- 在宅介護の平均は月5万円、施設入居の平均は月20~25万円
- 施設入居では初期費用に数百万円かかる場合も
- 介護破産を招かないための対策が必要
いまや、ほとんどの人にとって避けて通れないのが親の介護問題です。
日本の超少子高齢化に伴い、今後ますます実親や配偶者の親の介護負担が、子世代に重くのしかかってくるでしょう。
東京海上日動火災保険株式会社が行ったアンケートによれば、親を介護する上での一番の心配は費用面だそうです。
「介護破産」とも言われるように、介護にかかる費用は家計を大きく圧迫します。
実際、親の介護にはいくらくらいの費用がかかるのでしょうか?
介護破産を招かないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか?
今回は親の介護費用について、最新調査から導き出された「介護破産を招かないための心得」をお教えします!
何年間くらい介護費用を支払う必要があるの?
厚生労働省の統計によると、日常生活に支障がない「健康寿命」の平均は男性72.14歳、女性74.79歳だそうです。
現在の日本の平均寿命である男性81.09歳、女性87.26歳との差は、なんと8年~12年です。
ですが健康寿命が終了しても、直ちに介護が必要となるとは言いきれません。
そのため、若干の年数を減らして介護期間を7年と考えました。
決して長く見積もった年数ではなく、むしろ短めにカウントしたことが納得できるでしょう。
在宅介護にかかる平均費用は月5万円
まずは、在宅介護を行った場合の費用について見ていきましょう。
2016年に公益財団法人家計経済研究所が行った調査によると、親ひとりを在宅介護した場合にかかる費用は1ヶ月平均5万円だそうです。
両親ともに揃っている場合には、単純計算で月10万円です。
年間120万円、介護期間を7年と仮定すると、トータル金額では840万円にもなります。
とはいえ、上記では男女の平均余命などは全く考慮していませんので、かなり乱暴な計算ではあります。
あくまでも、ひとつの参考目安としてお考えください。
収入の面から見れば、2018年時点で年金受給者(単身者)が受け取れる金額は、国民年金でも月55,615円です。
親が受け取る年金を介護費用に当てられれば、コスト的には十分対応可能ですね。
しかし、最期まで親を在宅で介護するためには、介護者の多大な労力が必要になります。
施設に入居した場合の平均費用は月20~25万円
では、在宅の介護ではなく、何らかの介護施設に父母を入居させた場合の費用負担はどうなるでしょうか。
高級老人ホームを除けば、高齢者向け施設の入居費用は月平均20~25万円です。
夫婦2人なら月40万程度、年間だと480万円の計算です。
先ほどと同じように7年間継続したとすると、月額費用だけで3,360万円もの費用がかかることになります。
さらに、施設入居の場合は入居費用として数百万から1,000万円ほどかかってくる施設もありますので、4,000万〜5,000万円とみておいた方がいいかもしれません。
介護保険でまかなえる範囲はどこまで?
楽観的な人は、心中ではこう考えているかもしれません。
「そんなこと言っても、介護保険があるから補填できるんでしょ?」
確かに、介護保険を利用すれば親の介護費用は軽減されます。
しかし、介護保険が使えるのはあくまでも「介護に関わる費用」のみです。
介護付有料老人ホームなどの家賃に相当する部分や、食費・医療費などの必要経費は対象外です。
さらに、親に一定以上の所得がある場合には、介護保険の自己負担額が1割ではなく2~3割負担になります。
自分の親は年金がたくさんあるから大丈夫…
と楽観視している人は、自己負担割合の変動により思わぬ損失になる可能性もあることを知っておきましょう。
介護破産を招かないためにはどうすれば良い?
厳しい予想図を目の当たりにして、心が折れてしまいそうな人もいるかもしれません。
楽観視して将来に苦しい思いをしないように、あえて厳しい状況をお伝えさせていただきました。
ですが、希望はあります。
あらかじめ対策をしておけば、子世代の負担もある程度は軽減できるのです。
ここからは、介護破産を招かないための心得を3つお教えしましょう!
親の介護がスタートする前にしっかり準備して、いまのうちから介護破産防止対策をとってください。
親の経済状況を把握しておこう
親が認知症になったら、預金や証券などの金融資産を自分で管理できなくなる恐れがあります。
実子といえども他人の資産は勝手に使うことはできませんから、親自身に判断力がある内に「家族信託」の手続きをとっておくことをおすすめします。
家族信託とは、不動産や預貯金などの資産を持つ人が、資産管理を家族に託すための仕組みです。
なお、認知症になった親の財産を管理するには「成年後見制度」という方法もありますが、家庭裁判所への申し立てが必要など手間がかかります。
事前に家族信託をしておくことで、いざというときに親も子も安心して介護費用が捻出できます。
また、最近では介護が必要になった時点で支払われる民間の介護医療保険を契約している親世代も多いです。
知らなければ保険の受け取りもできません。受取人の「指定代理請求人の指定」も想定し、加入している生命保険などの加入状況はきちんと確認しておきましょう。
自治体の社会福祉サービスを調べておこう
社会保険としての介護保険以外でも、介護費用を軽減できる公的な高齢者向け福祉・生活支援サービスがあります。
親の居住地域の市町村に問い合わせたり、地域包括支援センターに相談しましょう。
また、世帯収入に対して高額になりすぎた場合の介護費用は、「高額介護サービス費」として返還されます。
たとえ同居していても、世帯分離により親世帯の収入を切り離すことで「高額介護サービス費」の対象になるかもしれません。
それぞれの世帯収入を確認し、合算と分離のどちらがベストか比較してみましょう。
介護離職せずにすむ道を探そう
在宅介護の場合、日々の介護に追われて子どもが働けなくなり、収入が途絶えて介護破産につながってしまうケースがあります。
介護者が安心して休業できるように、厚生労働省では「介護休業給付金」の制度を設けています。
一定の条件はあるものの、最長3ヶ月間まで賃金の67%が支給されますから、その間に落ち着いてこの先を考えることができるでしょう。
介護離職は、介護破産への道に一直線につながります。
会社の制度や社会保険制度を最大限に活用し、介護離職しないですむ道を探しましょう。
まとめ
今回は、親の介護にかかる費用の調査結果から、介護破産を防ぐためにできることを解説しました。
大切な両親を最期まできちんと介護してあげたい気持ちは、誰しも同じです。
しかし、それで子どもが介護破産してしまっては、親としても本意ではないでしょう。
金銭面の不安なく介護をするためには、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談をして、充分な対策をとっておくことが重要です。
笑顔で親の介護ができるよう、いまから対策を開始しましょう。