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勤続10年の介護福祉士は年収大幅アップ!?賃上げの条件と注意点を解説

右肩上がり

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 勤続10年以上の介護福祉士は賃上げの対象になっている
  • 勤続10年に満たない場合でも、十分な技能と知識があれば賃上げは可能
  • 賃上げの裁量は事業所が持っているため、賃金格差が広がる可能性も

介護業界と言えば「薄給」という悪いイメージが先行していますが、介護の重要度が増す中で職員の処遇改善は重要な課題です。

国も改善に乗り出しています。

現在では介護全般の賃上げのほか、特定の技能をもった介護福祉士の賃上げも導入されています。

今回は勤続10年以上の介護職員の処遇を改善する制度である「特定処遇改善加算」について解説します。

【法改正】勤続10年の介護福祉士は賃上げの対象に

パソコン グラフ

2019年10月から、介護離職を防ぐ取り組みとして「特定処遇改善加算」が創設されました、

特定技能を持った介護福祉士や介護職員の給与の処遇を改善するための制度です。

介護福祉士とは

そもそも介護福祉士とは、社会福祉専門職の介護に関する国家資格です。

介護が必要な方の食事や入浴、トイレなどの介助のほか、介護する家族の相談にも乗る専門的な知識を有しています。

現場で働くヘルパーさんの指導も担う、現場のリーダー的な役割の仕事です。

現場の責任者になれたり介護者に対して指導したりできるのが、いわゆるヘルパーさんとの違いになります。

資格を取得するには、年に1度開催される国家試験の合格が必須です。

ただし、誰でも受けられるわけではなく、受験には事前条件を満たさないといけません。「実務経験を積む」「養成施設に入る」など、受験資格を満たした人だけが受けられます。

特定処遇改善加算とは

介護福祉士の処遇改善のための制度の名前が「特定処遇改善加算」です。

経験や技能のある介護福祉士に対し、更なる処遇を行うことを目的にしています。

  • 職場で最低でも1人以上、キャリアがある介護福祉士の賃金を月8万円以上アップさせる
  • 年収440万円以上にする

上記の2つが賃上げの基本的なルールです。

厚生労働省の一般職業紹介状況(令和3年8月)によると、「介護サービス」の有効求人倍率は3.63倍と非常に高い水準にあります。

出典:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和3年8月分)について

一方で少子高齢化の背景から、今後も介護職員の需要は増加するでしょう。

そこで国として職員の処遇改善に乗り出しているのが現状です。

特定処遇改善加算の対象

特定処遇改善加算は「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づいた制度の設計です。

今回紹介する「特定処遇改善加算」以外にも、一般介護職員向けの「処遇改善加算」があります。ただ、特定処遇改善加算はリーダー的な役割の人の処遇を改善するという点で異なります。

  • 処遇改善加算:介護職員全体の処遇改善
  • 特定処遇改善加算:技能・経験を持ったリーダークラスの処遇改善

異なる事業所での勤務も合算は可能

「勤続10年」という1つの目安があることは、すでに紹介したとおりです。この「10年」という期間に対しては、

  • 同じ事業所で10年以上の勤務が必要か
  • 他の事業と合わせた合算でも良いのか

という疑問が出てくるでしょう。

結論としては、どちらも正解です。

というのも、勤続10年に関する考え方は事業所の裁量で決定できるとされているためです。

転職を繰り返して勤続年数が10年になった場合でも、対象になる可能性はあります。

勤続10年の介護福祉士を賃上げする際のルール

ルール

特定処遇改善加算には一定の算定要件、ルールが設けられています。

算定要件は以下のとおりです。

  1. 従来の処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを算定していること
  2. 職場環境要件について、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」、「その他」の区分で、それぞれ1つ以上取り組んでいること
  3. 賃上げ以外の処遇改善の取り組みの見える化をホームページなどで行っていること(2020 年度から要件)

