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どっちが有利?定年退職がなかった公務員vs延長できる会社員|定年制度のFAQ

チェスをするビジネスマン

この記事を書いた人
杉田 Sugita
ライター

IT企業に勤務しながら、ライターとしても活躍中。実父の認知症発症と義母の看取り経験から、介護と終活の重要性に気付き、GoldenYears、その他メディアにて啓蒙活動を行い、幅広い読者に終活の知識を提供している。中小企業の経理や社会保険事務全般に習熟しているため、保険や年金などの分野を得意とする。1969年生まれ。 ▼保有資格 認知症サポーター 終活カウンセラー2級

この記事のサマリ
  • 公務員と会社員では定年退職する年齢が違う
  • 公務員はこれまで定年延長されたことがない
  • 会社員の定年年齢は55歳→60歳→65歳(継続雇用)と延長されてきた
  • 定年延長には企業・労働者共にメリット・デメリットがある
  • シニアが定年延長時代で働き続けるためには仕事のモチベーション維持が重要

今50代後半の現役世代は就職した直後と比べて、ほとんどの人は定年退職の年齢が延長されています。

しかし公務員と民間企業の会社員とでは、制度も、元となる法律も、定年退職する年齢も異なります。では公務員と会社員は、どちらがどのくらい長く働けるのでしょうか。

今回は公務員と会社員の定年制度を比較しながら、定年年齢や延長の歴史、さらに定年延長のメリットとデメリットなどについても解説します。

公務員と民間で定年退職の年齢が異なる

年齢確認する虫眼鏡

公務員と民間企業の会社員では、それぞれ定年退職する年齢が異なります。

以下で2021年3月現在の、公務員と会社員の定年年齢を見比べてみましょう。

公務員の定年退職は60歳(一部63歳)

公務員の定年は、以下の法令に基づき退職年齢が定められています。

国家公務員 国家公務員法 60歳で定年退職
地方公務員 地方公務員法 60歳で定年退職
検察官 検察庁法 63歳で定年退職(検事総長のみ65歳)

2020年には通常国会で公務員の定年を65歳まで延長する国家公務員法改正案が提出されていましたが、検事長の定年延長が権力分立に反すると世論の反対が大きく、法案は成立しませんでした。


参考
検察官の定年後勤務延長問題に関する意見書日本弁護士連合会

その後2021年1月に国家公務員法改正案が再提出されましたが、再提出法案では定年退職に関する項目が削除されています。

民間は65歳までの継続雇用義務

民間企業の定年は高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)に基づき、2021年3月現在では60歳以上と定められています。

また企業には労働者の希望に従い、定年後も65歳まで継続雇用する義務があります。継続雇用には以下の3種類があります。

  • 定年制廃止
  • 定年延長
  • 再雇用

それぞれの企業がどのような継続雇用制度を採用しているのかについては、以下の記事も参考にしてください。

また現在は、各企業の準備期間として以下の経過措置が認められています。

高齢者雇用安定法の経過措置

画像引用:厚生労働省|65歳までの「高年齢者雇用確保措置」

時代ごとに延長されてきた定年退職の歴史

白い本を開く

定年退職を規定する各法律の改正に伴い、これまで何度も民間企業に勤める会社員の定年年齢は変化してきました。

しかし、実は公務員にはこれまで定年退職する年齢が延長されたことはありません。なぜなら1985年までの公務員にはそもそも定年制度自体がなかったからです。

ここからは公務員と会社員に分けて、入社・入職年度ごとの定年退職の歴史を振り返ってみましょう。

◎公務員(国家公務員・地方公務員)の定年退職年齢

~1984年入職 定年制なし
1985~1998年入職 定年60歳
1999年~2020年入職 定年60歳 65歳までの再任用が可能

◎一般的な民間企業の定年退職年齢

~1983年入社 定年55歳
1984~1993年入社 定年55歳~60歳 60歳定年が企業の努力義務
1994年~1999年入社 定年60歳 60歳定年が法律で義務化
2000年~2012年入社 定年60歳~65歳 65歳定年が企業の努力義務
2013年~2020年入社 定年60歳~65歳 65歳までの継続雇用が義務

さらに延長?会社員の定年年齢は70歳の時代へ

会社員の定年年齢はさらに延長され、いよいよ2021年からは70歳まで仕事をする時代が到来しようとしています。

2021年4月に改正予定の新高年齢者雇用安定法(通称 70歳就業法)では、民間企業には70歳までの労働者を継続雇用できるような措置を講じることが求められています。

