終活といえば、遺言や身の回り品の処分などが思い浮かびますが、「お金の終活」も重要です。
残された家族が財産を処分する際の助けになる資料を作ることはもちろんですが、自身の資産と年金収入で老後の生活が賄えるかを確認することも立派な終活になります。
本記事ではお金の終活の進め方やポイント、老後資金が不足しそうな場合の対処法を紹介します。
目次
お金の終活で必要な財産整理の進め方
お金の終活を行う目的は「自分の老後資金を確保すること」「自分の死後に残された方の負担・不安を解消すること」です。
ここではお金の終活で必要になる財産管理の方法についてご紹介しましょう。
資産内容を正確に把握する
老後の生活に不安を感じている方の中には、お金のことをきちんと把握できていない方も少なくありません。
現役時代と違って基本的な収入が年金だけになる老後は、資産が大きく増えることはありません。
年金の収入を超えて赤字になる状態が続けば、資産がどんどん目減りすることになるでしょう。
資産額を把握しないままお金を使うと「老後破産」の可能性もあります。
そこから再び働き出してお金を貯めるのは、体力的にも精神的にも辛いものです。
資産内容を正確に把握し、ライフプランを作って計画的に使っていくことが重要になります。
洗い出した資産をリストにまとめる
お金の終活のために、どんな資産があるのか書き出してみましょう。
書き出すことで資産の総額が分かり、残りの人生でどのように配分するかを決められるようになります。
また自分の死後に遺された家族が遺産を整理することも容易になるでしょう。
通帳を複数に分けている方や証券会社の口座で株式や債券を保有している方、自宅以外の不動産を持っている方は、現金以外のプラスの財産まで全て書き出します。
そのほか、親から受け取った絵画や骨董品、趣味のコレクション、航空会社のマイルや共通ポイントも立派な資産です。
リストアップの際、すでに使っていない定額制のサービスを見つけることもあるでしょう。今後使いそうもないサービスなら解約しておきます。リスクが大きな有価証券を売却して現金として口座に入れておくことも有効です。
不動産は将来に値が付かなくなる可能性もあるため、今のうちに売却することも検討しましょう。
こうした現金以外の財産を現金にしてしまうことで、家族の遺産整理も簡単になります。
金融財産は3つに分類して整理する
将来のために財産をリストアップしたあとは、自分自身の老後生活にも目を向けましょう。
年金収入と貯金だけで生活していくためには、口座を複数に分けて計画的に管理することが必要です。
どのように分けるか正解はありませんが、以下の3つに分けてみることをおすすめします。
- 私生活・決済用のお金
- 生活費以外の楽しみに使うお金
- 医療や介護に使うお金
私生活用・決済のお金
普段の生活費用の口座です。生活費の引き落としや年金の受け取りに利用します。
他の2つの口座は特定の目的があって残しておくお金であるため、基本的に毎日の生活費はこの口座のみで管理しましょう。普段使いの口座を1つに決めておくことで、計画的にお金を使うことができます。
必要に応じて引き出しをすることになるため、銀行ATMが近くにある口座を選ぶのがおすすめです。
生活費以外の楽しみに使うお金
毎日の生活だけでなく、老後を過ごすうえでは楽しみも必要です。
旅行やゴルフ、釣りなどの趣味や車の買換えなど、人生の楽しみにあたるお金はこの口座に残した範囲で楽しみましょう。
予算の上限があらかじめ決まっているため、お金を使いすぎる心配がありません。
医療や介護に使うお金
病気になったり要介護になったりすれば、入院費用や入居費用が必要になります。
「生活保障に関する調査(速報版)/2022(令和4)年度」によれば、直近の入院時の自己負担費用は19万8,000円です。
入院1日あたりにすると20,700円の自己負担になるとされています。
参考 1日あたりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?公益財団法人生命保険文化センター一方の介護について、生命保険文化センターによると月々の介護費用は平均8万3,000円、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円がかかります。
参考 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?公益財団法人生命保険文化センターこれらを見越して、200~300万円くらいの貯金は事前に持っておく方が良いでしょう。
高齢者向けの住宅や介護施設に入居したい場合、入居費用も事前に調べて計算に含めておくべきです。
作成したリストを家族で共有する
リストアップした資産は、家族と共有しておきましょう。
