【Excel版】エンディングノート(終活ノート)

「日常生活自立度」とは?判定基準と活用方法を解説

健康管理

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ

  • 障害高齢者の日常生活自立度はJ・A・B・Cの4段階
  • 認知症高齢者の日常生活自立度は全9段階
  • 健常者の健康度をチェックすることはできない

介護サービスを利用しようと考えている方のなかには、日常生活自立度という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?

日常生活自立度は要介護認定を受ける際の参考になるもので、ケアマネージャー作成の基本情報などで活用されます。

本記事では、2種類ある日常生活自立度の判定基準や活用のされ方について解説していきます。

「日常生活自立度」とは

自立

日常生活自立度は、高齢者がどれだけ自立した日常生活を送ることができるかの程度を表す、厚生労働省が定めた評価尺度のことです。

「障害高齢者」「認知症高齢者」の2つで別々の日常生活自立度の指標が存在し、障害4段階、認知症9段階で高齢者の症状に合わせて基準が分けられています。

評価基準

日常生活自立度は「~することができる・できない」という「能力」を判定するものではありません。「この行動ができる時間はどのくらいか」という「状態」に着目して判定を行います。

ADLとは

ADL(Activities of daily living)は「日常生活動作能力」と訳され、食事や入浴、移動などの日常生活に必要な動作のことを指します。

リハビリテーションや介護保険制度で用いられ、高齢者や障がいを持っている方の身体能力や日常生活を送るための能力を、以下のような項目で評価します。

  • 起居動作
  • 移乗
  • 移動
  • 食事
  • 更衣
  • 排泄
  • 入浴
  • 整容

日常生活自立度とADLとの違い

日常生活自立度とADLは両方とも介護認定を受ける際に必要になります。

日常生活自立度は要介護度の認定調査や介護保険サービスに関する書類を作成する際に用いられますが、ADLは介護やリハビリテーションの現場で計画を立案する際や医療機関で入院患者が自宅に帰れるかを判断する際に用いられます。

日常生活の動作における自立度を判定するという点で目的は同じのようですが、用いられる場面は異なることがあります。

障害高齢者の日常生活自立度判定基準

生活自立 J-1 独力で外出ができる バス・電車などを利用して
遠方へ外出可能
生活自立 J-2 独力で外出ができる 自宅周辺であれば外出可能
準寝たきり A-1 室内での生活が可能 ベッドから離れる時間が長く、
介護者の助けによって外出可能
準寝たきり A-2 室内での生活が可能 ベッドで寝ていることが大半であり、
外出の頻度が少ない
寝たきり B-1 室内では車椅子で移動 車椅子の移乗に介助は不要であり、
食事・排泄が自力で可能
寝たきり B-2 室内では車椅子で移動 車椅子の移乗・食事・排泄の
いずれに関しても介助が必要
寝たきり C-1 1日中ベッド上で過ごす 自力で寝返りを打つことができる
寝たきり C-2 1日中ベッド上で過ごす 介護者によるサポートがなければ
寝返りを打つことができない

判定

障害高齢者の日常生活自立度は介護保険制度の要介護認定におけるコンピュータによる一次判定や、介護認定審査会における審査判定の参考に利用されるものです。

「寝たきり度」とも呼ばれ、生活自立・準寝たきり・寝たきりに分けられます。

厚生労働省の資料から、それぞれの判定基準の詳細をみていきましょう。

参考 障害高齢者の日生活自立度(寝たきり度)厚生労働省

ランクJ「生活自立」

ランクJの「生活自立」は、何らかの障害は持っているものの、生活に必要な行動のほぼ全てを自分で行える状態です。

基準を細かく見てみると、「J-1」「J-2」に分かれます。

判断基準「J-1」はバス・電車などの交通機関を使用し、遠方に積極的な外出ができる人が該当します。

J-2は遠方への外出は難しいものの、自宅周辺に外出が可能な状態です。

ただし、両方とも他人のサポートが無く1人で行動できることが前提となります。

ランクA「準寝たきり」

準寝たきりは医療の現場で「寝たきり予備軍」とも呼ばれる状態です。食事・排せつ・着替えなど、自室で過ごすための行動は大体自分の力でできる状態が該当します。

「A-1」は、室内における日常生活はもちろん、日中は居間に移動してテレビを見たり読書をしたりできる状態の方です。ベッドから離れて過ごす時間が長く、介護者の存在次第では外出することもできるでしょう。

