- 高齢者は体力面や金銭面で年賀状作りが負担になりやすい
- 終活年賀状とは年賀状じまいの宣言のこと
- SNS・メールの普及により終活年賀状を送る人もいる
- 終活年賀状を受け取っても返信する義務はない
年賀状はお正月の恒例ですが、最近では年賀状のやりとりをしている人はだんだん減ってきているようです。
高齢になると毎年年賀状の準備をするのも大変ですし、もらうのは嬉しくても送るのは面倒が先に立ってきます。
これまで親戚や友人に年賀状を送っていたけれど、儀礼的な年賀状はもう辞めたいと考える人もいるでしょう。
終活の一環として年賀状じまいをし、最後に送る年賀状のことを終活年賀状と言います。
今回は終活年賀状とは何か、終活年賀状の作成をするときに知っておきたいことについて解説します。
年賀状のやりとりは年々減少している
年賀ハガキで新年のご挨拶をする人はそもそも減少傾向にあります。
日本郵便が発表した2021年用年賀ハガキの初回発行枚数は約19.4億枚でした。これは2020年用年賀ハガキの発行枚数23.5億枚に比べて17%の減少となります。
参考
2021(令和 3)年用年賀葉書などの発行および販売日本郵便株式会社
年賀ハガキ発行枚数は10年連続で減少しており、中でも今年の減少率は過去最大です。
この原因は人口の減少なども考えられますが、年賀状で年始挨拶をしようという人自体が減っていることが大きな要因と考えられます。
終活年賀状とは
終活年賀状とは「今年で年賀状の郵送は終了します」と年賀状じまいの宣言をする内容を記載した年賀状です。
特に終了宣言をしなくても年賀状じまいはできますが、それでは相手先に年賀状を辞めた理由が伝わりません。
突然音沙汰がなくなってしまったら相手としては、健康を害して年賀状が書けなくなったのか、あるいは何か非礼をしてしまったのではないかと、いらぬ心配をかけてしまいます。
終活年賀状とは、これまで年始のご挨拶をしていた相手に心配をかけず、失礼のないように年賀状じまいの旨を伝えるためのご挨拶状なのです。
年賀状じまいをする理由
年賀状のやりとりを終了することを年賀状じまいと呼びます。
多くの人は以下のような理由により、年賀状じまいを検討し始めるようです。
体力的な負担
高齢者になると気力・体力ともに衰えが生じてきます。
印刷会社にすべておまかせしていた人ならまだしも、1枚1枚手書きで年賀状をしたためていたような人にとっては、多数の年賀状を作成するのは大変です。
老眼で細かい字も書きづらくなるため、若いころは負担にならなかった作業にも難儀するようになります。
金銭的な負担
郵便料金の値上げにより金銭的な負担が増えたのも理由のひとつです。
消費税が日本に初めて導入された1989年(平成元年)、年賀ハガキの料金は1枚41円に値上げされました。
その後、郵政民営化や消費税率アップの度に郵便料金は値上げされ、2020年現在の年賀ハガキ料金は1枚63円(無地の場合)です。
30年前と比べると1枚当たり22円の値上げと、少額ではあるものの、100枚や200枚もの年賀状を送る人にとっては大きな価格差です。
年金暮らしの高齢者ともなると数千円の違いは生活費にも影響してきますので、不要なお付き合いは整理していきたくもなります。
メール・SNSの普及
年始のご挨拶を郵送ではなく、メールやSNSでする人も増えてきています。
総務省が2012年(平成24年)以来毎年行っている調査によれば、日常的にメールを利用している60代以上の割合は2019年に初めて50%を超えました。
画像引用:総務省情報通信政策研究所|令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>
またLINEやツイッター、Facebookなどの各SNSも高齢者の利用が増加しています。
今後ますます高齢者のパソコン・スマートフォン利用率が上昇し、年始の挨拶はインターネット上で、という方が増えていくことが見込まれます。
終活年賀状はお付き合いの生前整理
では、どうして年賀状じまいを「“終活”年賀状」と呼ぶのでしょうか。
それは年賀状じまいが終活の一環である生前整理の助けになるからです。
生前整理ではモノだけでなく、人と人とのお付き合いについても整理を行います。
年賀状じまいで儀礼的な付き合いを廃止することによって、今後も交流したい人・そうでない人の仕分けができ、本当に親しい相手とだけ交流することができるからです。
