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秘密証書遺言とは|メリット・デメリットと他の遺言との違いを解説

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この記事を書いた人
高柳政道 Takayanagi Masamichi
高柳政道 Takayanagi Masamichi
ライター

生協の売り場責任者と保険推進リーダー、その後、メーカー営業として勤務。自身の老後資金不足への危機感からお金の勉強を開始。FP資格を取得した後、得た知識を周囲に還元するためにWebライター・コラムニストとして独立。1級ファイナンシャル・プランニング技能士とCFPの資格を保有し、「終活」「相続」「保険」「投資(iDeco・NISA)」などの分野に精通。老後に安心して暮らすための知識とノウハウに関して、豊富な執筆実績あり。 ▼保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R) DCプランナー2級

この記事のサマリ
  • 遺言の内容を公証人・証人にも秘密にできるのが秘密証書遺言
  • 内容を改ざんされる心配がなく、パソコンで作成も可能
  • ただし、紛失する可能性がある点や遺言をチェックする仕組みはない点に注意

亡くなる人の遺志を示すための「遺言」には、大きく分けて3種類が存在します。自筆証書遺言、公正証書遺言、そして秘密証書遺言です。

今回は秘密証書遺言にスポットを当てて、メリット・デメリットや書類作成時のポイントを解説します。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言作成者が遺言内容を誰にも知られたくない場合に作成する遺言です。

メジャーな遺言書の方式である「自筆証書遺言」「公正証書遺言」よりもマイナーで、現状では選択する人は多くありません。

  • 遺言の内容を誰にも知られたくない
  • 公正証書ほどの費用はかけたくない

このような希望がある時に選ばれています。

自筆証書遺言と違い、署名だけ自署すれば本文の作成は代筆やパソコンでも問題ないという手軽さが魅力です。

秘密証書遺言のメリット

メリット

遺言の内容を秘密にできる

公正証書遺言は、遺言や相続財産の内容を公証人や証人に公開する必要があります。

一方の秘密証書遺言は、担当する公証人でも遺言の内容を確認できません。誰にも遺言の内容を知られないまま、手元で保管しておくことができます。

本人が作成したものであることを証明できる

自筆証書遺言では、遺言が本当に遺言者の手で作成されたかを証明することが難しいというデメリットがあります。法務局での保管制度を利用して、本人が保管申請をしていれば本人作成の証明ができますが、そうでない場合、偽造を疑われてしまうこともあるかもしれません。

一方の秘密証書遺言は遺言の内容を自分以外の誰にも知られず、かつ公証人や証人の存在によって遺言者本人が作成したことを証明できます。

本人が作成したことを証明するには、自筆証書よりも秘密証書遺言の方が優れています。

偽造される心配がない

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書に封をして公証人が封書に署名する方式です。

この封が破られていたり開かれた痕跡があったりする場合、秘密証書遺言は法律上の効果が認められません。

遺言書の偽造を防げる仕組みが備わってるのが秘密証書遺言のメリットです。

秘密証書遺言のデメリット

デメリット

作成に費用がかかる

秘密証書遺言の作成には11,000円の手数料がかかってしまいます。

手数料は公証役場に訪問した際、現金で支払います。

遺言内容を公証人がチェックできない

公正証書遺言と違い、公証人や証人が遺言の内容を確認することができません。つまり、遺言の内容に誤りがあっても訂正されないまま封されてしまうことになります。

秘密証書遺言の作成要件を満たしていない場合は当然無効になります。

遺言が発見されない恐れもある

公正証書遺言は作成された遺言の原本が公証役場で保管されるため、遺言者が亡くなった場合は遺言の存在が遺族に知らされます。

一方の秘密証書遺言は公証役場で保管されず、遺言者が自分で保管することになります。公証人や証人が立ち会うといっても、公正証書遺言ほどの確実性がないのです。

遺言の確認に「家庭裁判所の検認」が必要

公正証書遺言以外の遺言は、遺言書を発見した相続人が遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければいけません。

検認前に開封して遺言内容を執行してしまった場合は5万円の科料に処されます。ただし、遺言内容そのものは無効になりません。

検認の必要書類

検認の申し立てには遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要です。

さらに、検認に必要書類として以下2つの書類提出が求められます。

  1. 申立書
  2. 標準的な添付書類

2の添付書類は以下に示す「共通の書類」のほか、相続の状況に合わせて必要書類が加わる可能性があります。

【共通】

1. 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

2. 相続人全員の戸籍謄本

3. 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】

4. 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】

4. 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

5. 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

6. 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

7. 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

引用元:裁判所|遺言書の検認

自筆証書遺言との違い

自筆証書遺言 違い

自筆証書遺言は文字通り「自分で書いた遺言」のことです。遺言の全文、日付、氏名まで全て自書する必要があります。

ワープロやパソコンで作成した場合は有効になりません。

ただし、平成31年の民法改正によって例外的に、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録(財産目録)を添付するときは、その目録については自書しなくても良いとされました。