「A-2」は、そもそも外出の機会がほぼなく、食事の時間以外はベッドで寝ていることが大半という場合に該当します。

「日中は寝たり起きたりの状態であってベッドから離れて過ごす時間の方が長い」「介護者がいても外出する気持ちが起こらずに家の中で過ごすことがほとんど」という状態の方などが対象です。

ランクB・ランクC「寝たきり」

ランクBとCは、いわゆる「寝たきり」の状態です。

Bは「移動に車いすを要する状態」の方が該当し、さらに細かく分けると「B-1」「B-2」に分かれます。

「B-1」はベッドや車いす上で座位がとれたり車いすに移乗できたりでき、食事とトイレはベッドから離れてできる方などが対象です。

「B-2」は介護者の手助けで車いすに移動し、食事・排せつも介護者のサポートが必要な場合に該当します。

Cは全面的な介護が必要な状態です。同じ寝たきりでもBよりも症状が重く、生活全般を通して介助が必要な場合に該当します。

「C-1」は自分で寝返りをうてる状態、「C-2」は介護者によるサポートがなければ寝返りをうつこともままならない状態です。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)と要介護認定の分布

厚生労働省(平成20年度)のデータによると、障がい高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)と要介護認定の分布は、認知症高齢者の日常生活自立度が「自立」と「ランクⅢ」の場合でそれぞれ以下のようになっております。

障がい高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)と要介護認定の分布

認知症高齢者の日常生活自立度「自立」の場合(1%未満は省略)

単位:%

寝たきり度 自立 J A B C
非該当 42.1 5
要支援1 42.5 59.3 19.7 1
要支援2・要介護1 13.8 34.6 61.3 14.7
要介護2 1.1 15.2 30.6 1.8
要介護3 3 39.3 19.8
要介護4 12.5 42.8
要介護5 2 35.3
合計 100 100 100 100 100

認知症高齢者の日常生活自立度「ランクⅢ」の場合 (1%未満は省略)

単位:%

寝たきり度 自立 J A B C
非該当
要支援1
要支援2・要介護1 28.1 20.9 4.7
要介護2 41.8 44.7 27.4 2.7
要介護3 26.1 30.2 53.9 24.3 1.8
要介護4 3 3.7 13 56.8 24.5
要介護5 1 16 73.7
合計 100 100 100 100 100

要介護認定において、障害高齢者や認知症高齢者の日常生活自立度はコンピュータによる一次判定や介護認定審査会における審査判定の際の参考として利用されています。

障害高齢者と認知症高齢者の日常生活自立度それぞれについて、ランクが高いほど要介護度が高く認定されている傾向が表から読み取ることができます。ただし、日常生活自立度に対応する要介護度の幅も確認されるため、目安程度の参考に留めておきましょう。

認知症高齢者の日常生活自立度

認知症

認知症高齢者の日常生活自立度は認知症と診断された高齢者の症状・行動を見て、どのくらい自立した生活を送れているかを9つのランクで判定するものです。

ランク 判断基準 見られる症状・行動
何かしらの認知症を有するが、日常生活はほぼ自立している
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが見られても、誰かが注意していれば自立できる
Ⅱa 家庭外でランクⅡの状態が見られる。 たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などできたことができなくなる等 
Ⅱb 家庭内でもランクⅡの状態が見られる。 服薬管理ができない、電話の対応、訪問者との対応など1人で留守ができない等
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。
Ⅲa 日中を中心にランクⅢの状態が見られる。  着替え、食事、排便・排尿が上手にできない・時間がかかる、やたらに物 を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
Ⅲb 夜間を中心にランクⅢの状態が見られる。 ランクⅢaに同じ
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 ランクⅢに同じ
M 著しい精神症状や問題行動や重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。  せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 
参考 認知症高齢者の日常生活自立度厚生労働省

