【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

再雇用を歓迎されない人の3つの特徴|働き続けたい人が定年前にできること

頭を抱えるビジネスマン

この記事を書いた人
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級


この記事のサマリ
  • 企業は65歳まで再雇用する義務がある
  • 再雇用を歓迎される人と歓迎されない人がいる
  • 再雇用されない可能性を排除するために定年前から対策が必要

定年になっても、まだまだ働き続けたいと希望している人は多いでしょう。

会社勤めをしている人でしたら、今の会社に再び雇用してもらえれば問題は解決です。しかし、もし会社から再雇用されなかったときにはどうすれば良いのでしょうか。

今回は定年後に再雇用されない可能性と、その可能性を排除するための対策について解説します。

企業は65歳まで再雇用する義務がある

安心させるビジネスマン

まず結論から申し上げれば、60~64歳で定年になった人が再雇用をされない心配はありません。

いわゆる高年齢者雇用安定法高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)の2013年改正にともない、2021年2月現在では原則として65歳までの雇用確保が企業に義務づけられています。

《雇用確保のために企業が行う措置の例》

・定年年齢の引き上げ
・継続雇用制度の導入
・再雇用

つまり60~64歳定年制の企業に勤めている人であれば、定年後でも最低65歳までは働き続けることができるので、まずは安心ですね。

とはいえ企業としても「ぜひとも働き続けて欲しい」人と、そうでない人がいるのは事実です。

制度として再雇用が義務でも、不要な人材は歓迎したくはありません。

再雇用が歓迎されない人の特徴

モノクロのビジネス街

再雇用が企業から歓迎されないのは、いったいどのような人材なのでしょうか。

業種や会社規模とは関係なく、一般的に再雇用が歓迎されないのは以下のような特徴がある人です。

仕切りたがり屋な人

定年まで長い間同じ会社に勤めていた人は、社内のいろいろな事情にも通じているベテランです。

知識やノウハウを後進に伝えられる人であれば良いですが、中には「俺が一番仕事を知っている」とばかりに、再雇用後も引き続きその場を仕切りたがる人がいます。

企業の新陳代謝を考えれば、同じ人がいつまでも業務の中心に陣取るのは望ましくはありません。そのため仕切りたがり屋のタイプは敬遠されがちです。

実務を離れて久しい人

管理職になり部下のマネジメントが業務の中心になっていた人は、実務から離れて久しいために現場力が下がる傾向にあります。

定年前には役職についていた人も再雇用ではマネジメント業務を外れる可能性が高いので、そのとき最前線で現場力を発揮できないと企業からも評価されなくなります。

勤務態度に問題がある人

当然のことながら、勤務態度に問題がある人は再雇用が歓迎されません。

すぐ仕事をさぼる人、周囲の同僚と円滑なコミュニケーションができない人、トラブルの中心になりやすい人などは、たとえ再雇用ができても大幅な賃金低下が予想されます。

また接客業で顧客からのクレームが多かった人は、再雇用にあたっては顧客と接しない部署に職種変更される可能性が高くなります。

再雇用を歓迎される人の特徴

握手するビジネスマン

再雇用が歓迎されない人とは逆に、企業が積極的に再雇用したがる人とはどんな人なのでしょうか。

今度は再雇用を歓迎される人の特徴を見ていきましょう。

専門職能のある人

伝統工芸や装飾の世界でものづくりをする人は「職人」と呼ばれますが、普通の会社でも職人技を持つ人は大勢います。

金属加工やレンズ研磨など、人には真似できない技術を持った人材は会社としても手放したくないため、定年後にも再雇用が歓迎されます。

また、専門職能が求められているのはものづくり技術者だけではありません。

2016年の日本経済団体連合会報告書によれば、企業がホワイトカラー(事務職)の高齢者を雇用する上では「今まで培った経験等を活かした専門能力の発揮」がもっとも期待されているとのことです。

