽きてしまうかもしれません。
「まだ大丈夫」「縁起でもない」と、ホスピスの検討を先延ばしにせず、周囲の家族が冷静に情報収集をしておくべきでしょう。
まとめ
今回は、余命が迫った終末期の患者と家族のターミナルケアを行うホスピスについて、主に費用面を中心に解説しました。
大切な人の命が終わり間近な事実に、眼をそらしたくなってしまうかもしれません。しかし、周囲が冷静に準備をしておくことで、最期の瞬間を少しでも安らかにすることができます。
詳しい専門家に相談をするなどして「その日」までに何ができるかを考えましょう。
患者本人や周囲の家族が後悔することなく、おだやかで温かな最期を迎えられることを祈っています。