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海外移住の際の医療費は?国民健康保険は安くなる?確認ポイント4選

海外医療のイメージ

この記事を書いた人
臼井 貴紀 Usui Kiki
臼井 貴紀 Usui Kiki

Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んだり、1日訪問看護ステーションに密着するなど、徹底的な現場主義タイプ。日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。 ▼保有資格 終活カウンセラー FP エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座修了

この記事のサマリ
  • 海外移住すると必ずしも医療費負担が大きくなる訳ではない
  • 海外移住を検討する際は「自分の健康状態」「海外移住候補地の医療費」「海外移住候補地の医療保険料」「一時帰国先の住民票の転入条件」を入念に調査することが重要

「海外移住することでよりよい生活を送ることができる!」

そういった理由で海外移住を検討する方が増えています。しかし、海外移住の良い側面だけをみて、海外移住を決めてしまうのは危険です。

今回は海外移住前に十分に理解しておきたい海外移住後の医療費について紹介します。

海外移住することで医療費は高くなる?


海外移住することで医療費が安くなるのか高くなるのかは、その人の年齢や健康状態により異なります。また、実際に治療にかかる費用や備えのための保険料などもトータルで捉える必要があります。

医療費は万が一の医療に必要だったり、備える費用として、以下のことを指します。

  • 実際にかかる診療費・治療費・薬代
  • 公的医療保険(健康保険・国民健康保険)
  • 私的保険(民間の保険会社が運営する任意加入の保険)

若く健康な方は海外移住することで医療費が安くなり、高齢で健康に不安のある方は海外移住で支出が増えることが多いです。

健康な場合は海外移住で健康保険料が安くなる可能性

健康保険料は収入や家族構成によって変動しますが、39歳以下の単身者で年収400万円の場合、年に約30万円と負担が大きいです。
日本国民は日本に在住する限り、健康保険料を支払わなければなりません。

しかし海外移住をする際に海外転出届を出し、住民票を抹消すると健康保険から脱退することになります。手続きにより健康保険料の支払い義務がなくなるので、その分負担は減ります

当然、医療にかかる際の費用負担割合は3割から全額負担に変わりますが、健康で医療にかかることが少ない方であれば、医療に関する支出を大幅に削減することが可能です。

また万が一体調を崩した際にかかる医療費が不安なのであれば、海外医療保険(私的保険)に加入し、利用することができます。
年齢が若ければ保険料も大きくないため、トータルでの支出を小さくすることが可能です。

高齢者の場合は支出が増えることも多い

医療にかかる機会の少ない健康な方の場合、健康保険料の支払いがなくなることで、支出を減らすことが可能です。
しかし高齢者の場合支出が増えることが多いため、注意しましょう。

まず海外で医療にかかれば、医療費が全額負担になります。

(永住権を持っているかなどの条件により様々です)さらに国によりますが、費用負担の割合が増えるだけでなく、医療費そのものが日本に在住しているときより高くなることが多いです。

また私的保険で病気やケガに備える場合も、海外医療保険料が割高になるため、支出が増えてしまいます。

海外移住の際、医療費を安く抑えるためのポイントと注意点

海外移住後の医療費は若ければ安くなり、高齢であれば高くなる傾向がありますが、医療費を安く抑えるためのポイントと注意点を知っておくことで、少しでも医療費を抑えることが可能です。

国民健康保険を利用する

国民健康保険は、治療が3割負担ですむことや高額療養費制度もあるので、できれば加入し続けたい制度です。国民年金は海外にいても任意継続制度があるのですが、国民健康保険にはありません。
国民健康保険を利用するにはどんな措置が考えられるでしょうか。

海外移住する高齢者は住民票を抜かない

高齢者の方は海外医療にかかれば、高い医療費を全額負担しなければならない可能性があり、さらに病気やケガに私的保険で備えようにも大きな費用負担がかかります。

海外移住している高齢者の中には、日本の住民票を抜かず、医療措置が必要な際はその都度帰国する方が多いです。

住民票を抜かないため、健康保険料を支払う必要があります。

しかし、60歳以上74歳以下であれば、40歳以上59歳以下の場合と比較して健康保険料は安いです。
国民健康保険が利用できる前提だと、海外医療保険に加入する場合でも、様々な病気やケガに備える比較的高価なプランではなく、安価なプランを選ぶことができます。

一時帰国でも住民票を日本に戻すことが可能

海外移住する際に転出届を出して住民票を抜いた場合でも、海外移住後に病気になった後に日本に一時帰国して住民票を日本に戻し、3割負担で日本の医療を受けることができるケースもあります。

なお、住民票を戻せば当然健康保険料の支払い義務が発生しますが、同月内に住民票を戻し、その月の最終日一日前までに再度転出届を出し、住民票を抜いた場合、保険料は発生しません。

また住民票を複数月に渡って戻す場合も、支払うのは住民票がある期間分の保険料だけです。

ただ、注意が必要なのは住民票を日本に戻した場合、健康保険料以外にも場合によって国民年金や住民税の支払い義務が発生します。住民票を戻す条件は「生活の拠点」を日本に移すことだからです。

「生活の拠点」を日本に移したかどうか(住民票を戻せるかどうか)の判断基準は自治体により大きく異なります。数週間の日本滞在で住民票を戻すことができるケースもあれば、数ヶ月程度の滞在でも住民票を戻せないケースもあり様々です。

