- 要介護認定は介護サービスを受けるときに必要
- 要介護認定するために認定調査が行われる
- 要介護認定基本調査の項目数は74個
親や配偶者、または自分自身に介護が必要となったときには、介護サービスの申請を行います。
しかし公共の介護サービスを受けるためには、申請者が本当に介護サービスを必要としているのか、またどのくらいのレベルで介護が必要なのかを調査によって明らかにしなければいけません。
今回は介護サービスをうけるための要介護認定と、認定のための調査方法について詳しく解説します。
要介護認定とは
要介護認定とは、その人がどのくらい介護を必要としているかの度合いを表したものです。
寝たきりや認知症など介護を必要とする状態になった人や、日常生活に支援を要する人は自治体の介護サービスを受けることができます。
自治体は介護サービスの提供にあたり、申請者が具体的にどのくらい介護もしくは介護予防を必要としているかを調査し、自治体の調査結果をもとに介護認定審査会が要介護度を判定します。これが要介護認定です。
なお要介護認定の申請ができる人は原則65歳以上の介護保険第1号被保険者です。第1号被保険者になった人にはお住まいの市区町村より介護保険被保険者証が郵送されます。
介護保険被保険者証については以下の記事を参考にしてください。
要介護度の認定区分
要介護認定で決定する要介護度は「要支援1~2」と「要介護1~5」に分かれます。
それぞれの認定区分は以下表のとおりです。
要支援1~2
画像引用:堺市|介護度別の状態像の目安
要介護1~5
画像引用:堺市|介護度別の状態像の目安
上記はあくまでも目安のため、申請者の状態と必ずしも合致するとは限りません。
実際には申請者の状態に加え、世帯構成や近親者の状況などさまざまな要素を調査して判定されます。
要介護度ごとの認定基準時間
要支援1~2もしくは要介護1~5と判定を受けると、その要介護度に応じた介護サービスが受けられるようになります。
要介護度により受けられる介護サービスは、各介護サービス提供に要する時間を想定した「分」で表されます。
それぞれの要介護度ごとの基準時間は以下表のとおりです。
画像引用:厚生労働省|要介護認定の仕組みと手順
要介護認定の調査を受けるには
要介護認定の調査は、介護サービスの申請により行われます。申請はお住まいの市区町村役場で行います。
市区町村役場の福祉課窓口などに申請者あるいは家族などの代理人が出向いて申請しますが、申請者が出歩けない、家族が遠方にいるなどの事情で窓口に出向けない場合には、地域包括支援センターなどが代行して申請もできます。
地域包括支援センターとは介護や医療、福祉など高齢者に対する生活支援を行う地域機関です。詳しくは以下の記事をお読みください。
要介護認定の流れ
要介護認定は地域による格差を防ぐために、全国共通の流れや調査基準で行われています。
要介護認定を受ける流れは以下のとおりです。
画像引用:長野県|要介護(要支援)認定について
要介護度を左右する聞き取り調査
申請者の要介護度を判定するためにもっとも重要になる要素が、訪問による聞き取り調査です。
聞き取り調査では市区町村の調査担当者または市区町村より委託されたケアマネージャーが申請者の自宅あるいは入院先などに出向き、実際の生活状況を見ながら申請者本人の心身の状況などをチェックします。
認定調査の際には全国共通の認定調査票が用いられます。
画像引用(部分):厚生労働省|認定調査票(概況調査)
また家族に対しても聞き取り調査を行い、家族がどの程度まで介護に関与できるのか、家族から見た申請者の状態なども確認します。
聞き取り調査の注意点
市区町村の担当者やケアマネージャーが聞き取り調査に訪れた際には、申請者の実態を正しく伝えるようにしましょう。できないことを恥ずかしがり、普段よりも良く見せたいとすると正確な要介護度は判定できません。
訪問する調査員は調査結果の守秘義務が課せられています。たとえ答えにくい質問があったとしても、内容が他社に漏れる心配はないので、安心して答えてください。
また、できるだけ多くの介護サービスを受けたいと思うあまり、聞き取り調査のときに実際の状況よりも悪く回答する介護者家族も稀に存在します。