今回の法改正では70歳までの延長も強制ではなく、継続雇用の実施は各企業の裁量に任されていますが、今後さらなる法改正があれば義務化される可能性も十分に考えられます。

定年延長のメリット・デメリット

積み木で出来たメリットとデメリットの文字

定年年齢が延長されることで、企業にも労働者にもいくつかのメリットがあります。

また逆に、企業にも労働者にもデメリットが生まれてしまうのも事実です。

定年退職が延長されるとどのようなメリットとデメリットが考えられるのか、企業側と労働者側に分けて見ていきましょう。

企業のメリット

  1. 労働力が確保できる
  2. 後進を育てる時間が十分にとれる

2012年にいわゆる団塊の世代がいっせいに定年退職して日本の労働者人口が減少したため、労働者不足を補うには現役世代の定年延長が必要不可欠だと言えます。

日本の人口ピラミッド(2020 年推計)団塊世代 75 歳

画像引用:MUFG資産形成研究所|団塊の世代における生きがいの推移と今後の高齢化社会に向けて

労働者のメリット

  1. 収入が長く得られる
  2. 社会参加の意識が持てる

ミドル世代の転職を支援するエン・ジャパン株式会社の「ミドルの転職」が行ったアンケートによると、定年が延長された際のメリットとしてユーザーもっとも多く挙げたのが「定期収入を得られる期間が延びる」でした。

定年が延長された際のメリット

画像引用:エン・ジャパン株式会社|ミドルに聞く「定年延長」意識調査―「ミドルの転職」ユーザーアンケート―

老後資金の必要性なども考え、できるだけ長く働いて老後資金を確保したいという気持ちが伺えます。

企業のデメリット

  1. 支払い給与の負担が大きい
  2. 若手の昇進機会が奪われる

単純に雇用人数が多くなるデメリットに加え、勤続年数が長い社員は給与も高額となり、企業は支払賃金の負担が増します。

そのため若者の新規採用や給与アップも差し控えざるを得ず、若者の就業意欲をそぐ結果にもなり得ます。

労働者のデメリット

  1. 加齢により健康上の不安がある
  2. 年金が減額される

制度として定年が延長されても、60歳を超えたシニアには健康上の不安がついてまわります。

病気のリスクも高まり、若い頃と同じように働くことができないかもしれません。

定年延長にまつわるFAQ

文具類とFAQの文字

定年が延長されると、延長前の給料や退職金などにも影響してくるのでしょうか。

定年延長についてよく聞かれる質問の中から、今回は金銭面についてお答えします。

定年が延長されると給料が減る?

延長後の給料が減るか否かは各企業の給与規定に基づきます。一般的には定年延長を含め、継続雇用時の給料はおよそ20~50%ほど低下すると言われています。そのため国ではシニア労働者の収入ダウンを補填する給付金の支給も行っています。

定年が延長されると退職金は増える?

退職金を据え置くか増額するかは各企業の退職規定に基づきます。退職金の支払時期についても、旧定年年齢の60歳に到達した時点で支払われるか、延長後の退職年齢で支払われるかは企業により異なります。


参考
定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について(照会)国税庁

定年退職後に失業保険はもらえる?

60~64歳で定年退職した人は失業保険が受給できます。65歳まで定年延長された人が定年退職した場合には失業保険は受給できません。65歳以上で定年退職した人は失業保険の代わりに高年齢求職者給付金が受給できます。

自分が定年退職する年齢はどこで確認できる?

公務員の定年年齢は法律で決まっています。会社員の定年年齢は会社の就業規則で確認が可能です。

モチベーションの維持が定年延長には不可欠

決意するシニアビジネスマン

定年延長は長く働きたい人にとってみれば歓迎すべき制度ですが、逆に定年退職を心待ちにしていた人にとっては歓迎できないかもしれません。

気力・体力が衰えてくる60歳以上のシニア世代では、若い頃と同じようにバリバリ業務を行うのも難しくなってくることも予想されます。

定年延長により働く年数が長くなった人は、仕事へのモチベーションを維持できるよう努力する必要があります。

「あと5年も働かなければいけない」ではなく、60歳になった後でも自分が会社から必要とされていることに誇りを持ち、モチベーションを高めていきましょう。

まとめ

チェスのコマ

今回は定年退職が延長されてきた歴史を振り返りながら、公務員と会社員の定年について解説しました。

公務員も民間の会社員も、どちらも同じ「働く人」です。それぞれの定年年齢は違っても、仕事先から必要とされている限りはベストを尽くして働きましょう。