取引パスワードや資産の残高は教える必要はありませんが、「どんな資産があるか」を知らせることで死後に手続き漏れを防ぐことができます。
パスワードを残しておく場合は資産リストとは別に保管し、生前に第三者による引き出しがなされないように注意が必要です。
将来必要な老後資金を把握する
生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で老後生活を送るのに必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円です。ゆとりある生活には37.9万円が必要になります。
参考 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?公益財団法人生命保険文化センターライフスタイルによって老後に必要なお金は変わるため、今のうちから「老後の生活スタイル」「毎月必要になるお金」について検討しましょう。
年金定期便を見れば受給額の目安が分かるため、自分が想定する老後生活を年金の収入で賄うことができるのかをイメージできるでしょう。
もし年金だけでは赤字が発生するようであれば、黒字化のために対策を考えなければいけません。
- 年金の受給開始を遅らせる(受給額が最大84%アップする)
- 定年退職後も働いて給与収入を得る
- 若いうちから資産運用をして効率的に増やす
将来のお金を信託銀行に託すことも選択肢に入る
自分の死後のお金の使い道は事前に決めておくこともできます。
子供に残す以外にも「寄附して社会貢献」といったように、使用目的を自分で決めることが可能です。
自分の資産を決めた使い道通りに行き渡せるなら、「信託銀行」などの会社や機関を利用しましょう。
遺言書作成の相談、遺言書の保管、遺言の執行まで相続に関する手続きを引き受けてくれる『遺言信託』を活用することで、財産の使い道を指定できます。
資産額で老後資金を賄えない不安を解消する方法
老後資金を計算した結果「年金と退職金だけでは不足するかもしれない」という不安がよぎったら、少しでも早いうちから対策を立てましょう。
「収入を増やす」「支出を減らす」という両面の対策例をご紹介します。
労働や資産運用で収入を増やす
老後資金を増やすには、収入を増やすというのが有効です。
令和3年に「高年齢者雇用安定法」が改正されて以降、70歳までの就業確保が企業の努力義務となりました。
シルバー人材センターやアルバイトだけでなく、もといた会社で65歳定年のところを最長5年長く働くことで生涯年収を引き上げることができるでしょう。
働いている時間は個人のお金の出費も減り、認知症予防にも効果的です。
そのほか、まだ老後突入まで時間があるなら、資産運用で効率的な資産形成を狙う方法もあります。
代表的な資産運用としてiDeCo(個人型確定拠出年金)をおすすめします。iDeCoは自分で掛け金を拠出し、運用商品の選定、実際の運用を自分で行う私的年金制度です。
iDeCoの運用で得た収益が非課税になり、受け取る際も「退職所得控除」「公的年金等控除」が適用されることで納税額を抑えられます。
また、拠出する掛金は全額所得控除になるため、所得税と住民税が減額されます。
毎月3万円を拠出する方の所得税率・住民税率が10%の場合、年間で7万2,000円の節税が可能です。
参考 かんたん税制優遇シミュレーションiDeCo公式サイト最短で60歳まで引き出しができない点はネックですが、老後資金のためのお金と割り切ればデメリットにはなりません。
働きながらiDeCoを活用することで効率的に資産運用をしつつ、手取りを増やすことにつながります。
家計を見直して徹底的に管理する
老後にどのような生活を送りたいかによって必要な資金額は全く異なるため、将来の老後生活の内容についても考えておくことが必要です。
現役時代の生活レベルをそのまま維持すると、貯金はあっという間に底を突くことになります。
以下のようにコストが発生するものは売却や解約を検討しましょう。
- 自動車
- 生命保険
- スマホの有料課金アプリ
不要なコストを切り詰めることで食事や趣味といった重要な部分の生活レベルを下げずに生活を続けられます。
まとめ
老後資金の不安がぬぐえない方は、自身の資産額を正確に把握することから始めてみましょう。
老後の生活費が黒字なのか赤字になってしまうかを事前に把握するだけでも、漠然とした不安は解消されます。
もし現状で赤字になってしまうようなら、「労働機関を延ばす」「資産運用をする」「不要な支出を減らす」といった対策をして生涯の生活費を賄えるように対策を進めましょう。

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