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介護老人保健施設とは【どんな施設?】特徴と入所条件、メリットを解説

介護施設

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高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 介護老人保健施設は「在宅復帰」に特化した施設
  • 医師が常勤していて、専門家によるリハビリを受けられる
  • 入居期間は3~6ヶ月で終身利用はできない

公的な施設のなかでも介護老人保健施設(老健)は、病気で入院していた人が在宅復帰を目指す際に利用されます。

今回は、介護老人保健施設の特徴やほかの公的な施設との違い、メリット・デメリットを解説します。

将来のために、数ある施設の特徴や違いをこの機会に把握しておきましょう。

介護老人保健施設(ろうけん)とは

介護 ハート

介護老人保健施設は、別名で「ろうけん」と呼ばれることもあります。

介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を促すことが目的の施設です。

厚生労働省の資料で、介護老人保健施設は以下のように定義されています。

介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を
図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対
し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練
その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。

引用元:厚生労働省|介護老人保健施設の概要

医師による医学的な管理のほか、看護ケア、作業療法士や理学療法士によるリハビリテーション、栄養士による栄養管理、食事・入浴のサポートなどが提供されます。

介護保険法で定められた公的な施設の種類

介護施設は大きくわけて「公的な施設」「民間施設」に分かれています。

それぞれの施設の種類と主な特徴を一覧でまとめてみました。

【公的施設】

種類 主な特徴
介護老人保健施設 在宅復帰が困難な人が、医療ケアやリハビリを受けられる施設。

入所期間は3~6ヶ月で、終身利用はできない

養護老人ホーム 経済的な理由から在宅の介護サービスを受けられない人向け。
特別養護老人ホーム 寝たきりなど要介護度が高い人が入所できる。

終身利用が可能。

ケアハウス 「一般型」は家族から支援が受けられない60歳以上が入居可能。

「介護型」は介護サービスが提供され、要介護度が上がっても退去は不要。

介護医療院 長期入所・終身利用が可能。

医師や看護師が常駐していて、要介護や認知症にも対応。

【民間】

種類 主な特徴
住宅型有料老人ホーム 食事や洗濯などの援助が受けられる。

介護は外部サービスであり、要介護度が高い人は入居できない可能性がある。

サービス付高齢者向け住宅 60歳以上の人が入居できるバリアフリーの賃貸住宅。

提供されるのは安否確認と生活相談程度。

介護付き有料老人ホーム 手厚いケアが受けられる施設で、65歳以上が対象。

入居条件は施設によって幅広い。

健康型有料老人ホーム 自立した生活ができる人向けの施設。

要介護になったり認知症になったりした場合は退去する。

グループホーム 65歳以上、かつ認知症になった人向けの施設。

専門スタッフのサポートを受けながら生活できる

介護老人保健施設は特別養護老人ホームなどと同じく、介護保険が適用される公的な施設です。

リハビリや医療ケアが目的

介護老人保健施設の目的は、入居者がリハビリを受けて在宅復帰を果たすことです。施設のなかでは入所難易度は低い方である代わり、短期間しか程度しか利用できません。

長期入院していた人が「まだ自宅に戻るのが不安……」と感じる場合に、退院してから自宅に戻るまでの間に利用されるのが一般的です。

医師が常勤している

介護老人保健施設では、利用する定員100人あたり1人の医師の常駐が義務付けられています。

「利用者の医療ケア」「健康管理」「万が一のときの緊急対応」などにあたっています。

ほかの施設、たとえば特別養護老人ホームでは医師が非常勤というケースも珍しくありません。一方の介護老人保健施設では常勤の医師がいるので、常に健康ケアを提供してくれるのが特長です。

部屋は個室ではなく共有

生活のための設備は一通り整っていますが、基本的に全て共有設備です。個人用の設備は用意されていません。

キッチンやトイレ、浴室、食堂、リビングなどは全てが共有です。「個室で終日ゆっくり過ごせる」という性質の施設とは異なります。

設備や人員に基準がある

介護老人保健施設は公的な施設であるため、設備や人員の配置については法律によって規定があります。

たとえば利用者が100人いる場合、主に必要なスタッフの種類は以下のとおりです。

医師 常勤で1人
介護職員 9人
看護職員 25人
栄養士 1人以上
薬剤師 施設の実情に合わせた人数
支援相談員 1人以上

上記に加えて、さらに「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」のいずれかの資格を持つ人の配置が必須です。

介護老人保健施設(ろうけん)と特別養護老人ホーム(とくよう)の違い

違い 考える

介護老人保健施設と似たような名前の施設に、「特別養護老人ホーム(通称:とくよう)」があります。

漢字ばかりで似たような名前に感じますが、施設の目的は全く異なります。

  • 介護老人保健施設:在宅復帰を目指してリハビリを行う施設
  • 特別養護老人ホーム:寝たきりでも生活できる施設

介護老人保健施設では最長6ヶ月程度までしか入居できません。

特別養護老人ホームについては、入居期間に制限はなく、終身の利用が可能です。

一方の介護老人保健施設はリハビリに重きをおいた施設です。医師が常勤していて、理学療法士によるリハビリサポートなども受けられます。

介護老人保健施設は特別養護老人ホームと比較して、「在宅復帰」「リハビリ」に特化した施設と覚えておきましょう。

介護老人保健施設への入所条件

入居条件

介護老人保健施設では、利用できる人に一定の条件があります。

■入所の対象者

  • 介護保険による被保険者であること
  • 65歳以上で要介護度が1~5の人
  • 40歳以上65歳未満の第2号被保険者のうち、特定疾患で要介護の認定がされた場合

