- 土地の相続にはさまざまなケースが考えられる
- ひとつの土地を複数の相続人が分け合うには4つの方法がある
- 不要な土地が相続対象となったときには2つの選択肢がある
- 土地と建物の名義人が違うと面倒な事態に陥る可能性がある
土地を相続したときには登記情報の変更など面倒な手続きが必要です。
さらに複数の相続人でひとつの土地を分け合わなければいけない場合や、土地と建物が違う名義人である場合など、状況によっては慎重な対応が求められるケースもあります。
スムーズに土地を相続する・させるためには、どんな点に注意しておくべきなのでしょうか。
今回は土地を相続する際の手続きやお金などの基本的事項とともに、想定されるさまざまなケースの対応策についても解説します。
目次
土地の相続に必要な手続き
まずは基本となる「土地を相続した際に必要な手続き」について説明します。
土地を相続した方は、受け継いだ土地を法律上の自己所有物にするために登記します。
被相続人(亡くなった人)の土地名義は相続されても自動的には変わりません。そのため権利を被相続人から相続人に移すための手続きが必要です。
ただしこの手続きは義務ではなく、また期限はありません。登記手続きをしなくてもその土地に住むこと自体は可能ですが、その後のトラブルにもつながるため速やかに手続きした方が良いでしょう。
参考 未来につなぐ相続登記法務省なお、まだ相続先が決定していない不動産は、登記手続きの前に「誰が相続するか」を決めておかなければいけません。
土地を含む不動産全般の相続先決定方法については、以下の記事をご参照ください。

登記手続きのやり方
遺言書や遺産分割協議により相続先がすでに決定している土地は、法務局に相続登記を申請します。
法務局への申請は相続人本人が行うこともできますが、スムーズに手続きを終わらせるためには司法書士などのプロに手続き代理を依頼しましょう。
《司法書士に依頼できる登記手続き》
・登記申請書の作成
・申請資料の作成および取得
・登記申請から完了までの一切の手続
・登記完了後の書類受領 など
全国の司法書士会に登録されている司法書士は以下より調べられます。
参考 全国司法書士会一覧日本司法書士会連合会必要書類
土地を含む不動産登記手続きで必要な書類は以下のとおりです。
- 登記申請書
- 相続の事実を証明する書類(遺言書・遺産分割協議書)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の死亡時の住民票(本籍地が記載されているもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産の評価証明書
また、司法書士などに登記手続きを依頼した場合には委任状も必要になります。
土地の相続にかかる税金
登記手続きをする・しないに関わらず、土地を相続すると税金がかかります。土地の相続に伴う税金は「相続したとき」と「土地を持ち続けている間」に分かれます。
- 相続したときにかかる税金→相続税
- 土地を持ち続けている間にかかる税金→固定資産税
相続税
相続税は土地を含むすべての相続財産の合計額で計算します。土地をいくらとして評価するかは、路線価方式もしくは倍率方式により決定されます。
路線価方式 | 路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額により計算 |
倍率方式 | 路線価が定められていない地域において固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算 |
路線価に関しては資産評価システム研究センターが公開している「全国地価マップ」により各地の相続税路線価が調べられます。
画像引用:全国地価マップ|相続税路線価等(東京都千代田区の例)
ただし土地評価額の計算にはある程度のスキルが必要なため、正しく評価額を知りたい方は土地家屋調査士などのスペシャリストに評価を依頼することをおすすめします。
固定資産税
不動産の所有者には毎年1月1日を基点として固定資産税がかかります。
固定資産税の額は、その土地が存在する都道府県の知事もしくは市区町村が固定資産評価基準に基づき3年ごとに評価して決定されます。
参考 固定資産税・土地計画税(土地・家屋)東京都主税局土地を分割相続する方法
ひとりの相続人が丸ごと土地を相続できれば良いですが、土地の評価額は他の財産よりも高額になるケースが多いため、他の相続人と分配して相続しなければいけない事態も起こります。
土地を分割しなければ公平な相続ができない事態になったときには、どう分割すれば良いのでしょうか。
現物分割
まずは単純に、土地を割り当て分に区切ってそれぞれの相続人が名義変更する方法があります。これを現物分割と呼びます。
〇現物分割のメリット
分割が簡単
●現物分割のデメリット
・土地の資産価値が下がる可能性がある
代償分割
ひとりの相続人が土地を丸ごと相続し、他の相続人には割り当て分に相当する金額を現金で支払う方法もあります。これを代償分割と呼びます。
〇代償分割のメリット
土地の資産価値が維持できる
●代償分割のデメリット
土地を相続した方が資金を持っていないと支払いできない
換価分割
換価分割とは土地を売却し、その代金を相続人同士で分け合う方法です。
〇換価分割のメリット
・分割が簡単
・土地の維持費用がかからない
●換価分割のデメリット
望む金額ですぐに売却できるとは限らない
共有
最後の方法は、土地の名義人を相続人全員(または一部)の名前に変更して、土地を共同所有する方法です。これを共有と呼びます。
〇共有のメリット
・土地の相続に関する結論が留保できる
●共有のデメリット
・名義人全員の合意が得られないと売却や土地活用ができない
・二次相続の際に混乱の元となる
相続人同士の仲が良い間は共有もひとつの選択肢ではありますが、後々のトラブルにもつながりやすいため注意が必要です。
不要な土地や家を相続したら
子どもが独立して実家を離れているなど、相続対象になった家や地がすでに相続人にとって不要となっているケースも考えられます。
持っているだけで維持管理費用がかかる不要な空き家や土地が相続対象に含まれているときにはどうしたら良いのでしょうか。
相続放棄
借金などのマイナス遺産の方が土地価格よりも高額で、相続した方がかえって不利益になる場合には相続放棄もひとつの選択です。
相続放棄の手続きについては以下の記事も参考にしてください。

