緊急事態宣言が出されてからしばらく経ちましたが、新型コロナウィルスにより、いつ自分が、そして身近な人が亡くなってもおかしくないといった状況となりました。
そこで、今回は、もしも自分が亡くなった時に、遺された人のことを想って書いておくべき遺言書について、執筆しました。
特に遺言書を作成すべき人についても、その理由とともに記載をしております。
さらには、本当に最低限の準備をしていただけるよう、弊社で汎用性が高いサンプル文書を作成し弁護士のチェックを入れております。
本来、士業の方に遺言書の作成を依頼する場合は、約10〜20万円の費用が発生しますが、所定の要件を満たしていればご自身でも作成できますので、その内容を徹底的に記載してみました。
今の不安定な状況が終わったら、破って捨てていただいてもいいので、ぜひ本記事をご一読いただき、特に遺言書を作成すべき人に当てはまる場合は、遺される人のために作成してみてください。
また、該当の知人、友人がいらっしゃる場合は、ぜひこの記事をシェアしていただけますと幸いです。
どうか、この新型コロナウィルス感染症による混乱が、1日でも早く治まりますように。
相続の基本
まず、相続の基本からご説明しましょう。相続は、誰かが亡くなったとき、遺産は法律で定められている相続人(法定相続人)に規定の配分に従って相続されます。
つまり、何もしなくても、相続されます。
法定相続人はいわゆる“身内”で構成されており、相続範囲としては以下となっています。
法定相続人の範囲 |
父母、祖父母 |
兄弟姉妹 |
配偶者 |
子ども |
代襲相続人(甥・姪まで) |
代襲相続人(孫→ひ孫→孫の孫) |
上記の法定相続人すべてが既に亡くなっている場合で遺言書が存在しない場合には、特別縁故者(生前身の回りの世話を献身的に行っていた方など被相続人と特別な関係にあった人)へ財産分与されない限り、国庫行きで誰も使えぬお金として眠ります。
なぜ遺言書を書くのか?
相続人が法律で定められているなら、遺言書書かなくてもいいじゃん!と思う方もいるかと思いますが、法定相続人に法律通り相続して問題ない人は、書く必要はありません。
ただ、以下の場合を考慮したときに、書いた方がいいとお勧めさせていただきます。
1. 望む財産分与を実現するため
例えば、お子さまのいない家庭で配偶者と生活を共にしていたとします。自分が亡くなっても、配偶者に相続すればいいや、と思いがちですが、遺言書を残さなかった場合、故人(亡くなった人のことを指す)にご兄弟がいると、ご兄弟にも遺産の25%が相続されます。
一方、遺言書で配偶者に100%相続させる旨を記載しておけば、ご兄弟には遺留分が存在しないので、無事配偶者に100%相続させることができます。
2. 面倒な手続きを無くすため
遺言書がない場合、法定相続人が全員集まって遺産分割協議を行う必要があります。
決められた割合で合意に至れば良いですが、例えば「私は介護に関わってきたから、他の人よりも財産をもらう権利がある!そう本人も言っていた」など主張する人が出てきて、相続を開始するために必要な印鑑を押してもらえないとなると面倒なことになります。
また、遺産が5,000万円以下の場合のトラブルが全体の8割を占めるという事実があり、「そんなに財産ないから関係ない」と思わずに、対応を検討(遺言を準備する等)しておいたほうが良さそうです。
(参考)司法統計年報 平成29年度
まとめますと、遺言書を書く目的は、本人が望む財産分与をきちんと記載しておくことで、遺された人が揉めないようにすることの大きく2つと言えるでしょう。
遺言書を残すべき人
遺言書は前述の理由から、例え「法定相続人に規定の割合のまま相続する」で良い人であっても、遺言書があり相続人が納得をすれば遺産分割協議が不要になるので、ぜひ書いていただくことをおすすめします。
その例以外にも、弊社として過去の事例から見るに、特に遺言書を残しておくべき人を以下にまとめてみました。
- 未成年の子どもがいるパパママ
- パートナーと配偶者関係にない人(LGBT、事実婚など)
- おふたり様でどちらかにご兄弟がいる方
- おひとり様
- 法定相続人以外の人に財産を渡したい人(遺贈)
未成年の子どもがいるパパママ
未成年の子どもは法律上、判断能力がまだないとされてしまうため、子どもの代わりに法律行為を行う未成年後見人を指定しておく必要があります。もちろん、遺言書を残さなくても、家庭裁判所が選任してくれますが、自分の信頼できる人を指定しておいた方がいいでしょう。後から「自分に任せると言っていた」などという方が出てこないように準備をしておきましょう。