企業がホワイトカラーの高齢社員に期待するもの

画像引用:日本経済団体連合会|ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組み

資格がある人

危険物取扱者や電気主任技術者など、企業や店舗等の施設に必ず在籍させておかなければいけない有資格者は、再雇用が歓迎されやすくなります。

宅地建物取引士や介護福祉士など、業務上で必要な技能と知識を兼ね備えている人も同様です。

もちろん医師や弁護士などのいわゆる士師業の資格を持っている場合には、そもそも定年で退職する人自体が少数派です。

グローバルな活躍ができる人

事務職やマネジメント業務に就いていた人の中では、比較的グローバル事業に携わっていた人は再雇用がスムーズな傾向があります。

国際法務などに詳しい人が重宝される点も理由として挙げられますが、諸外国では日本よりもさらに高齢者の雇用確保措置が進んでいる点も、グローバル事業に関わる人が再雇用されやすい理由のひとつです。

アメリカでは1967年にはすでに定年制が廃止されており、年齢による解雇や雇用契約の終了は行えません。

イギリスおよびEU加盟国も一般雇用機会均等法(AGG)に基づき、年齢や障害に係る差別を禁止する国内法令を施行しています。

各国の年齢差別禁止法

画像引用:厚生労働省|諸外国における高齢者雇用対策

高齢者の継続雇用が世界的な流れになる中で、海外と取引している会社や部門も同じ考え方になっていく傾向にあります。

同条件では再雇用されない場合が多い

65歳以下の人が定年退職しても再雇用を拒否されないとは上記で説明したとおりですが、働き方や条件は再雇用前と比べて大きく変化します。

賃金について

まずは働く上で重要になってくる賃金についてですが、残念ながら下がってしまうケースがほとんどです。

一般的には、定年後の賃金はピーク時の5~8割程度に下がると言われています。

定年後の賃金比較

画像引用:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)|高齢者を戦力化する制度を作るには?(制度面に関する改善)

なお国では、定年後の再雇用や再就職の際に下がった賃金を補填するために高年齢雇用継続給付金の制度を設けています。

高年齢雇用継続給付金については以下の記事をご参照ください。

裁判と法律のイメージ

雇用形態について

再雇用後の雇用形態については正社員だけでなく、契約社員、アルバイトが半数以上を占めています。
再雇用されることが必ず正社員雇用とはならないことには注意しましょう。
アルバイトや契約社員で再雇用される場合は、条件や契約内容が正社員の時とは変わることも多いようです。

再雇用の際は、雇用契約書などでしっかりと契約形態や条件を確認するようにしましょう。

仕事内容について

仕事内容に関しては、ポジションや、配属部署の変更などが行われることもあります。その結果、仕事内容が変わることも少なくないようです。
再雇用後にこんなはずではなかったと思わないように、定年前から再雇用時の働き方について知っておいたほうが良いでしょう。
もし再雇用後の働き方がマッチしないのではないかと感じるようであれば、別の会社へ再就職を目指すことを定年前から考えておく必要があります。

再雇用トラブルをめぐる判例

自分の希望条件で再雇用がされない、または再雇用自体を拒否されたなど、再雇用をめぐるトラブルが裁判にまで発展することがあります。

しかし裁判で労働者側が勝つか企業側が勝つかは、担当した裁判官の見解により結果がまったく異なります。

ニュースなどで話題にもなった、再雇用に関連する裁判を2つ見てみましょう。

労働者側が勝訴した裁判(トヨタ自動車事件)

2016年(平成28年)に名古屋高等裁判所でくだされた「トヨタ自動車事件」の判決では、再雇用時の職種変更は違法だと判断されました。

【トヨタ自動車事件の概要】
事務職として雇用されていた原告が、定年後の再雇用で清掃業務への職種変更を提示され、拒否したところ再雇用されなかったのは違法として未払賃金および損害賠償の支払い等を求めた事案。