しかし虚偽の回答は介護保険の不正受給にあたりますから、絶対にしないでください。介護サービスを受けた後に回答の虚偽が発覚すると、保険料の全額返還を求められる可能性があります。
聞き取り調査で確認する内容
訪問による聞き取り調査で確認する内容は74項目に分かれています。
以下からは基本調査74項目をすべてご紹介します。これから要介護申請を行う予定がある人は、どのような調査が行われるかの参考にしてください。
基本調査74項目リスト
- 麻痺があるか(右腕)
- 麻痺があるか(左腕)
- 麻痺があるか(右足)
- 麻痺があるか(左足)
- 麻痺があるか(その他の部位)
- 拘縮があるか(肩関節)
- 拘縮があるか(股関節)
- 拘縮があるか(膝関節)
- 拘縮があるか(その他の関節)
- 自分で寝返りは打てるか
- 自分で上半身を起こせるか
- 上半身を起こしたまま10分以上座れるか
- 両足で10秒以上立っていられるか
- 自力で5メートル以上歩けるか
- 座った状態から立ち上がれるか
- 片方の足で1秒以上立てるか
- 入浴時に自分で体を洗えるか
- 自分で爪切りができるか
- 約1メートル先にあるものが見えるか
- 普通の大きさの声が聞こえるか
- ベッド・車椅子などに自力で移乗できるか
- 日常生活に必要な移動ができるか
- 嚥下に支障ないか
- 食事に手助けが必要か
- 排尿に手助けが必要か
- 排便に手助けが必要か
- 口腔ケア(歯磨きなど)に手助けが必要か
- 洗顔に手助けが必要か
- 整髪に手助けが必要か
- 上着の着脱に手助けが必要か
- ズボン等の着脱に手助けが必要か
- 外出の頻度はどの程度か
- 自ら意思を伝えることができるか
- 毎日の日課を把握しているか
- 自分の生年月日や年齢が答えられるか
- 直前の出来事が思い出せるか
- 自分の名前が答えられるか
- 今の季節を理解しているか
- 自分がどこにいるかを理解しているか
- 徘徊の有無
- 外出後戻れなくなったことはないか
- 被害的になった(物を盗られたなどの妄想)ことはないか
- 作り話を周囲に言いふらすようなことはないか
- 突然泣くなど感情が不安定になることはないか
- 生活が昼夜逆転していないか
- 同じ話を繰り返すことはないか
- 突然大声を出すことはないか
- 周囲の助言や介護に抵抗を見せるか
- 落ち着きがなくなるときがあるか
- 1人で外出したがるなど周囲が目を離せなくなるときがあるか
- 収集癖や無断の持ち帰りなどがあるか
- 物を故意に破損する傾向があるか
- 物忘れの傾向があるか
- 独り言や独り笑いの頻度は多いか
- 自分勝手に行動することはあるか
- 話がまとまらず、会話にならないことがないか
- 薬を正しく服薬できるか
- 預金通帳や小銭の管理ができるか
- 日々の暮らしで自ら意思決定ができるか
- 集団活動に参加しているか
- 日常的な買い物ができるか
- 簡単な調理ができるか
- 特別な医療が必要か(点滴)
- 特別な医療が必要か(中心静脈栄養)
- 特別な医療が必要か(透析)
- 特別な医療が必要か(人工肛門)
- 特別な医療が必要か(酸素療法)
- 特別な医療が必要か(人工呼吸器)
- 特別な医療が必要か(気管切開の処置)
- 特別な医療が必要か(疼痛の看護)
- 特別な医療が必要か(経管栄養)
- 特別な医療が必要か(血圧、心拍、酸素飽和度等のモニター測定)
- 特別な医療が必要か(褥瘡の処置)
- 特別な医療が必要か(カテーテル)
要介護認定の判定結果に不服なとき
要介護認定の調査は申請者と普段接していない人が行っているため、短い時間では実態を十分に把握しきれず、実際の状況に比べて要介護度が低く判定されるケースがあります。
要介護認定は2年ごとに行われますが、要介護認定の判定結果が納得いかないときには2年後を待たずに区分変更の申請をし、再調査を依頼しましょう。
区分変更の申請については以下の記事も参考になります。
まとめ
今回は要介護認定を受けるときの認定調査について解説しました。
認定された要介護度によって、受けられる介護サービスの量は異なります。認定調査についてあらかじめ知っておき、要介護者が正しく必要とする介護サービスを受けられるようにしましょう。