- 口腔ケアは、口内の衛生を保ちながら口の機能を維持・向上させること
- 適切に行うことで体力・精神面の向上につながる
- 歯科医師などによるプロフェッショナルケアも併せて行う
口腔内の健康は、心身の全ての健康にかかわる重要な要素です。
健康な人なら自分でセルフケアができますが、要介護高齢者などは自力での口腔ケアが難しくなります。
そこで、介護している人が口腔ケアの内容を知って実践していくことが大切です。
今回は介護における口腔ケアの意味と、具体的な進め方について解説します。
目次
介護における口腔ケアとは
介護における「口腔ケア」とは、口の衛生を保ち、口の機能を向上させることを目的にしたケアのことです、
要介護の高齢者に対する口腔ケアの目的は、大きくわけて以下の4つです。
- 口の中の汚れや細菌を取り除く・予防する
- 口の中の清潔と潤いを保つ
- 粘膜ケアによって咳反射や嚥下反射を高める
- 口の機能を維持・向上させることで食べる・話す・笑顔などの機能を回復させる
口の中は「常に唾液で湿っている」「食べ物などの栄養が豊富」「温度が一定に保たれている」という条件が揃っており、微生物にとっても快適な環境です。
口の動きが不十分になったり口腔ケアを怠ったりすると、悪玉菌などと呼ばれる病原性が高い細菌が増えていきます。
抵抗力が低下することで一気に病気になることも考えられます。
口腔ケアで口内を清潔にすることは、口内だけでなく全身の健康にもつながるのです。
セルフケア
セルフケアは歯ブラシ・フロス・歯間ブラシなど、自分自身で口腔内を清潔に保つ方法です。
介護の現場では、セルフケアができない要介護高齢者に代わって口腔ケアが実施されます。
プロフェッショナルケア
歯科医師や歯科衛生士など、専門家によって専門的なケアとアドバイスをしてくれる方法です。
在宅介護等、通院が難しい環境であれば訪問歯科を利用しましょう。
訪問歯科の利用はケアマネージャーに相談し、訪問に対応している歯科を選択します。
1回あたり30分ほどで、虫歯や歯周病の治療、口腔ケア、リハビリまでしてくれます。
口腔内を健康に保つには、セルフケアとププロフェッショナルケアの両方を取り入れることが大切です。
介護における口腔ケアの重要性
口腔内の炎症は体中に影響がある
口腔ケアをおろそかにすると、どのような問題が出てくるのでしょうか?
どの世代にも共通するのは虫歯・歯周病を引き起こすことでしょう。それが原因で口臭が強くなることもあります。
さらに抵抗力が落ちた高齢者の場合、口のなかの細菌が増加して気管から肺に侵入してしまう「誤嚥性肺炎」が心配です。
栄養状態が良くない高齢者の場合、誤嚥性肺炎が重症化する可能性もあります。
口の粘膜の炎症が口から全身に波及すると発熱などを引き起こし、脱水症状や体力の低下を招くこともあります。
食べたり話したりといった生活機能が衰える
口の機能が低下すると「食べる」「話す」といった基本的な動作に支障をきたすようになります。
食事やコミュニケーションがとりにくいと生活意欲が減退して「うつ」の傾向になったり、認知機能が低下したりといった悪影響があります。
また食事のときに入れ歯が噛み合わないとしっかり噛めず、十分な栄養を取れません。栄養不足が続くことで身体機能の低下・認知機能の低下につながります。
口の中が清潔でないのは口だけの問題だけでなく、全身の健康が損なわれる可能性もあるのです。
介護で口腔介護を徹底することで得られる効果
虫歯の予防に効果的
口腔ケアで口腔内の機能が高まると、唾液の分泌が促進されます。唾液は舌や粘膜などの汚れ・細菌を洗い流す効果があり、虫歯や歯周病の予防につながります。
よく噛めることで体力や精神面の向上につながる
しっかりと噛んで食べられるようになると効率の良い栄養補給ができ、体力の向上に直結します。
ケアの結果で舌の感覚を取り戻すと食べる楽しみを取り戻せることも期待できます。
口や舌の動きが活発になれば「はっきりとした発音ができる」「話すのが楽しい」と感じることも期待でき、いわゆるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上昇するでしょう。
肉体面・精神面の充実には、口腔ケアは欠かせません。
介護での口腔ケアの進め方
口腔内のチェック
口腔ケアを始める前に、要介護高齢者の口を開けて口腔内の状態を観察します。
痛みがあるとケアを避けようとします。痛みの原因になる口内炎や歯肉炎・入れ歯による口腔内の傷などがないかを確認しましょう。
具体的には以下のような状態が発生していないかを注意してください。
- 口腔内が乾燥していないか
- くちびるが乾燥してひび割れていないか
- 虫歯はないか
- 歯肉と頬の間に食べかすがついていないか
- 歯周病はないか
