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高齢者に起こりやすい「低栄養」とは|原因と予防策を解説

医師 レッドカード

この記事を書いた人
高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ

  • 低栄養は身体に必要な栄養が不足した状態
  • 高齢者の低栄養は食欲の減退や噛む力の低下などが要因
  • 身体的・社会的・精神的な要因で低栄養に陥ることがある
  • 規則正しい食事のほか、栄養補助食品も対策になる

年齢を重ねたことで「ご飯を作ったり食べたりするのが面倒」と感じることが増えた方もいるのではないでしょうか?

食事の量や質が低下すると本人も家族も自覚のないまま「低栄養」の状態に陥ってしまう可能性があります。低栄養は健康や寿命にも直結する問題であり、早いうちから対策を行うことが重要です。

本記事では低栄養のリスクと原因に加え、健康な体を維持するためのポイントについて紹介します。

「低栄養」とは

ナイフフォーク

低栄養は、筋肉や内臓を作る「タンパク質」や調子を整える「ビタミン」、骨を作る「カルシウム」などが慢性的に不足した状態のことです。

人間は食べたものからの栄養素をエネルギーに換えることで身体を動かしますが、食事の量や質が低下することで十分な栄養が確保できず、体にさまざまな悪影響を与える場合があります。

若い世代でも低栄養になるリスクはありますが、主な原因は乱れた食生活です。一方の高齢者の場合は「食欲の減退」「噛む力の低下」によって食事量が減少することで栄養素が不足することを指して低栄養と呼びます。

低栄養に見られる症状とリスク

低栄養の状態になって身体が必要とする栄養が不足することで、身体にさまざまな影響が発生します。

骨折

低栄養はエネルギーやタンパク質以外にも、さまざまな栄養が不足します。骨を作るカルシウムや、カルシウムの吸収を促進させるビタミンDが不足することも考えられるでしょう。

運動量が不足して骨の新陳代謝が落ちると骨の強度が更に弱くなり、「骨粗しょう症」のリスクも上がります。

誤嚥性肺炎

食べ物を飲み込んで食道に送り込む「嚥下」が弱くなると、間違って気管に入り込んで炎症を起こす「誤嚥性肺炎」のリスクが上がります。

意識障害

炭水化物が不足すると体内の血糖値が下がり、「低血糖」を引き起こすことがあります。

低血糖は眠気・集中力の低下のほか、めまいや疲労感などの意識障害の原因になるため注意が必要です。

認知機能の低下

東京都健康長寿医療センターの調べによると、血液検査の項目で「赤血球数」「HDL(善玉)コレステロール値」「アルプミン」という3つの指標が低い人の場合、高い人よりも認知機能が低下するリスクが2~3倍も高いことが分かりました。

参考 食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー東京都健康長寿医療センター研究所

また、肥満度を表すBMIが低い方の場合、「高い」「少し高い」「少し低い」と診断された方と比べて生存率が低いことも分かっています。

認知症のリスクを抑えつつ健康に長生きするためにも、低栄養の状態を脱却することが重要です。

高齢者が低栄養に陥る割合

高齢者は、若い人と比較しても低栄養になる傾向にあることが分かっています。

厚生労働省が発表している「令和元年国民健康・栄養調査報告」によれば、65歳以上で「低栄養傾向の者(BMI≦20㎏/㎡)」の割合は以下のとおりです。

年齢 男性 女性
65歳以上 12.4% 20.7%
85歳以上 17.2% 27.9%

男性よりも女性の方が低栄養に陥りやすく、年齢を重ねるほどに低栄養のリスクが高まることが分かります。

参考 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要厚生労働省

高齢者が低栄養になる原因

なぜ? 付箋

高齢者が低栄養になる原因を考えてみると、大きく分けて「身体的な原因」「社会的な原因」「精神的な原因」に分けることができます。

筋力低下による身体的な原因

身体が思うように動かない方の場合、米のような重い食材ではなく、パンや乾麺、インスタントラーメンのような軽い食材を選ぶ傾向にあります。

膝や腰の痛みがあって長時間の立つ姿勢が難しい方も、調理済みの加工食品に頼りがちです。

噛む力や味覚が衰えたり下痢や便秘になりやすくなったりといった問題があると1日の食事回数が減り、低栄養に繋がる可能性もあります。

社会的な原因

独居だったり過疎地域に住んでいたりして交通手段に制限があると買い物にでかける回数が必然的に減少します。食材を用意できないことで食事の回数が少なくなり、低栄養に繋がる可能性もあります。