ランクⅠ

ランクⅠは在宅生活を基本とながら、1人暮らしも可能な状態です。見られる症状や行動は特にありません。

ランクⅡ

在宅生活による生活が可能で、1人暮らしが難しいケースが該当します。日中の在宅サービスを利用するなど、在宅支援を行いつつ症状の改善を目指すことになります。

ランクⅢ

日常生活への支障が行動と意思疎通に出ている状態で、重度の認知症高齢者に該当します。

生活面では在宅生活が可能ですが、1人暮らしを送ることは難しい在宅介護の状態といえます。

ランクⅣ

同じ症状・行動でも日常生活への支障が行動と意思疎通に頻繁に出ており、常に介護が必要な状態です。

「常に目を離すことができない状態である」と判断された際に分類されます。

ランクM

以下の条件を満たすとランクMに該当します。専門医療機関の受診が必要です。

  • 精神病院へ入院する必要がある
  • 認知症専門棟がある老人保健施設に移動
  • 重篤な身体疾患によって老人病院等での治療が必要

認知症は症状によっては家族だけではどうにもならないこともあり、自治体を巻き込んだ対策が必要です。

以下の記事では認知症による徘徊対策をまとめているので、併せて読み進めてみてください。

認知症による徘徊防止対策は?自治体を巻き込んだ対策を

日常生活自立度の判定の注意点

手続き

日常生活度判定はあくまで障害・認知症の認定を受けた高齢者が対象です。健常な高齢者の健康具合を測ることはできません。

また、障害高齢者・認知症高齢者の判定についても注意点があります。

障害高齢者のなかには朝晩の時間帯や曜日などによっても体調の良し悪しが変わる方もいます。そのような場合、具体的な状況について「特記事項」に記載することになります。

認知症高齢者は認知症の症状として「幻視・幻聴」「暴言・暴行など問題行動」が見られる場合もあり、これも特記事項として具体的な状況を記載することが必要です。

日常生活自立度が分かるとどうなる?

トイレ ?

介護の現場では、日常生活自立度がどのように活用されているのでしょうか?

介護保険の要介護認定を受ける際の調査に活用される

日常生活自立度は、介護保険の「要介護認定」を受ける際の参考資料として利用されます。

要介護認定は「訪問調査」と「主治医意見書」を軸にして判定されるのが原則です。

判定方法は一律で、パソコンに調査内容を入力・判定する「一次判定」と、介護認定審査会による「二次判定」の順で進みます。

その結果、「要介護」もしくは「要支援」のどちらかに認定されるのです。

ケアプランなどの基本情報として活用される

要介護認定を受けると、ケアマネージャーが今後の介護生活に備えて「ケアプラン(介護サービス計画書)」を作成します。

日常生活自立度は、その人に適切な介護サービスを決めるために重要な基本情報です。

日常生活自立度が分かれば「できることは自分の力で行えるようにする」「必要な場面で適切な介助を行えるようにする」といった具合に、バランスが取れた介護サービスが提供できます。

まとめ

日常生活自立度は「障害者」「認知症」でそれぞれ別の判定基準が存在し、要介護認定やケアプラン作成の際に利用されるものです。

調査員が定期的に自宅に訪問して面談、対象者本人や家族に聞き取りをして基準に沿ったランク分けがなされ、ランクによって必要なサービス内容は全く異なります。

これから要介護認定を検討している方は、参考までに「介護する人がどのランクにあたるのか」を確認してみると良いでしょう。


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