ただし相続放棄するとすべての遺産を受け継ぐ権利を放棄することになるため「土地はいらないけど他の遺産は欲しい」というわけにはいかないので注意してください。
売却
いったん相続してから不要な土地を売却すれば、その後の固定資産税もかからず、相続人には売却額が金銭として得られます。
その際は上記で説明した登記手続きも終わらせておかないと、土地の名義人が正式に相続人のものとはなっていないため売却できません。
速やかに登記手続きを完了させてから売却しましょう。
土地と建物の名義人が違う場合には
親が持っている土地に子世帯が建物を建築し、無償で土地を利用しているケースは珍しくありません。
親が生きている間は良いですが、いざ相続となると土地相続は非常に面倒なものになりがちです。
建物の名義人以外の相続人に土地が相続された場合には、これまでのように無償で利用できない可能性もあり、また土地が相続された方が勝手に売却もできなくなります。
土地と建物の名義人が異なる場合には、あらかじめ生前贈与などの手段により土地建物の名義人を同一にしておくことをおすすめします。
生前贈与に関しては以下の記事も参考にしてください。

土地の相続でトラブルを招かないために
土地は他の相続財産よりも高額かつ権利関係が複雑なため、相続トラブルを招きやすくなります。
自宅や収益物件を所有している方は、あらかじめ遺言書で相続先を指定するなどの相続対策をしておいた方が良いでしょう。
また自分の死後に相続人が土地相続の話し合いをするためには、持っている土地の情報を明確にしておくことをおすすめします。
エンディングノートに土地建物などの不動産情報を記載しておけば相続人が把握しやすいため、遺言書とあわせてエンディングノートの活用もぜひ検討してください。

まとめ
今回は土地の相続について解説しました。
土地を含む自分の大切な財産をスムーズに次世代に相続させるには、生前からのかしこい相続対策がカギとなります。
円満に相続が完了し、次世代が有効に土地を活用できるよう、今から家族・親族との話し合いや相続準備を進めておきましょう。
ライター紹介 | 杉田 Sugita
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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