事前に一時帰国先の自治体に確認することをおすすめします。

止むを得ず海外医療にかかった場合は海外療養費制度を利用する

国民健康保険に加入している状態であれば、海外療養費制度を利用することで部医療費の払い戻しを受けることができます。
ただし、海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。
美容整形やインプラントなど、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使用された場合は、給付の対象にはならないので注意しましょう。
また、治療目的で海外へ渡航し診療を受けた場合も支給対象となりません。

支給金額は、日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額となります。
そのため、支払った額に対して支給額が3割と比べて大幅に少ない場合も考えられます。

支給対象や金額は、事前に健康保険のホームページなどで確認しておきましょう。

全国健康保険協会(協会けんぽ)

クレジットカードの海外旅行保険を利用する

海外旅行保険の自動付帯のあるクレジットカードを利用するために、3ヶ月に一度日本に帰国する方もいるようです。

クレジットカードの自動付帯の保険でも一通りの保証はあります。
日本に帰る度に航空券の料金や日本での滞在費が必要になりますが、海外移住先によっては支出を抑えることが可能です。

海外移住先の医療と健康保険事情に注意

海外移住後の医療費や医療事情は移住先の国ごとに異なるため、海外移住先候補の国の医療事情を入念に確認することをおすすめします。

公立病院は順番待ちで医療保険必須?

順番待ちイメージ

海外移住後の医療費を不安視している方には、オーストラリアやニュージーランドなどの、永住権を持っていれば医療費が無料になる国への移住が魅力的に映るかもしれません。

しかし、医療費が無料の国だからといって、十分な医療を安く受けることができるとは限らないことに注意しましょう。

ニュージーランドやオーストラリアなど、永住権を取ることで医療費が無料になる国でも、全ての病院で医療を無料で受けることができるわけではありません。
公立・国立の病院は無料ですが、私立の病院は有料です。
当然医療費を安く済ませたい人々が公立・国立病院に殺到します。

そのため順番待ちが起き、レントゲンを撮るだけで1ヶ月以上待たされることもあり、順番待ちの間に症状が悪化してしまう可能性が否定できません。

実際、順番待ちをしている間に脚の病状が悪化し、壊死してしまうという事件がありました。

順番待ちを避けて私立病院に行けば、医療費は全額負担となります。その結果、医療保険に入っておく必要があり、支出を抑えることができません。

医療レベルは日本に劣ることが多い

医療レベルのイメージ

日本人の医療満足後は非常に低いですが、日本の医療レベルはトップクラスだと言われています。

安く医療を受けることができる国を見つけることができた場合でも、日本で医療を受ける場合に比べれば、満足度が低くなるケースがほとんどです。

医療費の大きさだけでなく、医療レベルを考慮することを忘れないようにしましょう。特に健康に不安がある方にとっては非常に重要なポイントです。

海外移住前に医療に関して確認しておきたいポイント

ここまでの内容をもとに、海外移住前に医療に関して確認しておきたい4つのポイントを紹介します。

  1. 自分の健康状態
  2. 海外移住候補地の医療費
  3. 海外移住候補地の医療保険料
  4. 一時帰国先の住民票の転入条件

1.自分の健康状態

医療レベルのイメージ

海外移住先を決定する前に自分の健康状態を把握するために、健康診断を受けます。
(血液検査などを含む、より精度の高い健康診断を受けることをおすすめします)

健康診断の結果、健康であることがわかれば、医療費が高く、日本に一時帰国するのが難しい国を海外移住先に選んでも問題ありません。

しかし、健康診断の結果、健康に不安があれば、医療費が安く、高度な医療が必要になった場合に日本に帰国しやすい国を海外移住先として選ぶことをおすすめします。

2.海外移住候補地の医療費

海外移住先の候補となる国の医療費を確認しましょう。

手術や短期入院を含む医療を受ける場合など、病院のグレードにより医療費が大きく異なるため、できるだけ多くの情報を入手し相場感を掴む必要があります。

3.海外移住候補地の医療保険制度と保険料

海外移住候補地の医療保険制度はどうなっているかを調べておきましょう。現地の医療保険料が安ければ、健康に不安がある方でも安心して移住することができます。
医療保険料は国や会社によって異なるほか、加入者の年齢などの条件によっても変わるため注意が必要です。

4.一時帰国先の住民票の転入条件

費用や医療レベルの問題で日本で医療を受ける場合、住民票を戻す(転入する)ことができるかどうかにより費用負担が大きく異なります。
一時帰国先の自治体に住民票を戻す際の滞在期間などの条件を確認しましょう。

また戸籍謄本と附票があれば、一時帰国時に転出時の住所地または本籍地以外の場所に住民票を転入することが可能です。
一時帰国時に住民票を戻すのが難しい自治体に住んでいる場合、住民票を戻す条件が緩い自治体を探しておくことをおすすめします。

まとめ


海外移住後に病気になった場合でも、住民票を戻して日本で治療を受けることが可能なため、海外移住後の医療費を過度に心配する必要はありません。

しかし、海外移住後の医療費を予め考慮しておくことで安心した海外移住生活が送れることは間違いありません。

いくつかの方法を知っておき、万が一のときに慌てることなく対応していきましょう。


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