参考
平成28年(ネ)第149号 賃金等,損害賠償請求控訴事件裁判所

この裁判では原告の勤務態度などをめぐり、一審では企業側が勝訴していますが、その後に高裁で労働者側が逆転勝訴しています。

企業側が勝訴した裁判(長澤運輸事件)

2017年(平成29年)の「長澤運輸事件」は、トヨタ自動車事件とは逆に、高裁で企業側が逆転勝訴した裁判です。

【長澤運輸事件の概要】
運転手として雇用されていた原告が、再雇用後の業務内容は同じなのに賃金が下がったのは労働契約法に反するとして未払賃金の支払い等を求めた事案。


参考
平成29年(受)第442号 地位確認等請求事件裁判所

一審では再雇用時の賃金ダウンは労働契約法に違反すると判断し、定年前の賃金規定との差額を支払うよう企業に命じました。

しかし高裁では、再雇用者の賃金が減額されることは社会的にも容認されていると指摘し、同社が原告に退職金などを支払っていること、さらに同社の経営状況なども加味して「定年前後の賃金の違いは不合理とは言えない」と結論づけています。

再雇用を歓迎される人になるためには

空に向かって走るビジネスマン

上記では再雇用を歓迎される人と歓迎されない人の特徴をご説明しましたが、では再雇用を歓迎される人になるためにはどうしたら良いのでしょうか。

定年後に「再雇用されない!どうしよう!」と慌てずにすむように、定年前にできることを3つご紹介します。

資格の取得

再雇用を歓迎される人の特徴にも挙げたとおり、資格は自分のスキルを証明できる切り札となり得ます。

業務上で取得した資格だけでなく、他業種にも関連する資格を持っていれば、他社に再就職しようと考えたときにも選択の幅が広がります。

週末や就業後の時間を活用して、定年前に取得できる資格がないか探してみましょう。

シニアの就職に役立つ資格については以下の記事も参考にしてください。

現場力の再構築

マネジメント業務が主な仕事となり現場から遠ざかっていた人は、定年の前にできるだけ現場の情報を収集し、現場力を再構築しましょう。

若かりし頃に馴染んでいた現場も、離れてからの間にやり方が変わっている可能性は高いです。昔の常識にとらわれず「今の現場のリアル」に触れておくことをおすすめします。

人間性のアップ

国の雇用制度や各企業の経営状態がどうあれ、やはり働くうえでは人間性が一番のポイントです。

定年前の役職等にこだわらず、かつての部下とも気持ちよく仕事ができる人であれば、企業としても再雇用を歓迎したくなります。

定年年齢が間近になってきた人は、今のうちから社内のコミュニケーションを活発にし、良好な人間関係を築く努力が必要です。

再就職で新たな一歩を踏み出すのも一案

会社都合で再雇用されなかった人や、自分の望みどおりの雇用契約が行えなかった人は、思い切って別の会社に再就職するのも一案です。

自分のスキルや仕事のノウハウを武器に、新たな一歩を踏み出しましょう。

再雇用とは違い、再就職では仕事のやり方や業態などを好きに選択できるのもメリットになります。

以下の記事では定年後の再就職方法と、再就職の際に覚えておいた方が良いことをご紹介しています。再就職を検討する際にはぜひ参考にしてください。

ただし再就職するときでも、応募先の会社から歓迎される人材は再雇用のときとほぼ同じです。特に人間性は採用の可否を左右する重要なスキルだと覚えておいてください。

まとめ

都会のイメージとビジネスマンのシルエット

今回は定年を間近に控えている人に向けて、再雇用に関する制度や再雇用が歓迎される人・歓迎されない人の特徴などを説明しました。

まだ働ける人が定年でリタイアしてしまうのは、経済的にも社会的にも「もったいない」話です。

働けるうちはできる限り働き続け、収入を得つつ社会に貢献していきましょう。