また、生鮮品を手に入れる機会がないと、保存しやすい乾麺や加工食品、レトルト食品の購入が増えるでしょう。

年金生活で経済的な余裕がないことも低栄養の要因として考えられます。栄養価の高い食品ではなく安い加工食品中心の食生活になってしまうためです。

精神的な原因

高齢者に限った話ではありませんが、精神的に不健康だと食欲が低下することがあります。

例えば家族・友人の死去による喪失感が抜けないようなケースです。高齢者の場合はペットとの別れも引き金になる場合があります。

人とのつながりが弱くなってペットが心の支えになっているような場合、ペットが亡くなることで喪失感から食事を控えてしまいがちです。

また高齢者の場合、「今までできた行為ができない」ことも精神的な苦痛につながるケースがあります。

「歩くのが遅い」「階段を登れない」「耳が聞こえない」といった体験から喪失感を覚え、徐々に外出せず自宅で過ごすことが増えるということです。

自分に価値を感じられないことで人と関わることをやめると家事が億劫になり、食事への興味をなくして低栄養になることも考えられます。

低栄養の予防対策

食事 サプリ

低栄養は認知機能や寿命にも関わる可能性があるのは、すでに解説したとおりです。健康のためにも低栄養にならない生活を心がけましょう。

ここでは低栄養にならないための予防策を紹介します。

1日3食しっかり食べる

高齢者は若い世代と比較して食べる量が少ないため、1日3食しっかり食べないと必要なエネルギーやタンパク質などを摂取できません。

1日3食の回数を守ることで規則正しい生活リズムになり、時間になると空腹を感じやすくなります。

1日3食の食事が難しい場合は「1食分を2回に分ける」「おやつを食べる」といった方法でも栄養を多く取り入れることは可能です。

栄養バランスを考えた食事にする

甘いお菓子や加工食品、カップ麺などに頼らない食事に改善することも重要です。

身体のエネルギーになる栄養素をふんだんに取り入れることを意識しましょう。具体的に食事のなかで摂りたい栄養素には、以下のようなものがあります。

  • 身体のエネルギーになる「炭水化物」:米、パン、うどんなど
  • 筋肉をつくる「タンパク質」:肉・魚・乳製品など
  • 骨を作るカルシウム:牛乳、小魚など
  • 身体の調子を整えるビタミン:野菜、フルーツなど

たとえば朝ごはんに米と味噌汁だけでなく、卵や牛乳、フルーツなどをプラスするとバランスよく栄養を摂取できます。

栄養素とカロリーを増やす工夫をしてみると良いでしょう。

栄養補助食品を使う

口腔機能の低下で多くの量を食べるのが難しい場合、栄養補助食品を利用する方法もあります。

ゼリーやドリンクタイプの栄養補助食品であれば、口腔機能が低下した方でも気軽に栄養を摂取できるでしょう。味や風味もデザートのように甘く、食べやすい形に加工されていることから無理なく継続できるでしょう。

一例としては森永乳業グループの株式会社クリニコから発売されている「エンジョイクリミール」があります。

1本125mlの飲み切りサイズで200kcalを確保でき、エネルギー・タンパク質・カルシウム・食物繊維・13種類のビタミンなどの主成分をバランスよく摂取できます。

参考 栄養補助飲料 エンジョイクリミール株式会社クリニコ

同じく森永乳業から出ている「大人の粉ミルク ミルク生活」も、気軽に栄養を強化する補助食品としておすすめです。

ラクトフェリン、シールド乳酸菌、ビフィズス菌BB536、カルシウム、中鎖脂肪酸、鉄、11種類のビタミン、7種類のミネラル、食物繊維、オリゴ糖など、必要な栄養素が凝縮されています。

水に溶かすだけでなくコーヒーや青汁、ヨーグルトなどに混ぜることも可能です。牛乳にはない栄養素を取れるうえに常温保存もできるため、思い立ったときに気軽に料理に混ぜて使えます。

参考 大人のための粉ミルク ミルク生活森永乳業

咀嚼・嚥下の相談をする

食事をする際に「上手く噛めない」「呑み込めない」「むせる」といったことが気になる場合、歯科医師や医師に相談しましょう。

誤嚥性肺炎のリスクを調べることで未然に防ぐことができます。

入れ歯の方は状態に合わせて作り直すことで噛む機能が回復し、食事がしやすくなるでしょう。

適度な運動を行う

適度な運動をすることで骨に刺激を与えて丈夫にする効果が期待できるほか、疲れて食欲が出てきます。

足腰に自信があれば万歩計を使って1日5,000~1万歩の目標を設定して歩いてみましょう。

足腰に自信がない場合は椅子に座ったまま足を上下に動かす運動だけでも効果があります。

誰かと一緒に食事することも大切

1人で食事をする機会が多い方の場合、親族や友人と一緒に食事をすることもおすすめです。デイサービスに通われている方はそこで仲間と食事することも良い機会です。

楽しく食事をすることで食品の摂取量や種類が多くなり、食事の満足度も高くなります。社会とのつながりを感じることで精神的な満足につながるでしょう。

まとめ

高齢者が低栄養になる原因は「噛む力や飲み込む力が低下する」「買い物が大変になってレトルト食品や加工食品に頼る」「精神的な苦悩で食欲がなくなる」などが考えられます。

低栄養の状態が続くと認知機能の低下だけでなく寿命にも影響する可能性もあり、早めの対策が重要です。

3食しっかりと食事を摂ったり栄養補助食品を上手に活用したりして、身体が必要とする栄養を意識的に摂取していきましょう。


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