利用できるのは、上記の条件を満たす人に限られます。

たとえば介護保険の被保険者であっても、要支援1~2の人は利用できません。

年齢要件にも注意が必要で、65歳以下の人は原則として利用できません。ただし、40歳から64歳でも、特定疾病によって介護認定がある人に関しては入所できます。

利用できる要介護度、要支援度の違い

ほかの公的な施設と比較すると、利用できる要介護度・要支援度に違いがあります。

具体的に、それぞれの施設と要介護度の関係は以下の通りです。

  • 介護老人保健施設:要介護度1以上
  • 特別養護老人ホーム:要介護度3以上
  • ケアハウス:要支援1~2(要介護1以上でも入居できる場合あり)
  • 介護医療院:要介護3以上(要介護1~3でも入居できる可能性あり)

入居の難易度は他の施設より高くない

入居の条件を満たしていても、人気の施設の場合は入居が難しいこともあります。

ただ、介護老人保健施設の入居難易度は他の公的な施設と比較しても高くありません。

この理由は介護老人保健施設の入所期間が短く規定されているためです。ベッドの回転が速いことで、より多くの人が入所できます。

介護老人保健施設のメリット

メリット

介護老人保健施設のメリットは以下のとおりです。

機能訓練が受けられる

質が高いリハビリ(機能訓練)が受けられるのが、介護老人保健施設のメリットです。

具体的には週に2回以上、1回につき20~30分のリハビリが設定されます。

施設にもよりますが、入所してから3ヶ月間、週3回以上のリハビリを集中的に行う場合もあります。

理学療法士や作業療法士といった資格を持つ専門家が指導するだけでなく、一人ひとりにあったリハビリプランを立てることも可能です

用意されたリハビリプランをただこなすだけよりも、効果的な機能訓練が期待できます。

民間よりも費用が安い

民間の施設と比較して、公的施設である介護老人保健施設は入居に関する費用が安いのもメリットです。

まず入所一時金を支払う必要はありません。ほかにも公的な施設であるため、介護保険の自己負担は3割以下に収まります。

施設によって毎月の総額は異なりますが、10~20万円くらいで収まるのが一般的です。

民間の施設の場合は数十万円~最大で数千万円の入居一時金がかかるうえ、月額も10~30万円程度が必要とされています。

それでも入居費用が払えない場合

介護老人保健施設は、民間の施設と比較して入居費用は高いとは言えません。

ただ、それでも金銭的な問題から入居をためらう人もいるでしょう。

そこで、所得に応じた軽減制度の利用も検討しましょう。たとえば以下のような軽減制度の利用を相談できます。

  • 高額介護合算療養費制度:医療費と介護保険の自己負担額(年間)が基準を超えた場合に返還される
  • 高額介護サービス費:1ヶ月ごとに利用した介護サービスが、基準額を超えた場合に返還される

これらの制度は申請を行わない限り適用されることはありません。市区町村の介護保険課に相談し、自分にも適用できるか確かめましょう。

24時間体制による医療・看護ケア

介護老人保健施設は24時間体制で医師・看護師が常駐しているため、徹底したケアのもとで安心した生活を送ることができます。

たん吸引や経管栄養といった医療的処置にも対応できる他、薬も施設から処方されるなど、一気通貫のケアを受けられます。

入所のハードルが低い

特別養護老人ホームが要介護3以上しか入所できないのに対して、介護老人保健施設は要介護1から入所可能なので入所のためのハードルが低いです。

介護老人保健施設のデメリット

女性 悩む

内服薬に制限がある

介護老人保健施設では、医療保険の適用が受けられません。薬について施設側の報酬でまかなうので、あまりに高い薬の処方は施設側に損失が発生する可能性があります。

高価な医薬品の場合は、利用できない可能性も考慮しないといけません。

入所期間が限定される

介護老人保健施設は、あくまで「退院後に在宅復帰を目指すための施設」です。終身利用はできません。

いつまで入所できるかは利用者によっても異なります。入居期間は3~6ヶ月程度で、長くても6ヶ月程度で対処する必要があります。

生活支援サ ービスが充実していない

介護老人保健施設は主な介護サービス(食事・入浴・排泄)は受けられますが、生活支援サービス(掃除や洗濯)は充実していません。

洗濯はご自身または家族の方、もしくは外部事業者(有料)に委託する必要があります。

イベントが少ない

介護老人保健施設はあくまで「在宅復帰」を目的とした施設なのでイベント・レクリエーションは、特別養護老人ホームやデイサービスなど他の介護施設と比べて充実していません。

まとめ

今回は「介護老人保健施設」の特徴やメリット・デメリットを解説しました。

要介護度が高い人向けで終身での利用が可能な特別養護老人ホームと異なり、あくまで在宅復帰を目指すためのサービスが提供されるのが介護老人保健施設の特徴です。

「医師が常勤である」「専門家によるリハビリが受けられる」というのが大きく異なります。

自分が将来、いつ要介護になるかも知れません。今のうちから、それぞれの施設の違いを把握しておきましょう。


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