自書によらない財産目録を添付する場合には、遺言者は財産目録の各ページに署名押印をしなければなりません。

自筆証書遺言は自分で作成できる分、書式などに不備が見つかり、遺言そのものが無効になるリスクがあります。

また、秘密証書遺言と違って内容を秘密にしているわけではありませんので、書き換えられてしまうリスクに注意する必要があります。

自分で保管する必要があるのは秘密証書遺言も自筆証書も同じです。紛失や死後に発見されないことに対する対策が必要になることは注意しましょう。

公正証書遺言との違い

公正証書遺言 違い

公正証書遺言は公正証書による遺言です。公証人が作成する点でほかの2種とは明確に異なります。

公正証書とは国の機関が作成して保管する書類のことで、紛失や偽造の心配がありません。

遺言執行前に家庭裁判所の検認が必要な自筆証書遺言・秘密証書遺言と異なり、検認は不要です。

一方で遺言の内容は証人に知られてしまうため、完全に秘密にすることができない点がデメリットです。

また秘密証書遺言と異なり、相続の金額に応じてかかる費用が変わります。

基本手数料に関しては、日本公証人連合会の公式webサイトをご確認ください。

秘密証書遺言の作り方

秘密証書遺言 作り方

遺言書の本文を作成する

遺言者は自分で遺言書を作成します。

使用する筆記用具などに規定はなく、署名を自分で書く(自署)ことを守れば本文はパソコンでの作成でも大丈夫です。

遺言者が遺言を封筒に入れ、誰にも見られないように封印を施します。

証人を2人選出する-公証役場で署名押印

遺言書の証人になってもらう人2名を遺言者が用意します。

証人には条件があり、以下の人は証人になれません。

  • 未成年者
  • 推定相続人
  • 受遺者
  • 配偶者
  • 直系親族
  • 公証人の配偶者
  • 四親等以内の親族
  • 書記・雇人

未成年のように判断能力がない人や遺言の内容によって損得が発生する人は、証人になれないということです。

司法書士や弁護士などの専門家に依頼することもできます。

公証役場では、公証人と証人の前で「封筒の中身は自分の遺言書」である旨と氏名・住所を告げます。公証人は提出日と申述内容を封書に記載して遺言者と証人それぞれが署名押印を行います。

秘密証書遺言を作成する際のポイント

秘密証書遺言 ポイント

内容に誤りがあると遺言は無効

遺言に矛盾する内容が記載されていた場合、効力は発生しません。

例えば「投資マンションを次男に相続する」と書かれていた場合、次男が遺言者よりも先に亡くなっていたら無効になります。

財産は特定して明確に書く

記載する財産が不明確だと、遺言が有効になりません。預貯金であれば銀行名・支店名・口座の種類・口座番号まで正確に記載する必要があります。

遺言執行者を指定する

遺言執行者(遺言執行人)とは遺言の内容を実現するために手続きを行う人のことです。

金融機関の預金解約手続きや法務局での不動産名義の変更など、遺言の内容を実行する権限を持っています。

遺言執行者の有無は遺言書の効力に影響はありませんが、遺言の内容を円滑に実行するためには遺言執行者を選定するのが望ましいといえます。

弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に遺言執行者を依頼することも可能です。

自筆証書遺言として通用するように作成する

秘密証書遺言を作成しても、なんらかの理由で遺言が無効になってしまう可能性があります。

しかし、その遺言が自筆証書遺言としての要件を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になります。そのため、自筆証書遺言の要件に則って秘密証書遺言を作成しておけば、遺言が無効になってしまうリスクを減らすことができます。

自筆証書遺言の要件を満たすためにも、「遺言本文」「氏名」「日付の記載」まで自筆で行うようにしておきましょう。

まとめ

秘密証書遺言は誰にも内容を知られない遺言を作れるため、改ざんされる心配はありません。

一方で、自分で保管するため紛失したり相続時に見つからなかったりするリスクがあります。家庭裁判所の検認が必要になる点にも注意が必要です。

「どうしても内容を明かしたくない」という希望がある際には、デメリットを理解した上で秘密証書遺言を作成しましょう。


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