【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

介護タクシー(通院等乗降介助)を徹底解説|利用方法・車両の種類・料金他

タクシー

この記事を書いた人
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級

この記事のサマリ
  • 介護タクシー(通院等乗降介助)は介護保険サービスのひとつ
  • 介護タクシーと福祉タクシー・一般タクシーの違いは介助サービスの有無
  • 介護タクシーの料金は運賃・介助サービス費用・福祉器具レンタル費用
  • 介護タクシーには家族が同乗できないためドライバーの人柄・相性見極めも肝心

ひとりでは外出がままならない高齢者が出かけるときには、外出先での家族のサポートが必要です。

しかし、家族が遠方に住んでいるなどの理由により、身近な家族が高齢者のサポートをできないケースがあります。

タクシーが高齢者を目的地まで運んでくれて、そのまま現地で高齢者の用事をサポートしてくれれば、家族の負担は減るのではないでしょうか。

今回は要介護者の外出をサポートする「介護タクシー」について解説します。

介護タクシーとは

介護タクシーとは、介護を必要とする方が外出するときの「出かける前」から「帰ってきた後」までの一連の流れをサポートする訪問介護サービスの一種です。正式な名称は「通院等乗降介助」です。

一般的なタクシーとは異なり、介護タクシー(通院等乗降介助)では目的地までの移動とあわせて以下のサポートが受けられます。

  • 出かける前の支度(着替えなど)
  • 乗降の介助
  • 現地における移動等の介助
  • 現地における手続きの代行(薬の受け取りなど)
  • 帰宅後の片付け(着替えなど)

通院等乗降介助のイメージ

画像引用:総務省|訪問介護における通院等乗降介助

家族が一緒でなくても要介護者の外出支援をしてくれるサービスなため、遠距離介護をしている高齢者家族に役立つ介護サービスです。

遠距離介護をしている高齢者家族に役立つ介護サービスや割引制度などは、以下の記事でも紹介しています。本記事とあわせて参考にしてください。

介護タクシーと福祉タクシーとの違い

要介護者の介助もサービス範囲に含まれる介護タクシーに比べ、一般的に福祉タクシーと呼ばれるタクシーは、要介護者に対して直接的な身体介助はできません。

福祉タクシーとは車椅子やストレッチャーのまま乗車できる機能を備えた旅客自動車(タクシー)を指します。

それぞれの違いを知り、利用目的にあったタクシーを選びましょう。

介護タクシーは介護保険が使える

要介護3の介護保険被保険者証

介護タクシー(通院等乗降介助)は訪問介護の一種のため、介護保険が適用できます。

移送にかかる運賃は介護保険の対象ではありませんが、利用者の身体介助などにかかる費用は、利用者の負担は原則1割です。

介護タクシーにかかる費用については後ほど詳しくご説明します。

介護タクシーの運転手は介護資格の取得者

介護タクシーを取り扱う事業者は、訪問介護事業所の指定を受けている介護事業所です。

さらに介護タクシーを運転して要介護者の介助を行うドライバーは、全員が介護職員初任者研修などの介護関連の資格を持っています。ドライバーが資格を持っていないときには有資格者が同行する場合もあります。

また当然ですが、介護タクシーは乗客(旅客)を運ぶ旅客自動車なため、ドライバーは介護関連の資格だけでなく普通自動車二種免許も取得していなければいけません。

介護保険適用は要介護1~5のみ

介護タクシーの利用時に介護保険を適用できる方は、要介護認定で要介護度1~5と判定された方だけです。要支援1~2の方は適用できません。

要介護度のレベルごとの状態は以下表を参考にしてください。

要介護度のレベルごとの状態

画像引用:全日本民医連|0-1介護保険を利用するためにはどのような手続きが必要ですか

要介護認定について詳しく知りたい方は、以下の記事が参考になります。

介護保険適用の利用条件

介護タクシーは、すべての外出で介護保険が適用できるわけではありません。

以下のような目的で介護タクシーに乗車する場合にのみ、介護保険が適用できます。

  • 病院・クリニックへの移動(受診)
  • リハビリ施設への移動(リハビリ)
  • 銀行・ATMへの移動(預金引き下ろし)
  • 投票所への移動(選挙投票)
  • 補聴器・メガネの購入や調整など、本人が出向く必要がある買い物先への移動
  • 本人が出向く必要がある公共機関への移動

レジャー目的や親類宅への訪問、墓参りなどは介護タクシーの利用条件に反するため介護保険は適用できません。

介護タクシー車両の種類

介護タクシーに使われる車両の種類は以下の2種類です。

福祉自動車

福祉自動車とは、車椅子やストレッチャー等のリフト・スロープ・寝台等の特殊な設備を設けた自動車です。介護タクシー事業者はこの福祉自動車を1営業所につき1台以上は保有しなければいけません。