加算の配分についても一定のルールが設けられており、制度を導入する以上は遵守することが必須です。

まず職員を技能ごとにA~Cの3段階に分けます。

  • A:経験と技能を持った介護福祉士
  • B:A以外の介護職員
  • C:その他の職種

そして、以下の3つのルールを守って加算配分が事業所ごとに決められることになります。

  1. Aの職員のうち1人以上を月8万円、または年収440万円まで賃上げ
  2. Aの処遇の改善額が、Bの2倍以上になること
  3. Cの処遇改善額は、Bの2分の1以下に設定すること

勤続10年の介護福祉士が知っておきたい注意点

介護福祉士 ボード

勤続10年以上の介護福祉士が対象の賃上げ制度とはいっても、全員が等しく賃上げされるわけではありません。

ここでは、特定処遇改善加算の注意点を紹介します。

勤続10年は目安|技能がないと対象外になることも

処遇改善の条件は「勤続10年以上の介護福祉士」とありますが、あくまでも目安です。10年経過すれば絶対に処遇が改善されるとは限りません。

実際に処遇が改善されるにあたっては、勤続年数に加えてスキルや知識・仕事ぶりも大きな判断材料になるでしょう。

勤続年数が10年を経過していないとしても、十分な知識や技能を持っていれば処遇改善を受けられる可能性はあります。

逆に10年経過していても、事業所が十分な技能を持つと認めない場合は対象外になることも考えられます。

パート勤務でも対象になるかは要確認

正社員以外にパート職員でも処遇改善されるのかは、働く事業所によって異なる、というのが答えになります。

厚生労働省が策定したルールには「賃上げの対象は正社員だけ」とは書かれていません。よってパート社員でも理論上は賃上げが可能です。

ただ、決定の裁量は事業所が持っています。パート職員でも賃上げに該当するかは事業所に確認してください。

特定処遇改善加算の問題点

課題

特定処遇改善加算は介護福祉士にもたらす良い影響が多い制度ですが、いくつかの問題点も浮かび上がっています。

対象になる介護福祉士が少ない

賃上げの対象になるには勤続年数10年を満たすか、それに準ずる知識・経験・技能が必要です。そもそも対象になる介護福祉士が少ないという問題があります。

厚生労働省の調査によれば、介護福祉士の平均勤続年数は9年です。

参考:厚生労働省|令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|15P

一部の人は勤続10年の条件を満たしていません。

必ずしも給与が上がるとは限らない

賃上げアップの原資になるお金は、一度国から事業所に入ります。

事業所の判断で「どのように賃上げを行うか」が決定される仕組みです。つまり、勤務先によって賃金の上がり方が全く異なります。

事業所の経営悪化などの要因があれば、賃上げは予想よりも少ない金額に留まることもあるでしょう。

特定処遇改善加算の加算区分

加算 積み木

特定処遇改善加算は「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」の2つに分かれます。

Ⅰはサービス提供体制強化加算のもっとも上位の区分を算定している場合に算定が可能な区分です。それ以外の場合にはⅡを算定します。

「サービス提供体制強化加算のもっとも上位の区分」とは、具体的に以下のとおりです。

  • 訪問介護:特定事業所加算ⅠまたはⅡ
  • 特定施設:サービス提供体制強化加算または入居継続支援加算
  • 特養:サービス提供体制強化加算または日常生活継続支援加算
  • その他:サービス提供体制強化加算

特定加算の見込額は、加算率に介護報酬を乗じる形で算定されます。

各事業所の介護報酬×各サービスの特定加算の加算率=新加算による収入

サービスごとの加算率は以下のとおりです。

画像引用:厚生労働省老健局老人保健課|介護職員の更なる処遇改善

まとめ

今回は勤続10年以上の介護職員の処遇を改善する制度である「特定処遇改善加算」について解説しました、

勤続年数が10年に満たない介護福祉士でも、十分な技能と経験があれば賃上げの対象に含まれる可能性もあります。

賃上げの裁量は事業所が持っていますから、気になる方は賃上げの条件を確認してみましょう。


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