また、未成年後見人の方が相続人でもある場合、その方は相続時に未成年後見人として遺産分割協議等に参加することはできません。なぜなら、未成年後見人として指定した人と未成年が利益背反してしまうからです。故に、その場合は、特定代理人の選任を申し立てをする必要があります。
パートナーと配偶者関係にない人(LGBT、事実婚など)
悲しいかな、相続については、どれだけその方との関係性が深いとしても、法律上の関係性がないと法定相続人にはなれません。したがって、籍は入れていないけど、パートナーがいる方は遺言書をしっかりと書いておく必要があります。そうすれば、きちんとパートナーに遺産を残すことが可能です。こちらも後述する遺留分の考慮が必要です。
おふたり様(配偶者あり、子なし)でどちらかにご兄弟がいる方
前述した通り、本人にご兄弟がいると、ご兄弟にも遺産の25%が相続されます。
一方、遺言書に配偶者に100%相続させる旨を記載しておけば、希望通り配偶者に100%相続させることができます。ご兄弟に遺産の25%を相続させる場合でも、配偶者居住権を配偶者に遺贈する旨を記載しておくことで、自分の死後に配偶者が住居に困ることを防げます。
相続が発生する前から住んでいた配偶者の自宅は、配偶者がその自宅の権利を相続しなかったとしても住んでもいいよという権利です。
参考)配偶者居住権とは?日本一わかりやすく解説しました
おひとり様
法定相続人がいない場合は遺言書で相続人を指定をしておかないと、最終的には国庫に入り誰も使えないお金になってしまいます。
別に気にしないという方はそれでも構いませんが、ご自身が今まで貯めてきた財産が使われずにいるよりは、お世話になった人や応援している団体に渡す方がいいと考える場合は、遺言書を書きましょう。この場合は相続ではなく、遺贈となります。
遺言によって自己の財産を他人に無償で与えることができることを指し、これを活用することで、法定相続人以外の人に無償で財産を渡すことができます。相続税は法定相続人に相続するより高くなります。NPOなどの団体に遺贈する場合は、特別控除があります。
法定相続人以外の人に財産を渡したい人(遺贈)
ここまでを読むと、自由に財産を相続できない印象を与えてしまいますが、相続ではなく、前述した遺贈という形を取れば、好きな人や団体に財産を渡すことができます。ただ、遺贈の方法はいくつか存在し、受ける側に拒否権もあるため、望む形とするためには、事前の準備が必要です。こちらも遺留分の考慮が欠かせません。
あくまでも一例ですが、小さい子どもであっても、遺言書を残さずに法定相続となる場合、配偶者が50%、子どもが50%となります(子どもが複数人いる場合は均等に分れらます)。さらに、未成年の場合は、特定代理人を立てる必要があり、相続をする際にも手続きで一苦労します。
上記のいずれかに当てはまる方は、とりあえずでもいいので遺言書の作成をしてみることをオススメします。
相続法改正により遺言書作成難易度が軽減
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、相続法の改正により遺言書作成難易度が下がります。今までよりも金銭面・手続き面でも書きやすくなります。
大きな変更点としては以下の2点です。
1. 財産目録が自筆ではなくても良くなった(2019年1月13日施行)
遺言書に財産目録という財産の一覧表を添付する場合、今までは遺言書同様にその一覧表も自筆で書く必要がありました。しかし、2019年の1月より、その財産目録はPCの出力やコピーでの作成が認められるようになりました。ただし、自筆の署名は必要で、捺印についても所定のルールが定められています。
参考
この遺言書は無効です!~改正相続法の落とし穴Yahoo!ニュース
2. 遺言書作成後の保管について(2020年7月10日施行)
画像引用元)法務局:チラシhttp://www.moj.go.jp/content/001318073.pdf
今までは、遺言者自身が作った遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合、家庭裁判所に確認の申し出をし、検認してもらう必要があったのですが、自分で遺言書を作った場合でも法務局に保管しておけば、家庭裁判所の検認をする必要がなくなります。
遺言者が遺言内容を自分で手書き作成する遺言書のことを指します。それに対し、公証役場で公証人が作成する遺言書のことを、公正証書遺言と言います。
参考)遺言書の種類や決まり・書き方を徹底解説|自筆証書遺言サンプルあり