一般車両

車椅子や寝たきりの要介護者を移送する必要がない場合には、セダン型やワゴン車などの一般車両も介護タクシーとして利用されています。

介護タクシーの料金

領収書と電卓

介護タクシーを利用する料金は通常の運賃に加え、介助サービス費用と福祉器具レンタル費用がかかります。

運賃

運賃については、介護タクシーと一般的なタクシーではほとんどの場合同一料金です。

一般的なタクシーの料金計算方法は以下のとおりです。

時間制運賃 30分ごと1,000円、または30分500円+以降30分ごとに2,000円など
距離制運賃 2㎞750円+以降1㎞ごとに300円など
迎車料金 0~410円
予約料金 0~500円

介助サービス費用

介助サービス費用は事業者ごとに異なりますが、おおむね以下の価格が目安となります。

乗降介助 500~1,500円
外出付き添い 1,000~2,000円
目的地における介助 30分900円~

介助サービス費用には介護保険が適用できるため、実際に利用者が支払う費用は上記の1割です。

福祉器具レンタル費用

目的地で車椅子などに乗って移動する場合には、福祉器具のレンタル費用が別途発生します。

平均的なレンタル費用は自走用車椅子で500円程度、介助用のリクライニング式車椅子で1,000程度です。

一般タクシーと介護タクシーの料金比較

一般的なタクシーと介護タクシーとの料金システムの違いは以下のとおりです。

種類 一般タクシー 介護タクシー
運賃 距離制または時間制運賃 左同
介助サービス費用 0円(介助できない) 利用シーンごとに設定
福祉器具レンタル費用 0円(レンタルできない) 福祉器具ごとに設定

介護タクシー代を助成する自治体もある

カウンターでチケットを渡されるイラスト

要介護者が安心して外出できるように、介護タクシー券を発行して要介護者の移動費用を助成している自治体があります。

多くの自治体では介護保険が適用される介護タクシーだけでなく福祉タクシーでも助成してもらえるため、通院など介護タクシーの利用目的以外でも利用が可能です。

以下の記事を参考に、お住まいの自治体にお問い合わせください。

介護タクシーの利用方法

夕方のドライブ

介護タクシーは以下のようにして利用します。

STEP.1
ケアプランに基づく申請
ケアマネージャーが作成するケアプランに介護タクシーの利用が含まれていないと介護保険が適用できません。「通院のために介護タクシーを利用したい」と伝え、ケアプランに含めてもらう必要があります。
STEP.2
予約
介護タクシー事業者に連絡を取り「〇月〇日に介護タクシーを利用したい」と申し込みします。予約の際には行き先や利用目的、現地で何の介助をして欲しいかもあらかじめ伝えます。
STEP.3
お迎え
利用当日、予約した時間に介護タクシーが自宅に到着します。必要に応じ要介護者の着替えやおむつ替えを行い、玄関までの移動介助を行います
STEP.4
移動
一般的なタクシーと同様、目的地まで利用者を運びます。
STEP.5
現地サポート
目的地に到着した後は降車を介助の後、目的の場所におけるサポートを行います。通院目的の場合は病院内での介助は医療スタッフにまかせますが、診察受付や診察後の会計、薬の受け取りなどは介護タクシーで行います。
STEP.6
帰宅
自宅まで利用者を送り届けます。帰宅後はパジャマ等への着替えやおむつ替えなどもあわせて行います。
STEP.7
料金支払
多くの介護タクシー事業者では当日現地払いですが、請求書による後払いが可能な事業者もあります。

介護タクシーの探し方

黒板にチョークで描かれた虫眼鏡のイラスト

介護タクシーは地域包括支援センターの窓口に相談して探すか、ケアプランを作成してくれたケアマネージャーから紹介してもらう方法が一般的です。

インターネットでも探すことは可能ですが、インターネット検索で出てくる「介護タクシー」は介護保険が適用できない福祉タクシー事業者が多いため、適切なサービスが見つけられずに混乱する人が多いでしょう。

地域包括支援センターとケアマネージャーについて詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

介護タクシーは家族が同乗できないので注意

赤と青のビックリマーク

最後に、介護タクシーの利用をこれから検討する高齢者ご家族にひとつ注意点を申し上げます。

介護タクシーは家族の同乗が原則として認められていません。家族が利用者のサポートをできるのであれば第三者が手助けする必要がないからです。

そのため、介護タクシーを利用するときには車両の良し悪しやドライバーの技量だけでなく、ドライバーもしくは介助者の人柄や、要介護者との相性の見極めも肝心です。

介護を必要とする家族が安心して外出できるよう、介護タクシーの事業者は慎重に選びましょう。

まとめ

今回は介護タクシーについて解説しました。

普段は自宅や施設等で生活している高齢者も、ときにはどこかに出かけなければいけないシーンが発生します。

必要に応じていつでも介護タクシーが利用できるように、要介護者がいる家族はあらかじめ介護タクシーの情報もしっかり収集しておきましょう。