それ以外に行う生前整理の内容については以下の記事も参考にしてください。
終活年賀状の書き方
ここからは具体的に終活年賀状の書き方について説明しましょう。
終活年賀状は、基本的には通常の年賀状と同じ書き方をします。文章の中で「今年で年賀状の送付を終了します」と告知するだけです。
《終活年賀状の流れ》
1.年始挨拶
「あけましておめでとうございます」「謹んで新年のお慶びを申し上げます」など
↓
2.年賀状じまいの告知
「高齢により筆をとるのが難しく、今年にて年始挨拶を最後とさせて頂きます」など
↓
3.〆の挨拶
「今後とも皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます」など
また年賀状じまいの後でも交流したい相手には、交流の代替手段を書き添えておくのも良いでしょう。
《代替手段の案内》
「今後はメール(アドレス)へのご連絡頂ければ幸いです」
「お気軽にお電話ください」
「今後ともFacebookページにて是非ともお付き合い願います」など
終活年賀状の文例
終活年賀状の文面をどう作れば良いか悩む人は、以下の文例を参考にしてください。
あけましておめでとうございます
思うところあり終活を開始し、年賀状につきましても本年を持ちまして卒業させて頂きます
今後とも皆様お健やかにお過ごしください
謹賀新年
寄る年波で年賀状を作成するのも難しくなって参りました
誠に勝手ながら、今年限りで新年のご挨拶を終わりとさせて頂きます
皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます
あけましておめでとうございます
旧年中は大変お世話になり感謝申し上げます
昨年よりSNSを始めましたので、来年度より年始ご挨拶はSNSにてお送りさせて頂きたく存じます
今後ともよろしくお願いいたします
テンプレートを活用
上記の文例を参考にしてもまだ終活年賀状の作成が難しい人は、ネット印刷会社が提供しているテンプレートを使ってそのまま印刷依頼すると便利です。
上記のネット印刷会社ではデザインも自由に選べ、状況に応じてアレンジも可能なので自分好みの終活年賀状作成が可能になります。
終活年賀状で気になる疑問
終活年賀状の書き方以外にも、実際に終活年賀状を作る上ではいろいろな「?」が生まれてきます。
ここからは、終活年賀状についてよく聞かれる質問にお答えします。
年賀ハガキと官製ハガキのどちらを使うの?
終活年賀状は一般的な年賀状と同様に新年のご挨拶が中心になるので、年賀ハガキや年賀用切手の使用が適切です。官製ハガキを使用する場合には切手部分の下に朱ペンで「年賀」と記載しましょう。
写真付き・キャラクターデザイン年賀状でもOK?
写真やキャラクター入りの年賀状は不可ではないものの、お終いの挨拶としては軽い印象を与えがちです。ある程度フォーマルなデザインを選ぶ方が無難です。
終活年賀状を送った相手から年賀状が届いたら?
終活年賀状は相手からの年賀状を拒否する内容の宣言ではないので、翌年以降も相手先から年賀状が届くことは十分に考えられます。ご好意に感謝しつつ、返信自体はしなくても失礼にはあたりません。
「縁を切るつもりか」とクレームが来ないか心配…
終活年賀状を事実上の絶縁宣言として捉える人もまだ一定比率いらっしゃいます。そのような相手には終活年賀状で刺激を与えず、あえてフェードアウトするのも大人の作法です。
まだ40代だけど終活年賀状は出せる?
40代や50代のミドル層が終活年賀状を送っても、もちろん問題ありません。その場合には終活年賀状を出す理由を特に記載せず、SNSなど交流の代替手段も書き添えるのがおすすめです。
もし終活年賀状を受け取ったら
自分が送る側でなく、終活年賀状を受け取る側に立つ可能性もあります。
終活年賀状を受け取っても特に返信する必要はありません。また返信したとしても失礼にはあたりません。
自分と相手との関係性や、受け取った時の自分の気持ちに従って返信するかしないかを判断しましょう。
終活年賀状を機に電話やメールを久しぶりにして、儀礼的な付き合いだけでなく新たな関係を構築するのも良い考えですね。
まとめ
今回は終活年賀状について解説しました。
終活年賀状は儀礼的付き合いの卒業証書です。これから終活をする人は「年賀状だけの付き合い」も卒業し、本当に望む相手とだけ交流できるように人間関係を整理しましょう。