しかも、自筆証書遺言の法務局での保管申請費用は3,900円とリーズナブルです。
公正証書遺言で残す場合は、税金と同じで財産が高い人ほど支払う手数料が高く、相続財産が100万円以下の方であっても、最低1.6万円、高い人ですと25万円以上かかる場合もあります。
遺言書保管制度の手数料一覧
※遺言書の撤回及び変更の届出については手数料はかかりません。
引用元)自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧(法務局)
すごく簡単にまとめると、財産目録はパソコン出力がOKになり、遺言書を法務局に預けられるようになるので、金銭的にも工数的にもかなり敷居が下がりました!というお話です。
ただ、施行が7月からのため、すぐすぐ準備をする場合の流れとしては、
- 後になって無効と指摘されない適切な遺言書を作成する
- 遺言書の保管場所をご家族に伝えておく
の2つを行いましょう。
今すぐできる!遺言書の作成方法
さっそく、今すぐできる遺言書の作成方法をご紹介していきます。
ざっくりとした流れは以下です。
- 財産目録を作る
- 相続する人と財産を決める
- 遺言執行者を指定する
- (未成年の子どもがいる場合は)未成年後見人を指定する
- 書き終わったら、印鑑を押す
- 封をする
- ご家族に場所を伝える
詳細な書き方は以下に記載しておりますので、ご覧ください。
遺言書作成時の注意点
1. 遺留分に注意しましょう
遺言書を書いたものの、遺留分を侵害していると、納得のいかない相続人が侵害を主張してくる場合があります。その場合は、侵害している分を渡す必要がありますので、留意しましょう。
相続人のパターン | 相続人 | 遺留分の割合 |
相続人が配偶者のみ | 配偶者 | 50% |
相続人が子供のみ | 子供 | 50% |
相続人が配偶者と子供 | 配偶者 | 25% |
子供 | 25% | |
相続人が配偶者と子供と孫 | 配偶者 | 25% |
子供 | 25% | |
相続人が配偶者と親 | 配偶者 | 33% |
親 | 17% | |
相続人が親のみ | 親 | 33% |
相続人が配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者 | 50% |
兄弟 | 0% | |
相続人が兄弟姉妹のみ | 兄弟 | 0% |
相続人が兄弟姉妹のみ(異父母、腹違いの兄弟姉妹含む) | 兄弟(全血) | 0% |
兄弟(半血) | 0% |
※対象の相続人が複数いる場合は均等に分けられます。
2. 負債がある場合は注意しましょう!
相続と聞くと、プラスの財産を想像しがちですが、マイナスの財産もちゃんと相続されます。借金を抱えている場合、その借金も相続人に相続されるのです。
しかし、相続時には「相続を放棄する」という選択ができます。
しかし、負債の相続だけを放棄することはできません。つまり、負債を含めて全て受け取るか、全て破棄するかを選ぶことになります。
そのため、財産目録にてご自身の財産をキチッと把握し、どっちの方が良いのかを判断できるようにしておく必要があります。
遺言書にて、目に見える預金や不動産、有価証券などの指定だけを行って、負債について触れていなければ、のちのち負債が見つかった場合、ご遺族が大変な思いをしてしまうかもしれません。
相続放棄をするかしないかの判断は基本的には死後3ヶ月以内に家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。
まとめ
本当に自分がいつ死ぬかわからないこのご時世。
なんだか悔しいけど、どうしようもありません。
弊社としては、今まで得てきた知見を生かし、何かできることはないかと考えた結果、上記ナレッジの提供と遺言書チェックをワンコイン(500円)で承ることにしました。
本記事と実際の遺言書の書き方を記載した記事を参考に遺言書を作成し、念のためにチェックをして欲しいという場合は、以下よりお問い合わせください。
また、珍しいパターンで弊社にて対応ができない場合については、提携の弁護士さんをご紹介させていただくこともありますことをご了承ください。
- そもそも自分が書くべきか、自分がどのパターンになるか相談したい
- 親/配偶者/パートナーに書いているかを確認して欲しい
- 親/配偶者/パートナーに書かせたい
などのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
1日でも早い新型コロナウイルスの収束を願うとともに、本記事を通して心理的な不安を少しでも解消されますように。