- 舌にコケのような汚れ(舌苔)はないか
- 入れ歯が汚れすぎていないか
うがいなどの際に誤嚥しないため、意識や体調が万全か、リラックスしているかどうかの確認も大切です。
口腔ケア用のグッズをそろえる
口腔ケアを行う前には、専用のグッズの準備が必要です。
- 歯ブラシ
- 球形歯ブラシ(咽頭部や上あごを掃除するための歯ブラシ)
- スポンジブラシ(早粘膜の汚れをふき取る使い捨てマスク
- 電動歯ブラシ
- 歯間ブラシ
- 舌ブラシ
- タオル
- プラスチック手袋
- ガーゼ
- コップ
- うがい受け など
始める前に高齢者の同意を得ることが大切
口腔内は非常に敏感な組織です。高齢者の口腔ケアを始める前、十分に同意を得ておくことが大切です。
認知機能の低下があると、同意があっても拒否されることもあります。
ただ、拒否されたからといって口腔ケアを行わないのは良い結果を招きません。口腔内の虫歯や歯周病が悪化して炎症を発生させるリスクが増大します。
言葉による同意だけでなく「口腔ケアが気持ち良いもの」と感じてもらうことも大切です。
気持ちよさやさっぱり感を感じてもらうと、口腔ケアを受け入れてもらいやすくなります。徐々にケアを進めて口の中の炎症を抑えていきましょう。
要介護者の姿勢を整える
口腔ケアの前に、要介護者の姿勢を整えます。
ベッドの場合、唾液を飲み込むことがないよう「背中を起こす」「あごを引く」が基本姿勢です。
決められた順序に沿って磨く
歯磨きの際は少量の歯磨き粉を使い、1本ずつ丁寧に磨いていきます。力を入れず、小刻みな軽い力で十分です。
力を入れると良く磨ける気がしますが、むしろ逆効果です。強く押し付けると毛束が開いてしまいます。
歯の表面から逸れて磨き残しが出てくるほか、歯や歯茎を傷つける原因になります。
歯が終わった後は舌苔用の歯ブラシを使い、舌の上のコケ上の汚れも取り除いていきます。
歯磨きは決まった順序で行う
歯を磨く順序は事前に決めておき、毎回同じ順序で磨いていくことが大事です。
順番関係なしに磨いてしまうと、要介護高齢者はどこを磨かれるか分からずに不安になります。
たとえば東京都保健所「要介護高齢者のための口腔ケアマニュアル」では、以下の順番で紹介されています。
- 上の前歯の表側
- 上の前歯の裏側
- 奥歯の表側
- 下の前歯
- 下の前歯の裏側
- 奥歯の裏側
口腔内のマッサージとうがいを行う
歯と舌の清掃が終わったら、歯ブラシによる口腔内ストレッチを行います。
歯ブラシの背の部分を使い、頬の内側を外に押し広げながら上下に3回ほど動かしましょう。
固くなった筋肉をほぐす効果が期待できます。
最後に左右の頬に水を含ませ、「ぶくぶく洗い」によるうがいをすれば終了です。
介護で口腔ケアをするときのポイント
歯磨きの際は両手を使って磨く
介助しながら口腔ケアを行う場合、空いている手を使って、あごを固定し、唇・頬などをよけながら磨きましょう。
万が一にも噛まれないように「歯のかみ合わせ面に指を乗せない」「歯より内側に指を入れない」といったことも注意します。
口腔内の乾燥には注意
加齢や薬の副作用で唾液が減少すると、口腔内が乾燥します。口の中の細菌が増加し、炎症を生じさせる原因になるのです、
厚生労働省「e-ヘルスネット」によれば唾液には以下のような働きがあるとされています。
唾液には粘膜保護・自浄・水分平衡・潤滑・緩衝・抗菌・消化・組織修復・再石灰化・発ガン予防などの作用もあり、口腔のみならず身体が正常な機能を発揮するため無くてはなりません。
引用元:厚生労働省|e-ヘルスネット
口腔乾燥で唾液の分泌力が低下すると口腔内の自浄作用が低下し、口腔内に食べ物の残りカスが長時間残り続けます。それが虫歯・歯周病などの原因になるのです。
「口腔湿潤剤などを塗布して保湿を行う」「マッサージを行う」などの対策で唾液の分泌を促しましょう。
誤嚥には細心の注意を払う
高齢者が気を付けたいのが「誤嚥性肺炎」です。飲み込む力が低下してしまった高齢者が食べ物や唾液を細菌と一緒に飲み込んで、気管に入ることで発症してしまう肺炎です。
食べ物を飲み込む(嚥下)能力が低下している場合、顔を横に向けて枕を使ってあごを引くといった対策が有効です。
まとめ
今回は介護における口腔ケアの意味と、具体的な進め方について解説しました。
介護施設などでは職員の方が代行してくれますが、自宅では介護者の方が口腔ケアを実施する必要があります。
口腔ケアを怠ると誤嚥性肺炎などの病気にかかるリスクも増大しますから、普段から十分なケアが必要不可欠です。
専門の歯科医師による「プロフェッショナルケア」も活用し、日常的に口腔ケアを行う習慣を身につけましょう。

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