- 介護休暇は介護のために1日または時間単位で会社を休める制度
- 介護休暇と介護休業の違いは「取得期間」「事前申請の要不要」「給付金の有無」
- 介護休暇をとるときは会社に直接申し出る
- 介護休暇で給与が出るかは会社の規定による
- 介護休暇・介護休業などの支援制度を利用して介護離職を避けよう
超高齢社会のいま、働きながら親の介護をしている方が非常に増えています。
高齢者の介護では突然の病気やケガ、あるいは平日日中にしかできない役所への手続きなど、社員が会社を休まざるを得ない状況が発生します。
そのようなときに社員が利用できる制度が、介護休暇制度です。
今回は介護休暇制度とはどのような制度なのか、介護休業との違い、介護休暇のとりかたや給与の有無などについて解説します。
介護休暇とは
介護休暇とは、会社で働いている社員が要介護状態の方の介護をするために短期間の休暇がとれる制度です。
要介護状態の高齢者等は、いつ突発的な事態が起きないとも限りません。会社に雇用されている方には有給休暇が認められていますが、有給をすでに使い切ってしまった社員などは会社を休むと欠勤扱いになってしまいます。
介護休暇制度は有給休暇とは別に、介護のためであれば一定日数だけ休暇を認めるべきと定めた、法律に基づく特別休暇の一種です。
介護休暇の承認は会社の義務
介護休暇制度の制定は育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)の定めにより、従業員を雇用する会社の義務です。そのため社員から介護休暇の取得を申請されたら、会社はそれを拒否することができません。
2023年現在では介護休暇の拒否に対して会社に罰則規定があるわけではありませんが、もし会社が介護休暇の申請を拒否した場合、労働基準監督署から是正勧告を受ける恐れがあります。
2021年より時間単位で取得が可能になった
育児・介護休業法が最初に制定された年は1992年です。
制定時は介護休暇は1日あるいは半日しか認められていませんでしたが、2019年の法改正により2021年1月1日から時間単位での休暇が認められるようになりました。
これにより、ほんの数時間だけ会社を抜ければすむ役所の手続きや、ケアマネージャーとの打ち合わせなどにも介護休暇が利用できるようになりました。
ただし会社を出て用事を済ませてから再び会社に戻る、いわゆる「中抜け」までは現在のところ認められていません。
介護休暇は遠距離介護の強い味方
介護休暇は、同居している家族の介護でなくても取得できます。
親元を離れて遠方で生活し、遠距離介護をしている方にとっては介護休暇が強い味方になり得ます。
介護休暇は事前の申請が基本的に不要ですが、いま遠距離介護中の親などを介護している方は、突然のトラブルが起きた際に備えてあらかじめ介護休暇を取得する可能性があることを会社に伝えておくと安心です。
遠距離介護については以下の記事でも詳しく解説しています。
介護休暇と介護休業との違い
「介護休暇」と似た言葉に「介護休業」があります。
介護休暇と介護休業はいずれも育児・介護休業法により労働者に認められた権利ですが、違いは以下のとおりです。
制度名 | 介護休暇 | 介護休業 |
休める期間 | 年5日または10日 | 要介護者1名につき通算93日まで |
事前申請 | 不要 | 2週間前までに書面で申請が必要 |
給付金 | ない | ある |
「少し休むときは介護休暇、長く休むときは介護休業」と覚えておきましょう。
介護休業については以下の記事でも詳しく解説しています。
介護休暇の取得条件
介護休暇には、いくつか取得の条件があります。
以下からは介護休暇の取得条件をご説明します。
労働者の条件
介護休暇が取得できる労働者は、要介護状態の家族を介護するすべての労働者です。
ただし会社と労働組合が労使協定を結んでいる場合には、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者および入社後6ヶ月未満の労働者は除外されます。
正社員と契約社員などの雇用条件の違い、あるいは介護する方の性別などに条件は設けられていません。
要介護者の条件
介護休暇は、介護される方(要介護者)が配偶者・父母・祖父母・兄弟・子・孫のときに取得できます。
配偶者は法律上の婚姻関係がない事実婚でも取得可能です。また父母については取得申請者の実の父母であっても、配偶者の父母であっても認められます。
兄弟姉妹の子(甥姪)や配偶者の祖父母、養子縁組をしていない配偶者の連れ子の介護では取得できません。
画像引用:厚生労働省|介護休暇とは
介護内容の条件
介護休暇は、実際に要介護者の身体的な介助をするためだけでなく、要介護者が体調不良になったときやケガをしたとき、また日常的な通院の付き添いなどのときも取得できます。
ケアマネジャーや介護施設責任者との面談、介護保険の手続きのために役所に行くときなど、要介護者と直接に接しない間接的な介護のときでも利用可能です。
つまり「介護に関わる何らかの用事」であれば内容に関わらず介護休暇の取得が可能なので、実質的には介護内容の条件はないと考えて良いでしょう。
介護休暇を取得できる日数
1年の間に介護休暇を取得できる日数は、要介護者が1人の場合には年5日までです。
取得申請者の父母共に要介護者であるなど、要介護者が2名以上いるときには、年10日まで取得可能日数が延びます。
原則として1年の区切りは毎年4月1日から翌年3月31日になりますが、会社の規定で別日を切替え日に設定している場合もあります。
介護休暇のとりかた
介護休暇を取得したいときには、お勤めの会社に直接申し出ます。書面での申請に限らず口頭での申し出も可能です。
会社の規定により、申請書の提出をもって介護休暇を申請すると取り決めている会社もあります。ただしその場合でも、突発的な体調不良など緊急の場合には電話で介護休暇を申し出た後、次の出社時に申請書を提出すれば良いとされています。
以下は厚生労働省が提供している介護休暇申請書のサンプルです。会社独自のフォーマットがある場合には会社が定めた申請書を提出してください。
介護休暇を取得したら給与は出るか
介護休暇で会社をお休みしたときに給料が出るか否かは、会社の規定によります。
しかし残念ながら、介護休暇を取得した時の給料は出ない可能性の方が高いです。
厚生労働省のR3年度雇用均等基本調査によると、2021年度中に子の看護休暇制度を利用して社員が休んだときの賃金の取扱いは、回答企業のうち「無給」が 65.1%、「有給」が 27.5%、「一部有給」が 7.4%でした。
参考
「令和3年度雇用均等基本調査」結果を公表します~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~厚生労働省
子の看護休暇と介護休暇は異なりますので、上記の結果が直ちに介護休暇を取得したときの例につながるわけではありません。
ですが会社の規定としてはほぼ同様の取り扱いをしていると考えられますので、半数以上の会社は介護休暇を無給にしていると考えられます。
介護休暇を利用して介護離職を避けよう
働きながら介護する生活は大変です。
介護休暇を取得できるとはいえ、会社に迷惑がかかるのではないかと取得をためらってしまう方もいるでしょう。
ときには「いっそ仕事を辞めて介護に専念しようか」と考える瞬間もあるかもしれません。
しかし、介護離職は絶対に避けるべきです。介護離職したために、経済的な損失だけでなく肉体的・精神的にも追い込まれてしまう可能性があるからです。
また会社にとっても、貴重な働き手を失うことは大きな損失です。自分のためにも会社のためにも、また介護される人が安心して介護を受け続けられるようにするためにも、介護休暇などの制度は遠慮なく利用しましょう。
まとめ
今回は介護休暇について解説しました。
介護休暇制度は、毎日頑張って仕事と介護をしている人を応援するための制度です。うまく活用して仕事と介護の両立を図りましょう。